くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

Alone Agein

2006年12月19日 | 観劇
洋楽には疎いが、この曲は好き。昔々、アイドルをしていた頃の草刈正雄さんがアルバムの中で歌っていたんだよね。訳は確か、藤公之介さん。

うろ覚えだけど、こんな一節があった。

過ぎた年月、思い馳せてみる時
優しい父が死に泣いてた記憶
母はひとり愛した人、奪われて泣いていた
慰める言葉も僕はなくし
そっとそばで見てた
その母も僕を残して死んだ
僕はひとり、そうさ人は誰でもひとり

ひとりっこの私もいつかこういう日が来るんだなあって漠然と思った。

NODA MAP新作の『ロープ』はこの曲がテーマソングのように流れる。どうして野田さんはこの曲を選んだのかな。人間はひとりで生まれてきて、再びひとりになって死んでいく。母の胎内から生まれ出る時、一番最初に体験する感情が「恐怖」だとういうことをどこかで聞いたことがある。そんなことがこのお芝居のテーマである暴力につながるのかなあ。

小学校で戦争はいけないことだって習った。第二次世界大戦から、戦争が恐ろしいものだということを学んだ。日本は世界で唯一の被爆国であることも。日本だけが戦争の被害国であるかのように。

戦争は絶対あってはならない、ある筈ないと思っていたのに、そうではなくなってきたという時代の流れを身近に感じたのが湾岸戦争だった。「ついに始まってしまったんだ」という信じがたい現実とTVに映し出される映像があまりにも掛け離れていた。夜空に撃ち上がる対空砲火はまるで花火のようにきれいだった。あの空の下で確実に人は死んでいるのに…。

イラク戦争に至っては、戦争があんなにも説得力のない安易にこじつけられたような理由で始まってしまっていいものかってやるせない気持ちになった。フセインを非難するブッシュを見ても、とても正しいなんて思えない。どっちもどっち、早く辞めたら?って。誰かが、TVで「この戦争はベトナムのような内戦になることは明らかだ」と言っていたのを思いだす。まさに、今、その通りになった。

『ロープ』で語られるベトナム戦争は、今のイラクとリンクする。あったことをなかったことにして、再び同じ過ちを繰り返してしまう人間の恐ろしい本質。誰かが辞めようと言えばどうにかなりそうなのに、銃弾は止まない。みんな、辞めたいと思っているのに。

“人はいつも、取り返しのつかない「力」を使った後で「無力」という力に気づく。”

宮沢りえさん演じるタマシイは淡々と実況をする。ただ、事実を伝えるために。その事実はあまりにも重く心にずしんと来るのだった…。