飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

災害ボランティア6「1枚の絵」

2012年04月21日 14時57分36秒 | 教育論
今回のボランティアの宿泊場所となったのは南三陸町ホテル観洋だった。
このフロントロビーに1枚の絵が飾られている。
そのを改めて振り返って見る人もほとんどいなかった。

しかし、この絵にはこのホテル観洋の女将さんの強い思いがこもっている。
震災翌日一睡もしないで迎えた3月12日の朝、前日が嘘のように静まりかえった太平洋の向こうから、何事もなかったようにいつもどおりに朝日が昇ってくるのが見えた。
そのとき、思ったそうだ。

その朝日は残酷なまでに美しかった。
この朝日を忘れないために、その光景を残そう。
私たちは、この出来事を絶対に風化させてはならないし、語り継ぐ使命がある。

そう考えたという。
このホテル観洋は震災後、避難所として解放され、600名以上の避難者を受け入れた。
ホテルの前に広がる、切ないまでに美しく、光り輝いていた。
地震当日、津波が来る前の引き波では、沖合にある島まで歩いて行けるほどだったという。

震災後、ホテルが復旧し、営業を再開した頃には、露天風呂の近くにある木々には、瓦礫や漂流物の破片がひっかかっているという光景だったという。

とにかく、一度現地を見てほしいですね。
特に政治家の方は、現地を見て、この復興政策の遅れがどれだけ地元に痛手を与えているか感じて頂きたい。

いっそあのときにどうにかなっていたほうがよかったかもしれない、というお年寄りもいるくらいです。
そんな社会であっていいはずがありません。

女将の言葉である。

震災で失ったものはあまりに大きいですが、取り戻したもの、新たに得たものもあるという。
津波は全てを奪っていったけれど、海は以前よりも富んでいるという話をうかがった。
牡蠣の成長が以前に比べて早いのだという。

美しいと三陸の海と震災翌日の朝日を描いた絵は、きっと生涯忘れることはないと思う。

saitani