くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

復讐の連鎖

2006年09月09日 | 観劇
オレステスの父は娘を生贄にした。
娘を生贄にされた母は愛人と共謀して夫を殺した。
父を殺されたオレステスは母とその情夫を殺した。

娘は父の、夫は妻の、母は息子の手にかけられた。

なんという一族なんだって思うけど、世界の歴史を振り返ると同様なことが行われ続けている。国家同士でも、そして日常の中でも。

人間は生まれながらに罪を持って生まれてくる。人のものを盗みなさい、人を殺めなさいって誰もそんなことは教えないのに犯罪は起こる。人として絶対してはいけない行為と知りながらも、そこに取り違えた正義を見い出そうとする。

オレステスは父を敬うが故の母殺しだったと、動機を無理やり正当化し命乞いをする。限りなく自己中で、惨めで、非力で弱くて…、生まれたての赤子のようだった。だけど、それは人間が誰しも持っている弱さに他ならない。紀元前の、神と人間が親戚だった時代の物語だから、現代の感覚では確かに共感できない部分が多いのだけど、登場人物ひとりひとりの心の葛藤は、まさに現代人がかかえる悩みと一緒で切なくなった。

最後の演出に込められた蜷川さんのメッセージ。上から降ってきた、国旗と国歌が書かれたたくさんの紙…。世界の紛争地区にある国々の国歌には、狂おしいほど自国を愛し、誇り、讃歌する文字が並ぶ。

我らはゲリラとして生き、ゲリラとして進み、我らはゲリラとして死ぬ
我が祖国、我が祖国、永久の国に帰るまで (パレスチナ自治区)

それはまだ失われていない、私たちの希望、二千年の希望だ、
私たちの土地で、シオンとエルサレムの土地で自由な人々になること。(イスラエル)

私たちは征服しなければならない、それがまさに私たちの主義であるときは、
そしてこれが私たちの標語であらんことを「神の中に私たちの信頼はある」。
そして星条旗は永遠に翻るだろう自由の土地と勇者の故郷の上に!(アメリカ合衆国)

それを見て、なおさらやるせなさや行き場のなさを感じてしまう。

見ごたえのある2時間20分…、目の前に重たい課題をたくさん突きつけられるようなお芝居だった…。

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