31歳母の懲役3年6月の実刑判決支持 愛知・三つ子の次男傷害致死 名古屋高裁
愛知県豊田市で生後11カ月の三つ子の次男を暴行して死亡させ、傷害致死の罪に問われた母親の松下園理(えり)被告(31)の控訴審判決で、名古屋高裁(高橋徹裁判長)は24日、懲役3年6月とした裁判員裁判の1審・名古屋地裁岡崎支部判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。弁護側は執行猶予付きの判決を求めていた。今年3月の1審は責任能力の有無による量刑判断が主な争点となり、「うつ病が犯行に及ぼした影響は限定的。行政などの対応に非難の程度を軽減できる事情は認められない」などとして実刑判決を言い渡した。控訴審で弁護側は「過酷な育児の中で重度のうつ病を発症し、心神耗弱が認められる」と主張。「母子関係を再構築しようとし、自分の罪と向き合う覚悟を決めている」として執行猶予付きの判決を求めていた。1審判決によると、松下被告は昨年1月11日夜、泣き始めた次男にいらだち、畳に2回たたきつけ、同26日に脳挫傷で死亡させた。【川瀬慎一朗】
「多胎育児の過酷さ」への理解求める声
裁判を巡っては、双子や三つ子などの多胎家庭の支援に取り組む「日本多胎支援協会」(神戸市)が、1審判決を「多胎育児の過酷さと、支援すべき制度などの不備を正しく評価していない」などとし、執行猶予を求める署名活動を実施。この日までに約1万3000の署名が集まり、名古屋高裁に提出した。この日、裁判を傍聴した同協会の糸井川誠子理事(59)は「事件を起こした時と現在の彼女を取り巻く状況は明らかに違う。多くの人に助けられ、しっかりと立ち上がろうとする姿が感じられた」とし、「極限状態で起きた事件で、その環境に置かれたら誰でも起こす恐れがあったと思うので、情状酌量を求めたい」と話した。また、多胎児の親でつくる「あいち多胎ファミーユ」(名古屋市)理事長で、自身も3歳の三つ子を育てる日野紗里亜さん(31)は「(0歳の時の)自分の育児と重なり、胸が押しつぶされそうだった。(松下被告には)想像を絶するほどの負担だったのだろう」と声を詰まらせた。【細川貴代】