映画『ジュラシック・パーク』(1993年6月公開 アメリカ・ユニバーサル映画 126分)
原作小説は、アメリカの SF作家マイケル=クライトン(1942~2008年)が1990年に発表した小説。バイオテクノロジーを駆使して現代に蘇った恐竜たちが巻き起こすパニックサスペンス。
原作では、ハモンドをはじめとして多くの登場人物が恐竜に襲われ死亡する。小説版ではヴェロキラプトルを「知力が高く厄介な存在」と設定し、最大の脅威として描いており、これは続編となる小説版『ロスト・ワールド』(1995年)でも同様である。
原作では登場する恐竜の種類数は映画版よりも多く、翼竜の飼育ドームは後に第3作『ジュラシック・パーク3』(2001年)で映像化された。
原作・映画ともに「生命倫理や生命の進化・歴史」に関する哲学的テーマが存在する。
映画版はアメリカ本国をはじめ世界各国で大ヒットし、全世界興行収入「9億1469万ドル」は世界歴代14位の記録であり、スティーヴン=スピルバーグ監督にとっても史上最大のヒット作である(2013年現在)。総製作費は6千300万ドル、日本国内での興行収入は83億円。
映画用デジタル音響システムである、「 dts デジタルサウンド」を採用した最初の配給作品である。
マイクル=クライトン自身も映画版の脚本に参加しており、おおまかなストーリーは原作に準拠したものとなっている。原作自体のモチーフは本来はカオス理論であったが、子どもでも楽しめる娯楽作品という興行上の理由から、映画版は恐竜復元に重点が置かれており、登場する数学者イアン=マルコムの自然に対する考え方が分かりやすく改変されている。
原作小説で生き残る登場人物(ドナルド=ジェナーロ、ロバート=マルドゥーン)が死亡し、死亡する登場人物(ジョン=ハモンド、ヘンリー=ウー)が生き残るという変更がある。
ハモンドの孫たちについて、原作では兄であるティムが「弟」に変更されている。これは、ティム役を演じたジョゼフ=マゼロの演技力を高く評価したスピルバーグ監督が、ジョゼフの出演を前提にキャスティングを行ったためである。
映画本編中で、アラン=グラントはトリケラトプスを発見して「子どもの頃からいちばん好きな恐竜だ。」と語っているが、スピルバーグ監督本人も同様の発言をしている。
主なスタッフ
監督 …… スティーヴン=スピルバーグ(46歳)
原作 …… マイケル=クライトン(50歳 2008年没)
脚本 …… マイケル=クライトン、デイヴィッド=コープ(30歳)
撮影 …… ディーン=カンディ(47歳)
美術 …… リック=カーター(41歳)
編集 …… マイケル=カーン(57歳)
音楽 …… ジョン=ウィリアムズ(61歳)
VFX …… インダストリアル・ライト&マジック( ILM)、ティペット・スタジオ
VFXスーパーバイザー …… デニス=ミューレン(46歳)
恐竜スーパーバイザー …… フィル=ティペット(42歳)
主な登場人物
アラン=グラント博士 …… サム=ニール(45歳)
モンタナを中心に発掘研究を進めている古生物学者。多数の恐竜の卵の化石を発見し、恐竜に母性本能があった可能性を主張する。T-レックスに関して「動いている相手しか襲わない」「雨に弱い」という持論を持つが、続編小説では否定された。ハモンド財団傘下のインジェン社から、恐竜の育て方についての助言を求められており、発掘作業中だったためにジュラシック・パークの視察には乗り気でなかったが、映画版では「3年分の発掘作業資金」という好条件により承諾した。原作小説では子ども好きの設定だが、映画版では一転して子ども嫌いとなっている。ただし、いざとなると命がけで子どもたちを助けようとするなど、本心から嫌っているわけではない。
グラントのモデルは、モンタナ州立大学ロッキーズ博物館の古生物学者ジャック=ホーナーであるという指摘がある。
エリー=サトラー博士 …… ローラ=ダーン(26歳)
グラント博士の研究助手。古植物学が専門。映画版と原作小説とでは設定が異なり、映画ではグラントの恋人だが、小説では別の男性とすでに婚約している。なお、映画第3作ではグラントとは別人の夫と幼い息子たちが登場しており、小説版の設定を継承した形になっている。小説では「勇気のある女性」という設定を強調して描かれているが、映画ではフェミニストな面が強調されている。
イアン=マルコム博士 …… ジェフ=ゴールドブラム(40歳)
テキサス出身の数学者。複雑系、いわゆる「カオス理論」の専門家。自然を模倣しようとするジュラシック・パークの複雑なシステムは必ず破綻する、と視察前から主張し続ける。物語における第二の主人公のような立ち位置で、カオス理論を通して、自然を支配しようとするジュラシック・パークのエゴイズムを糾弾した。皮肉屋でハモンドとは犬猿の仲。映画版ではサトラー博士を口説こうとするなど、原作小説に比べて軽い一面も持つ人物として描かれている。
映画版では生還するが、原作小説では、T-レックスに襲われて負った傷が元で意識を失い、そのまま死んだように描写されていた。しかし、続編小説では病院に収容されて奇跡的に蘇生しており、こちらでも生還している。
自らの生活様式をとことん追求し、服装からコーラの飲み方にまでこだわりを持つ。モデルは、アメリカの数学者で高次元ポアンカレ予想を解決したスティーヴン=スメイル博士とも、サンタフェ研究所のスチュアート=カウフマン博士とも言われている。ちなみに、原作小説ではカオス理論を用いてパークの欠陥を暴く場面があったが、映画版ではカットされている。
離婚経験者で子持ちであるという設定は、続編『2』で反映されている。
ジョン=ハモンド …… リチャード=アッテンボロー(69歳)
インジェン社およびハモンド財団の創始者。
主人公側から批判される立場であることに変わりはないが、映画版と小説版では正反対の性格を持つ。
映画版では、純粋に人々を楽しませることに情熱を傾け、「まやかしや小細工のない、誰が見ても驚愕する物を作る。」との信念からパークを建設する。金儲けに固執する顧問弁護士のジェナーロを、「このパークは金持ちのためだけに作ったのではない。」とたしなめるシーンもあり、原作小説におけるキャラクターとは正反対に設定されている。ふだんは子ども好きの好々爺だが、計画が狂うと激高することもあり、パークでの事故発生後も遺伝子操作による恐竜復活の正当性を主張し続けていたが、最終的には自らの過ちを認めた。スピルバーグの思いが強く込められたキャラクターであり、性格描写も自身をモデルにしている。グラント達と共に生き残り、映画版の続編『2』では島の恐竜たちを保護する立場にまわった。
原作小説では、悪辣なビジネスマンとしての色合いが強い。典型的な山師であり、その商才は一方的に弁舌を振るう強引な金集めの面で強力に発揮される。ジュラシックパーク建設に際しては、遺伝子操作で造り上げた手の平サイズの超小型ゾウを披露して出資者を説得していた。子ども向け娯楽パークの建設もあくまで金儲けのための手段としてしかとらえておらず、ヒステリーを起こして子どもたちへの怒りを心中で吐く場面もある。自己中心的かつ頑迷なその性格から、パークのほとんどのスタッフに信頼されておらず、マルコムは続編小説で「ハモンドは単なる詐欺師だった。」と言い切った。恐竜を「自分の高価な財産」と考え、凶暴なラプトルの処分や緊急時の対恐竜用武器の装備、性質をおとなしくするための遺伝子改良はおろか、生態解明のための解剖すら許さない。ラプトルが脱走した際にも、マルドゥーンに「わしの恐竜に何をするつもりだ!」と食って掛かり、「(この状況では)主語が逆ですね。」と返されていた。原作小説では、クライマックスに小型肉食恐竜コンプソグナトゥスの大群に襲われて死亡した。
ドナルド=ジェナーロ …… マーティン=フェレロ(45歳)
ジュラシック・パーク建設に出資しているインジェン社の顧問弁護士。映画版では中盤でティラノサウルスの餌食となるが、原作小説では狡猾な性格がさらにクローズアップされており、最後まで生き残る。利己主義者であり、自分の手は決して汚さず、パークの失敗も責任転嫁しようとした。拝金主義者であるという点では映画版も小説版も共通している。
ヘンリー=ウー …… ブラッドリー=ダリル=ウォン(32歳)
ジュラシック・パークに常勤する遺伝子学者。恐竜のクローン再生の最大の功労者であると同時に、コンピュータにも強く、パークの管理システムにも精通している。映画版では中盤に船で本土に帰ってしまうため出番は少なかったが、原作小説ではパークのシステム復旧に尽力し、クライマックスでラプトルからエリーを助けようとして身代わりになり死亡した。
ハモンドの熱意に乗せられてクローン研究に参加しているが、恐竜をソフトウェアのように扱うやり方に、グラントは違和感を覚える。
デニス=ネドリー …… ウェイン=ナイト(37歳)
ハーバード大学卒のシステムエンジニア。巨漢の肥満者で度の強い眼鏡を着用している。本作における事件のキーパーソン。映画では強欲で間抜けな悪党に描写される。塩基解読用のスーパーコンピューターの並列処理を実現するなど優秀な人物だが、高慢で扱いづらい厄介者とされており、ハモンドは彼の仕事を一切評価していない。
恐竜の胚を他の会社に横流しするというスパイ取引を企むが、パーク脱出の途中でディロフォサウルスに襲われ死亡する。
ロバート=マルドゥーン …… ボブ=ペック(47歳 1999年没)
ジュラシック・パークの恐竜監視員。元はアフリカのハンティングガイド。動物園における野生動物のコンサルタントとしても実績を重ねていた。動物の恐ろしさを知らないハモンドを内心では嫌っている。一部の恐竜は動物園で管理できる代物ではないと主張し、対戦車誘導ミサイルなどの強力な兵器を管理本部に要求していた。ハモンドの孫たちの救出を承諾するなど勇敢な性格だが、映画版ではラプトルによって殺害される。原作小説では生還できた。
レイ=アーノルド …… サミュエル=L=ジャクソン(44歳)
ジュラシック・パークのチーフエンジニア。原作小説での名前は「ジョン」。兵器開発に携わった後に世界の大手アミューズメントパーク建設に次々に参加し、その異色な経歴はハモンドからも認められている。マルドゥーンと並んで、現場の立場からハモンドに積極的に意見する人物。カオス理論を理解しておりジェナーロに解説するほどだが、本人はマルコムの理論を否定している。
パークのシステムダウン後、電源復旧のために発電所に向かったところをラプトルに襲われて死亡する。
レックス=マーフィ …… アリアナ・リチャーズ(13歳)
ハモンドの孫。ハモンドの娘である母は、映画版では夫と離婚している。映画版ではしっかりもののお姉さんだが、原作小説ではわがままで手を焼かせるティムの妹となっている。勝気で野球好き。口が悪い。映画版ではコンピューターに明るく、ヴィジターセンターのドアロックの復旧を行っている。
ティム=マーフィ …… ジョゼフ=マゼロ(9歳)
レックスの兄。幼いながらも恐竜について深い知識を持った少年。原作小説ではグラントやマルドゥーンも感心するほど賢く、クライマックスでパークの全システムを再起動させる役も彼だった。映画版ではレックスの弟となり、年相応の饒舌な少年になっている。
ジェリー=ハーディング …… ジェラルド=R=モーレン(58歳)
ジュラシック・パークに常駐している獣医で、恐竜の生態について現時点で最も多くの知識を会得している人物。物語の最後まで生き残る。
原作小説版でファーストネームは言及されていないが、映画版では、スピルバーグ作品に多く関わる本作の共同プロデューサーであるモーレンがハーディングを演じたことから、彼の名前を取って「ジェリー」というファーストネームに設定された。
映画版・小説版双方の続編に登場するサラ=ハーディングの父である。
恐竜の再生
なぜ恐竜のDNA 欠損部位の補完に、原作小説の発表当時もっとも恐竜に近縁と考えられていた爬虫類ではなく、両生類のカエルを用いたのかについては、作中では説明がない。おそらくは「性転換する性質」を小説の内容に織り込むための都合と思われるが、爬虫類であるワニなどにも、成長中の環境によって性転換する種がいることが知られている。なお、2013年現在の学説に基づけば、恐竜の直系の子孫である鳥類をベースとして用いるのがより適切かもしれない。
生物再生の現実性
琥珀に閉じこめられて地質年代を経た血球の核のDNA は損傷が激しいと考えられる。生物遺体のDNA 情報は「521年で半減」という割合で失われるという研究があり、これに基づけば数千万年前の恐竜時代のDNA情報はほぼゼロとなる。ただし、琥珀中ではなく剥製や永久凍土中に保存されている絶滅生物のDNA から情報を復元して、マンモスなどの絶滅生物のクローニングを目指す研究は実際に行われている。
映画に登場する恐竜
映画化に際して、登場する恐竜の種類は、原作小説の15種から7種(ブラキオサウルス、トリケラトプス、ティラノサウルス、ディロフォサウルス、ガリミムス、ヴェロキラプトル、パラサウロロフス)に減った。
ヴェロキラプトル(体長2.0メートル)
映画版での造形は顔つきがズングリとしており、むしろデイノニクス(体長2.5~4.0メートル)に近いものになっている。これは、当時ヴェロキラプトルとデイノニクスは同一種であるとする説があったためであるが、その後この説は否定されている。略称は「ラプトル」で、この呼称はティラノサウルスの「 T-レックス」とともに以後メジャーになった。狩猟本能に長け空腹でなくとも殺戮をし、サルをも凌ぐ高い知能を持つ動物であると設定されている。主に後脚の大きく鋭い鉤爪を使って獲物を襲う。本編での独特の鳴き声はイルカやセイウチといった海生動物の鳴き声を混ぜ合わせたものである。ちなみに実際のヴェロキラプトルは、長い尾を除けば中型犬程度の大きさであり、本作における「ラプトル」は規格外に大きく設定されているが、これについてはスピルバーグ自らが確信犯的に大きなサイズにしたと言及している。なお、デイノニクスやヴェロキラプトルは近年、羽毛のある恐竜であったと考えられている。
ブラキオサウルス(体長25メートル)
本編中では、後脚で立ち上がったり、アゴを左右にスライドさせて咀嚼する描写があるが、どちらも実際には骨格の構造上不可能であると考えられている。『2』には登場しないが『3』で再登場する。
パラサウロロフス(体長10~13メートル)
湖の岸でブラキオサウルスとともに群れている遠景のみの登場だったが、『2』以降ではより多く活躍している。
トリケラトプス(体長9メートル)
病気で倒れている1頭だけが登場した。『2』以降にも登場しており、『3』では群れで活躍する。
ティラノサウルス・レックス(体長11~13メートル)
本編中での鳴き声は「ゾウの赤ん坊の鼻息」、「ワニの唸り声」、「虎の咆哮」といった複数の動物の声を混ぜ合わせたものだった。「 T-レックス」という呼び名は本作以降メジャーなものになった。
作中では、静止している獲物を視認できないとされている。この設定はクライトンによる続編小説では変更されたが、映画版では『3』まで継承された。また、本作では時速50キロ以上で疾走し、トップギアで走行するジープに追いつきそうになるシーンがあるが、『2』以降では走る速度が抑えられ、市街地を走行する普通車やバスよりも遅く、走る人間にさえなかなか追いつけなくなっている。しかし、この「動きが素早い」という設定は、視覚の設定とは逆に続編小説においてのみ継承された。
ディロフォサウルス(体長5~7メートル)
本編中に登場した個体は、大きさが実物の成体よりも大幅に小さい。呼称は「スピッター(唾吐き)」。吐く毒は、素早く蛇毒血清で処置しなければ失明の可能性がある強力なもので、映画ではより強力な致死性に設定された。本作に登場する恐竜の中では最もデザインや習性が脚色されている。鳴き声は通常は白鳥のもので、威嚇時はガラガラヘビとタカとサルを混ぜ合わせたもの。
ガリミムス(体長4~6メートル)
鳴き声はウマをもとにしている。
舞台となった島
本作でジュラシック・パークが建設されたのは「イスラ・ヌブラル島」という架空の島であり、中米にあるコスタリカの沖合200キロの海域に位置している。同じくコスタリカ本土から南西550キロに位置するココ島がモデルだとされている。
イスラ・ヌブラル島は12キロ、5キロ四方、面積35平方キロと比較的小さく、最も高い位置でも標高600メートルしかない。
撮影に使用されたハワイの島々同様に、イスラ・ヌブラル島は火山活動が活発であるため、部分的に地熱が非常に高いこの島は濃い霧に覆われ、ジュラシックパークの施設は島の地熱エネルギーを利用している。イスラ・ヌブラル島は熱帯雨林に覆われており、2つの川が島の東と北に伸びている。島の中心には広大な人造湖があるが、映画本編では登場していない。
コンピュータグラフィックス
当初、遠景の恐竜の映像は主にゴー・モーション技術で製作し、CG 恐竜はごく一部のみで使用される予定だったが、ILM のメンバーが密かに開発していたフルCG のティラノサウルスを見たスピルバーグ監督が、全面的にCG を使うことに方針変更した。その意気込みは、ライブアクションのシーンを削ってCG 製作に予算を回すほどであった。
しかし、テストフィルムを古典的なストップモーション・アニメで製作し、恐竜の動作をデジタル入力するツールを開発、恐竜の動作の表現に苦心するCG スタッフたち自身が恐竜の動作をしてみたり、動物園に足を運んで観察を重ねるといった努力もなされ、こうした貢献は「アカデミー視覚効果賞受賞」という形で報われることになった。
スピルバーグは、ハワイとユニヴァーサル・スタジオでの実写部分の撮影終了後にポーランドに移動し、次作『シンドラーのリスト』(同じく1993年)の撮影を開始したため、盟友ジョージ=ルーカスが視覚効果、音響効果、編集などのポストプロダクションを統括した。パラサウロロフスの水場として、ルーカスの制作拠点スカイウォーカー・ランチに実在する池が映る。なお、ルーカスは本作でのCG を見て、映像技術的な限界を理由に延期していた『スター・ウォーズ』新三部作の製作に取りかかった。
スピルバーグは、俳優たちがガリミムスの群れと並んで疾走する場面をステディカムで撮影することに固執し、不規則で揺れの激しい手持ちカメラのシーンにCG を合成するプロセス上に、「カメラトラッキング(ブルースクリーンではなく実写映像上での合成)」という新たな概念を生んでいる。ここでは、俳優の目線をもとにトラッキングしたガリミムスを通過させている。
映画本編におけるCG 使用シーンの合計時間はわずか7分間である。ただし、一瞬であるもののティラノサウルスに踏み潰されるツアーカーや蹴散らされる倒木といった恐竜以外の素材もCG で製作され、アクションシーンでスタントマンの顔だけを俳優の顔と取り替えるといった処理も可能にしている。また、俳優がティラノサウルスに喰われるシーンでは、ティラノサウルスが咥えた瞬間から俳優をCG モデルに置き換えており、これが史上初めてデジタル・スタントマンが映画に使用された例である。
アニマトロニクス
大部分の恐竜のシーンはアニマトロニクスを使用して製作されており、特にスピルバーグ監督がこだわったのが、原寸大のティラノサウルス・レックスのアニマトロニクスであった。担当したスタン=ウィンストンは、航空シミュレーターの専門会社の協力を得て油圧駆動システムを製作、高さ6メートル・重量6トンのアニマトロニクスを完成させた。しかし、そのパワーと重量では動作時の反作用でスタジオの床を破壊してしまうため、深さ1.8メートルのコンクリート床を持つ水中撮影用ステージにボルトで固定され、その周囲にセットを組んで撮影するという処置が取られることになった。さらに雨のシーンでは表皮に使われたフォームラバーが水を吸って重くなり、重量過多で油圧システムの故障が頻発し、スタッフは連夜の修理と乾かし作業に追われることになった。
幾多の困難がありながらも、俳優と恐竜が絡むシーンにおいてアニマトロニクスは絶大な効果を発揮し、CG が更に進歩した続編2作においても、アニマトロニクスは継続して使用された。
……いや~もうホント、文句のつけようのない歴史的作品でございますな。
そんじゃまた、本作に関するつれづれは例によって例のごとく、まったじっかい~。
原作小説は、アメリカの SF作家マイケル=クライトン(1942~2008年)が1990年に発表した小説。バイオテクノロジーを駆使して現代に蘇った恐竜たちが巻き起こすパニックサスペンス。
原作では、ハモンドをはじめとして多くの登場人物が恐竜に襲われ死亡する。小説版ではヴェロキラプトルを「知力が高く厄介な存在」と設定し、最大の脅威として描いており、これは続編となる小説版『ロスト・ワールド』(1995年)でも同様である。
原作では登場する恐竜の種類数は映画版よりも多く、翼竜の飼育ドームは後に第3作『ジュラシック・パーク3』(2001年)で映像化された。
原作・映画ともに「生命倫理や生命の進化・歴史」に関する哲学的テーマが存在する。
映画版はアメリカ本国をはじめ世界各国で大ヒットし、全世界興行収入「9億1469万ドル」は世界歴代14位の記録であり、スティーヴン=スピルバーグ監督にとっても史上最大のヒット作である(2013年現在)。総製作費は6千300万ドル、日本国内での興行収入は83億円。
映画用デジタル音響システムである、「 dts デジタルサウンド」を採用した最初の配給作品である。
マイクル=クライトン自身も映画版の脚本に参加しており、おおまかなストーリーは原作に準拠したものとなっている。原作自体のモチーフは本来はカオス理論であったが、子どもでも楽しめる娯楽作品という興行上の理由から、映画版は恐竜復元に重点が置かれており、登場する数学者イアン=マルコムの自然に対する考え方が分かりやすく改変されている。
原作小説で生き残る登場人物(ドナルド=ジェナーロ、ロバート=マルドゥーン)が死亡し、死亡する登場人物(ジョン=ハモンド、ヘンリー=ウー)が生き残るという変更がある。
ハモンドの孫たちについて、原作では兄であるティムが「弟」に変更されている。これは、ティム役を演じたジョゼフ=マゼロの演技力を高く評価したスピルバーグ監督が、ジョゼフの出演を前提にキャスティングを行ったためである。
映画本編中で、アラン=グラントはトリケラトプスを発見して「子どもの頃からいちばん好きな恐竜だ。」と語っているが、スピルバーグ監督本人も同様の発言をしている。
主なスタッフ
監督 …… スティーヴン=スピルバーグ(46歳)
原作 …… マイケル=クライトン(50歳 2008年没)
脚本 …… マイケル=クライトン、デイヴィッド=コープ(30歳)
撮影 …… ディーン=カンディ(47歳)
美術 …… リック=カーター(41歳)
編集 …… マイケル=カーン(57歳)
音楽 …… ジョン=ウィリアムズ(61歳)
VFX …… インダストリアル・ライト&マジック( ILM)、ティペット・スタジオ
VFXスーパーバイザー …… デニス=ミューレン(46歳)
恐竜スーパーバイザー …… フィル=ティペット(42歳)
主な登場人物
アラン=グラント博士 …… サム=ニール(45歳)
モンタナを中心に発掘研究を進めている古生物学者。多数の恐竜の卵の化石を発見し、恐竜に母性本能があった可能性を主張する。T-レックスに関して「動いている相手しか襲わない」「雨に弱い」という持論を持つが、続編小説では否定された。ハモンド財団傘下のインジェン社から、恐竜の育て方についての助言を求められており、発掘作業中だったためにジュラシック・パークの視察には乗り気でなかったが、映画版では「3年分の発掘作業資金」という好条件により承諾した。原作小説では子ども好きの設定だが、映画版では一転して子ども嫌いとなっている。ただし、いざとなると命がけで子どもたちを助けようとするなど、本心から嫌っているわけではない。
グラントのモデルは、モンタナ州立大学ロッキーズ博物館の古生物学者ジャック=ホーナーであるという指摘がある。
エリー=サトラー博士 …… ローラ=ダーン(26歳)
グラント博士の研究助手。古植物学が専門。映画版と原作小説とでは設定が異なり、映画ではグラントの恋人だが、小説では別の男性とすでに婚約している。なお、映画第3作ではグラントとは別人の夫と幼い息子たちが登場しており、小説版の設定を継承した形になっている。小説では「勇気のある女性」という設定を強調して描かれているが、映画ではフェミニストな面が強調されている。
イアン=マルコム博士 …… ジェフ=ゴールドブラム(40歳)
テキサス出身の数学者。複雑系、いわゆる「カオス理論」の専門家。自然を模倣しようとするジュラシック・パークの複雑なシステムは必ず破綻する、と視察前から主張し続ける。物語における第二の主人公のような立ち位置で、カオス理論を通して、自然を支配しようとするジュラシック・パークのエゴイズムを糾弾した。皮肉屋でハモンドとは犬猿の仲。映画版ではサトラー博士を口説こうとするなど、原作小説に比べて軽い一面も持つ人物として描かれている。
映画版では生還するが、原作小説では、T-レックスに襲われて負った傷が元で意識を失い、そのまま死んだように描写されていた。しかし、続編小説では病院に収容されて奇跡的に蘇生しており、こちらでも生還している。
自らの生活様式をとことん追求し、服装からコーラの飲み方にまでこだわりを持つ。モデルは、アメリカの数学者で高次元ポアンカレ予想を解決したスティーヴン=スメイル博士とも、サンタフェ研究所のスチュアート=カウフマン博士とも言われている。ちなみに、原作小説ではカオス理論を用いてパークの欠陥を暴く場面があったが、映画版ではカットされている。
離婚経験者で子持ちであるという設定は、続編『2』で反映されている。
ジョン=ハモンド …… リチャード=アッテンボロー(69歳)
インジェン社およびハモンド財団の創始者。
主人公側から批判される立場であることに変わりはないが、映画版と小説版では正反対の性格を持つ。
映画版では、純粋に人々を楽しませることに情熱を傾け、「まやかしや小細工のない、誰が見ても驚愕する物を作る。」との信念からパークを建設する。金儲けに固執する顧問弁護士のジェナーロを、「このパークは金持ちのためだけに作ったのではない。」とたしなめるシーンもあり、原作小説におけるキャラクターとは正反対に設定されている。ふだんは子ども好きの好々爺だが、計画が狂うと激高することもあり、パークでの事故発生後も遺伝子操作による恐竜復活の正当性を主張し続けていたが、最終的には自らの過ちを認めた。スピルバーグの思いが強く込められたキャラクターであり、性格描写も自身をモデルにしている。グラント達と共に生き残り、映画版の続編『2』では島の恐竜たちを保護する立場にまわった。
原作小説では、悪辣なビジネスマンとしての色合いが強い。典型的な山師であり、その商才は一方的に弁舌を振るう強引な金集めの面で強力に発揮される。ジュラシックパーク建設に際しては、遺伝子操作で造り上げた手の平サイズの超小型ゾウを披露して出資者を説得していた。子ども向け娯楽パークの建設もあくまで金儲けのための手段としてしかとらえておらず、ヒステリーを起こして子どもたちへの怒りを心中で吐く場面もある。自己中心的かつ頑迷なその性格から、パークのほとんどのスタッフに信頼されておらず、マルコムは続編小説で「ハモンドは単なる詐欺師だった。」と言い切った。恐竜を「自分の高価な財産」と考え、凶暴なラプトルの処分や緊急時の対恐竜用武器の装備、性質をおとなしくするための遺伝子改良はおろか、生態解明のための解剖すら許さない。ラプトルが脱走した際にも、マルドゥーンに「わしの恐竜に何をするつもりだ!」と食って掛かり、「(この状況では)主語が逆ですね。」と返されていた。原作小説では、クライマックスに小型肉食恐竜コンプソグナトゥスの大群に襲われて死亡した。
ドナルド=ジェナーロ …… マーティン=フェレロ(45歳)
ジュラシック・パーク建設に出資しているインジェン社の顧問弁護士。映画版では中盤でティラノサウルスの餌食となるが、原作小説では狡猾な性格がさらにクローズアップされており、最後まで生き残る。利己主義者であり、自分の手は決して汚さず、パークの失敗も責任転嫁しようとした。拝金主義者であるという点では映画版も小説版も共通している。
ヘンリー=ウー …… ブラッドリー=ダリル=ウォン(32歳)
ジュラシック・パークに常勤する遺伝子学者。恐竜のクローン再生の最大の功労者であると同時に、コンピュータにも強く、パークの管理システムにも精通している。映画版では中盤に船で本土に帰ってしまうため出番は少なかったが、原作小説ではパークのシステム復旧に尽力し、クライマックスでラプトルからエリーを助けようとして身代わりになり死亡した。
ハモンドの熱意に乗せられてクローン研究に参加しているが、恐竜をソフトウェアのように扱うやり方に、グラントは違和感を覚える。
デニス=ネドリー …… ウェイン=ナイト(37歳)
ハーバード大学卒のシステムエンジニア。巨漢の肥満者で度の強い眼鏡を着用している。本作における事件のキーパーソン。映画では強欲で間抜けな悪党に描写される。塩基解読用のスーパーコンピューターの並列処理を実現するなど優秀な人物だが、高慢で扱いづらい厄介者とされており、ハモンドは彼の仕事を一切評価していない。
恐竜の胚を他の会社に横流しするというスパイ取引を企むが、パーク脱出の途中でディロフォサウルスに襲われ死亡する。
ロバート=マルドゥーン …… ボブ=ペック(47歳 1999年没)
ジュラシック・パークの恐竜監視員。元はアフリカのハンティングガイド。動物園における野生動物のコンサルタントとしても実績を重ねていた。動物の恐ろしさを知らないハモンドを内心では嫌っている。一部の恐竜は動物園で管理できる代物ではないと主張し、対戦車誘導ミサイルなどの強力な兵器を管理本部に要求していた。ハモンドの孫たちの救出を承諾するなど勇敢な性格だが、映画版ではラプトルによって殺害される。原作小説では生還できた。
レイ=アーノルド …… サミュエル=L=ジャクソン(44歳)
ジュラシック・パークのチーフエンジニア。原作小説での名前は「ジョン」。兵器開発に携わった後に世界の大手アミューズメントパーク建設に次々に参加し、その異色な経歴はハモンドからも認められている。マルドゥーンと並んで、現場の立場からハモンドに積極的に意見する人物。カオス理論を理解しておりジェナーロに解説するほどだが、本人はマルコムの理論を否定している。
パークのシステムダウン後、電源復旧のために発電所に向かったところをラプトルに襲われて死亡する。
レックス=マーフィ …… アリアナ・リチャーズ(13歳)
ハモンドの孫。ハモンドの娘である母は、映画版では夫と離婚している。映画版ではしっかりもののお姉さんだが、原作小説ではわがままで手を焼かせるティムの妹となっている。勝気で野球好き。口が悪い。映画版ではコンピューターに明るく、ヴィジターセンターのドアロックの復旧を行っている。
ティム=マーフィ …… ジョゼフ=マゼロ(9歳)
レックスの兄。幼いながらも恐竜について深い知識を持った少年。原作小説ではグラントやマルドゥーンも感心するほど賢く、クライマックスでパークの全システムを再起動させる役も彼だった。映画版ではレックスの弟となり、年相応の饒舌な少年になっている。
ジェリー=ハーディング …… ジェラルド=R=モーレン(58歳)
ジュラシック・パークに常駐している獣医で、恐竜の生態について現時点で最も多くの知識を会得している人物。物語の最後まで生き残る。
原作小説版でファーストネームは言及されていないが、映画版では、スピルバーグ作品に多く関わる本作の共同プロデューサーであるモーレンがハーディングを演じたことから、彼の名前を取って「ジェリー」というファーストネームに設定された。
映画版・小説版双方の続編に登場するサラ=ハーディングの父である。
恐竜の再生
なぜ恐竜のDNA 欠損部位の補完に、原作小説の発表当時もっとも恐竜に近縁と考えられていた爬虫類ではなく、両生類のカエルを用いたのかについては、作中では説明がない。おそらくは「性転換する性質」を小説の内容に織り込むための都合と思われるが、爬虫類であるワニなどにも、成長中の環境によって性転換する種がいることが知られている。なお、2013年現在の学説に基づけば、恐竜の直系の子孫である鳥類をベースとして用いるのがより適切かもしれない。
生物再生の現実性
琥珀に閉じこめられて地質年代を経た血球の核のDNA は損傷が激しいと考えられる。生物遺体のDNA 情報は「521年で半減」という割合で失われるという研究があり、これに基づけば数千万年前の恐竜時代のDNA情報はほぼゼロとなる。ただし、琥珀中ではなく剥製や永久凍土中に保存されている絶滅生物のDNA から情報を復元して、マンモスなどの絶滅生物のクローニングを目指す研究は実際に行われている。
映画に登場する恐竜
映画化に際して、登場する恐竜の種類は、原作小説の15種から7種(ブラキオサウルス、トリケラトプス、ティラノサウルス、ディロフォサウルス、ガリミムス、ヴェロキラプトル、パラサウロロフス)に減った。
ヴェロキラプトル(体長2.0メートル)
映画版での造形は顔つきがズングリとしており、むしろデイノニクス(体長2.5~4.0メートル)に近いものになっている。これは、当時ヴェロキラプトルとデイノニクスは同一種であるとする説があったためであるが、その後この説は否定されている。略称は「ラプトル」で、この呼称はティラノサウルスの「 T-レックス」とともに以後メジャーになった。狩猟本能に長け空腹でなくとも殺戮をし、サルをも凌ぐ高い知能を持つ動物であると設定されている。主に後脚の大きく鋭い鉤爪を使って獲物を襲う。本編での独特の鳴き声はイルカやセイウチといった海生動物の鳴き声を混ぜ合わせたものである。ちなみに実際のヴェロキラプトルは、長い尾を除けば中型犬程度の大きさであり、本作における「ラプトル」は規格外に大きく設定されているが、これについてはスピルバーグ自らが確信犯的に大きなサイズにしたと言及している。なお、デイノニクスやヴェロキラプトルは近年、羽毛のある恐竜であったと考えられている。
ブラキオサウルス(体長25メートル)
本編中では、後脚で立ち上がったり、アゴを左右にスライドさせて咀嚼する描写があるが、どちらも実際には骨格の構造上不可能であると考えられている。『2』には登場しないが『3』で再登場する。
パラサウロロフス(体長10~13メートル)
湖の岸でブラキオサウルスとともに群れている遠景のみの登場だったが、『2』以降ではより多く活躍している。
トリケラトプス(体長9メートル)
病気で倒れている1頭だけが登場した。『2』以降にも登場しており、『3』では群れで活躍する。
ティラノサウルス・レックス(体長11~13メートル)
本編中での鳴き声は「ゾウの赤ん坊の鼻息」、「ワニの唸り声」、「虎の咆哮」といった複数の動物の声を混ぜ合わせたものだった。「 T-レックス」という呼び名は本作以降メジャーなものになった。
作中では、静止している獲物を視認できないとされている。この設定はクライトンによる続編小説では変更されたが、映画版では『3』まで継承された。また、本作では時速50キロ以上で疾走し、トップギアで走行するジープに追いつきそうになるシーンがあるが、『2』以降では走る速度が抑えられ、市街地を走行する普通車やバスよりも遅く、走る人間にさえなかなか追いつけなくなっている。しかし、この「動きが素早い」という設定は、視覚の設定とは逆に続編小説においてのみ継承された。
ディロフォサウルス(体長5~7メートル)
本編中に登場した個体は、大きさが実物の成体よりも大幅に小さい。呼称は「スピッター(唾吐き)」。吐く毒は、素早く蛇毒血清で処置しなければ失明の可能性がある強力なもので、映画ではより強力な致死性に設定された。本作に登場する恐竜の中では最もデザインや習性が脚色されている。鳴き声は通常は白鳥のもので、威嚇時はガラガラヘビとタカとサルを混ぜ合わせたもの。
ガリミムス(体長4~6メートル)
鳴き声はウマをもとにしている。
舞台となった島
本作でジュラシック・パークが建設されたのは「イスラ・ヌブラル島」という架空の島であり、中米にあるコスタリカの沖合200キロの海域に位置している。同じくコスタリカ本土から南西550キロに位置するココ島がモデルだとされている。
イスラ・ヌブラル島は12キロ、5キロ四方、面積35平方キロと比較的小さく、最も高い位置でも標高600メートルしかない。
撮影に使用されたハワイの島々同様に、イスラ・ヌブラル島は火山活動が活発であるため、部分的に地熱が非常に高いこの島は濃い霧に覆われ、ジュラシックパークの施設は島の地熱エネルギーを利用している。イスラ・ヌブラル島は熱帯雨林に覆われており、2つの川が島の東と北に伸びている。島の中心には広大な人造湖があるが、映画本編では登場していない。
コンピュータグラフィックス
当初、遠景の恐竜の映像は主にゴー・モーション技術で製作し、CG 恐竜はごく一部のみで使用される予定だったが、ILM のメンバーが密かに開発していたフルCG のティラノサウルスを見たスピルバーグ監督が、全面的にCG を使うことに方針変更した。その意気込みは、ライブアクションのシーンを削ってCG 製作に予算を回すほどであった。
しかし、テストフィルムを古典的なストップモーション・アニメで製作し、恐竜の動作をデジタル入力するツールを開発、恐竜の動作の表現に苦心するCG スタッフたち自身が恐竜の動作をしてみたり、動物園に足を運んで観察を重ねるといった努力もなされ、こうした貢献は「アカデミー視覚効果賞受賞」という形で報われることになった。
スピルバーグは、ハワイとユニヴァーサル・スタジオでの実写部分の撮影終了後にポーランドに移動し、次作『シンドラーのリスト』(同じく1993年)の撮影を開始したため、盟友ジョージ=ルーカスが視覚効果、音響効果、編集などのポストプロダクションを統括した。パラサウロロフスの水場として、ルーカスの制作拠点スカイウォーカー・ランチに実在する池が映る。なお、ルーカスは本作でのCG を見て、映像技術的な限界を理由に延期していた『スター・ウォーズ』新三部作の製作に取りかかった。
スピルバーグは、俳優たちがガリミムスの群れと並んで疾走する場面をステディカムで撮影することに固執し、不規則で揺れの激しい手持ちカメラのシーンにCG を合成するプロセス上に、「カメラトラッキング(ブルースクリーンではなく実写映像上での合成)」という新たな概念を生んでいる。ここでは、俳優の目線をもとにトラッキングしたガリミムスを通過させている。
映画本編におけるCG 使用シーンの合計時間はわずか7分間である。ただし、一瞬であるもののティラノサウルスに踏み潰されるツアーカーや蹴散らされる倒木といった恐竜以外の素材もCG で製作され、アクションシーンでスタントマンの顔だけを俳優の顔と取り替えるといった処理も可能にしている。また、俳優がティラノサウルスに喰われるシーンでは、ティラノサウルスが咥えた瞬間から俳優をCG モデルに置き換えており、これが史上初めてデジタル・スタントマンが映画に使用された例である。
アニマトロニクス
大部分の恐竜のシーンはアニマトロニクスを使用して製作されており、特にスピルバーグ監督がこだわったのが、原寸大のティラノサウルス・レックスのアニマトロニクスであった。担当したスタン=ウィンストンは、航空シミュレーターの専門会社の協力を得て油圧駆動システムを製作、高さ6メートル・重量6トンのアニマトロニクスを完成させた。しかし、そのパワーと重量では動作時の反作用でスタジオの床を破壊してしまうため、深さ1.8メートルのコンクリート床を持つ水中撮影用ステージにボルトで固定され、その周囲にセットを組んで撮影するという処置が取られることになった。さらに雨のシーンでは表皮に使われたフォームラバーが水を吸って重くなり、重量過多で油圧システムの故障が頻発し、スタッフは連夜の修理と乾かし作業に追われることになった。
幾多の困難がありながらも、俳優と恐竜が絡むシーンにおいてアニマトロニクスは絶大な効果を発揮し、CG が更に進歩した続編2作においても、アニマトロニクスは継続して使用された。
……いや~もうホント、文句のつけようのない歴史的作品でございますな。
そんじゃまた、本作に関するつれづれは例によって例のごとく、まったじっかい~。
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