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◆<東京新聞社説>SNS型詐欺 甘いもうけ話などない

2024年08月03日 09時39分08秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 インターネット交流サイト(SNS)を悪用した投資詐欺の被害が急増している。総務省の有識者会議はSNSに政府の関与を強める対策案を示したが、行き過ぎた介入は憲法が保障する表現の自由を損なう。被害の防止と公的な関与の両立に知恵を絞りたい。
 大阪府警は7月、SNS型投資詐欺を働いた2集団に属する90人を詐欺の疑いで逮捕した。被害額は約10億円に上るとみられる。
 警視庁も6月、同様の集団で現金引き出し役の5人を逮捕した。被害額は5億円以上という。
 SNS型投資詐欺は、ネット上に広告を仕掛け、連絡してきた人を通信アプリの「LINE(ライン)」に誘導。架空の投資話を持ちかけ、送金させる手口だ。
 ネット詐欺の約8割を占め、著名人を無断で「広告塔」とする事例も多い。特殊詐欺と違い、素性が分からず、提訴も難しい。
 警察庁によると昨年7月から急増。昨年の被害総額は全国で278億円で、今年は6月までに506億円に達した。先の摘発例は氷山の一角だ。
 中傷目的のネット投稿は先の通常国会で成立した改正プロバイダー責任制限法でSNSの事業者に対応が義務付けられたが、偽情報や偽広告などへの対応は有識者会議で検討している段階だ。
 先日公表された提言案では、政府がX(旧ツイッター)などを運営するSNS運営大手に対し、偽情報や偽広告の迅速な削除や掲載停止を促す制度の整備やネット広告の審査強化を求めている。
 フェイスブックなどを運営する米メタは4月、声明で「膨大な数の広告を審査することは課題も伴う」と消極的な姿勢を示したが、もはやSNSは公共インフラとなり、運営事業者は膨大な広告で巨額の収益を上げている。無責任な対応は断じて許されない。
 欧州連合(EU)は事業者に偽情報の削除を義務付け、違反には制裁金も科している。
 有識者会議が政府の介入を促したのは、SNS運営大手の自主性には委ねられないとの判断からだが、公権力の過剰な介入には表現の自由を損なう懸念もある。日本で法制化する際には恣意(しい)的な運用を防ぐ枠組みが不可欠だ。
 詐欺被害拡大の背景には官民挙げての投資ブームがあるが、甘いもうけ話などあるはずがない。SNS利用者にも注意を促したい。

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