大阪・関西万博が13日、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開幕する。建設資材の高騰や新型コロナ禍の影響で準備が大幅に遅れるなど順風満帆には程遠く、一般の関心も高いとは言えない。テーマとする「未来社会のデザイン」をどう描くかはもとより、この時代に万博を開く意義をどう語るのか。半年間の会期で、それが問われる。
まず指摘すべきは安全上の不安だ。夢洲は、ごみや残土の埋め立て地。軟弱地盤や土壌汚染の対策を講じたが、可燃性ガスの発生は抑止できていない。昨年には爆発事故が起き、今月6日にも地下空間から高濃度のメタンガスが検知された。換気やガス測定を増やし対処するというが、安心安全の確保は何より優先すべきことだ。決して後回しにせぬよう求めたい。
夢洲内の隣接地では、2030年秋の開業を目指し、1兆円以上を初期投資するカジノなどのリゾート施設(IR)の整備も並行して進む。建設費高騰による財政難や、ギャンブル依存症への懸念もあるが、地元政財界は、万博の成功とIRの2本柱で地域活性化を狙う。ただ、この低成長時代になお「巨大事業」を頼む発想に違和感を抱く国民も少なくない。
万博は、複雑な予約システムや準備の遅れで展示内容が市民に十分伝わっていないこともあり、前売り入場券の販売が芳しくない。
空飛ぶクルマや「火星の石」、人工多能性幹細胞(iPS細胞)製の「心臓」など目玉となる展示や体験は多彩だが、そうした魅力が口コミなどを通じ、どこまで広まるか。そこが、目標とする来場者2820万人や経済波及効果3兆円を達成するカギになろう。
無論、万博の成否を決めるのはそうした数字だけではない。05年に開かれた愛・地球博(愛知万博)は森林開発の中止など紆余(うよ)曲折の末、ドライミストや燃料電池などの環境技術はもちろん、従来の万博に類例のない会場内での分別収集やボランティアの運営参画などを通じ、循環型社会への機運を醸成した。「大阪・関西」の文化的な「遺産」にも注目したい。
参加は、過去最大級の158カ国・地域。ロシアこそ不在だが、ウクライナやイスラエル、パレスチナも含まれる。各国から人々が集い、交流や対話できる貴重な場になることは間違いない。世界の多様性を確認し、「分断」の愚かさを知る契機になればと願う。
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