9月になってめっきりヒマになってしまったわたくしです。
10月11月はさらにもっとヒマになるだろう。
さて、ここ10日ほどわたくしが夢中になっていたのは、『氷と炎の歌』という小説のシリーズでした。
これは日本でも2006年ぐらいに翻訳が刊行されたという人気シリーズだそうで、わたくしも名前ぐらいは知っていたような気もしますが、一年ぐらい前に「改訳新版」が出まして、わたくしは半年ぐらい前にそれを買った。こやつがとてつもなく分厚い小説でして、私も半年間ぐらい少しずつちびちび読んでたんです。
で、10日ぐらい前にようやく第二部「王狼たちの戦旗」の上巻を読み終わりまして、ふと「他の人の感想も読んでみたい」と思ってネット検索してましたら、この小説の米国ドラマ版も発売されていることを知り、アマゾンで注文してみたんです。そしたら翌日の朝届いてビビった。
(※以降の文章は激しいネタバレを含みます)
小説の方は、わたくしは心の中で「米国のグイン・サーガ」と名付けていました。
原著でも第5部までしか出ていないそうで、長さとしたらあのグインサーガには果てしなく及びませんが、雰囲気が似てる。とくに「どうでもいい細部の描写にこだわって話が全然進まないダラダラとした感じ」が。第一部『七王国の玉座』は文庫本にして1200ページに及ぶ大部ですが、マイクル・ムアコックならばこのくらいの内容なら二章で書ききるでしょう。(もっとも栗本薫ならばこの描写と展開に35巻ぐらいかけたでしょう。)
主人公は数人いて、それぞれがてんでばらばらに自分の好きな事をやっています。狭い大陸の北や南や西や東に主人公がそれぞれいて、それぞれ別の物語が同時進行していて噛み合わず、それが交互に語られるという手法もグインサーガに似てる。
また、「作者は主人公級の登場人物には幸せな未来を与えるつもりがない」ことをあからさまに見て取れるところも共通しています。全員が不幸になり、冷静に考えて先の展望があまりありません。
私が買ったのはブルーレイ5枚組全10話の第一部で(それでも8000円弱の格安)、その頃小説の方は第二部の後半に取りかかっていたのですが、何をとち狂ったのか私は第二部の下巻と第三部の上巻を取り違えてしまって、ドラマ版を見ながらそれをちまちまと読み進めていました。第三部の冒頭には作者により「この巻のお話は、時間的に前巻につづいてない部分がたくさんある」と書かれていたので、わたしが読んだ時点からいきなり超展開になっているところがいくつかありました(だって第二部の下巻を読んでないんですから当たり前です)。しかし「作者め、手法を変えたんだな」と思うばかりで、自分の方が間違っているとはしばらく気付きませんでした。登場人物のほとんどがさらに不幸になっていまして、でも「当然この展開も予想できたね」と思うばかりでした。結局、自分が「どうも読んでない部分があるな」とうすうす気付いたのは第三部上巻を半分以上読み進めたあたりでございまして、慌てて第二部の下巻に戻って読み直し始めたものの、「こんなに分厚い(720ページ)のに話はあれしか進まないのかよ」とげんなりした気持ちに襲われました。そこから下巻を読み終えるのに5日もかかったんですよ(笑)
そういえば、十二国記でも『風の万里 黎明の空』を上巻よりも先に下巻を(半分ぐらい)読んでしまった事があります。意外と読んでいるときは勝手に頭の中でいろんなことを補完しながら読んでしまうものですよね。
以下順不同に気になったところを述べます。
物語の舞台となるのは「七王国」という場所です。「ウェスタロス大陸」という名前が付いています。
詳細な設定があるようですが、その設定書が未だ公開されていないので、全体像がいまいち不明瞭。(わたくしは設定マニアなのです)。ウェスタロス“大陸”と名付けられていながら、わたくしにはこの大陸がグレートブリテン島ぐらいの広さぐらいしか無いように思えてならない。(そもそも名前が「七王国」だし)。とはいえ北部と南部では全然気候が違ったり、「ウィンターフェル城から狼の森まで3日」とか「トライデント河からダリー城まで半日」とか「地峡を渡るのに12日かかる」とか「ウィンターフェル城の北部の森から灰色沼の物見城まで数千㎞ある」(まさか!)とかいう漠然とした描写はちらほらあるのですが、どうなんですかね、わざと地理が詳説されないという気もする。さらに主人公の一人、“失われた王国の女王”デナーリス・ターガリエンの活動の場は七王国の外の土地なのですが、海を越えた遙かな大地の地理は、読者には全くよくわからなくされています。
で、題名にもなっている「七王国」。
七王国と言いながら現在はひとつの王国に統一されています。この物語では各地方は「城」の名前で呼ばれるのですが、「この七王国とは具体的にどの7つだろう」とずっと頭を悩ませながら読んでいました。小説を読みながら漠然と考えたのは、“北の冬の王国”ウィンターフェル城と“王都”のある南東部のキングス・ランディング、それから西部にある“獅子の王国”キャニスター・ロック城、ウィンターフェルとキャニスターの磐山城の中間にある“河の王国”リヴァーラン城、東部にある“岩山の谷間の王国”アイリー城、そして南西部の“豊かな薔薇の王国”ハイガーデン城の6つは確かだとして、あとの1つは何? 南部にある“ドーン”という謎の大国がそうだと思いますが、なんか地図を見てもよそ者扱いされてるようなんですよね。意外と“簒奪王”ロバート1世の出身地・“嵐の王国”ストームエンド城がそうかもしれん。“鉄の王国”鉄諸島というのもあったな。
それが米国ドラマ版では、映像で地図が表示されていました。
えーーっ、なんだこれ。
これによると、「ストームエンド城」とドーンの「サンスピア宮」を合わせた領域が“第七の王国”とされているように見えます。(もっともこの地図ではストームエンドとドーンの間にある“ドーン海”が無い事になっているので信憑性が無いのでもありますが)
そもそも第二部・第三部で重要な拠点となる「ハレンの巨城」ばかりかその遙か南部のあたりまでがこの地図ではリヴァーラン城の領域となっていることになってるんですよね。物語の描写的にそれはかなりおかしい。また“狭い海の東側”の大陸も小説第三部に掲げられている地図といささか違う。このドラマ版は小説第三部の原著が出る前に制作が開始されたのかしら(まさかね)。どちらにせよ、ドラマを見ても「七王国のナゾ」が解明されるわけではありませんでした。
(※さらに、ブルーレイ同包の解説書では、七王国は“狼のスターク家”(ウィンターフェル城)、“鹿のバラシオン家”(王都キングスランディング)、“嗣子のラニスター家”(キャニスター・ロック城)、“鱒のタリー家”(リヴァーラン城)、“鷲のアリン家”(アイリー城)、“大烏賊のグレイジョイ家”(鉄諸島)、“三頭龍のターガリエン家”(旧王家→東大陸へ亡命)の七つとなっている。“薔薇のタイレル家”(ハイガーデン城)がないじゃん)