長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ありがとう市川森一さん 「ウルトラマンA」第48話『ベロクロンの復讐』の復習 2時間目

2011年12月15日 15時00分39秒 | 特撮あたり
 ハイどーもー、こんにちは! そうだいでございますっと。今日はあったかいですねぇ~。いい日だ。

 こんないい日なんですけど、その青空にまったく似合わないドロドロな『ベロクロンの復讐』のお話をしちゃいま~っす☆


 前回にもざっと説明したように、先日他界した大脚本家・市川森一(享年70歳)が手がけた特撮ドラマ『ウルトラマンA(エース)』第48話『ベロクロンの復讐』(1973年3月放送)。
 この、別に最終回なわけでも、この回に登場する超獣「ベロクロン2世」が特別に強いわけでもカッコイイわけでもない『ベロクロンの復讐』を、私そうだいが「ウルトラシリーズ」全体の中でのベスト・オブ・ベストに勝手に認定しているのはなぜなのか!?

 『ベロクロンの復讐』のすごさは、「とにかく後ろ向きないやがらせに主人公がつきあわされる」その不条理さにつきます。
 もうアレですね。道ばたで知らない酔っぱらいのオヤジにからまれるとか、ちゃんと歩道をあるいていたのに乗り上げてきた自動車にひかれるとか、そういったたぐいの「有無を言わせない強引さ」があるんです。

 でも、タイトルにもあるように、これはお話の主人公・北斗星司=ウルトラマンエースに滅ぼされてしまった凶悪無比な「異次元人ヤプール」の生き残りによる、ベロクロン2世を使った「復讐」であるわけですから、北斗星司がその標的になる理由はちゃんとあります。そういう意味では本物の不条理ではありません。不条理ではないのですが……「復讐」を果たしたあとになんの未来ヴィジョンもないのがこわすぎる!

 でもでも、「勧善懲悪」を旨とするべき、そして子ども向けの番組である以上は「勝ち負けはハッキリ! 負けたら文句を言わずに退場!」といったわかりやすさを提示しなければならない「ウルトラシリーズ」の中で、ちゃんと滅ぼされる理由のある悪事を繰り広げてきた敵がウルトラヒーローにいったん滅ぼされたのに、それでもウジウジと復讐をしかけてくるというやり口はウルトラシリーズ史上初、いやさ、特撮史上初のこころみだったと言えるのではないだろうかと。

 もちろん、特撮作品の歴史の中で「復讐」の物語が語られていなかったわけでは決してありません。
 有名なところでは、母星を地球人の新兵器によって破壊されてしまったために復讐のために地球に飛来してきた「ギエロン星獣」(『ウルトラセブン』)、もともとは地球人の宇宙飛行士だったのに自分を見捨てた地球に復讐するために怪獣化して帰ってきた「ジャミラ」(『ウルトラマン』)などがすでにあるし、そもそも、1954年に復興直後の東京を破壊し尽くした「大怪獣ゴジラ」からして水爆実験に対する人類側への復讐であるわけなんですから。まぁ、それでなんで日本の東京に来るのかは意味がわからないんですけど。

 ただし、それまでの特撮作品に登場した数々の「復讐する側」には、必ずといっていいほど、それなりの「復讐をよしとする正当性」がありました。人類側にひどい目にあわされた被害者ともとることができる側面がどこかにあるんですね。

 あと、たとえば「ウルトラシリーズ」を代表する敵キャラクターともいえる「宇宙忍者バルタン星人」も、2回目の地球侵略以降は前回までの失敗の復讐と解釈できる行動が多いのですが、大前提としては「地球征服!」という種族の命運を賭けた営利目的があります。


 ところが、だ。
 『ベロクロンの復讐』は違うんですよ。同情できる理由もないし、成功したところでなにかを得られるというものでもない。まさしく「復讐することだけが目的の復讐」!! ヤなかんじ~。

 このエピソードに登場した、ミサイル超獣ベロクロン2世をあやつる謎の「Q歯科医の女医」こと異次元人ヤプールの生き残り(か、熱烈なファン)は、円谷プロ公認の怪獣図鑑では「女ヤプール」というミもフタもないストレートなネーミングをつけられています。

 で、この女ヤプールの作戦は「北斗星司にベロクロンの幻覚を見せて錯乱させ、そんな北斗(つまりはウルトラマンエース)を謹慎させたことによって戦力を大幅に失ったTAC に本物のベロクロン2世をけしかける。」といったもの。

 これ、パッと見はそれなりに筋の通った策のようにもとることができるのですが、よく考えてみると、「北斗をはずしたTAC にでないとベロクロン2世は勝てないの……」という女ヤプールの哀しいつぶやきが聴こえてくるような気がしません?

 そうなんです。ハッキリ言って、外見から見てもこの時の女ヤプールの唯一の手駒「ベロクロン2世」は、かつて『ウルトラマンA』の放送第1回で「地球防衛軍を壊滅させる!」という輝かしい戦歴をほこって華々しく散っていったヤプールの刺客第1号「初代ベロクロン」とは似ても似つかない頼りなさを露呈してしまっているのです。いちおう、2世もエースと「すもう対決」や「キャッチボール対決」を展開して健闘してはいましたが、最後までエースの余裕を突き崩すことはできませんでした。

 またさぁ……ベロクロン2世の容姿(ぬいぐるみ)がクッタクタ。しかも初代のベロクロンとさほど似てないの。

 初代の「ミサイル超獣ベロクロン」といえば、なんといってもまずはその頭部・肩・背中にビッシリと生えそろった真紅の「ミサイル発射管」がインパクト絶大で、ヤプールの超科学によって生み出された「怪獣兵器=超獣」ベロクロンは、そのサンゴのような数十本もの発射管から、強力なミサイルを一斉発射することができるオールレンジ火器攻撃、「クルッとうしろを向いてひとり長篠の合戦」が可能な驚異のスグレモノでした。

 んで、その衣鉢を継いだベロクロン2世も真っ赤なミサイル発射管こそ同じではあったものの、体型は「筋肉隆々!」といった感じのボリュームたっぷりな初代にくらべて「あれ……ちょっと、やせた?」と思わずその体調を気づかってしまう細身になっており、実は本編の中では、2世がその発射管からミサイルを斉射した描写は最後まで見受けられませんでした。え、それ、かざり?

 「口からミサイル」とか「口からファイヤー」というあたりは初代と同じなのですが、体色も初代の「濃紺」じゃなくて「明るい緑」だし、初代にはなかったはずの「長いしっぽ」も2世にはついています。
 しかも、2世最大の武器は初代にはなかった「口から強力溶解液」ということになっており、これにはさすがのエースも「聞いてないよ~!」と苦しむ隠し球となっていました。
 要するに、もともと「初代ベロクロン」と「ベロクロン2世」とは、フォーマットとなったどこかの宇宙怪獣の種族からして別物だったし、ヤプールのほどこしたスペックもかけた予算もだいぶ違ったものとなっているらしいのです。

 信頼できる情報によると、ベロクロン2世はその顔つきと脚部・しっぽが、『ベロクロンの復讐』の数ヶ月前(1972年12月)に出現して比較的あっさりと駆除された、ヤプール陣営崩壊後の「野良超獣」こと「聴覚超獣マッハレス」に似ているということも確認できています。

 ということは、かつてのように大規模な予算をかけてハデハデな強豪超獣を製作することがかなわなくなっていた女ヤプールは、残されていたわずかな情熱と予算をかき集めて、マッハレスかそれのもととなった怪獣の素体にシコシコと栄光の初代ベロクロンに似たかざりをつけて送り出し、その敗北後に自らも北斗のタックガンの露と消えたということとなるのです。なんか、泣ける……

 たぶんね、『ウルトラマンA』初期でのヤプールは、初代ベロクロンや有名な「空間超獣バキシム」「変身超獣ブロッケン」「剛力超獣ドラゴリー」といったあたりで予算はあらかた使い果たしていて、だいたいその4~5体で3次元世界の征服は充分だとふんでいたのでしょう。
 まぁ、そう考えても無理のない特撮史上最強の陣容ではあったのですが、まさかウルトラマンエースが地球に来てたとは……無念としか言いようがありません。

 毎週毎週、手塩にかけた超獣たちがブッ倒されていく。異次元人ヤプールの心情はいかばかりのものであったでしょうか。かけてさしあげる言葉もありません。

「全滅!? 半年もたたないうちにわしのリックド……じゃなかった、超獣たちが全滅!?」

 合掌です。この「敗者の悲哀」が、『ベロクロンの復讐』をいろどる魅力のひとつとなっていることは申し上げるまでもありません。だいっすき!!


 あの~。もっと話せる。というか、今回は市川森一さん周辺のお話をまだなんにもできていないのですが。

 ……どうしよ。「ぬらりひょんサーガ」まだ終わってないのに、このまま長びかせられるか? いや、それはちょっと……

 よっしゃ、今度は、この「ベロクロン2世」話を凍結!!

 次は「ぬらりひょんサーガ」の終結を1~2回かけてやって、そのあとにしっかり腰をすえて『ベロクロンの復讐』にもどろう。


 ねじれるよねぇ~!! うむ、これも『長岡京エイリアン』style 。

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