飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」「万里一空」「雲外蒼天」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

修学旅行道中記1 前夜

2024年08月22日 05時58分54秒 | 学級経営
6年生の子どもたちにとって最大の楽しみはなんだろう。
それは修学旅行かもしれない。
小学校における宿泊行事は2つある。
一つは5年生の自然教室、もう一つはこの修学旅行だ。
友達と一緒に宿泊するという体験はそう多くはない。

自分は6年生を8回担任しているので少なくとも8回は子どもたちの引率経験がある。
そして級外となってからも数回引率したので、合計10回は引率している。
そのひとつひとつのことは思い出せないが、どれも楽しい記憶として心に残っている。
当日を迎えるまでに様々な計画を練る。
その殆どは、楽しい思い出づくりのためだ。
極論すれば、修学旅行は全員の子どもたちが「楽しかった」と言い、家に帰って思い出話を笑顔で家族に話してくれれないいと思っている。
何も学ばなくとも、楽しかった思い出さえ残れば自分は十分に満足だ。

学級通信には、できるだけ詳細に修学旅行に様子を書いて、保護者の皆様にお知らせする。
どんな修学旅行だったのかは保護者としては気になるところだろう。
子供によってはその様子をあまり話さない子もいるだろう。
そんな家庭のために、何か話のきっかけになってくれれば嬉しい、そんな気持ちをあって書いていた。
とは言え、所詮私の目から見た子どもたちの様子なので、偏見と偏りがあることはお許し願いたい。

以下、学級通信。

いよいよ待ちに待った修学旅行が明日に迫った。
今週の子どもたちの顔は、いつもとぜんぜん違う。
あいさつの声にも張りがあるし、いつもニコニコしている。
ちょっと気味が悪いくらいだ。
でも、当たり前なのかもしれない。
小学校生活をかざる、最初で最後の旅行なのだ。
私だって、何が楽しいかと聞かれれば、修学旅行と答えるだろう。
しかし、ここまでくるのにだっていろいろなことがあった。
班はどうやって決めるのか。
バスに乗る座席の位置は。
班別自由行動のコースは。
バスの中でにプロジェクトはどうするのか。

子どもたちは一つ一つのことにこだわりを持ち、話し合いを繰り返しながら決めていった。
そんな姿にも成長のあとが感じられた。

「自分が楽しいのはもちろんだけど、クラス全員が楽しいようなそんな修学旅行にしたい。」
そんな気持ちがよくわかった。

子どもたちと訪れる東京は、どんなだろう。
私はふと考える。
東京という街には愛着がある。
そこには美しい山もなければ清らかな川の流れもない。
しかし、私が5年間、過ごした街だからだ。
私にとって大切な時期を、青春の香りのする街だからだ。

15年前、高校を卒業し、たった一人親元を離れ、東京へ向かった。
これから始まる苦しい毎日を思うと不安なんて言葉では言い表せないほどの暗く沈んだ気持ちだった。
東京へ向かう夜汽車の中での心境は、ちょっと大げさかもしれないが、19歳の9月、野口英世が受験のために上京するあたり、生家の床柱に彫りつけたものと同じだった。
「志を得ざれば、再び此地を踏まず」
19歳立志の決意だった。

全力と尽くせばそれでいいなんて心の余裕はなかった。
結果がすべてだった。
とにかく結果を出さなければと思っていた。

saitani



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