〈毒殺、突然の病気、事故ーーロシアのエリートがプーチン追放の可能性を検討〉。ショッキングな見出しが躍ったのは、ウクライナ国防省情報総局の公式フェイスブックだ。20日の投稿で〈ロシアの財界と政治エリートの間でプーチン大統領に反対する影響力のある人々のグループが形成されつつある〉と指摘。プーチン大統領暗殺をもくろみ、後継候補も既に決めているというのだが……。
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投稿文によると、エリート層の目標はプーチン大統領をできるだけ早く権力の座から排除し、ウクライナ戦争によって破壊された欧米との経済的な絆を回復することだ。そしてプーチン大統領を権力の座から引きずり降ろすため、さまざまな選択肢を検討しているとし、〈特に毒殺、急病、その他の「偶然」は除外されていない〉と暗殺計画をほのめかすのだ。
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投稿文は〈ボルトニコフが最近、ロシアの独裁者からの寵愛を失ったことは注目に値する〉と主張。ボルトニコフ率いるFSBは、侵攻前にウクライナの世論やウクライナ軍の能力の分析を担当。戦況が思うように進まないことから、プーチン大統領に責任を負わされたとロシアの独立系メディアは報じていたが、投稿文も〈長官の恥辱の公式な理由は、対ウクライナ戦争における致命的な誤算〉と触れている。
プーチン大統領に侵攻失敗の責任をなすりつけられた側近が、政財界のエリート層と手を組み、プーチン大統領追放を目指しているーー。以上がウクライナ国防省情報総局にもたらされた「クーデター計画」だが、投稿文には〈情報はロシア側から来た〉とあるのみ。計画を裏付ける具体的な証拠は、ほとんど示されていない。どこまで信憑性のある情報なのか。
「さすがに暗殺計画は話を膨らませている印象がありますが、そこを差し引いても側近同士が内部対立を起こしているのは間違いないでしょう」と分析するのは、国際ジャーナリストの春名幹男氏だ。こう続ける。「ウクライナに関する諜報活動の責任者だったFSBの幹部らが大量に粛清されたとの情報もあり、『オリガルヒ』と呼ばれる財閥も決して一枚岩ではない。中にはエリツィン元大統領時代の民主化で財を築き上げ、プーチン氏の恐怖支配に渋々従っている者もいます。ボルトニコフ氏自身も、プーチン氏の盟友で安全保障会議のトップとして核戦略も統括するパトルシェフ書記に頭を押さえられている立場です。2人はKGB出身で同世代でありながら、力関係は常にパトルシェフ氏が上。今のポストも、前任者のパトルシェフ氏から引き継いだものです。ボルトニコフ氏がプーチン氏とたもとを分かち、本来エリツィン派だった財閥や政治エリートと結託する可能性はあり得ます」
それにしても、政府の公的機関がSNS上にセンセーショナルな文章を投稿するとは、この戦争の異常さを物語る。
【沖縄県主催】本土復帰50年 沖縄の基地問題オンラインシンポジウム
デニー知事と考える-アジアと沖縄の平和と発展に向けて-
沖縄県は、日本本土への復帰50年を迎えるにあたって、日米両政府に対し在沖米軍基地の整理・縮小についての要請を行いました。今回のシンポジウムでは、その内容を紹介するとともに、過重な米軍基地の負担を具体的に減らすための道筋を考えます。また、アジア太平洋地域の緊張緩和に向け、沖縄を中心とした地域協力ネットワーク構築の展望について議論します。
【申込み】
こちらのフォームに必要事項をご記入の上、お申込みください。当日の参加URLを含めた参加方法のご案内が自動で返信されます。
※デニー知事メッセージ動画はこちら
※沖縄県公式Twitterでの告知はこちら
- 日時
2022/03/26 Sat.18:30開場
19:00〜21:00
- 会場
オンラインシンポジウムは「Zoom」を使用して行います。開始までにZoomソフト(またはアプリ)をインストールしておいてください。
- 参加費
- 無料
- プログラム
(1)基調講演
・玉城デニー氏(沖縄県知事)(2)パネルディスカッション
・柳澤協二氏(元内閣官房副長官補/「米軍基地問題に関する万国津梁会議」元委員)・羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授/世界国際関係学会(ISA)アジア太平洋会長)
・古賀茂明氏(政策アドバイザー/元内閣審議官・経済産業省官僚)
・玉城デニー氏
(3)質疑応答
(司会)
・猿田佐世(新外交イニシアティブ(ND)代表/弁護士(日本・ニューヨーク州))
・定員:1000名
※申し込み人数に応じてYouTubeでのライブ配信も検討しています。
・手話通訳が入ります。
【申込み】
こちらのフォームに必要事項をご記入の上、お申込みください。当日の参加URLを含めた参加方法のご案内が自動で返信されます。
・お問合せ:
シンポジウム開催事務局(事業受託者:新外交イニシアティブ(ND))
TEL:03-3948-7255 FAX:03-3355-0445 E-mail:info@nd-initiative.org
※新外交イニシアティブ(ND)は県から委託を受け、本事業の事務局として企画・運営に携わっています。
玉城デニー氏(沖縄県知事)
上智社会福祉専門学校卒業後、中部地区老人福祉センター職員やラジオパーソナリティーを経て、2002年より沖縄市議会議員(1期)、2009年より衆議院議員(4期)を務める。2018年10月の沖縄県知事選挙にて当選。座右の銘「天は正論に信念と勇気を与える」。
柳澤協二氏(元内閣官房副長官補/「米軍基地問題に関する万国津梁会議」元委員)
1970年東京大学法学部卒とともに防衛庁入庁、運用局長、人事教育局長、官房長、防衛研究所長を歴任。2004年から2009年まで、小泉・安倍・福田・麻生政権のもとで内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当。現在、NPO国際地政学研究所理事長。
羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授/世界国際関係学会(ISA)アジア太平洋会長)
神奈川大学国際日本学部教授/元世界国際関係学会(ISA)副会長(2016-17)。専門は、国際政治学、国際関係論、国際社会学、EU(欧州連合)地域研究、比較政治学、ナショナリズム、ゼノフォビア(外国人嫌悪)、先進国危機と戦争。特に、欧州とアジアにおいて、安全保障の制度化や和解の制度化をどのように実現するかについて、ヨーロッパに学び、OSCEや境界線地域のユーロリージョン、和解のための対話組織の恒常化について検討している。冷戦史研究、境界線とマイノリティ研究、移民・難民問題、ジェンダー、グローバル化と格差の拡大など。
古賀茂明氏(政策アドバイザー/元内閣審議官・経済産業省官僚)
東大法学部卒後通商産業省入省。経済産業政策課長、中小企業庁経営支援部長、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官等を歴任。在職中に数々の改革を提言・実施。2011年経済産業省退官後もオンラインサロンなどで政治・経済・社会の幅広い分野で独自の見解を発信し続けている。2015年3月「改革はするが戦争はしない」フォーラム4を立ち上げ 同年5月 外国特派員協会「報道の自由の友賞」受賞。「日本中枢の崩壊」、「官僚の責任」「官邸の暴走」など著書多数。週刊朝日、エコノミスト、プレイボーイでコラム連載中。
司会:猿田佐世氏(新外交イニシアティブ(ND)代表/弁護士(日本・ニューヨーク州))
沖縄の米軍基地問題について米議会等で自ら政策提言を行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当。研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。著書に、『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)など。
【談話】「ゼレンスキー大統領演説を受けて」れいわ新選組(2022年3月23日)
3月23日に衆議院議員会館国際会議室で
ゼレンスキー・ウクライナ大統領の演説が行われ、れいわ新選組として参加した。
この演説が行われたことについて、
そして演説の内容について我々の見解を述べておきたい。
ゼレンスキー演説の内容について
我々は、軍事侵攻を受ける国の首脳として同大統領が他国に連帯と行動を求めることは当然と理解する。しかし、その要求に対して日本の国会として拙速に反応すべきではないと考える。
しかし演説が始まる前から、式次第(進行表)には演説後にスタンディングオベーション(起立拍手)するよう書かれていた。演説の内容を知る前から反応の仕方まで決められているのは、問題である。 ※式次第画像(←こちらをクリック)
ゼレンスキー氏は今回の演説で、アジアでは日本が他国に先駆けて対ロシア制裁を導入したことを評価した。そして日本に対し、ロシアとの貿易禁止やロシアからの企業撤退など、さらなる制裁の強化を求めた。衆参両議長を含む全参加者が起立して拍手する場面が、切り取られて放送された場合、外国では、日本がさらなる制裁に向けて足並みをそろえる姿勢と受け止められる可能性もある。
日本は独自の立場を貫き、制裁の強化拡大に安易に加わるべきではない。「新米国安全保障センター(CNAS)」の報告書によれば、米国が制裁により目的を達成できた事例は36%にとどまる。さらには、ひとまず目的を達成した場合でも対象国の長期的安定にはつながっていないという。
国際紛争を解決する手段として武力の行使と威嚇を永久に放棄した日本の行うべきは、ロシアとウクライナどちらの側にも立たず、あくまで中立の立場から今回の戦争の即時停戦を呼びかけ和平交渉のテーブルを提供することである。国際社会の多くの国家がその努力を行わない限り、戦争は終結しない。
政府に対する緊急提言
ゼレンスキー氏もその演説で言及した通り、ウクライナ国内からは戦火を逃れ多くの市民が隣国に避難している。国連によれば、ロシアの侵攻に伴うウクライナ国内外の避難民は1000万人を超え、これは人口約4200万人のウクライナ国民の約4人に一人が避難を強いられていることになる。
だからこそ、日本は、最大限に国をあげて、東欧の周辺国を支援するとともに避難民を受入れることを表明するほかない。選択肢はほかにない。軍事支援はできないが非軍事的な力で最大限の人道支援を行動で示すことが日本の取る道である。それを実現するために、次のことを提案する。
1、ウクライナ周辺国への支援を急げ
東欧の国々は同胞意識と連帯感から官民による支援を広げているが戦争長期化に伴う負担は日に日に増大している。日本から周辺国に向けた財政支援や医療物資の提供を急ぐべきである。災害大国である日本は、避難所のノウハウや仮設住宅などの資材や物資などの支援も可能なはずである。
2、民間の力も活用し国の責任でウクライナ避難民受入れ拡大を
政府は18日、「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」の初会合を開いたが内容が見えてこない。出入国在留管理庁によると、20日時点で避難民151名が入国している。一千万を超える避難民がいる中では、少なすぎる、遅すぎる対応である。船をチャーターすれば一名当たり低い費用で大勢を日本に招くことができるし船内での医療や休養も可能である。また、滞在に関して在留期間、受入れ先の確保、住居、日本語教育、就労支援、社会保障の付与などを早急に示し、政治主導で官民あわせた協働体制を組むべきである。災害支援や難民支援に詳しいNGO人材を政治任用してパートナーとし、企業や自治体の協力を仰いでいけば、ウクライナへの侵略戦争に心を痛める日本の多くの人々の積極的な支援を得ていくことができるだろう。
ゼレンスキー氏は演説の中で、「人口が減った地域の復興を考えないといけない。避難した人たちが、ふるさとに戻れるようにしなければならない」と述べた。日本は災害復興のノウハウを持っており、その点で協力できると考える。復興を実現させるためにはまずはいち早く停戦しなければならない。
そのためにも、戦争により命を失う人々を少なくする必要があり、国際社会が仲介する形での早期の停戦実現が必要だ。日本がその一翼を担う覚悟を示す事が重要だ、と私たちは改めて訴えたい。
補足【開催・出席自体の是非】
紛争当事国一方の首脳だけに、日本の国会議員に向けた演説機会を設けることに、
賛否の意見があることを承知している。
これまで紛争当事国の首脳が国会演説を行った事例はない。
出席すべきではないという意見もあった。
れいわ新選組からは、
会派への割り当てに従い参議院議員一名、衆議院議員二名が出席した。
軍事侵攻を受け苦しい状況にある国の首脳の意見を知る機会を作る取り組みとして、このような演説を聞く機会を設定することに、一定の意義を認めるからだ。しかしこれは、同大統領の演説を「本会議場ではなく、議員会館会議室で行う」という条件を加味しての判断である。
今回、ゼレンスキー大統領のオンライン演説を本会議場では行わなかった。出席も任意であり、全議員の出席は前提としない形式であった。「本会議場を使用しない」という決定には、重い政治的意味合いがある。これまでの先例から見て、本会議場で外国首脳が演説を行う場合、それはその外国首脳が国賓として招かれた場合に限られている。もしゼレンスキー氏の演説を本会議場で行うなら、それは日本がゼレンスキー氏に国賓同等のステータスを与えることを意味する。
これから停戦交渉を進めていかなければならない状況で、紛争当事国一方の首脳だけを国賓として迎えることの影響を考慮しなければならない。国賓として演説の機会を与えた場合には、招いた側の日本の議会として、演説内容への応答も求められることになる。
今回使用した議員会館の会議室は、日頃、様々な立場の市民団体や海外ゲストによる意見表明や議論の場として提供されている。この「開かれた」施設において、停戦に向かうための様々な意見の一つとして、当事国首脳の意見表明が行われることは、容認できると判断した。この意味で、「ゼレンスキー氏の演説を拒絶はしないが、本会議場では行わない」という今回の決定を賢明なものと評価する。
◆20世紀型戦争
スターリン 旧ソ連共産党の指導者。1878年生まれ。1922年に共産党書記長となり、24年のレーニン死後に権力を握ると多くの古参党員を投獄、処刑する大粛清を行い、独裁体制を築いた。53年3月没
KGB(国家保安委員会) 旧ソ連の組織。1954年に発足し、国内外での諜報活動や反体制派の取り締まり、国家機関・軍の監視、国境警備などを任務とした。1991年のソ連崩壊とともに解体された。
◆満州国とウクライナ
満州国 1931年の満州事変で旧日本軍が中国東北部を占領後、翌32年に建国した傀儡国家。清朝最後の皇帝だった愛新覚羅溥儀を皇帝に据え、東アジア諸民族が融和、協調する「五族協和」をスローガンに掲げたが、政府の主要ポストに日本人が就くなど、政治・軍事面とも日本の強い影響力下にあった。45年8月の日本敗戦で崩壊した。
◆上からの改革
◆公然と反戦デモ
◆核抑止力
ほさか・まさやす 1939年、札幌市生まれ、ノンフィクション作家。同志社大卒。「昭和陸軍の研究」「あの戦争は何だったのか」「昭和天皇」など、近現代史に関する著書を精力的に執筆。昨年1月に死去した作家の半藤一利さんとは生前の親交が深く、対談や共著も多数。