くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

THE BEE

2007年07月07日 | 観劇
昨年、ロンドンで公演された野田秀樹さんの作品が、日本でも上演されている。何気なく、ちらしや案内を見ていたら、秋山菜津子さんの名前を発見!「タンゴ冬の終わり」で初見以来、なんか気になる女優さん。“THE舞台女優”のオーラがガンガン出ているんだもん。

先行でチケットを予約したら、日本語バージョンと英語バージョンが取れちゃった。今回は、その日本語バージョンを観劇する。会場は世田谷パブリックシアターのシアタートラムという小劇場。200席余りの箱で舞台が近い。入口を入るとキャンディーズ、山口百恵、朝丘めぐみなど、私にとっては涙が出るほど懐かし音楽が流れている。それが突然、プツッと止まり、サラリーマンに扮した野田さんが登場し、物語が始まった。お~、野田マップワールドだわ~。

この作品も暴力や狂気がテーマのようで、「ロープ」とつながるものがある。ごく、普通の人間が一線を越えたところで残酷な犯罪者になる。人質にされた妻と息子を取り返すために、自分も犯人の妻と息子を人質にしてしまう。それぞれの大義名分のために、全く同じようなことしか考えつかない人間。その狂気はだんだん残虐にかつ盲目的になっていく。そこには何が目的だったのか何をしたかったのか、何を守りたかったのかなんてものは無になる。そして思考が停止する。背景のTV画面に時々ちらちらと映し出される戦争の映像が狂気と虚しくシンクロしていた。

最後に飛んできたハチの大群は何を象徴しているのかな。一般大衆、世論、マスコミ…そんな目に見えないような力が、“あったことをなかったことにする”ようにかき消してしまうのかもしれない。なかなか、問題作だなあって思った。

小劇場ということもあり、演出が細かくて凝っている。舞台装置はシンプルだが、大きな紙が場面場面で効果的に使われる。最後はその紙のなかに包まれていく主人公たち。表現が生々しく、ストレートなのはロンドンを意識してのことなのかな。
お目当ての秋山さん、やっぱり存在感あるし色っぽいわ。野田ワールドにも違和感なくハマっていた。野田さんの熱演も圧倒的。体は小柄なのに、あのエネルギーはどこから出てくるんだろう。

テーマソングなのか、“剣の舞”の替え歌が、耳について離れない~。全く違ったものになるというロンドンバージョンも楽しみだ。