華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

” 東洲斎写楽はもういない ”   明石散人 + 佐々木幹雄 著

2006-02-12 00:12:14 | ★本
浮世絵が好きというわけではないけれど 東洲斎写楽は誰かという謎に 少々関心がある 
この頃殺人の起きる推理小説を読む機会が多いけれど 謎を解いていくお話を推理小説といえるなら
わたしにとって この本はスリルとサスペンスに満ちた上等の推理小説である
十分わくわくし それで それで? と ページを繰る手が 先へ読み急いていく
自称明石散人(あかし さんじん)と名乗るY氏と知り合った私は 写楽を追いかけてみませんかと
提案する      読み始めてまもなく 以下の文を読み この本は面白そうと  ときめいた

          **************


本書の主人公であるY氏は、私に対し、写楽という媒体を通して様々なことを教えてくれた。
しばしば彼は、従来の「写楽本」 _多数出版されている「写楽研究本」や「画集」を総称して、Y氏は
こう呼ぶ_ のことを算数の計算を例にとって説明してくれた。
「写楽本」の筆者達は、写楽の謎を、

    1+2=3   2+1=3

という、どちらも「3」が答えとなる二つの「足し算」で計算し、答えが同じになったことで証明が完了したと
思い込んでいる。   これは明らかに誤りだ。   何故なら、あらかじめ予想された結果「3」を、
手元にあるデータをもとに検証したに過ぎない。
写楽の作品が発表されたのは200年近くも前の出来事である以上、最終的に百パーセントの証明は
不可能である。   だからこそ、写楽の証明は「引き算」的方法で行なわなければならない。  
つまり 二つの計算式は、こう変化する。

    1-2=-1   2-1=1

整数値が同じであるため一見同じように見えて、実は異なる二つの答え 「マイナス1」と「プラス1」を、
証拠を提出しつつ、 なおかつ論理的に 「-1=1」として説明しなければならないのだ。  
言い方を換えれば、「マイナス1」を「プラス1」に限りなく近付けていくことこそが、「引き算」的証明なのである。   
はじめから用意された一つの答えではなく、 似て非なる二つの答えをいかにイコールでつなぐか・・・

         ****************


こういう考え方のY氏は 膨大な量の資料を読み 写楽が存在したとされる数ヶ月間の歌舞伎や能舞台の上演日や演目まで検証明記してみせる
その学術的な検証検討の緻密詳細さに わたしは敬意瞠目と共に ついつい飛ばし読みしてしまう
資料を読み その繋がりから他本を探し読み込み  いったいどのくらいの月日を調査したのだろう
様々な証しを提示されて 東洲斎写楽の読み方は 「とうじゅうさい しゃらく」 と呼ばれていたと解く
けっして薄い本ではないけれど 論の進め方が犯人探しの高揚感にも似て わくわく どきどき読める
謎は解けた  
この作者の論理の組み立て方  ものを見る視点角度に惹かれた    学びたいものである
                                  
コメント (2)
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