萩生田光一オフィシャルサイトより
派閥の政治資金パーティ裏金事件によって内閣支持率が過去最低を記録している岸田政権だが、問題の元凶ともいえる安倍派のなかでもとくに反省の色がまったく見えないのが、萩生田光一・前政調会長だ。
現在、野党は政治倫理審査会の開催を求めているが、安倍派5人衆のうち4人が政倫審に出席するとの方針が伝えられる一方、萩生田氏だけ現時点で、出席者から外れている。
本人の意志か党の方針かはわからないが、これは明らかにおかしい。
なぜなら、5人衆のなかでも萩生田氏こそ真っ先に国民への説明を果たさなければならない人物だからだ。萩生田氏といえば、2018〜2022年までの5年間の裏金不記載額が計2728万円にものぼり、逮捕・立件された安倍派の3議員に次ぐ金額となっている。その上、萩生田氏が代表の「自民党東京都第24選挙区支部」の訂正した政治資金収支報告書は「収入総額」「前年からの繰越額」「支出総額」「翌年への繰越額」のすべてで「不明」と記載。「支出の目的」も「金額」も「不明」と裏金を何に使ったのかもまったくわからない状態にある。
そもそも政治資金規正法では、収支の不記載は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金と定められている。国民に収支を明らかにできない時点で政治家をつづける資格などなく、即刻、辞職すべきなのは言うまでもない。
ところが、萩生田氏は辞職もせずに居座るばかりか、政倫審の出席について「どういう話をする必要があるのか、私が話せることなのか、分からなければ対応できない」などと尊大な態度をとってきた。
極め付きは、今月10日に発売された「文藝春秋」3月号に掲載された、武田良太・元総務相と加藤勝信・元官房長官との鼎談記事だ。この鼎談のなかでは萩生田氏は裏金事件を完全に開き直り、挙げ句、被害者気取りで愚痴までこぼしているのだ。
たとえば、この鼎談で萩生田氏は、安倍派では「販売ノルマを超えた分は、活動費として派閥から戻す。それはこちらで処理をしているので、収支報告書には載せなくていい」という“言い伝え”があったとし、こう述べている。
「この言い伝えを、みんなが律義に何十年も守ってきたのがウチの派なんです。その判断が間違っていたことが今さら明らかになって、恥ずかしい思いをしているのが正直なところです」
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萩生田光一に対するメディアの裏金追及はなぜ甘い? 炎上必至の開き直り発言もほとんど報じられず…
前述したように、政治資金収支報告書への不記載は明確な犯罪行為だ。それを萩生田氏はあたかも義理堅さゆえにルールに従ってきたのだとアピールし、罪の大きさを認めるでもなく「恥ずかしい思いをしている」などと言い募っているのである。
しかも、裏金の金額が大きかった点を指摘されると、萩生田氏は「安倍派ではコロナ禍の状況をかんがみて、パーティ券の販売ノルマを減らしたことを、事前に事務所担当者が知らなかったという事情もある」などと反論。「もし当時、私が派閥の運営に関与してそれを知っていたら、そんなに頑張って売る必要はなかった。結局、歴代の事務総長たちは全然(ノルマを)オーバーしておらず、我々だけが一生懸命売って、手元に残ったという思いが残ります」と被害者ぶるのだ。
さらに、萩生田氏は、「年末年始もこれだけ批判をされてお詫びをしてきたという点では、一定の社会的制裁を受けたと思います。立件されなかったのに、検察が期待値を上げたことで『この人たちは悪いのに助かった』みたいに思われるのは、すごく理不尽な話です」と逆ギレ。こんなことまで言い出すのだ。
「自民党は、失敗は失敗としてもう少し寛容に、「まずかったけど頑張れよ」と言ってくれる政党かと思ったら、党内からも「処分、処分」と言われて……」
「“生贄”を出さないと終わらないような雰囲気になっていて、ちょっと寂しいなと思います」
萩生田氏の裏金不記載額は“立件スレスレ”ラインであり、「検察は萩生田氏を立件しないで済むように裏金の下限を3000万円に設定したのでは」と囁かれたぐらいだ。つまり、政治資金規正法がザル法であるために立件されなかっただけだというのに、明確な国民に対する背信行為をはたらいておきながら、「すごく理不尽」だの「寛容さがなくて寂しい」だのと言い張る……。図々しいにもほどがあるだろう。
本来、これらの無反省な発言の数々だけでも辞職ものだが、問題は、なぜか萩生田氏に対する追及が “その他大勢”と同じ通り一遍の報道に終始していることだ。
萩生田氏は安倍派5人衆の立件見送りが報じられたあとも直ちに会見を開かず、地元の八王子市長選の投開票後になってようやく開催するという姑息な手段に出たが、そのことに対する批判も巻き起こることはなかった。一応、訂正後の収支報告書が「不明」だらけになっていることは報じられたが、今回の「文藝春秋」誌上での開き直りや愚痴発言は、大手メディアではほとんど報じられていない。
いや、今回の裏金問題だけではない。マスコミの萩生田氏に対する弱腰ぶりは2022年に大きな騒動になった統一教会問題でも見られた。
参院選の公示直前に生稲晃子氏とともに八王子の統一教会施設を訪問していたほか、萩生田氏が統一教会の施設で「一緒に日本を神様の国にしましょう」などと講演していたことや、教団イベントで“四つん這い”になる礼拝をおこなっていたという証言が飛び出すなど、萩生田氏と統一教会のズブズブの関係が明らかになったが、ある時期を境に報道量がガクンと減り、萩生田氏に対する追及報道はフェードアウトしてしまったのだ。
萩生田光一“アメとムチ”のメディアコントロール術 恫喝・圧力の一方であの“文春砲”とも…
これほどまでに国民を舐めきった態度をとっているのに、なぜ、新聞やテレビの萩生田氏に対する追及はこんなにも甘いのか──。
じつは、今回の“裏金”をめぐる萩生田氏の釈明のなかに、「これがその理由では?」と疑いたくなるものがあった。
萩生田氏は裏金の使途について「派閥の皆さんとの会合費、時にはメディアの人たちや、有識者との会食などのほか、外遊時にも使っていた」(前出・「文藝春秋」より)と説明。自ら、メディア関係者との飲み食いに使っていたことを明らかにしたのだ。
そもそも萩生田氏といえば、メディアに対してさまざまな圧力をかけてきたことで知られる。2014年11月に当時の安倍首相が街頭インタビューVTRに逆ギレした『NEWS23』(TBS)生出演後、萩生田氏が自民党筆頭副幹事長として在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに“報道圧力文書”を送りつけた問題はあまりに有名だ。2017年8月には『グッド!モーニング』(テレビ朝日)で田原総一朗氏が「萩生田光一は加計学園問題のいわば一番の責任者」と発言したことに猛抗議。正当な論評であったにもかかわらず、放送の3日後に番組に謝罪をさせたということもあった。
しかし、こうした恫喝や圧力の一方で、萩生田氏は新聞・テレビの担当記者に情報をリークすることで、取り込み、子飼い化していることでも知られている。
有名なのが、テレビ朝日の女性記者で、「(萩生田氏が)官房副長官時代、テレ朝が組閣人事のネタを抜けたのは彼女のおかげ」といわれるくらいだった。統一教会問題の際も、なかなか取材に応じようとしなかった萩生田氏とマスコミ各社の間を、この女性記者が調整して、ぶら下がり取材ができるようになったのではないかといわれている(「週刊新潮」2022年9月1日号/新潮社)
最近では、政治ジャーナリストの田崎史郎氏も萩生田氏とベッタリの関係を築いている。裏金問題が発覚した当初、田崎氏は「僕は日曜日にも月曜日にも萩生田さんとちょっと話したんですけど」などと萩生田氏と密に連絡をとっていることをテレビでも公言。やたらと萩生田氏の擁護を繰り返していた。
ちなみに、萩生田氏はあの「週刊文春」とも、つながっている。「週刊文春」を“文春砲”と恐れられる存在にしたのは、同誌の元編集長で、現在、取締役・総局長を務める新谷学氏だが、この新谷氏と萩生田氏は、中学時代からの知り合いで、頻繁に連絡を取り合っていると囁かれているのだ。
事実、新谷氏自身、インタビューで萩生田氏と中学校時代の野球部の1つ後輩の関係にあることを認め、「安倍政権時代は批判をするたびに、もういいかげんにしろと抗議電話が来たけど、一切言うことを聞かない。それでも今も関係は続いています」(東京弁護士会会報「LIBRA」Vol.22 No.3)と語っていた。
統一教会問題もフェードアウト、裏金追及も…萩生田に甘いのは「裏金はメディアとの会食に使った」から?
いずれにしても、萩生田氏はこうした“アメとムチ”によって、報道をコントロールしてきたのだ。
実際、前述した統一教会の問題で途中から報道がフェードアウトしたのも、萩生田氏が新聞・テレビの番記者を通じて圧力をかけたことが影響しているともささやかれた。
今回の裏金問題で、新聞やテレビが萩生田氏に甘いのも、政治部のなかに、情報をもらうために裏金を原資とした飲み食いに応じてきた政治記者が多数いるからではないか、と勘ぐりたくなる。
少なくとも萩生田氏はそのことを追及封じ込めに利用しようとしているはずだ。だからこそ、裏金の使途を説明するなかで、あえて「メディアの人たちとの会食に使っていた」と発言して、恫喝をかけたのだろう。
しかも、こうしたマスコミと政治家の癒着は萩生田氏に限ったことではない。他の政治家たちからも裏金を使った飲食接待を受けていた可能性もある。
いまは、検察の捜査があったうえ、国民の怒りがこれだけ大きくなったため、各社とも流石に裏金問題を大々的に報じているが、追及の機運が下がったり、自民党に勢いが戻ると、とたんに報道がフェードアウトしてもおかしくない。
いや、NHKが「裏金」を自民党の表現に倣って「還付金」と呼ぶなど、すでにその兆しが出てきている。政治家たちを野放しにしないためにも、国民は怒りの声を上げ続け、マスコミの弱腰を叱咤し続ける必要がある。(編集部)
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