≪資料編は、こちら!≫
みなさま、新年明けましておめでとうございます! そうだいでございます~。
いや~、ついに2022年が始まってしまいました。令和ももう四年よ! 今年は、どんな新しいことに挑戦していきましょうかねぇ。
こちら山形は、この冬もやっぱりいい感じの大雪で年越しをすることになったのですが、正月に初詣をして、自分が去年、本厄だったことを1年ぶりに思い出しました。仕事が忙しすぎて完っ全に忘れてた……
まぁ、相も変わらず毎日ヒーコラ言ってはいたのですが、いちおう身体的には何事もなくしのぐことはできましたね。無事これ名馬! 今年も後厄ではあるんで、引き続き気をつけていきたいもんです。厄除けするほど信心深くもない。今年もどーんとこいだ!!
正月もふつうに明け、私も4日からいつも通りの日々に入っているのですが、今いちばん頭を悩ませている問題は、ローソンの「仮面ライダー50周年記念一番くじ」ですね。他の、人生上のもっと深刻なあれこれは捨て置けい!
いや~、これはひどいですね。何がひどいって、私が欲しいのは E賞の DEFORME-Xミニフィギュアの「仮面ライダーアマゾンオメガ」だけなんですが、これが当たんねぇ当たんねぇ! まずくじで A~E賞の中から E賞を当てるのも一苦労だし、E賞を当てても、そこからさらに22種類あるフィギュアの中でオメガだけを狙わなきゃいけないんだもんね。いやいや、無理だろうよ~!! 本当にくじだけで全種類当てようとしたら、一体どのくらいの金額を投入せねばならんのだ!?
怖い怖い……まともに関わっちゃいかんギャンブルですよ、これは。早く近所のローソンのくじが全部なくなってくれることを願うしか、貧しいわたくしめにできることはなく……くじ、1回680円だもんね。企画してるのショッカーじゃないの!?
このライダーくじはまだほんの「第1弾」で、3月には「第2弾」が控えているのだとか。そして、そちらの E賞ミニフィギュアには、当然のごとく仮面ライダーアマゾンアルファのお姿が……ずるい!! 純粋な『仮面ライダーアマゾンズ』ファンのおっさんから身銭を搾り取るのはやめてくれ~い!!
とまぁ、C賞の「『仮面ライダーアマゾンズ』したじき」でなんとか自分を落ち着けようとしている男のグチはここまでにしておきまして、同じ仮面ライダーは仮面ライダーでも、今回の本題である映画『仮面ライダー対ショッカー』(1972年)のほうに、お話をちゃっちゃと進めてまいりたいと思います。仮面ライダー旧1号と桜島1号の DEFORME-Xも出してくれ~! もう出てるかな?
映画本編に関する情報のあれこれは≪資料編≫(2014年の記事だってよ……)にまとめておきましたので繰り返しませんが、この作品は、言わずと知れた仮面ライダーシリーズ「初のオリジナル映画作品」となります。「初の映画作品」である前作『ゴーゴー仮面ライダー』(1971年)は TV本編第13話のブローアップ上映でしたからね。
TV本編の焼き直しであるのにも関わらず、仮面ライダーシリーズ初の「再生改造人間軍団投入エピソード」でもあった前作は、その夏の「東映まんがまつり」のプログラム中人気アンケート第1位に輝き、すぐさま「次作はオリジナル作品で」という話になったのでありました。毎週レギュラー分を製作する上に、並行して映画向けの撮影まで!? 殺人的なスケジュール過密度&TV 本編を凌駕するスケールと面白さにしなければならないプレッシャー……大変だったろうなぁ!
しかし、ノリにノッている時の勢いというものはすさまじく、製作スタッフはそれらの苦難を「ピィヨォオ~ン」という実に『仮面ライダー』らしい効果音(大道寺珠美の誕生会のシーンで五郎が失神する時のやつ)で軽々と跳び越え、日本特撮史上に残る名作を世に出してしまったのでありました。それこそが、この『仮面ライダー対ショッカー』なわけ!
例によって、その魅力を語り尽くさんとすれば2~3万字あっても足りなくなってしまうのですが、そこは涙を呑んで、大きく3つのポイントに絞って、映画『仮面ライダー対ショッカー』の名作たるゆえんを考察していきたいと思います。
3つのポイント。すなはちそれは、
1、死神博士の最終作戦として気合の入りまくった展開&失敗……
2、ついに完全無欠の「バディものヒーロー」へと進化したダブルライダー!
3、出るわ出るわ、総勢40体もの改造人間軍団の「仮面の世界(マスカーワールド)」!!
これらに尽きるんじゃないかなぁ。ひとつひとつ、ひも解いてまいりましょ。
1、死神博士の最終作戦として気合の入りまくった展開&失敗……
死神博士のショッカー日本支部長としての最終作戦が、果たしてこの『仮面ライダー対ショッカー』でいうところの「GX 方程式奪取作戦」だったのか、それともオンエア上最後のエピソードとなった第52話(3月25日放映)における「デッドマンガス東京上空散布作戦」だったのかは確定されていないのですが、第52話の作戦実行担当だった改造人間ギルガラスが、映画のほうに「しれっ。」と再生改造人間として投入されている以上、これは第52話よりも映画が後とみなしたほうが通りが良いようです。
それにしても、つい最近も映画『ゴジラ VS コング』において、映画を観る前から関連おもちゃ情報を見ただけで「えっ! 〇〇ゴジラも出んの!?」という情報漏れが起きて物議を醸しましたが、誰も何も言ってないのに制作側が初登場よりも先に再登場の方を先行公開するって……おおらかにも程があるでしょ、昭和!! 第52話のタイトルも『おれの名は怪鳥人ギルガラスでした!』に変えるべきだったのでは。「おれ、テレビで作戦の単独チーフになるんだ!」と、嬉々とした声で実家のご両親に電話をしたギルガラスは、その1週間も前に公開された映画を観て愕然としたという……いやいや、おれ、プラノドン先輩と頭ぶつけたくらいで死ぬ扱いが初舞台!? ユニコルノスは、映画公開初日と同日のオンエアだったからギリセーフ……? 1・2号とは闘わなかったしね。
この映画を観て痛感するのは、「ヒーローの輝きは悪役の悪さに比例する」という法則でありまして、よくよく考えてみると、今回のショッカーの作戦もまた、地球を滅ぼしかねないスーパーパワーを発見した博士の方程式を横取りしようという、こっすいことこの上ないしみったれた内容なのですが、何はなくとも日本支部長・死神博士のたたずまいとしゃべり口が非常に悪辣で怖いので、ショッカーが恐怖と暴力の象徴であるというギリギリの線を死守できているのです。悪役が怖いことって、ほんとに大事!! そういえば今回の作戦って、ショッカー大首領がエンブレムからぜんぜん指示を出してないんですよね。さすがの死神博士びいきの大首領も、13回も作戦失敗し通しの博士に愛想を尽かしたのか?
実は、他ならぬ死神博士ご本人も、今回の「GX 方程式奪取作戦」が自身の日本支部長キャリアとして「14番目」の作戦であることには非常に神経質になっていたのではないでしょうか。
なぜならば、前任の日本支部長だったゾル大佐(任期1971年9~12月)は、自身の指揮した作戦に13回失敗して、ついに自分自身を作戦実行担当にすえた14番目の作戦である「狼作戦」で、クリスマスの夜に非業の殉職をとげてしまったからなのでした。リア獣大爆発!!
「14回失敗したら、死か……免れたとしても、大首領に何を言われるかわからんぞ……」
ショッカー随一の「改造人間製作の名人」と謳われた、大首領ネコっかわいがりの死神博士といえども、心中かなり穏やかならざるものがあったのではないのでしょうか。ゾル大佐の時と違って、こっちが改造人間を強化しても、ちょくちょく1号が日本に帰ってきてダブルライダーになるし、日本征服の難易度はいや増しに増していく一方。「そもそもこんな状況になったのは本郷猛の脳改造に失敗したおまえのせいじゃねぇか。」という絶対真理を大首領にぶつけるわけにもいかず、死神博士の苦悩たるや、察するに余りあるものがあります。がんばれ、中間管理職!!
そんでま、例によって今回の映画でもショッカーの作戦はすがすがしいくらいに失敗するわけだったのですが、ここで気になるのが、後に精強な改造人間イカデビルという正体を現わすはずの死神博士が、この日本支部長時代、映画や TV本編では多少の武器(電磁ムチや大鎌や催眠術)は駆使しても、本郷なり一文字を相手にするとからっきしひ弱な50代の一般男性でしかないことなのです。実際に演じた天本英世さんは40代でしたが。
ここらでちょっと、死神博士に関する情報をば。
2005年に行われた全ライダーシリーズ悪役人気投票では堂々の第1位!! 死神博士とは( Wikipediaより)
殉職した前任のゾル大佐に代わってショッカー日本支部長に着任した、ショッカー大幹部。暗いアジトの中で下から照明を当てるなど、怪奇性を強調した演出も印象的な天才マッドサイエンティスト。スイス支部からやってきた「怪人作りの名人」という異名を持つ、改造人間製作の最高権威である。
純白のスーツに裏地が赤い黒のマントという服装がトレードマーク。西洋占星術や催眠術、毒ガスや毒薬の調合にも精通しており、その眼力は睨んだだけで滝和也を朦朧とさせた。武器は1000ボルトの電流を放つ鞭と、アジトに侵入してきた本郷猛に対して振るった大鎌。不意に現れたり消えたりすることから瞬間移動能力を持つとされるが、マントの繊維が鏡のように機能して姿を隠しているとも言われる。アジト内ではたびたび車椅子に乗っていたが、足が不自由というわけではなく、立ち歩くことはできる。のちに改造人間イカデビルに変身するが、少なくとも日本支部長時代は戦闘が得意ではないように見られる。
配下の改造人間はゾル大佐時代よりも強力で、一文字隼人(仮面ライダー2号)が本郷猛(仮面ライダー1号)の援護を必要としたこともあった事実が、改造人間たちの強さを裏付けている。これら多くの改造人間たちを使って大規模な作戦を展開したが、1号・2号に阻止され続け、第52話と映画『仮面ライダー対ショッカー』での作戦失敗をもって、地獄大使にショッカー日本支部長の座を譲り一時退く。これはショッカー南米支部への左遷という設定だが、劇中では明言されていない。
本名はイワン=タワノビッチ。父は日本人、母が白系ロシア人で1919年生まれ。戦前の少年時代は東京で育った。3歳下の妹ナターシャがいた。
ポーランドで大学博士号を取得し臓器移植研究に没頭するが、第二次世界大戦が勃発するとポーランドを占領したナチス・ドイツ軍に徴用されアウシュヴィッツで生体実験に携わり延命研究を続けていた。終戦間近にナターシャが23歳の若さで死亡すると、彼女の遺体を冷凍保存して蘇生術を探し求めた。その歪んだ愛情をショッカー大首領に利用され、ショッカーに導かれることとなった。
日本支部長赴任期間1972年1~3月、全14作戦 ※( W)表記は1・2号ダブルライダーと交戦した改造人間
スノーマン( W)、ゴースター( W)、ハエ男、プラノドン、カビビンガ、ナメクジラ、ベアーコンガー、トドギラー、ヒルゲリラ、イソギンチャック( W)、カメストーン、ユニコルノス( W)、ギルガラス( W)、ザンジオー( W)
結論から申しますと、おそらく死神博士は、日本支部長時代には自分自身に改造手術を施術してはいなかったのではないのでしょうか。しかし、最初こそ「仕方ない、大首領の尻ぬぐいでもやりますかぁ~。」くらいの軽さでスイスから一番弟子のスノーマンと一緒に着任したクールな死神博士も、異様にしぶとい2号と、幾多の死線を越えて異様に暑苦しくなった1号の奮戦にみずからもはからずしてアツくなり、「わしも、わし自身を最高傑作の改造人間にした~い!!」という狂気にも似た心理におちいっていったのではないのでしょうか。あと何度か1号・2号・滝和也あたりに殺されかける局面もあって、実際に身の危険を感じたろうし。
そして思案の結果、この映画のちょい前くらいに大首領に、「ちょっと腰をすえてショッカー最高の改造人間になりますんで、南米支部に行かせてほしい。」と自分から提案したのではなかろうかと。だって、あんなにプライドの高い死神博士が、大首領の左遷 or 更迭人事をあまんじて受けるわけがないもんね! ただしそこは大首領もタダではすまさず、よりもよって死神博士と最も相性が悪いと言われるショッカー東南アジア支部長の「あのオヤジ」を後任にすえることで、死神博士にもきつ~い灸をすえたのでしょう。でも、死神博士の行き先はなんてったって「ショッカー南米支部」ですからね。南米といえば、あのアウシュヴィッツで死神博士の上司でもあった元ナチス・ドイツのヨーゼフ=メンゲレ博士が潜伏している地(1949~79年潜伏)……なんなんだ、この子ども向け番組らしからぬ符牒の数々は!?
いや~、他ならぬ私自身も、小学生の時に初めてこの映画をレンタルビデオで見て、地獄谷のシーンであられもなく本郷猛に羽交い絞めにされる死神博士を見て、「なんでイカデビルに変身しねぇんだよう、博士!!」とじりじりしたものだったのですが、こういうことだったんですね! 30年越しの疑問がスッキリ氷解しました、勝手に。
ともあれ、この作戦に賭ける死神博士の気合は、かくも悲壮なものだったのです。
博士の歪んだ愛情は、仮面ライダー1・2号の若き炎の熱風にあおられるかのように自分自身に向けられ、その肉体は流星を駆る悪魔イカデビルへ。そして、それでも留まるところを知らない激情は、「わしも進化した~い! しごいて、しごいて!!」と、なんの関係もない立花藤兵衛に向けられていくのであった……おやっさん、いい迷惑!!
2、ついに完全無欠の「バディものヒーロー」へと進化したダブルライダー!
映画のちょっと前の1972年1月1日、死神博士の日本支部赴任とほぼ同時のタイミングで日本帰国を果たした仮面ライダー1号こと、本郷猛!!
死神博士の繰り出す強力な改造人間に劣勢となりかけた一文字隼人を助ける本郷でしたが、この映画を観る限り、あくまでも主人公は一文字隼人つまり仮面ライダー2号であるように見受けられます。だってアクション見てみてよ、殺陣にキレがあるのは、どう見ても2号の方なんだもん!
あの、ライダーキックやらなんやらの技を繰り出した後に地上にスタッと降り立ち、相手がちゃんと爆死するまで片手を「シャッ!」とかざして見守る「残心」のポーズ……その美しさよ!! かぁ~っこいいんだなぁ。
今でこそ、「仮面ライダーといえば藤岡弘、!」というイメージがほぼ完全に定着した感がありますが、1971年の7月から半年にわたって『仮面ライダー』の主人公となり、その明朗闊達なキャラクターで子ども達の人気を集めてきたのは、間違いなく「陽」の人、一文字隼人だったのです。映画『仮面ライダー対ショッカー』は、2020年代から振り返ると、ともすれば埋もれてしまいがちな、1972年当時の歴史的事実を克明に描き留めている記録映画でもあるのです。
確かに復帰した本郷猛は、最初の登場シーンからして、ショッカーの移動車の運転手戦闘員を気絶させて周到に逃走手段を断った上でいったん隠れ、ビックラこいて戸惑うアリガバリとドクガンダー成虫を腕を組んで高台から見下ろしながら「ふっふっふっふ……」とほくそ笑んで現れるという、もうどっちが悪役なんだかわかんない意地悪をしかけるし、明智小五郎みたいな完璧な変装術で大道寺博士に化けるしで、ちょっと子どもにはとっつきにくい「謎の男」なんですよね。
有名な話ですが、かつてのトカゲロン戦で開発した「ライダーファイト!」ポーズを発展させた1号変身ポーズもこの映画が初出であるわけですが、ちゃんと「変~身!」と叫んでいる2号に対して、1号はいかにもおっかなびっくりといった感じで両手は動いても口は動かず、心の中で「変身。」と唱えているような演出がなされています。変身した後も1号は、スタイルこそ2号よりもスラッとしていてキックでは長い足が映えるのですが、スピーディさではどうしても2号に劣る感じはするんですよね。いや、充分に上手なんですが。
当然、間もなく TV本編でも主人公が本郷猛に戻るという方針は決定していたのでしょうが、この映画の時点ではあくまで主人公は一文字隼人であり、本郷はそのブレーン&サポート役という立場に徹しているような気がします。ただ、その「陽」と「陰」の関係が非常に分かりやすく、変身後の外見からしても、シルバーのラインがまぶしい2号と、昼でも暗く見えるダークグリーンの桜島1号という対比がそれを象徴しています。これで上映時間が60~90分くらいだったら、方向性の違いとかで2人が対立するような展開もあったのかもしれませんが、尺は30分ちょいですから。一見合いそうにないキャラクターの2人が、互いのいいところを尊重し、力を合わせてサクサク話を進めていくのは、いかにも昭和ヒーローものって感じで気持ちがいいですよね! 当時のことはよくわかりませんが、たぶん幼い子どもたちは陽気な性格の一文字隼人、ちょっとおませな女の子はクールで影のある本郷猛というように、人気のすみわけもハッキリしていたのではないでしょうか。さくらももこ先生は一文字ファンだって書いてましたね。
余談ですが、この映画のエンディング映像はふつうの公道を2台のサイクロン号で仲良く並走する1・2号の長回し撮影になっているのですが、エキストラなしのゲリラ撮影だったらしく、歩道を歩く人は大人も子どもも関係なく立ち止まって2台を凝視するわ追いかけて走り出すわ、対向車線の車も路肩に次々と停車していくという当時の人気っぷりをカメラに収めています。
そんな中、もちろん子門真人さんの歌があるので声は録音されていないわけですが、両サイクロン号に乗って運転している2人のうち、2号の方が何度か1号に声をかけるかのように顔を向けるしぐさが見られます。これがまた、思ったことはすぐ口に出す一文字と、それを受け流しながら沈思黙考する本郷の関係をまんま映像化しているようで非常に芸が細かいんですよね。
まぁ、ぶっちゃけて言えば、アクションの上手さから見て明らかに2号の「中の人」のほうが先輩のように見えるので、おそらく、
「おい、もうちょっとスピード落とせ! 落とせってコノヤロ!」
とか言ってたのかもしんないけど……大野剣友会のみなさま、ご苦労さまでございます!!
3、出るわ出るわ、総勢40体もの改造人間軍団の「仮面の世界(マスカーワールド)」!!
いや~、これはもう最高ですよね。最初にあの地獄谷での再生改造人間軍団総登場シーンをレンタルビデオで見た時、小学生だった私は映画館で観なくてよかったと心底思いましたよ。だって、あんなん大スクリーンで見せられたら失禁ブッシャーでしょ!! あのトカゲロン戦での「11体」をはるかに上回る「40体」よ!?
ショッカー史上初の再生改造人間軍団投入作戦となった、トカゲロンを実行部隊長とする1971年6月の「原子力研究所襲撃計画」いらい、改造人間製造技術のめざましい技術革新&ローコスト化を実現したのか、ショッカー日本支部はちょくちょく再生改造人間を、新型改造人間のサポート役として投入してきました。今回の「 GX方程式奪取作戦」までの時点での遍歴は、ざっとこの通り。
第13話『トカゲロンと怪人大軍団』(1971年6月)、第27話『ムカデラス怪人教室』(1971年10月)、第37話『毒ガス怪人トリカブトの G作戦』(1971年12月)、第41話『マグマ怪人ゴースター 桜島大決戦』(1972年1月)、映画『仮面ライダー対ショッカー』(1972年3月)
ほんでま、コストが安いのか、なぜかヘビロテで再生される改造人間(『仮面ライダー対ショッカー』までの時点で)もついでに挙げておきましょうか。
・サラセニアン(3回) ・ゲバコンドル(3回) ・カニバブラー(2回) ・ムカデラス(2回) ・モグラング(3回) ・アルマジロング(3回)
ほほう……なんか、ゲバコンドルとムカデラスとアルマジロングは性能がいいから重用して、サラセニアンとカニバブラーとモグラングは作りやすいからよくお呼ばれするっていう、再生の理由の二極化が透けて見えるような気がしますね。ここも格差社会だな~!
ちなみにここまで調べたんで、逆に今回のお祭り騒ぎにまったく呼ばれなかった(『仮面ライダー対ショッカー』までの時点で1回も再生されていない)改造人間も挙げてみましょう。ヒマね~!!
・ヒトデンジャー ・アマゾニア ・クラゲダール ・カビビンガ ・ベアーコンガー ・ヒルゲリラ
これさ、たぶん、アマゾニアとクラゲダールは地獄谷ってことで陸上戦を想定していたから基地待機になっていたのかな? ヒトデンジャーは、そもそも高温多湿な日本列島では絶望的に使い勝手が悪い「水が弱点」っていう特徴があるから、ショッカーのオーストラリア支部かモンゴル支部かサハラ砂漠支部にでもすっ飛ばされたんでしょう。カビビンガ、ベアーコンガー、ヒルゲリラは比較的最新型の高性能改造人間(当時)なんで、高コストで見送られたのかも。
ところで、かつてトカゲロンの時に再生されていた蜂女と改造コブラ男は、今回『仮面ライダー対ショッカー』では呼ばれておりません……その理由は、当時の作戦状況を見れば一目瞭然かな!? ライダーによけられて地面に落ちただけで殉職とか、棒っきれで腰をぶっ叩かれたから殉職とか……さすがのショッカー経理部も、このお2人を再生させる経費があったら、戦闘員が乗るバイクの買いつけにまわした方が何倍もマシだと気付いたのかな?
ところで、今回じっくり見直してみて気がついたのですが、地獄谷の遠景撮影ショットで、トカゲロンと見られる改造人間がイソギンチャックとゴースターの間、ピラザウルスと見られる改造人間がムササビードルとドクガンダー幼虫の間、かまきり男と見られる改造人間が地獄サンダーとさそり男の間に確実にいるんですよね。でも、直後にカメラが寄って再生改造人間軍団が名乗りをあげるカットでは、このお3方はなぜか姿を消しているんですよ。ケツカッチンだった? でも、その後の軍団が撤退する遠景ショットでは、また出てきてるんだよなぁ……トイレ行ってたのか?
なので、諸資料で「予告編にしか出ていない」という情報のあるトカゲロンとピラザウルスとかまきり男は、全員ただ単に「名乗っていないだけ」なのであって、映画本編にもちゃーんと登場しているという事実は明言させていただきたいと思います。映画に出れたよ、おっかさん!!
ただ、同様に地獄谷で名乗らなかったプラノドン、ギルガラス、キノコモルグがのちに1・2号に奇襲をかけている経緯を見ると、かまきり男、トカゲロン、ピラザウルスもまた、実際には会敵しなかったものの、独立部隊を編成してどこかで潜伏していた可能性はありますよ。さすがは策士・死神博士!!
最後に、もはや恒例となった、死をも恐れぬ勇気を振り絞って仮面ライダー1・2号に立ち向かい、そして戦場の露と消えていった、名誉あるショッカー再生改造人間のみなさんの最期をまとめてみましょう。敬礼!!
登場した40体中、本作で実際に仮面ライダーと戦闘した改造人間は……(殉職 or 画面フェイドアウト順に)
・サボテグロン(投げたサボテン型爆弾「メキシコの花」を2号に蹴り返され爆死)
・モグラング(サボテグロンと共に「メキシコの花」の爆発の巻き込まれ爆死)
・ハエ男(2号のライダーキックで爆死)
・アリガバリ(1号のふつうのチョップを受けて爆死)
・ドクガンダー成虫(1・2号と交戦するがザンジオー撤退後は生死不明)
・地獄サンダー(2号にふつうに投げ飛ばされた後は生死不明)
・エジプタス(1号のふつうのキックを受けた後は生死不明)
・プラノドン(1・2号の合体技「ライダーハンマー突き」を受けて爆死)
・ギルガラス(1・2号の合体技「ライダーハンマー突き」を受けて爆死)
・サラセニアン(1・2号によってトリカブトと頭をぶつけ合った後は生死不明)
・トリカブト(1・2号によってサラセニアンと頭をぶつけ合った後は生死不明)
・ドクダリアン(1号のライダーキックで爆死)
・キノコモルグ(2号のライダーキックで爆死)
・ザンジオー(1・2号の必殺技「ライダーダブルキック」で爆死)
みんな、よくがんばった!! 安らかに眠れ……また呼ぶかもしんないけど。
子どもの頃に見た時は、「40体ぜんぶ闘えよ! 博士、呼び戻してよ~!!」と無責任にいら立っていたものでしたが、こうやってよくよくカウントしてみると、14体もの精鋭が1・2号としっかり交戦してるんですよね。いや、殺陣のバランス的にも、もうこのくらいでいいでしょ! それでトカゲロンの時よりもよっぽどマシな闘い方をしてるんだもん、合格合格、大合格!!
生死不明っていっても、だいたいみんなその時点でかなりのダメージを食らってフラッフラになってるもんね。「死んだことにしといて☆」っていう制作スタッフの声が聞こえてきませんか?
ただそれにしても、「 GX方程式奪取作戦」が失敗した後も、ショッカー基地の改造人間寮「いくた荘」では、この時に再生させた改造人間のうち26体がピンピンして待機してるってことになりますよね……その大軍団は、その後どうなったのかしら? いくら性能に難がある再生改造人間といっても、今後の作戦展開のフォローに回したらけっこう役に立つと思うのですが。
これはおそらく、あの冷酷無比でプライド激高の死神博士のことですから、後任の「あのオヤジ」にみすみす余剰戦力として提供することは大いに癪に感じたのでしょう。26体全員を引き連れてショッカー南米支部にトンズラぶっこいたのではないのでしょうか。「立つ鳥、跡を濁さず。」みたいな言い訳して。やりかねないな~! ヤな感じ!!
ま、そんなこんなでさまざまな思惑を巻き込んだまま、名作『仮面ライダー対ショッカー』は、その後のさらなる激戦の予感をはらむ TV本編へと、そのタスキを渡していくのでありました。
あと、子役の演技クオリティがかなり高いとか、ショッカー戦闘員の最終完成形である「骨戦闘員」の初投入とか、新型改造人間ザンジオーの地位が意外と低い理由とかいうポイントも残っているのですが、そんなこんなの魅力がぎゅうぎゅうに詰まった32分間。ホントにすばらしい! 意味もなく2時間30分とか3時間とかほざいてるハリウッド大作なんかどうでもいいから、とにかくこっちの熱さにシビれてほしい! 令和の子ども達も!!
なにげに、ライダーと改造人間たちが死闘を繰り広げている冬枯れの広場が、ステキに昭和でいいんだよなぁ~。周辺の住宅地にさすがに人影は見えないんだけど、どこのお宅も、天気がいいからベランダで蒲団とかシーツを干してるんだよね……激しい命のやりとりと、それにまるで気づかない一般市民のかりそめの平和! 石ノ森章太郎ワールド特有のアイロニーを見事に表現した神演出だ!! 偶然映り込んだだけじゃないと、あたしゃ信じたいぃィイ!!
みなさま、新年明けましておめでとうございます! そうだいでございます~。
いや~、ついに2022年が始まってしまいました。令和ももう四年よ! 今年は、どんな新しいことに挑戦していきましょうかねぇ。
こちら山形は、この冬もやっぱりいい感じの大雪で年越しをすることになったのですが、正月に初詣をして、自分が去年、本厄だったことを1年ぶりに思い出しました。仕事が忙しすぎて完っ全に忘れてた……
まぁ、相も変わらず毎日ヒーコラ言ってはいたのですが、いちおう身体的には何事もなくしのぐことはできましたね。無事これ名馬! 今年も後厄ではあるんで、引き続き気をつけていきたいもんです。厄除けするほど信心深くもない。今年もどーんとこいだ!!
正月もふつうに明け、私も4日からいつも通りの日々に入っているのですが、今いちばん頭を悩ませている問題は、ローソンの「仮面ライダー50周年記念一番くじ」ですね。他の、人生上のもっと深刻なあれこれは捨て置けい!
いや~、これはひどいですね。何がひどいって、私が欲しいのは E賞の DEFORME-Xミニフィギュアの「仮面ライダーアマゾンオメガ」だけなんですが、これが当たんねぇ当たんねぇ! まずくじで A~E賞の中から E賞を当てるのも一苦労だし、E賞を当てても、そこからさらに22種類あるフィギュアの中でオメガだけを狙わなきゃいけないんだもんね。いやいや、無理だろうよ~!! 本当にくじだけで全種類当てようとしたら、一体どのくらいの金額を投入せねばならんのだ!?
怖い怖い……まともに関わっちゃいかんギャンブルですよ、これは。早く近所のローソンのくじが全部なくなってくれることを願うしか、貧しいわたくしめにできることはなく……くじ、1回680円だもんね。企画してるのショッカーじゃないの!?
このライダーくじはまだほんの「第1弾」で、3月には「第2弾」が控えているのだとか。そして、そちらの E賞ミニフィギュアには、当然のごとく仮面ライダーアマゾンアルファのお姿が……ずるい!! 純粋な『仮面ライダーアマゾンズ』ファンのおっさんから身銭を搾り取るのはやめてくれ~い!!
とまぁ、C賞の「『仮面ライダーアマゾンズ』したじき」でなんとか自分を落ち着けようとしている男のグチはここまでにしておきまして、同じ仮面ライダーは仮面ライダーでも、今回の本題である映画『仮面ライダー対ショッカー』(1972年)のほうに、お話をちゃっちゃと進めてまいりたいと思います。仮面ライダー旧1号と桜島1号の DEFORME-Xも出してくれ~! もう出てるかな?
映画本編に関する情報のあれこれは≪資料編≫(2014年の記事だってよ……)にまとめておきましたので繰り返しませんが、この作品は、言わずと知れた仮面ライダーシリーズ「初のオリジナル映画作品」となります。「初の映画作品」である前作『ゴーゴー仮面ライダー』(1971年)は TV本編第13話のブローアップ上映でしたからね。
TV本編の焼き直しであるのにも関わらず、仮面ライダーシリーズ初の「再生改造人間軍団投入エピソード」でもあった前作は、その夏の「東映まんがまつり」のプログラム中人気アンケート第1位に輝き、すぐさま「次作はオリジナル作品で」という話になったのでありました。毎週レギュラー分を製作する上に、並行して映画向けの撮影まで!? 殺人的なスケジュール過密度&TV 本編を凌駕するスケールと面白さにしなければならないプレッシャー……大変だったろうなぁ!
しかし、ノリにノッている時の勢いというものはすさまじく、製作スタッフはそれらの苦難を「ピィヨォオ~ン」という実に『仮面ライダー』らしい効果音(大道寺珠美の誕生会のシーンで五郎が失神する時のやつ)で軽々と跳び越え、日本特撮史上に残る名作を世に出してしまったのでありました。それこそが、この『仮面ライダー対ショッカー』なわけ!
例によって、その魅力を語り尽くさんとすれば2~3万字あっても足りなくなってしまうのですが、そこは涙を呑んで、大きく3つのポイントに絞って、映画『仮面ライダー対ショッカー』の名作たるゆえんを考察していきたいと思います。
3つのポイント。すなはちそれは、
1、死神博士の最終作戦として気合の入りまくった展開&失敗……
2、ついに完全無欠の「バディものヒーロー」へと進化したダブルライダー!
3、出るわ出るわ、総勢40体もの改造人間軍団の「仮面の世界(マスカーワールド)」!!
これらに尽きるんじゃないかなぁ。ひとつひとつ、ひも解いてまいりましょ。
1、死神博士の最終作戦として気合の入りまくった展開&失敗……
死神博士のショッカー日本支部長としての最終作戦が、果たしてこの『仮面ライダー対ショッカー』でいうところの「GX 方程式奪取作戦」だったのか、それともオンエア上最後のエピソードとなった第52話(3月25日放映)における「デッドマンガス東京上空散布作戦」だったのかは確定されていないのですが、第52話の作戦実行担当だった改造人間ギルガラスが、映画のほうに「しれっ。」と再生改造人間として投入されている以上、これは第52話よりも映画が後とみなしたほうが通りが良いようです。
それにしても、つい最近も映画『ゴジラ VS コング』において、映画を観る前から関連おもちゃ情報を見ただけで「えっ! 〇〇ゴジラも出んの!?」という情報漏れが起きて物議を醸しましたが、誰も何も言ってないのに制作側が初登場よりも先に再登場の方を先行公開するって……おおらかにも程があるでしょ、昭和!! 第52話のタイトルも『おれの名は怪鳥人ギルガラスでした!』に変えるべきだったのでは。「おれ、テレビで作戦の単独チーフになるんだ!」と、嬉々とした声で実家のご両親に電話をしたギルガラスは、その1週間も前に公開された映画を観て愕然としたという……いやいや、おれ、プラノドン先輩と頭ぶつけたくらいで死ぬ扱いが初舞台!? ユニコルノスは、映画公開初日と同日のオンエアだったからギリセーフ……? 1・2号とは闘わなかったしね。
この映画を観て痛感するのは、「ヒーローの輝きは悪役の悪さに比例する」という法則でありまして、よくよく考えてみると、今回のショッカーの作戦もまた、地球を滅ぼしかねないスーパーパワーを発見した博士の方程式を横取りしようという、こっすいことこの上ないしみったれた内容なのですが、何はなくとも日本支部長・死神博士のたたずまいとしゃべり口が非常に悪辣で怖いので、ショッカーが恐怖と暴力の象徴であるというギリギリの線を死守できているのです。悪役が怖いことって、ほんとに大事!! そういえば今回の作戦って、ショッカー大首領がエンブレムからぜんぜん指示を出してないんですよね。さすがの死神博士びいきの大首領も、13回も作戦失敗し通しの博士に愛想を尽かしたのか?
実は、他ならぬ死神博士ご本人も、今回の「GX 方程式奪取作戦」が自身の日本支部長キャリアとして「14番目」の作戦であることには非常に神経質になっていたのではないでしょうか。
なぜならば、前任の日本支部長だったゾル大佐(任期1971年9~12月)は、自身の指揮した作戦に13回失敗して、ついに自分自身を作戦実行担当にすえた14番目の作戦である「狼作戦」で、クリスマスの夜に非業の殉職をとげてしまったからなのでした。リア獣大爆発!!
「14回失敗したら、死か……免れたとしても、大首領に何を言われるかわからんぞ……」
ショッカー随一の「改造人間製作の名人」と謳われた、大首領ネコっかわいがりの死神博士といえども、心中かなり穏やかならざるものがあったのではないのでしょうか。ゾル大佐の時と違って、こっちが改造人間を強化しても、ちょくちょく1号が日本に帰ってきてダブルライダーになるし、日本征服の難易度はいや増しに増していく一方。「そもそもこんな状況になったのは本郷猛の脳改造に失敗したおまえのせいじゃねぇか。」という絶対真理を大首領にぶつけるわけにもいかず、死神博士の苦悩たるや、察するに余りあるものがあります。がんばれ、中間管理職!!
そんでま、例によって今回の映画でもショッカーの作戦はすがすがしいくらいに失敗するわけだったのですが、ここで気になるのが、後に精強な改造人間イカデビルという正体を現わすはずの死神博士が、この日本支部長時代、映画や TV本編では多少の武器(電磁ムチや大鎌や催眠術)は駆使しても、本郷なり一文字を相手にするとからっきしひ弱な50代の一般男性でしかないことなのです。実際に演じた天本英世さんは40代でしたが。
ここらでちょっと、死神博士に関する情報をば。
2005年に行われた全ライダーシリーズ悪役人気投票では堂々の第1位!! 死神博士とは( Wikipediaより)
殉職した前任のゾル大佐に代わってショッカー日本支部長に着任した、ショッカー大幹部。暗いアジトの中で下から照明を当てるなど、怪奇性を強調した演出も印象的な天才マッドサイエンティスト。スイス支部からやってきた「怪人作りの名人」という異名を持つ、改造人間製作の最高権威である。
純白のスーツに裏地が赤い黒のマントという服装がトレードマーク。西洋占星術や催眠術、毒ガスや毒薬の調合にも精通しており、その眼力は睨んだだけで滝和也を朦朧とさせた。武器は1000ボルトの電流を放つ鞭と、アジトに侵入してきた本郷猛に対して振るった大鎌。不意に現れたり消えたりすることから瞬間移動能力を持つとされるが、マントの繊維が鏡のように機能して姿を隠しているとも言われる。アジト内ではたびたび車椅子に乗っていたが、足が不自由というわけではなく、立ち歩くことはできる。のちに改造人間イカデビルに変身するが、少なくとも日本支部長時代は戦闘が得意ではないように見られる。
配下の改造人間はゾル大佐時代よりも強力で、一文字隼人(仮面ライダー2号)が本郷猛(仮面ライダー1号)の援護を必要としたこともあった事実が、改造人間たちの強さを裏付けている。これら多くの改造人間たちを使って大規模な作戦を展開したが、1号・2号に阻止され続け、第52話と映画『仮面ライダー対ショッカー』での作戦失敗をもって、地獄大使にショッカー日本支部長の座を譲り一時退く。これはショッカー南米支部への左遷という設定だが、劇中では明言されていない。
本名はイワン=タワノビッチ。父は日本人、母が白系ロシア人で1919年生まれ。戦前の少年時代は東京で育った。3歳下の妹ナターシャがいた。
ポーランドで大学博士号を取得し臓器移植研究に没頭するが、第二次世界大戦が勃発するとポーランドを占領したナチス・ドイツ軍に徴用されアウシュヴィッツで生体実験に携わり延命研究を続けていた。終戦間近にナターシャが23歳の若さで死亡すると、彼女の遺体を冷凍保存して蘇生術を探し求めた。その歪んだ愛情をショッカー大首領に利用され、ショッカーに導かれることとなった。
日本支部長赴任期間1972年1~3月、全14作戦 ※( W)表記は1・2号ダブルライダーと交戦した改造人間
スノーマン( W)、ゴースター( W)、ハエ男、プラノドン、カビビンガ、ナメクジラ、ベアーコンガー、トドギラー、ヒルゲリラ、イソギンチャック( W)、カメストーン、ユニコルノス( W)、ギルガラス( W)、ザンジオー( W)
結論から申しますと、おそらく死神博士は、日本支部長時代には自分自身に改造手術を施術してはいなかったのではないのでしょうか。しかし、最初こそ「仕方ない、大首領の尻ぬぐいでもやりますかぁ~。」くらいの軽さでスイスから一番弟子のスノーマンと一緒に着任したクールな死神博士も、異様にしぶとい2号と、幾多の死線を越えて異様に暑苦しくなった1号の奮戦にみずからもはからずしてアツくなり、「わしも、わし自身を最高傑作の改造人間にした~い!!」という狂気にも似た心理におちいっていったのではないのでしょうか。あと何度か1号・2号・滝和也あたりに殺されかける局面もあって、実際に身の危険を感じたろうし。
そして思案の結果、この映画のちょい前くらいに大首領に、「ちょっと腰をすえてショッカー最高の改造人間になりますんで、南米支部に行かせてほしい。」と自分から提案したのではなかろうかと。だって、あんなにプライドの高い死神博士が、大首領の左遷 or 更迭人事をあまんじて受けるわけがないもんね! ただしそこは大首領もタダではすまさず、よりもよって死神博士と最も相性が悪いと言われるショッカー東南アジア支部長の「あのオヤジ」を後任にすえることで、死神博士にもきつ~い灸をすえたのでしょう。でも、死神博士の行き先はなんてったって「ショッカー南米支部」ですからね。南米といえば、あのアウシュヴィッツで死神博士の上司でもあった元ナチス・ドイツのヨーゼフ=メンゲレ博士が潜伏している地(1949~79年潜伏)……なんなんだ、この子ども向け番組らしからぬ符牒の数々は!?
いや~、他ならぬ私自身も、小学生の時に初めてこの映画をレンタルビデオで見て、地獄谷のシーンであられもなく本郷猛に羽交い絞めにされる死神博士を見て、「なんでイカデビルに変身しねぇんだよう、博士!!」とじりじりしたものだったのですが、こういうことだったんですね! 30年越しの疑問がスッキリ氷解しました、勝手に。
ともあれ、この作戦に賭ける死神博士の気合は、かくも悲壮なものだったのです。
博士の歪んだ愛情は、仮面ライダー1・2号の若き炎の熱風にあおられるかのように自分自身に向けられ、その肉体は流星を駆る悪魔イカデビルへ。そして、それでも留まるところを知らない激情は、「わしも進化した~い! しごいて、しごいて!!」と、なんの関係もない立花藤兵衛に向けられていくのであった……おやっさん、いい迷惑!!
2、ついに完全無欠の「バディものヒーロー」へと進化したダブルライダー!
映画のちょっと前の1972年1月1日、死神博士の日本支部赴任とほぼ同時のタイミングで日本帰国を果たした仮面ライダー1号こと、本郷猛!!
死神博士の繰り出す強力な改造人間に劣勢となりかけた一文字隼人を助ける本郷でしたが、この映画を観る限り、あくまでも主人公は一文字隼人つまり仮面ライダー2号であるように見受けられます。だってアクション見てみてよ、殺陣にキレがあるのは、どう見ても2号の方なんだもん!
あの、ライダーキックやらなんやらの技を繰り出した後に地上にスタッと降り立ち、相手がちゃんと爆死するまで片手を「シャッ!」とかざして見守る「残心」のポーズ……その美しさよ!! かぁ~っこいいんだなぁ。
今でこそ、「仮面ライダーといえば藤岡弘、!」というイメージがほぼ完全に定着した感がありますが、1971年の7月から半年にわたって『仮面ライダー』の主人公となり、その明朗闊達なキャラクターで子ども達の人気を集めてきたのは、間違いなく「陽」の人、一文字隼人だったのです。映画『仮面ライダー対ショッカー』は、2020年代から振り返ると、ともすれば埋もれてしまいがちな、1972年当時の歴史的事実を克明に描き留めている記録映画でもあるのです。
確かに復帰した本郷猛は、最初の登場シーンからして、ショッカーの移動車の運転手戦闘員を気絶させて周到に逃走手段を断った上でいったん隠れ、ビックラこいて戸惑うアリガバリとドクガンダー成虫を腕を組んで高台から見下ろしながら「ふっふっふっふ……」とほくそ笑んで現れるという、もうどっちが悪役なんだかわかんない意地悪をしかけるし、明智小五郎みたいな完璧な変装術で大道寺博士に化けるしで、ちょっと子どもにはとっつきにくい「謎の男」なんですよね。
有名な話ですが、かつてのトカゲロン戦で開発した「ライダーファイト!」ポーズを発展させた1号変身ポーズもこの映画が初出であるわけですが、ちゃんと「変~身!」と叫んでいる2号に対して、1号はいかにもおっかなびっくりといった感じで両手は動いても口は動かず、心の中で「変身。」と唱えているような演出がなされています。変身した後も1号は、スタイルこそ2号よりもスラッとしていてキックでは長い足が映えるのですが、スピーディさではどうしても2号に劣る感じはするんですよね。いや、充分に上手なんですが。
当然、間もなく TV本編でも主人公が本郷猛に戻るという方針は決定していたのでしょうが、この映画の時点ではあくまで主人公は一文字隼人であり、本郷はそのブレーン&サポート役という立場に徹しているような気がします。ただ、その「陽」と「陰」の関係が非常に分かりやすく、変身後の外見からしても、シルバーのラインがまぶしい2号と、昼でも暗く見えるダークグリーンの桜島1号という対比がそれを象徴しています。これで上映時間が60~90分くらいだったら、方向性の違いとかで2人が対立するような展開もあったのかもしれませんが、尺は30分ちょいですから。一見合いそうにないキャラクターの2人が、互いのいいところを尊重し、力を合わせてサクサク話を進めていくのは、いかにも昭和ヒーローものって感じで気持ちがいいですよね! 当時のことはよくわかりませんが、たぶん幼い子どもたちは陽気な性格の一文字隼人、ちょっとおませな女の子はクールで影のある本郷猛というように、人気のすみわけもハッキリしていたのではないでしょうか。さくらももこ先生は一文字ファンだって書いてましたね。
余談ですが、この映画のエンディング映像はふつうの公道を2台のサイクロン号で仲良く並走する1・2号の長回し撮影になっているのですが、エキストラなしのゲリラ撮影だったらしく、歩道を歩く人は大人も子どもも関係なく立ち止まって2台を凝視するわ追いかけて走り出すわ、対向車線の車も路肩に次々と停車していくという当時の人気っぷりをカメラに収めています。
そんな中、もちろん子門真人さんの歌があるので声は録音されていないわけですが、両サイクロン号に乗って運転している2人のうち、2号の方が何度か1号に声をかけるかのように顔を向けるしぐさが見られます。これがまた、思ったことはすぐ口に出す一文字と、それを受け流しながら沈思黙考する本郷の関係をまんま映像化しているようで非常に芸が細かいんですよね。
まぁ、ぶっちゃけて言えば、アクションの上手さから見て明らかに2号の「中の人」のほうが先輩のように見えるので、おそらく、
「おい、もうちょっとスピード落とせ! 落とせってコノヤロ!」
とか言ってたのかもしんないけど……大野剣友会のみなさま、ご苦労さまでございます!!
3、出るわ出るわ、総勢40体もの改造人間軍団の「仮面の世界(マスカーワールド)」!!
いや~、これはもう最高ですよね。最初にあの地獄谷での再生改造人間軍団総登場シーンをレンタルビデオで見た時、小学生だった私は映画館で観なくてよかったと心底思いましたよ。だって、あんなん大スクリーンで見せられたら失禁ブッシャーでしょ!! あのトカゲロン戦での「11体」をはるかに上回る「40体」よ!?
ショッカー史上初の再生改造人間軍団投入作戦となった、トカゲロンを実行部隊長とする1971年6月の「原子力研究所襲撃計画」いらい、改造人間製造技術のめざましい技術革新&ローコスト化を実現したのか、ショッカー日本支部はちょくちょく再生改造人間を、新型改造人間のサポート役として投入してきました。今回の「 GX方程式奪取作戦」までの時点での遍歴は、ざっとこの通り。
第13話『トカゲロンと怪人大軍団』(1971年6月)、第27話『ムカデラス怪人教室』(1971年10月)、第37話『毒ガス怪人トリカブトの G作戦』(1971年12月)、第41話『マグマ怪人ゴースター 桜島大決戦』(1972年1月)、映画『仮面ライダー対ショッカー』(1972年3月)
ほんでま、コストが安いのか、なぜかヘビロテで再生される改造人間(『仮面ライダー対ショッカー』までの時点で)もついでに挙げておきましょうか。
・サラセニアン(3回) ・ゲバコンドル(3回) ・カニバブラー(2回) ・ムカデラス(2回) ・モグラング(3回) ・アルマジロング(3回)
ほほう……なんか、ゲバコンドルとムカデラスとアルマジロングは性能がいいから重用して、サラセニアンとカニバブラーとモグラングは作りやすいからよくお呼ばれするっていう、再生の理由の二極化が透けて見えるような気がしますね。ここも格差社会だな~!
ちなみにここまで調べたんで、逆に今回のお祭り騒ぎにまったく呼ばれなかった(『仮面ライダー対ショッカー』までの時点で1回も再生されていない)改造人間も挙げてみましょう。ヒマね~!!
・ヒトデンジャー ・アマゾニア ・クラゲダール ・カビビンガ ・ベアーコンガー ・ヒルゲリラ
これさ、たぶん、アマゾニアとクラゲダールは地獄谷ってことで陸上戦を想定していたから基地待機になっていたのかな? ヒトデンジャーは、そもそも高温多湿な日本列島では絶望的に使い勝手が悪い「水が弱点」っていう特徴があるから、ショッカーのオーストラリア支部かモンゴル支部かサハラ砂漠支部にでもすっ飛ばされたんでしょう。カビビンガ、ベアーコンガー、ヒルゲリラは比較的最新型の高性能改造人間(当時)なんで、高コストで見送られたのかも。
ところで、かつてトカゲロンの時に再生されていた蜂女と改造コブラ男は、今回『仮面ライダー対ショッカー』では呼ばれておりません……その理由は、当時の作戦状況を見れば一目瞭然かな!? ライダーによけられて地面に落ちただけで殉職とか、棒っきれで腰をぶっ叩かれたから殉職とか……さすがのショッカー経理部も、このお2人を再生させる経費があったら、戦闘員が乗るバイクの買いつけにまわした方が何倍もマシだと気付いたのかな?
ところで、今回じっくり見直してみて気がついたのですが、地獄谷の遠景撮影ショットで、トカゲロンと見られる改造人間がイソギンチャックとゴースターの間、ピラザウルスと見られる改造人間がムササビードルとドクガンダー幼虫の間、かまきり男と見られる改造人間が地獄サンダーとさそり男の間に確実にいるんですよね。でも、直後にカメラが寄って再生改造人間軍団が名乗りをあげるカットでは、このお3方はなぜか姿を消しているんですよ。ケツカッチンだった? でも、その後の軍団が撤退する遠景ショットでは、また出てきてるんだよなぁ……トイレ行ってたのか?
なので、諸資料で「予告編にしか出ていない」という情報のあるトカゲロンとピラザウルスとかまきり男は、全員ただ単に「名乗っていないだけ」なのであって、映画本編にもちゃーんと登場しているという事実は明言させていただきたいと思います。映画に出れたよ、おっかさん!!
ただ、同様に地獄谷で名乗らなかったプラノドン、ギルガラス、キノコモルグがのちに1・2号に奇襲をかけている経緯を見ると、かまきり男、トカゲロン、ピラザウルスもまた、実際には会敵しなかったものの、独立部隊を編成してどこかで潜伏していた可能性はありますよ。さすがは策士・死神博士!!
最後に、もはや恒例となった、死をも恐れぬ勇気を振り絞って仮面ライダー1・2号に立ち向かい、そして戦場の露と消えていった、名誉あるショッカー再生改造人間のみなさんの最期をまとめてみましょう。敬礼!!
登場した40体中、本作で実際に仮面ライダーと戦闘した改造人間は……(殉職 or 画面フェイドアウト順に)
・サボテグロン(投げたサボテン型爆弾「メキシコの花」を2号に蹴り返され爆死)
・モグラング(サボテグロンと共に「メキシコの花」の爆発の巻き込まれ爆死)
・ハエ男(2号のライダーキックで爆死)
・アリガバリ(1号のふつうのチョップを受けて爆死)
・ドクガンダー成虫(1・2号と交戦するがザンジオー撤退後は生死不明)
・地獄サンダー(2号にふつうに投げ飛ばされた後は生死不明)
・エジプタス(1号のふつうのキックを受けた後は生死不明)
・プラノドン(1・2号の合体技「ライダーハンマー突き」を受けて爆死)
・ギルガラス(1・2号の合体技「ライダーハンマー突き」を受けて爆死)
・サラセニアン(1・2号によってトリカブトと頭をぶつけ合った後は生死不明)
・トリカブト(1・2号によってサラセニアンと頭をぶつけ合った後は生死不明)
・ドクダリアン(1号のライダーキックで爆死)
・キノコモルグ(2号のライダーキックで爆死)
・ザンジオー(1・2号の必殺技「ライダーダブルキック」で爆死)
みんな、よくがんばった!! 安らかに眠れ……また呼ぶかもしんないけど。
子どもの頃に見た時は、「40体ぜんぶ闘えよ! 博士、呼び戻してよ~!!」と無責任にいら立っていたものでしたが、こうやってよくよくカウントしてみると、14体もの精鋭が1・2号としっかり交戦してるんですよね。いや、殺陣のバランス的にも、もうこのくらいでいいでしょ! それでトカゲロンの時よりもよっぽどマシな闘い方をしてるんだもん、合格合格、大合格!!
生死不明っていっても、だいたいみんなその時点でかなりのダメージを食らってフラッフラになってるもんね。「死んだことにしといて☆」っていう制作スタッフの声が聞こえてきませんか?
ただそれにしても、「 GX方程式奪取作戦」が失敗した後も、ショッカー基地の改造人間寮「いくた荘」では、この時に再生させた改造人間のうち26体がピンピンして待機してるってことになりますよね……その大軍団は、その後どうなったのかしら? いくら性能に難がある再生改造人間といっても、今後の作戦展開のフォローに回したらけっこう役に立つと思うのですが。
これはおそらく、あの冷酷無比でプライド激高の死神博士のことですから、後任の「あのオヤジ」にみすみす余剰戦力として提供することは大いに癪に感じたのでしょう。26体全員を引き連れてショッカー南米支部にトンズラぶっこいたのではないのでしょうか。「立つ鳥、跡を濁さず。」みたいな言い訳して。やりかねないな~! ヤな感じ!!
ま、そんなこんなでさまざまな思惑を巻き込んだまま、名作『仮面ライダー対ショッカー』は、その後のさらなる激戦の予感をはらむ TV本編へと、そのタスキを渡していくのでありました。
あと、子役の演技クオリティがかなり高いとか、ショッカー戦闘員の最終完成形である「骨戦闘員」の初投入とか、新型改造人間ザンジオーの地位が意外と低い理由とかいうポイントも残っているのですが、そんなこんなの魅力がぎゅうぎゅうに詰まった32分間。ホントにすばらしい! 意味もなく2時間30分とか3時間とかほざいてるハリウッド大作なんかどうでもいいから、とにかくこっちの熱さにシビれてほしい! 令和の子ども達も!!
なにげに、ライダーと改造人間たちが死闘を繰り広げている冬枯れの広場が、ステキに昭和でいいんだよなぁ~。周辺の住宅地にさすがに人影は見えないんだけど、どこのお宅も、天気がいいからベランダで蒲団とかシーツを干してるんだよね……激しい命のやりとりと、それにまるで気づかない一般市民のかりそめの平和! 石ノ森章太郎ワールド特有のアイロニーを見事に表現した神演出だ!! 偶然映り込んだだけじゃないと、あたしゃ信じたいぃィイ!!
天本さん、ステキですよね~! 前にもどこかの記事で書いたのですが、私は関東にいた2000年の1月に、映画『ロルカ、暗殺の丘』が渋谷かどこかの映画館で公開された記念の特別講演で生の天本様に拝謁し、講演後にロビーを音もなく去ってゆく長身痩躯のお姿に心を奪われた思い出があります。死神博士は、本当にいたと!! ニコニコ笑ってて、マントの色も違ってましたけど。
今回の『仮面ライダー対ショッカー』もそうですが、内容設定がいくら荒唐無稽でも、俳優のたたずまいが、その存在に十二分すぎるほどの説得力を持たせてしまうという稀有な才能の持ち主だったと思います。まさしく、日本特撮界の笠智衆!!
没後すでに19年になんなんとする今、それに匹敵する俳優さんが令和の現在いらっしゃるのかどうかはわかりませんが(そもそも、その受け皿となるちゃんとした悪の組織が無い!!)、今でもこうやってその偉業を楽しむことができるのは、すばらしいことですね!
ちなみに私は、映画『殺人狂時代』(1967年)での溝呂木省吾博士役がいちばん好きです! スペイン愛が公私混同で大爆発♡
演じられた天本英世さんは、海底軍艦のムー帝国長老、キングダコング対メカニカルコングのドクター・フー、あけてくれ❗(ウルトラQ)の小説家、さーらーにー、宇宙からのメッセージでは老婆役までこなした名優でした。この人を超える悪のボス役は考えられません‼️
改めてご冥福をお祈りいたします。