
今日もまた冷たい雨が降っている。
ぼーっとしているのにも飽きて、読書欄をしっかり読んだ。
けっこう愉しめます。ヒマがたっぷりあるので、興味が沸いた書評を3本、転記してみました。
①昆虫の交尾は、味わい深い・・・。上村佳孝〈著〉岩波科学ライブラリー ......〈評〉野矢茂樹
昆虫や交尾に興味がなくとも、人間(昆虫の交尾なんて研究に情熱を傾ける人間という面白き存在!!)に興味があれば、
本書は楽しめる。
著者は昆虫を観察し、読者はそんな著者を観察するのである。
ハサミムシのオスの挿入器は2本ある。なぜ? 調べてみる。
どうも右しか使っていない。左は何のためだろう。
そこで右挿入器を取って交尾させ、左を使うかどうか試してみる。
結果は? いや、結果より、この研究の過程が楽しい。最先端の機器など不要。ピンセットをもって虫たちに向かう。
ここには昔ながらの手作業の科学がある。
ところで昆虫の交尾ってどうやって観察すると思います?
あのね、交尾している彼らを液体窒素に入れて固定するんですよ。なんまんだぶ。
しかしあなた、わが身に引きつけて考えてごらんなさい。
交尾の最中に瞬間冷凍されて結合部を観察されるなんて、死んだ方がましである。(いや死んでいるのだが。)

②この世は落語 中野翠〈著〉ちくま文庫 ③東京23話 山内マリコ〈著〉ポプラ文庫 ......〈評〉東直子
②は落語ファンの著者が、数々の噺の中に描かれた江戸の風情を噛み砕き、現代風俗と結びつけた痛快かつ粋なエッセイ集。
色恋や欲望、自意識や情念など、今に通じる人間の心を笑い話として反芻しつつ、時に深く感じ入る。
③は東京の「23区」が一人称で小説を語り出す。各区のイメージに合わせて絶妙に使い分けられる文体が見所。
かってそこに住んでいた著名人の生活だったり、高層ビルたちの胸の内だったり、団地に込められた夢だったり、
街に流れる歴史を斬新な視点で味わえる。

④わたしを離さないで ⑤遠い山なみの光 ⑥忘れられた巨人 カズオ・イシグロ〈著〉ハヤカワepi文庫......〈評〉福岡伸一
見出しに「忘れてはならない記憶の物語」とあり、以下、文章がすこぶる長く、転記は辛い作業になる。
スキャンするには紙面が広くて画面からはみ出してしまう。だから転記もスキャン画像も止めました。
でもこれを読んでおけばカズオ・イシグロの3作品を読んだフリができるます。
だからあなたご自分でお読み下さいね。雨ですること、ないんでしょ?

①②③は10月15日朝日新聞朝刊読書頁から転記しました。
3人の評者はそれぞれ錚々たる大先生です。ウィキペディアに載ってますのでご確認ください。
挿絵は①と⑤の表紙から切り取りました。
眼鏡ケースは「ちょい小道具ライフ」さまからお借りしております。
171019