林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

さようなら

2011-09-16 | 拍手

   「さようなら」          谷川俊太郎

   私の肝臓さんよ さようならだ

   腎臓さん膵臓さんともお別れだ

   私はこれから死ぬところだが

   かたわらに誰もいないから

   君らに挨拶する


   長きにわたって私のために働いてくれたが

   これでもう君らは自由だ

   どこへなりと立ち去るがいい

   君らと別れて私もすっかり身軽になる

   魂だけのすっぴんだ


   心臓さんよ どきどきはらはら迷惑かけたな

   脳髄さんよ よしないことを考えさせた

   目耳口にもちんちんさんにも苦労をかけた

   みんなみんな悪く思うな

   君らあっての私だったのだから


   とは言うものの君ら抜きの未来は明るい

   もう私は私に未練がないから

   迷わず私を忘れて

   泥に溶けよう空に消えよう

   言葉なきものたちの仲間になろう

いいなぁ..............。
愉快でありながら、胸をグサリと刺す詩ですね。
天野祐吉編「隠居大学」(朝日新聞)から転記しました。

ちんちんさんにはどういう苦労をかけたんですか?、と玄侑宗久(若)老師に質問され、絶句したそうだ。
その他、この詩にまつわる深い講話はこの本▼をお読み下さい。
ご同輩にはムダになりませんよ。

110916A



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