夏の参院選を前に、与野党各党から消費税の減税論が噴出している。物価高や「トランプ関税」への対策として、国民民主党や日本維新の会は早々に減税を提案。減税に慎重な野田佳彦代表が率いる立憲民主党でも、減税派が勢いを増し、執行部に圧力をかける。自民党内でも、公然と減税を求める声が出始めた。(中沢穣)
◆「参院選目当てのポピュリズム」
「減税ポピュリズムに走りたい人は、別の党をつくればいい」。立民の枝野幸男最高顧問は12日、地元さいたま市での講演で、党内の減税派をけん制し、国民民主などの減税論を「参院選目当てとしかいいようがない」と言い放った。
党創立者である枝野氏の発言は重く、波紋が広がった。党内の減税推進派「食料品の消費税ゼロ%を実現する会」は15日、時限的に食料品の消費税に限り、ゼロ%に引き下げる内容の提言書をまとめた。江田憲司会長は、枝野発言について「党内対立をあおるような発言はやめてほしい」と反発した。
同党の税制に関わる各部門は同日、複数の減税案を協議。党としては、5月の大型連休以降に結論を出す方針だが、野田氏は難しい立場に追い込まれている。
◆高市早苗氏ら、自民執行部に異論
13年前、民主党政権時に首相として消費税増税を決めた野田氏は今も、財源を欠く減税論には距離を置く。枝野氏と考えは近いが、消費増税が党分裂を招いた経緯があるだけに、結束にも腐心する。14日には、「結論が決まれば、皆さんに従っていただく政治文化をつくりたい」と記者団に語るにとどめ、党内議論を静観する姿勢をとっている。
一方、消費税5%への減税を訴える国民民主の玉木雄一郎代表は15日の記者会見で、「国民のニーズを反映することはポピュリズムではなく、本来の民主主義だ」と枝野氏に反論した。減税分の財源は赤字国債(借金)の発行でまかなう考えだ。維新も食料品の消費税を2年間ゼロとする案を掲げている。
自民党は、消費税減税には否定的な姿勢を崩しておらず、森山裕幹事長は「消費税と社会保障は一体。下げる話だけでは国民に迷惑をかける」と強調する。ただ高市早苗前経済安全保障担当相は、自身のX(旧ツイッター)で「『減税』や『賢い政府支出』の必要性」を主張。小林鷹之元経済安保担当相も、時限的な消費減税に言及している。松山政司参院幹事長は15日の記者会見で「減税も一つの必要な手法」と踏み込むなど、異論も出始めている。
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