10年先
1日目、電球をLED電球に取り換えた。
10年。3653日。
僕とLED電球の日々は、はじまった。
東芝の贅沢な新聞広告はこの、たった3行の文言で始まる。
全15段を買い占めて、1頁目は電球交換する僕の影だけが明るく暗闇に浮かんでいる。
続く2、3頁は、見開き全部に夜の集合住宅の明るい窓の写真を120ヶ月の暦にして並べ、吃驚させられる。
そして、紙面の下に一行、
9日目、彼女と出会う。(中略) 438日目、結婚する。(中略) 3653日目、LED電球を新しいLEDに取り換える。
とあり、4頁目には「僕」向けの歯の浮くような口惜しい何行かがあり、最後に、
今日換えたLED電球は、
10年後の僕たちも明るく照らしていることだろう。
と締め、とどのつまりの結論は、
寿命10年 LEDは東芝
なんでした。
わが猫額亭風呂場の60w白熱球は、何故か度々切れる。
その度に浴槽の縁に乗っかり、危なっかしい姿勢で電球交換をしている。
寄る年波、いつかは滑って溺死するかもしれず、長持ちするというLED電球に取り換えるつもりだった。
しかし浴槽で溺れなくても、この先10年も生きられるだろうか。
白内障か緑内障で足元が暗~くなっているのではないだろうか。
東芝さんが相手にしている「僕」のように、この先プロポーズをしたり、少しは成長したりするわけがない。
LED電球は、まだ凄く高価らしく、果たしてモトが取れるだろうか。
贅沢な広告費を製造原価に加えるよりも、サントリーさんのセサミンEのように、「抽選1万名さま無料で20日間モニターキャンペーン」をやって下さい。
あるいは、全国の東芝さんの系列店で、ユニクロのように土日限定半額売り出しでもいいですよ。
ところで3653の窓に映る影は、一つとして同じものはない。
8月13日土曜日の夜だが、「僕」は窓側の部屋を暗くして奥で何をしてるんだろうか。覗いてみたい。
この全4頁にわたる扇子のいい新聞広告は7月31日の朝日に載ってました。
セサミンEについては、明日の「林住記」をお楽しみに。
110731B