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2014年03月20日 23時14分23秒 | すきな小説
『矛盾都市 TOKYO 』

 『矛盾都市 TOKYO 』(ゼノンシティとうきょう)は、小説家・川上稔の「都市シリーズ」の第7作。川上と、イラストレイターのさとやすによる共著である。
 異世界の日本の首都・東京を舞台に描くイラストノベルで、文章を川上稔が、イラストをさとやすが担当している。
 メディアワークスの隔月刊ライトノベル雑誌『電撃 hp 』(2007年に休刊)で、2001年2月~03年6月に全10回連載された。すでに1999年9月から同誌で連載されていた「都市シリーズ」第6作『創雅都市 S.F 』と交互に掲載される形式となった。
 「主人公の回想」という形式で、1ページ毎に短編を繋げていく形式をとっている。主人公は「信頼できない語り手」であり、作中で書かれていることが全て真実とは限らないという可能性も、作者は連載当初から示唆している。川上の手掛けたゲーム版『ソウ楽都市 OSAKA 』の内容とほぼ同じ時期の東京が描かれており、また、小説版『ソウ楽都市 OSAKA 』の主要登場人物も一部登場している。
 川上とさとやすの所属するゲーム制作会社「 TENKY(テンキー)」のホームページ内の「テンキーストア」で販売されている単行本には、書き下ろしの最終回「第12層」が追加されている。

 本作は、川上稔が中学2年生の終わりから高校1年生の時期にかけて(1989~90年)書きためた生涯初の創作ショートショート集35編が原型となっている。
 また、川上は大学1年生の時期(1993年)に、「本作の登場人物たちが神田の時館で時間が止められる計画を阻止する」というストーリーの、本作の続編ともいえる『長編小説版 矛盾都市 TOKYO 』(原稿用紙350枚ほど 未発表)を書き上げており、この『長編版 TOKYO 』が、自分自身に「小説家として生きていけるか」を問いかけるはじまりになったという。2004年の時点で、川上はこの原型をもとにして『長編版 TOKYO 』を改めて完成させる実力は、自分にはまだないと語っている。


あらすじ
 何もかもが完全にして不完全である、それゆえに矛盾都市(ゼノンシティ)と呼ばれる街、東京。
 東西に分裂した日本の首都・東京の総長連合で副総長を務める「僕」は、ある事件を封印するために自身の記憶を封印することにした。
 しかし「僕」は記憶を忘れるために、一つ一つの記憶を断片的に思い出していくこととなる。
 それは、1997年の2月から1999年の2月までの2年間の記憶。「僕」が「君」や仲間達と一緒にいた日々の記憶。
 楽しいことも大切なことも全て思い出し、そして「僕」は全てを忘れていく……その後に「僕」の中に残っているものは、果たして何なのだろうか?


矛盾都市(Zenon City)東京とは……
 都市世界における日本の首都・東京のこと。
 「矛盾力」という力によって、都市内ではあらゆることが起こりえる。住人の一部は矛盾力を利用し、「記動力」という能力を用いることができる。
 第二次世界大戦時の「東京大空白襲」によって、都の東部が地下約3キロメートルまで大陥没し、国立から三鷹までの間に「東京大断層」と呼ばれる底の存在していない深い断層がある。東部の陥没した地下区域を「地下東京」、その上空に新たに建造された地上区域を「地上東京」と呼ぶ。東京大断層の上空には、東部の地上東京と西部をむすぶ高架式の国道20号線と国営鉄道中央線、私鉄京王線が走っている。
 東京大断層の中でも、調布地区のみは大空白襲時の日本軍の超大型対空重騎「報奏華」の自爆が引き起こした重力暴走によって孤立した状態で残されており、当時の帝国陸軍飛行場は現在も都営の大空港として運営されている。

 矛盾都市・東京は、記憶の断片の集合により成立している都市である。すべての存在は「誰かが覚えていること」により立証される。この都市においては、「絶対にありえない」ということが存在しない。
 東京は、1999年8月に大きな危機を迎えた。日本政府と「惑星」達が協力して「世紀末破滅」を回避するため、破滅の原因となる全ての「不幸」を東京に凝縮させたうえで都市内の時間を停止させる計画を実行しようとしたのである。
 これを阻止したのが、彼らを裏切った「お月様」に事態を知らされた、一人の少年である。その少年の手により、東京は時間が3日間分だけ「殴り飛ばされ」、1999年8月7~10日の4日間が繰り返される閉鎖状態となる。これによって、それ以後の東京には、外部からはごく一部の人間しか入れなくなってしまっている。
 この現象の調査の一環として、この少年がそれ以前に何をしていたのかを知るために、この少年が封印していた1997~99年の2年間の記憶が解析されることとなる。その少年こそが、本作品の主人公「僕」であり、本作品はそれらの記憶を記したものである。そのため、本作品で書かれていることの中には、都合のいいように改変されて憶えられている虚偽の記憶も存在している。


主な用語

東京圏総長連合(とうきょうけんそうちょうれんごう)
 学生による自治集団。
 日本国内では学生が大人からほぼ完全に独立しており、「御山」と呼ばれる修練所で修行した学生を中心とする組織が各地域に存在し、各地の学生を統括している。それが「総長連合」であり、幹部陣は全員が大学生以上の学力を持ち、「記動力」を用いることができる。総長を頂点に副総長、2名の副総長補佐、その下に特務隊長がいる。
 1980年代に関西圏と関西圏の総長連合が衝突した「近畿動乱」によって日本は東西に分裂し、1996年末に勃発した「和解動乱」により、両陣営は併合された(小説版『ソウ楽都市 OSAKA 』の内容)。しかし全世界規模広報塔「 BABEL 」を巡り、小競り合いや腕試し程度の東西学生間の争いはいまだに続いている。
 関東地方の各圏総長連合の幹部を養成する御山は、茨城県と栃木県の県境に位置する鷲子(とりのこ)山地に設置されており、通常、幹部志願者の修練は毎年5~9月に実施されている。

ある事件
 「僕」が忘れようとしている事件のこと。
 これによって「先輩」が死に、「君」が害され、東京圏総長連合の面々は分断されることとなった。東西学生間の衝突を利用した大人社会の陰謀によるものらしい。本編内でその全貌が語られることはなく、のちの「都市シリーズ」第8作『電詞都市 DT 』の中で、これと思しき事件が言及されている。

記動力(きどうりょく)
 東京在住者の一部が使える特殊能力。
 矛盾力を起源とし、各個人が独自の能力を有している。それを修行や自己分析によって見出すことによって発揮され、主にそれは「御山」での修行で覚醒する。東京圏総長連合の幹部陣は全員この能力を有している。

BABEL(バベル)
 西のソウ楽都市・大阪に1998年に建造された、全高約3キロメートルの「超巨大広報塔」。
 第二次世界大戦以来、衛星通信が使用不能となっているこの世界では長距離通信が不可能になっているが、BABEL は全世界に情報を送ることができる。そのために BABELが完成すれば自動的に大阪が世界の中心都市となることから、日本国内では学生達がこれを巡って闘争を始め、大人社会も暗躍している。
 大阪では BABELの初使用権をかけて、学生間でのマスコミ情報戦争が開催されている(ゲーム版『ソウ楽都市 OSAKA 』の内容)。1999年3月から本格運転が開始される予定。


主な登場人物
 この都市では「本名を知ること」に特別な意味があるため、全ての登場人物は本名が明かされていない。


 本作品の主人公。東京圏総長連合副総長を務める少年。1981年生まれ。
 「ある事件」の全てを知る唯一の人物であり、それを完全に封印するために記憶を封印する。「君」とは、私立西秋川高等学校に入学する前からの付き合いであり、「先輩」に影響されて彼女と共に東京圏総長連合に入った。「先輩」が腹を割って話せる人間であり、また彼を止められる唯一の人間とされている。また、中学生時代には陸上部に在籍しており、そこで「君」やゲーム版『ソウ楽都市 OSAKA 』の主人公と面識を持った。
 記動力は「思い信じて打撃すれば、エネルギー保存の法則に従い、いかなるものも打撃力を受ける」で、「僕」が強い意思のもとに放った拳は、有形無形、感情や味などといったものまであらゆる全ての存在を殴り倒すことができる。「先輩」や「小坊主」と種族が近い。
 第二次世界大戦時の東京大空襲を免れた都西部(西多摩地方)の八王子地域に在住しており、通学する私立西秋川高等学校もその付近にある。
 ゲーム版『ソウ楽都市 OSAKA 』のヒロインである岸田葉漁(はぜり)とは中学校時代の同級生で(葉漁はのちに大阪に転校)、岸田の実家が経営しているラーメン屋には「先輩」とともによく通う。


 中学生時代からの「僕」の親友。東京圏総長連合第一特務隊長を務める少女。親は薬局を経営している。12月19日生まれ。
 「先輩」を支えたい、という一念から「僕」と共に東京圏総長連合に入った。アグレッシヴなところがあり、毎回「僕」に痛烈なツッコミを入れる。「ある事件」によって害され、それを助けるために「僕」は事件に関わった。
 記動力は「言葉のやる気は熱量になる」で、「君」が言葉にして放った応援は熱量となり、応援をかけられた相手の力を大幅に強める。

先輩
 東京圏総長連合総長を務める青年で、「僕」の指導者。
 「不滅型吸血系」の異族で八重歯が長く、常に目を伏せている。極度の心配性で常に「心配だ。」と呟き、予測できるあらゆる事態を危惧している。記動力との兼ね合いで常に日本刀を携行している。「ある事件」では大人社会の陰謀にかかり、「君」を害して消息不明となる。
 この人物はあまりに「僕」と正反対であることから、「僕」が記憶内で創造した架空の人物である可能性がある。
 記動力は「思い信じて斬撃すれば、いかなるものも分詞結合を砕かれて断ち割られる」で、「先輩」が強い意思のもとに起こした斬撃は、あらゆるものを切断することができる。

雪の字
 「僕」の1学年後輩の部下。東京圏総長連合副総長補佐を務める少女。1982年生まれ。
 胸を病んでいるがそれを隠しており、その事実を知っているのは「僕」のみ。現・日本軍の要職に就いている「大佐」の娘。「僕」とは高校入試の時に出会い、御山の副総長の座をめぐる最終試験で対戦、持病の発作を起こして敗退した。「僕」の補佐役だが、仲が悪く連携することはほとんどない。
 記動力は「女が持つものは何でも武器になる」で、「雪の字」が所持したものはどんなものでも刀としての武器の特性を帯びる。

令嬢
 「僕」の同級生。「神罰都市・横浜」から転校し、東京圏総長連合に所属した少女。
 大きな丸眼鏡をかけて小柄な体格で、真面目なようでいてすれっからいところがある。
 記動力は「共鳴するものの性質は等しい」で、「令嬢」が音を鳴らした対象とそれに接続した物体を自在に変質させることができる。

大将
 「僕」の同僚。関西からの転校生でありながら東京総長連合に所属する青年。平常は標準語で話しているが、大阪弁の他に名古屋弁も話すことができるらしい。
 金髪リーゼントでオープンカーを乗り回す。女性主体の東京圏総長連合で「僕」が同じ目線で話せる数少ない相手であり、またリーダーシップもあるため、「先輩」や「僕」の不在時には「大将」が総長連合を指揮する。
 記動力は「加速は無限に重ねることができる」で、記動力発動中の「大将」が乗る車両は、6速まで上げたギアをいきなり1速まで下げることで「6速分の速度を持つ1速」になり、この要領で無限に速度を上げることができる。

博士
 「僕」の悪友で、「僕」の通学する私立西秋川高等学校の科学部部長。
 「僕」とは出会うたびに罵詈雑言を交わす間柄で、ヒヒのような顔をしている。毎回トンデモ理論の発明品を造っては騒動を起こし、「僕」に殴り倒される。「僕」が記憶を封印するために「感情喪失機構」を造った。総長連合ではないためか、記動力は登場しない。

先生
 「僕」や「令嬢」の通学する私立西秋川高等学校のクラスの担任。1974年生まれ。
 天然ボケで幼げな性格だが、「僕」に大人や教師として認められる人徳を持つ。同僚の教員陣からはアイドル扱いされている。「小坊主」に好かれている。

小坊主
 「僕」の1学年後輩。東京圏総長連合副総長補佐を務める少年。1982年生まれ。
 生意気な性格で「僕」に反目するが、実力で大きく劣るために毎回負けている。「雪の字」の同僚だが未熟であるため、実質的には「雪の字」が「僕」を補佐している。
 記動力は「僕」のものに近く、拳ではなく「蹴り」によってその能力を発揮する。

大太郎(だいたろう)
 「僕」や「君」が世話している、幼い白狐型の聖獣。
 大人になると変化などの様々な能力を得るが、幼体では人語を話す以外の能力は持たない。ちなみに、現在発することができる言葉は「エサ」のみ。

ゲストキャラクター
西風
 東京の矛盾力によって擬人化した西風。ちょっと迂闊な性格。

北風
 東京の矛盾力によって擬人化した北風。優等生だが未熟なところも見られる。

守護役
 「僕」が「御山」で修行していた頃に来ていた関西圏の VIPで、古都圏守護役。その正体は、小説版『ソウ楽都市 OSAKA 』に登場する結城夕樹。ちなみに陽坂勝意らしき人物も登場している。

教官
 「僕」が修行していた「御山」の教官。本人は蹴り技が主体だが、拳が主体である「僕」のスタイルを懐かしんでいた。その正体は、小説版『ソウ楽都市 OSAKA 』に登場する中村久秀。ちなみに池丸孝弘らしき人物も登場している(葵聖と学生結婚をした模様)。

ノーバディ
 東京の矛盾力によって擬人化した「何もない所」。

ケリー=バンサム男爵
 東京の矛盾力によって擬人化した彗星。かつて「毒や不幸を呼ぶ」として誰からも忌み嫌われていた頃、唯一人見てくれた東京・神田の時計台「時館」の時詠式自動人形に恩を感じており、機能停止される直前の彼女に見せるために1999年の惑星十字列をもたらす。

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