女性作家の連作短編集である
村川という大学教授がいて数人の女性と関係を持つ 短編の主人公は次々と代わっていく
村川の妻 再婚相手 娘 息子 まわりの人々が村川のせいで過剰なものを内に抱えてしまう
それを何らかの形で解決し あるいは解決できないまま呑みこんでいく小説である
村川の息子の話”予言” と 村川と一時付き合う女性の夫の話”残骸”に惹かれた
”予言”の主人公の男子高校生の話し振りがいい
”残骸”は特に文章がいい 何度も戻って読み返し 味わってしまう
子どもも生んだ妻が自分の父親を「パパ」と呼ぶ
「あなた」という私への呼びかけも 幼稚園児が夫婦ごっこをしているようで毛穴がざわめく
いつまでもおままごとの延長線上で日々を送っているようなこの妻を愛おしく感じることも
事実なのだ 小学生の娘に「今週なにか困ったことはなかったかい?」と尋ねる
「ママが毎朝いれてくれるお紅茶 とっても熱いのよ 飲むのが大変なの」
娘の悩みは紅茶の温度なのか 私はくすぐったいような困惑を覚えた
紅茶の温度で悩む暮らしを送っていると妻のような女ができあがるのだな と妙に納得した
夕方家に帰り着いた私は 玄関先で言い争っている妻と見知らぬ女性の会話から
妻が村川先生と関わりのあることがわかってしまう
村川は哀れで愚かな男だ
もしかしたら彼は この世のどこかに不変のものがあると信じたいのかもしれない
彼は 変わってしまうことの中に さびしさや繊細な美しさがあることを知らない
多くを望んでなんになる どんなに一生懸命選んでも カーテンなどいずれは色あせる
暮らしていれば 調和のとれた家具にも埃がたまる
今度の出来事で私に根ざした苦しみも困惑も そのうち溶けて薄れゆく
私は妻に愛の言葉を囁いたりはしないだろう 迸るような情熱もなく 淡々と日々を過ごすだろう
愛でもなく 打算でもなく。 花を咲かせては散らし 葉を繁らせては落とす植物のように
気の狂いそうな繰り返しの中で生きていく いつか変化をやめるそのときまで。
それだけが 私の選んだことなのだ すべてはいずれ 土に還る。
*****
いくつか 文章を抜粋してみても 物語の香りは伝えきれない
視線 文体 物語の組み立て方がいい 気持ちの書き方がうまい
ほかの本も読んでみようかな
村川という大学教授がいて数人の女性と関係を持つ 短編の主人公は次々と代わっていく
村川の妻 再婚相手 娘 息子 まわりの人々が村川のせいで過剰なものを内に抱えてしまう
それを何らかの形で解決し あるいは解決できないまま呑みこんでいく小説である
村川の息子の話”予言” と 村川と一時付き合う女性の夫の話”残骸”に惹かれた
”予言”の主人公の男子高校生の話し振りがいい
”残骸”は特に文章がいい 何度も戻って読み返し 味わってしまう
子どもも生んだ妻が自分の父親を「パパ」と呼ぶ
「あなた」という私への呼びかけも 幼稚園児が夫婦ごっこをしているようで毛穴がざわめく
いつまでもおままごとの延長線上で日々を送っているようなこの妻を愛おしく感じることも
事実なのだ 小学生の娘に「今週なにか困ったことはなかったかい?」と尋ねる
「ママが毎朝いれてくれるお紅茶 とっても熱いのよ 飲むのが大変なの」
娘の悩みは紅茶の温度なのか 私はくすぐったいような困惑を覚えた
紅茶の温度で悩む暮らしを送っていると妻のような女ができあがるのだな と妙に納得した
夕方家に帰り着いた私は 玄関先で言い争っている妻と見知らぬ女性の会話から
妻が村川先生と関わりのあることがわかってしまう
村川は哀れで愚かな男だ
もしかしたら彼は この世のどこかに不変のものがあると信じたいのかもしれない
彼は 変わってしまうことの中に さびしさや繊細な美しさがあることを知らない
多くを望んでなんになる どんなに一生懸命選んでも カーテンなどいずれは色あせる
暮らしていれば 調和のとれた家具にも埃がたまる
今度の出来事で私に根ざした苦しみも困惑も そのうち溶けて薄れゆく
私は妻に愛の言葉を囁いたりはしないだろう 迸るような情熱もなく 淡々と日々を過ごすだろう
愛でもなく 打算でもなく。 花を咲かせては散らし 葉を繁らせては落とす植物のように
気の狂いそうな繰り返しの中で生きていく いつか変化をやめるそのときまで。
それだけが 私の選んだことなのだ すべてはいずれ 土に還る。
*****
いくつか 文章を抜粋してみても 物語の香りは伝えきれない
視線 文体 物語の組み立て方がいい 気持ちの書き方がうまい
ほかの本も読んでみようかな