小ぶりながら評価が高い企画展を連発していた神奈川県立近代美術館本館が1月末で閉館する。
最後の姿を目に焼き付けておきたくて、鎌倉へ行ってきた。
平日だったが、本館入場券売り場には長い行列が。夕方には空くだろうと、八幡様の裏手、巨福呂坂にある別館へ、先に行った。
本館に戻って来たのは午後3時。まだ切符売り場の行列は長いままだった。
しかし森生は別館で共通券を買っていたので入口へ一直線。
中は混み合っていた。閉館直前に入館客数の新記録を作っているのではないだろうか。
館内には普段の2~3倍の密度で館蔵作品を展示しているが、見えるのは入館客の後頭部ばかり。
松本俊介の有名な「立てる像」は、記憶ではもっと大きかったような気がする。
川端康成が寄贈した古賀春江「窓外の化粧」は昭和モダンの代表作だそうだが、そんなにいいかなぁ。
初めて知った島崎藤村の次男で、戦死した島崎鶏二の南仏「風景」という小品▼が大いに気に入った。
森生はこの本館が完成した直後、高校生の頃だったろうか、本館の中庭で、夕方から開催された無料映画会に行ったことを覚えている。
映画は三浦半島で行われている民族芸能「ちゃっきらこ」。記録的に退屈なモノクロ記録映画だった。
本館建物は高校生が見ても、八幡様の境内には不釣り合いだった。
しかし慣れてくると、瀟洒・軽快・斬新で、八幡様の丹塗りの社殿群よりずっといい、と思えるようになった。
最近の美術館は豪華さが目立つが、ここは戦後間もなくの建設のため、使われた資材は極めて質素である。
しかし貴重な現代建築遺産だそうだ。何事にも煩い鎌倉市民が、何故保存運動を始めないのか。
跡地は、いっそのこと、美術館建設以前の鬱蒼とした森を復元してもらいたい。
本館が立つ平家池と、太鼓橋の向こう側の源氏池は、整備されすっかり綺麗になった。
蓮を取り除いて池の水が見えるようにしたのは英断だ。
神奈川県立近代美術館には葉山館もある。
高校・大学生のころ遊んだ、明るい葉山の海をここ数十年見ていない。
逗子・葉山にも行ってみるつもりだったが、鎌倉本館・別館と八幡様と、小町通り・若宮大路をうろうろしただけで4時になっていた。
日が長くなったら、今度は葉山館だけを見に行きたい。
巨福呂坂にある鎌倉館別館は、工事中に遺跡が発見され、当初計画を縮小して建設したそうだ。
ここも素敵な美術館だが、いかにも狭過ぎる。遺跡を避けて背後の山に、トンネル式の展示室を増設したらどうだろうか。
【参考】神奈川県立近代美術館(wikipedia)/(公式サイト)
鎌倉館本館写真集・坂倉準三・松本俊介作品画像集・古賀春江作品画像集・島崎鶏二
ちゃっきらこ・ちゃっきらこ動画
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