「獅子舞」 村上豊 画
雨が降るので、ご迷惑でしょうが林住記に畢生の大作を執筆しようとしていた。別に構想なんてもの無いんだが......。
ところが、浅田次郎先生の「憑神」にとり憑かれてしまったのである。
面白くて、面白くて、面白くて、大作に着手出来ないのである。
筋は誠に奇想天外。
時は幕末。由緒は正しいが不運が続く下級武士に、貧乏神、厄病神、死神の3神がとり憑いてしまって........、という粗筋です。
この不運な侍、彦四郎つまり彦さんは、誠に好青年。物事を深く直視して、本質を見極め........。とにかくこういう人、好きです。但し、出世はしないな、これじゃ。
そして、3人、いや神さんは3柱だっけ?、がこれまた素敵に魅力的。
伊勢市の本社のテンテル大神や出雲支社のオオクニ所長と違って、ノルマに追われて、死ぬことも出来ない切ない神様たち。
これなら森男もお付き合い頂きたいです。わが猫額亭に住みついた3神、見習えよ。
.....で、苦心惨憺波乱万丈色々あって、彦さんは立派な侍に脱皮する。それはお目出度いことだが、最後を少しバラしてしまう。
彦さんは可愛い死神(女の子!)を抱いて、上野の彰義隊に参加してしまうんですね。
これは誠に遺憾で、浅田先生に抗議したい。
やはり、彦さんは、勝海舟の提案に従い輝かしい明治を建設するか、旧知の榎本海軍奉行の誘いに乗って、徹底的に薩長軍をいたぶって欲しかった。
ま、これはテツガクの問題だから、浅田先生にとやかく言うのは、差し控えつかまつろう。
「憑神」は傑作です。森男こと、一言主命直系の森男が保証致します。
お陰を以って、アタマが疲れてしまい、畢生の大作が書けなくなっちゃったじゃんか。
どうしてくれよう。
新潮文庫539円 表紙装画・村上豊
◎「一言主命(ひとことぬしのみこと)」については、前項でひとこと。
◎映画も出来た模様。貧乏神・疫病神さんは適役。だが、彦さんの心境の変化なぞ、映画での表現はムリだろうと、観もしない内からの映画批評。