「さようなら」 谷川俊太郎
私の肝臓さんよ さようならだ
腎臓さん膵臓さんともお別れだ
私はこれから死ぬところだが
かたわらに誰もいないから
君らに挨拶する
長きにわたって私のために働いてくれたが
これでもう君らは自由だ
どこへなりと立ち去るがいい
君らと別れて私もすっかり身軽になる
魂だけのすっぴんだ
心臓さんよ どきどきはらはら迷惑かけたな
脳髄さんよ よしないことを考えさせた
目耳口にもちんちんさんにも苦労をかけた
みんなみんな悪く思うな
君らあっての私だったのだから
とは言うものの君ら抜きの未来は明るい
もう私は私に未練がないから
迷わず私を忘れて
泥に溶けよう空に消えよう
言葉なきものたちの仲間になろう
いいなぁ..............。
愉快でありながら、胸をグサリと刺す詩ですね。
天野祐吉編「隠居大学」(朝日新聞)から転記しました。
ちんちんさんにはどういう苦労をかけたんですか?、と玄侑宗久(若)老師に質問され、絶句したそうだ。
その他、この詩にまつわる深い講話はこの本▼をお読み下さい。
ご同輩にはムダになりませんよ。
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