長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ついに観た 梅雨どきだから この一品  映画『星砂の島、私の島 アイランド・ドリーミン』 本題!!

2012年06月23日 22時19分32秒 | 日記
 ハイサーイ!! どうもこんばんは、そうだいでございます~。今日も一日お疲れさまでした!


 さぁ、まえふりは前回にさんざんやりましたからね! とっとと本題に入ることにいたしましょうやぁ。
 いや、「まえふり」さえもやってませんでしたけどね、八重山諸島の話がしたかったのにじぇんじぇん関係ない瀬戸内海の鞆の浦で盛り上がっちゃって……

 ということで今回は、2012年現在の名門モーニング娘。をそれぞれ「リーダー」と「エース」という超重要な両輪でになっておられる第6期メンバーのお2人が、デビュー直後、っつうか、ハッキリいって「デビュー直前」に出演していた映画についてのつれづれを語ってみたいと思います~。

 ういういしい。ういういしすぎです。しかし、作品を観てみると、そこには「アイドルのなつかしい映画デビュー作」とかたづけるだけではあまりにももったいない不思議な輝きが!?

 誰も要求してないのに私はこの世界いっぱいに聞こえる声で叫びたい。

「丸一年前、第一印象から亀井絵里さんに魂を奪われてしまった私の眼は狂っていなかった!! 頭は狂ってるかもしれないけど、眼は狂ってなかったのだぁあ!! えりりんに幸あれ、あ~さひぃ~よ のぉぼれェエ~イ☆」



映画『星砂の島、私の島 アイランド・ドリーミン』(2004年2月公開 114分)

あらすじ(DVDパッケージの解説文などより)

小さな島で、でっかい幸せ見つけた!! 観る人すべてに幸せを運ぶ感動ストーリー!

 沖縄本島から南西に約500km。そこに、人口約300の小さな島、竹富島(たけとみじま)がある。
 そこはサンゴ礁に囲まれたエメラルドグリーンの海! どこまでも続く広い空! 古い琉球の町並みが広がる集落! 伝統と文化を守る人たちが暮らしている。
 その竹富島に、ひょんなことから臨時の体育教員として赴任した主人公が、そこで働く教師たちや島の人々、そして教え子とふれあい、美しい自然がそのまま残る竹富島にいやされ成長していく。

 競技中のケガによってオリンピック出場の夢を断たれ、何事にも投げやりになっていた大学生・北条早苗は、体操部の監督だった小山内に石垣島での体育の臨時教員の仕事を紹介される。卒業を間近に控えながらも就職が決まっていなかった早苗は南国でのリゾート気分で即座に勤務を決意するが、実際に採用されたのは石垣島から高速船で10分程の距離にある小さな島の竹富島だった。早苗は自分の思い描いていたイメージとの大きな違いに落胆するが……


企画・監督 …… 喜多 一郎(47歳)
 ※本作は、TVプロデューサーとして活動していた喜多一郎の第1回監督作品となった
脚本 …… 喜多 一郎・堀江 慶

主題歌 …… BEGIN 『ユガフ島』

キャスト
主人公・北条早苗 …… 大多 月乃(22歳)
 ※大多月乃は本作が映画初主演で、以降は2007年まで女優として活動していた

竹富島の教師・前田聡 …… 津田 寛治(38歳)

竹富島の中学生・豊見丸(とみまる)美紀子 …… 亀井 絵里(モーニング娘。第6期 15歳)

竹富島の中学生・渡久地(とぐち)サト …… 道重 さゆみ(モーニング娘。第6期 14歳)

日本内地からの転校生・宮村真紀 …… 横山 可奈子(16歳)

竹富島の住民・多恵 …… 麻宮 美果(24歳)

多恵の夫・雄太 …… 榊 英雄(33歳)

竹富島の住民・春男 …… 堀江 慶(25歳)

竹富島の住民・米蔵 …… 谷 啓(72歳)

竹富島の地区長・金城 …… 塩屋 俊(「しゅん」の方じゃなくて「とし」!! 47歳)

竹富島の校長・山盛 …… 菅野 達也(49歳)

竹富島の教師・政田 …… 山田 幸伸(42歳)

竹富島の妖精たち …… BEGIN
 ※BEGIN のメンバーは竹富島に近い石垣島の出身で、当時は夏川りみによる『涙そうそう』カヴァーの大ヒットを契機とした再ブレイクのただなかにあった

早苗の後輩・五十嵐 …… 三船 美佳(21歳)

早苗の恩師・小山内 …… 筧 利夫(41歳)

早苗の父・北条重俊 …… 勝野 洋(54歳)

早苗の姉・北条美由紀 …… 桜井 淳子(31歳)

早苗の妹・北条良枝 …… 田中 れいな(モーニング娘。第6期 14歳)


撮影期間
2003年6~7月の約2週間
 ※DVD の特典にあったメイキング映像によると、東京での撮影と竹富島での撮影が1週間ずつというスケジュールだったが、他の2名に比べて役の重要度が高かった亀井絵里は稽古も含めて2週間、竹富島に滞在していたという(道重さゆみは滞在1週間で、東京シーンの出演しかない田中れいなは竹富島入りすることはなかった)

竹富島について
・沖縄本島から南西に500km に位置する八重山諸島のひとつで、沖縄県の主要都市である石垣島と、大自然豊かな西表島(いりおもてじま)にはさまれた位置にある(石垣島との距離は6kmで船で10分ほど)
・面積5.5平方km、外周9.1km、人口約300名の小さな島
・映画に登場する「竹富町立竹富小・中学校」は全校生徒20名ほどの規模
・竹富島が映像メディアで取り上げられるようになったのは2000年放送の TBSドラマ『真夏のメリークリスマス』(主演・中谷美紀)が最初で、同年にはBEGIN も竹富島を唄った楽曲『竹富島で会いましょう』を発表している
・竹富島をあつかった映画は本作の他に2005年の『ニライカナイからの手紙』(監督・熊沢尚人、主演・蒼井優)と、物語上のつながりはないものの、喜多監督が再び竹富島を舞台にメガホンを取った2010年の『星砂の島のちいさな天使 マーメイドスマイル』(主演・飯田里穂)がある

当時のモーニング娘。第6期メンバーについて
・第6期メンバーの3名は2002年12月~03年1月に開催された「LOVE オーディション2002」の結果、1万4千名の候補者の中から選ばれ合格していた
 ※正確には、モーニング娘。第6期メンバーはこの3名に、ソロアイドルからグループに加入した藤本美貴(18歳)をあわせた「4名」
・オーディション合格ののち、第6期メンバーが本格的にグループ活動に参加したのは2003年7月の19thシングル『シャボン玉』から
 ※同期の藤本美貴のみは、ひとあし先に同年6月のモーニング娘。出演のミュージカル『江戸っ娘。忠臣蔵』から参加している
・2003年7月の本格的な活動開始と同時に、第6期メンバーの3名がモデルとなった写真集も発売されている
 ※この写真集の撮影場所は竹富島に近い石垣島だったが、田中れいなは映画本編では竹富島ロケに参加していない
 ※モデルの3名、特に亀井絵里の日焼けの進行状況から見て、この写真集の撮影は映画クランクインの前におこなわれたとみられる
・2003年当時、第6期の参加によってモーニング娘。メンバーは史上最多の15名に拡大しており、「おとめ組」と「さくら組」に分かれて活動していた(リーダーは第2代の飯田圭織)
 ※映画が公開された翌2004年2月の段階ではエース・安倍なつみ(24歳)が卒業したため14名になっている
・「現役のモーニング娘。メンバーが出演している映画」としては、2002年12月公開の『仔犬ダンの物語』に続く6作目となるが、本作のような「新人メンバーしか出演していない作品」は他に類を見ない


 我が『長岡京エイリアン』恒例の展開で、説明資料だけでそうとうな文量になってしまいました。毎回毎回、ホントにすみません……
 なんで、さっさと結論から言っちゃいましょう。


この映画、おもしろかったよ!!


 ハッキリ申しますとこの映画は、監督もお初だったし、予算もスケジュールもそれほど余裕のある状況ではなかったように見受けられるので、「監督の計算によって完成された作品世界」だとか「豪華スターによる最高峰の演技の競演!」といったハデハデしいものではありません。
 お話の流れも、「都会で自分の生きがいを見失っていた主人公が、離島の大自然や現地の住民たちのあたたかさにふれて再起していく」という非常にオーソドックスなものとなっているので、「まぁ、映画じゃなくても……地方制作の TVドラマだったとしたらそうとうな傑作だけど。」といったかわいらしい規模のものとなっています。

 でもねぇ……私にとっては、芸術作品としての映画なんか、かぎられた監督さんの作品だけで充分なんです。
 私がこの『星砂の島、私の島』でいたく気にいったのは、「舞台となった竹富島と出演者との相性の良さ」! これだけ!!
 これだけなんですが、ここがともかくすばらしかったんですね。観ていてなんとなく幸せになれる映画。そこが保証されているのなら、それ以上にいったい何が必要だというのでしょうか。

 竹富島現地での撮影スケジュールも1週間ということで相当にタイトで、それ以外の土地からやってきたプロの俳優さんが竹富島に長く住んでいる島民の役を演じるのは至難のわざだったかと思うのですが、そこは「技術でうまくなりきる」というのではなく、「どうせ短い間なんだから楽しく島といっしょになる」というかたちで、実にいい感じの空気を生み出しているんですよ。この「お祭り感」ね!

 正直言って、この作品で監督の喜多さんが演出家としてどれほどの力量を持った方なのかはわからなかったのですが、とにかく「昔っから撮りたかったんだよぉ、こういう南国の映画!」というはじめてのウキウキ感だけは画面いっぱいに満ち満ちていて、今回の場合はその多幸感が非常にいい方向にいっていたんじゃなかろうかと感じたんですね。
 こういうテンションは、ちょっと間違えば観客を置いてきぼりにした「オレ様映画」になりがちなんですけど、この作品に関してそこをそうさせなかったのは、なんといってもやっぱり、青い空、白い雲、碧の海の竹富島のかけがえのない風景と、画面のはしばしに登場する現地の人々の底なしの明るさだったんですねぇ~。このあたりがとにかく観る者をひきこむひきこむ。

 私、思うんですけど、よくあるつまんない「ご当地映画」というものは、大都市、大体の場合は東京から「仕事のひとつ。」という割り切り方でやってきたプロの俳優さんがたと、それを待ち受けて「町おこしの一大イベント!」という切迫感でガッチガチに緊張している現地の方々との、ど~しようもないスタンスの差が致命的な目ざわりになってしまっているんです。具体的に「どれ」とは言いませんが、この『長岡京エイリアン』でもそ~いう映画はとりあげたこと、ありますよね。おたかさんには申し訳ないですけど!

 でも、そういう温度の違いは、つまるところは「仕事」と「町おこし」とで、肝心の映画の撮影が始まっているのにそれぞれの陣地を抜け出せないままでなぁなぁになってしまっている両者がどっちも悪いんです。理想のヴィジョンを共有していない人たちが集まって無理に作っている作品なんて、監督さんにそれを力づくで統括するよっぽどの才覚がなければ、とうていお金を払って観るものにはなりません。

 その点、『星砂の島、私の島』にはものすごい一体感があります。そして、プロとしろうととが絶妙にマッチしたこのひとときを作りあげていたのは、もうなんと言っても監督……じゃあなくて!! 竹富島の空気なんですなぁ!

 画面から伝わってくる竹富島の風景は、俳優さんがたに「さっさと仕事を終わらせて東京に帰ろう。」という気分をいだかせることは微塵もなかったはずです。と同時に、「都会からわざわざやってくる映画のみなさんを最高のサービスで歓待しなければ、わが島の未来もない!」という、現代の地方都市にありがちな焦燥感なんてものも1ミクロンも存在していないのです。

 これですよ……緊張感をまったく見せることなく自然体でやってきた人々をむかえ、「なんだか楽しそうだから!」という気分で、劣等感も目立ちたがり感もなくナチュラルに映画の中にうつりこむ。これ以上にすてきなエキストラがいるでしょうか。
 まぁ場面によっては、画面の中心にいて大事なセリフのやり取りをしている主人公たちよりも、その奥でお酒の勢いにまかせてはしゃぎまくっている島民のみなさんのほうがおもしろくて、ついついそっちに見入ってしまうという難点もあったのですが。そんな映画、ある!?

 俳優さんのほうは、とにかく主演の大多月乃さんと津田寛治さんの2人がいいです。現在ではモーニング娘。の6期の出ている映画だとしか話題にならないかもしれない本作なのですが、その内容は思った以上にしっかりした「若者が自分の生き方を模索するロードムービー」になっているんですよ。
 特に、東京シーンから出ずっぱりで主人公をつとめている大多さんの、元気いっぱいにぶちあたって竹富島に順応していく存在感なくして、この映画は成立しえなかったでしょう。

 もうひとつだけ言うと、この映画は非常に単純なストーリーでありながらも、大多さん演じる主人公が、自分の中で逃げたがっている過去に真正面から向き合い、「スポーツ振興」という、それまでの竹富島にはなかった要素の旗手になることによって、自分のこれからの人生に活路を見いだすという流れをしっかりとふまえています。
 つまり、ただ単に「主人公が楽しい理想郷に行って勝手に癒されて元気になった。」という自己完結なお話になっているのではなく、その土地とのギブアンドテイクを成功させることによって自分も進歩するという、この上なくまっとうな交流の物語になっているのです。
 ここにこういう形で、主人公と土地との血のかよったやりとりがあるのも大事なんですよねぇ。これがなければ、主人公なんかそこらへんの「自分探しの旅人」とおんなじで、どうにも好きになれないハナたれガキンチョになっちゃいますから。


 でもね。いろいろありますけれども、私が注目したいのはやっぱり、ここなんですわ。


亀井絵里の堂々たる女優っぷり!! キャ~、エリック~♡


 すごいんですよ。カメさんすごいんですよ! この映画、「モーニング娘。第6期の3人が出ている作品」じゃないんですよ、「亀井絵里が出ている作品に、ほかの2人もサポートで出てる」って感じなくらいに役柄の重要度が違うんです。
 そしてその重責を、当時15歳で「半年前まで正真正銘のドしろうと」だったカメさんがなんなく背負いきっている! とてつもねェ~ポテンシャルをもった娘ッコだ!!

 いや、いや、みなさん。私はあくまでも公平にこの作品を観てそう断言しておるのです。私はつとめて冷静です。頭はおかしいですが冷静です。
 私は決して、私の大好きなカメさんだけをひいき目でみて持ち上げているのではありません。

 作中、モーニング娘。第6期メンバーの3人はそれぞれ、田中さんが「東京にいる主人公の妹」、道重さんとカメさんが「竹富島の中学生」を演じています。3人そろったショットが観られないのがちょっと残念。

 ところが、作品を観ていただければおわかりの通り、田中さんと道重さんは主人公の周囲にいる人間として応援に徹しているだけのキャラクターであるのにたいして、カメさんだけは天性の優れた運動神経を秘めているおてんば娘として主人公の前にあらわれ、大多さん演じる主人公・早苗を「ケガによって体操の選手生命を絶たれた過去にとらわれる苦悩」から開放し、「自分にかわる未来の体操選手を育てあげる教育者としての道」に目覚めさせるといった、非常に重要なキーマンとなっているのです。

 しかもこの、カメさん演じる「マルミ」という愛称の娘さんは、自分の感情を素直におもてに出していく性格であるがゆえに、竹富島になじめない、横山可奈子さん演じる転校生・真紀と衝突したり和解したり、はたまた親の都合で島を去ることになった真紀との別れに涙したり、そうかと思えば、早苗先生とともに取り組む体操選手になるための猛練習と、家業(竹富島名物の水牛の遊覧車)の手伝いのどちらをとるかに苦慮したりと非常に多彩な表情を見せてくれる「生きている」キャラクターになっているのです。

 さきほども言ったとおり、この『星砂の島、私の島』はあくまでも、年齢は大人なのに大人になりきれないでいる男女が主人公のヒューマンドラマです。しかし、それだけでなく少女マルミの物語がちゃんと独り立ちしてまわりに付随していくことによって、より見どころ満載で豊かな作品になっているところがいいんですね。
 もちろん、体操に特別な想いを持った主人公が赴任先で偶然に天性の素質のある教え子に出会うというのは、いかにもフィクションらしい都合のいい展開ですし、自身の不慮の大ケガといった中盤のハプニングを乗り越えてマルミをオリンピック強化選手予選に送り出すというクライマックスは、まぁ予想のつくハッピーエンドとなっています。

 でも、それはどうでもいいんです。展開がベタか新鮮かなどという問題は本当にどうでもいいことで、要は、その画面に映っている人々がどのくらい真剣にその瞬間ひとつひとつの中で「生きているか」なんじゃないかと思うんだなぁ。

 たとえば、「親友が転校していくことに涙を流す」という行動は、家族が事故で突然に亡くなってしまったり、恋人がはるか遠くの地で巻き起こっている戦争に従軍して死んだりすることについて泣くことに比べたら、圧倒的に「軽いこと」なのかもしれません。おそらく、泣いた本人も5年や10年たったあとに元気な親友と再会したりしたら、「なんであんなことで泣いたんだろうねぇ?」と笑いとばすかもしれないほどのささいな思い出にしているでしょう。

 でも、親友が転校していくそのときその瞬間に流れた涙の美しさというか、「いつわりのなさ」は本物だと思うんです。それが未来にどのくらい小さなワンエピソードになるのだとしても、当時の本人にとっては世界が変わるほどのスケールを持った一大事件なんですね。

 そこなんです。ストーリーはどんなにベタでも、いろいろな瞬間のマルミ、つまりは亀井絵里という「アイドル直前」の少女の多くの表情が克明におさめられているという意味において、この『星砂の島、私の島』は非常に奇跡的な記録映画になっているんですね。

 そして、この作品をそうしたのは間違いなく、スタッフの多くの要求に驚くほどの対応力でこたえていったカメさんの「女優としての実力」だったのではないかと!

 一例をあげるのならば、カメさん演じるマルミは、物語の前半で竹富島の外からやってきた転校生・真紀と、観る者に非常に多くのことを考えさせてくれる、以下のような口論を繰り広げます。言うまでもなく、私がこの映画の中で最も好きなシーンです。


マル 「ねぇ、ちょっと! (竹富)島の悪口は言わんでよ。」

真紀 「島の悪口じゃない、あんたの悪口言ってんの。」

真紀の彼氏 「(マルミに)おい、なんだおまえは? サルみたいな顔して。女か?」

マル 「(真紀に)ねぇ、あんた。こんな男のどこがいいわけ?」

彼氏 「はぁ!? なんて?」

真紀 「(彼氏に)いいの。この子イナカモンだから相手にしないで。」

マル 「あんたみたいな生意気で気どった女は竹富にはいらん。竹富の女はもっとたくましいよ。早く石垣(島)の学校に行ってしまえ!」

真紀 「私だって好きで越境してんじゃないの。ママが『どうしてもここに』って推薦状書いたのよ、私は石垣でいいのに。」

マル 「竹富と石垣じゃ根性が違うよ、根性が!」

彼氏 「そういうのを『島根性』っていうんだよ。」

マル 「はァ!? どういう意味さ!」

真紀 「ホント、なによ、島、島って! また私のこと『内地の人間』とかって言うんでしょ? だいたいなによ、内地って。」

マル 「本州だって大きな『島』さ。」

真紀 「本州が島だったら日本全部、島でしょ? バーカ!」

マル 「……なによ、ウソツキのくせに。」

真紀 「は?」

マル 「あんた、喘息なんてウソだろ? ぜんぜんセキなんてしないさ。それにあんた、親が離婚して登校拒否するから、しかたなく八重山にあずけられたんだろ? みんな知ってんだから。」

真紀 「……」

マル 「どんなね? 弱虫。ちがうんか!?」

彼氏 「(マルミに)おまえ……言いすぎだぞ!」


 ちょっと引用が長くなりましたが、どうですか、みなさん! スゲくね!?

 おそらく、その後のモーニング娘。メンバーとしての亀井絵里さんを知っている人ほど、このマルミという少女の役を演じる彼女の姿は想像がつかないのではないでしょうか。でも、この役をカメさんが予想以上の気迫をもって堂々と演じきったことはまごうことなき歴史的事実なのです。

 このやり取りの中には、およそ中学生の娘どうしが口論するレベルとは思えない大問題がいくつも込められています。
 おそらく、『星砂の島、私の島』のこのシーンを観たあとで竹富島や石垣島をいっしょくたにして「沖縄」とひとまとめにできる人はいないんじゃないでしょうか。竹富にとっての石垣、そのふたつがある八重山諸島にとっての沖縄本島、そして、沖縄県にとっての本州……そこにはマトリョーシカのように果てのない「うちとそと」の関係が続いているのです。

 だいたい、最初にあげた資料の示すとおり、八重山と沖縄本島とのあいだにはおよそ500キロという、「東京~京都間」に匹敵する物理的へだたりがあるのです。それで八重山の西200キロにはもう外国の台湾があるんですから、そんな島々を「ひとつの県」として認識することの乱暴さといったらないのです。方言も通じないくらいに違うそうだし。

 映画では屈託のない笑顔を見せている竹富の人々の中にも、マルミの抱えているような一面はあるのかもしれない。でも、それが悪いのではなく、そういう感情の同居している存在が「人間」だし、その集積こそが「世の中」なんだと感じさせてくれる、この深さですね。
 作品のメインにある主人公の物語とはまったく関係のないこのやり取りだったのですが、私の心にいちばん大きな感慨を残してくれたシーンでした。

 とにかくこのシーンは、セリフの内容に輪をかけて、感情をあらわにするマルミと冷めきった真紀との激突がものすごい緊張感を生み出す名場面となっていて、私としてはあの映画『ロッキー』での、ロッキー=バルボア VS アポロ=クリードの対決にならぶ一戦になっていたと断言したいです。言いすぎ……じゃない! また、ツンとした真紀を演じる横山加奈子さんが年齢不相応にうまいんだよなぁ。

 そして、ここで堂々たる「竹富島の女」を演じきっていた亀井絵里さんが、実は「東京都出身」だという驚愕の事実ね……

 モーニング娘。第6期の3人で言ったら、道重さんが山口県出身で田中さんが福岡県出身なんですから、よりにもよっていちばん竹富島から遠い人間が最重要な役柄に抜擢されたことになるのですが、結果は奇跡的な大成功だったということになりますね。
 でも、これはおそらく当時、それぞれで実家から東京に引っ越してくる必要のあった2人にたいして、カメさんが演技の練習に時間をかける余裕が格段にあったからキャスティングされたということだったのではないでしょうか。
 それにしても亀井絵里、おそるべし。ほぼ初の演技経験だったにもかかわらず、これほどの難役をものにしてしまうとは……!

 セリフの中で真紀の彼氏が「サルみたいな顔」と指摘したとおり、この作品でのカメさんは、顔の肌とくちびるとで色のちがいがわからないくらいにワイルドに黒々と日焼けしてしまっており、見事なまでの「かりんとうガール」になっています。白目の部分以外はぜんぶ真っ黒!

 うおぉ、白目!! そうそう、この映画でのカメさんの白目は実になんちゅうかその……うつくしい。
 強い「マルミ」という自分がちゃんといる目をしているんですよね。それがあるんだったら、多少のセリフの硬さなんかはほんとにどうでもいいんです。ふつうにしゃべる発言の一字一句がハッキリ明瞭で、生まれてこのかた、言いなおしもカミもしたことがない人なんて、どこにもいないでしょ!? 真矢みきさんじゃないんだから。

 よく、この『星砂の島、私の島』を観た人のレビューの中に「あのモーニングなんちゃらの娘たちの演技が演技になってなくてヒドい。」とかいうものがチラッチラ見受けられますが、私は声を大にして言いたい。「おまえ、目、ついてる?」と。
 田中さんや道重さんはしょうがねぇよ。でも、あの亀井さんをさして「演技がヘタ」という人間は、先入観ばっかりで目がくらんでほんとに起こっている物事をまともに観ることもできないでいる、哀しきとっつぁんボーヤです。テクニックばっかでしか判断できないなんて、あわれねぇ~。自分の魂で相手の魂を感じてかないと、生きてても楽しくないよ!!


 あぁ、また文章が長くなってしまいました……
 この『星砂の島、私の島』は、私が触れたことのほかにも、島の老人を演じる谷啓さんがあまりにも自由すぎる、竹富シーンにくらべて冒頭の東京シーンに登場する面々があまりにもパッとしなさすぎ、特に筧利夫の演技が浅いにもほどがある最低さになっている、田中れいなさんが演技をしながらチラッチラ「カメラ目線」になっているなどという重大な諸問題をはらんではいるのですが、そのへんは涙をのんで割愛させていただきたいと思います。

 しかし、知らなかった。
 あの亀井絵里さんが、グループ参加当初には声も極端に小さくおどおどしていて、活動に慣れたと思ったとたんに「アホキャラ」だの「ぽけぽけぷう」だのと呼ばれて最もバラエティ向けの存在だとイジられることとなった彼女が、プロもはだしで逃げ出す鮮烈過ぎる「女優」の才覚を秘めていたとは……
 その後はちょっとした役でドラマや映画に出演したりアニメの声優にも挑戦していたこともあったカメさんでしたが、基本的にそういうお仕事はメインじゃなかったかと思ってました。大きな間違いでしたわ。


 不思議だ……知れば知るほど不思議な存在です。あるいはあれは、竹富島の妖精たち(まんまBEGIN)が見せてくれた、うたかたの幻だったのでありましょうか。

 思えば、この映画の中心にいた大多月乃さんと亀井絵里さんは、どちらも2012年現在、日本の芸能界には身をおいていないようです。

 むろんのこと、そのほかのみなさんの多くは今も現役で活躍されていて、特に道重さゆみさんと田中れいなさんは、あれから9年の時をへて、いまやモーニング娘。を先頭に立ってひっぱる立場になっています。


 時は流れる。ゆくものはゆき、あるものはあり続ける。


 そういうごく当たり前のことをしみじみ考えさせてくれるタイムカプセル。それがこの、映画『星砂の島、私の島 アイランド・ドリーミン』なんですねぇ。


 竹富島、いつか行ってみたいですねぇ。
 でも、突然行っても身体によくないから、まずは江ノ島くらいからおそるおそる始めてみましょうかね。その次は熱海かな。

 ……生きてるうちに行けるか、これ?
 まっ、長生きするか☆
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