代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

全国紙経済部記者fukutyonzokuさまへ

2011年11月29日 | 自由貿易批判
 私が11月19日付けのブログ記事(この記事)で批判させていただいた全国紙の経済部記者さんから詳細な反論がやって参りましたので紹介させていただきます。

 「TPP反対派大学准教授のデタラメ農業保護論」という記事です。下記サイトにあります。

http://fukutyonzoku.blog.fc2.com/blog-entry-1.html 

http://fukutyonzoku.blog.fc2.com/blog-entry-2.html

 詳細は追って反論させていただきます。ただ、少々論点が拡散しすぎているようですので、整理して議論する必要を感じています。いま立て込んでいるので申し訳ございません。
 
 他の論点は後回しにしますが、一つ重大な事実誤認がありますので、指摘させていただきます。fukutynzokuさんは私への批判の中で以下のようにお書きになっています。

**fukutyonzokuさんの記事より引用**

→「バカ」と断定したわけではありません。関税の説明で重要な消費者負担の説明が欠落していることについて「論者は分かっていながらわざとミスリードしているのか、本当にバカなのかはわからんが」と条件付きで推測を記しているだけです。どちらなのか、いまだにわかりませんが。

なお、あなたは反論ブログの中では、価格支持の説明が欠落していることについて何ら釈明がなく、何事もなかったかのように私の指摘を受け入れ、修正しています。まずは自分の説明が一方的でミスリードだった、と潔く認めることから始めるべきでしょう。

**引用終わり**


 fukutyonzokuさんがツイッター上で批判されていた私のブログ記事には以下のように書かれています。

**拙ブログより引用**
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/05587a8e35b5f0194bfad87ba5e1b12a
 価格の不安定性は、生産者と消費者の双方にとって莫大なリスクをもたらすのである。故に、消費者と生産者の双方が著しい打撃をこうむることのないよう、国が介入して生産を調整し、価格を支持する必要がある。人間の生命の根幹にかかわる問題なのだから、当然である。穀物を他の財と同じに扱われたらたまったものではない。

 農業補助金という制度は、たしかに不透明で利権誘導になる場合が多い。変なことに税金を使われるのはたまったものではないという納税者の意見が出るのももっともだ。だからこそ関税による保護がもっとも合理的なのである。関税ほど、透明で公正な農業保護政策はないのだ。しかも国の税収を増やすだけなので、納税者にとっては負担軽減になる。

**引用終わり***

 私は関税の価格支持の側面を指摘しています。その上で、納税者あるいは消費者に同じ額の負担が発生するのを前提として、補助金にするか関税にするかと問われれば、破たんが危惧される日本の財政がこれ以上悪化するのを回避する必要性、また補助金支給による利権発生の弊害などを考えて、関税が合理的だと論じました。

 この点、fukutynzokuさんが「ミスリード」ならぬ mis read しています。
 fukutynzokuさんは、私の主張を誤読したうえで、「バカなのかわからないが・・・」とか「嘘っぱち」などと私を侮辱する発言をされているのです。「何ら釈明がなく」とおっしゃいますが、私ははじめから同じ負担額が発生するのを前提に、補助金か関税かを論じているのですから、釈明も何もありません。

 補助金か関税かをめぐって私たちの意見は食い違っていますが、それはまた別途私のブログの中で論じます。
 とりあえずfukutyonzokuさんは、誤読の上で私を侮辱したことを謝罪していただけませんでしょうか? 
 私もカッとなって言葉使いが荒くなって、レッテル張りをしてしまったことは謝罪いたします。しかしそれは誤読の上の私への罵倒が看過できなかったからです。
 
 今後の議論では、汚い言葉を応酬し合うのはお互いにやめましょう。


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5 コメント

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謝罪しろと恫喝されてもねえ (fukutyonzoku)
2011-11-30 05:21:45
U+A0U+A0 U+A0重大な事実誤認? mis read ? U+A0他の記事で説明しているかどうかはこの際、関係ない。あなたが再掲している、この時議論していた該当記事の中のどこに「関税の価格支持の側面を指摘」している部分があるの?U+A0
もしかして「国が介入して生産を調整し、価格を支持する必要がある」のこと? ここは、減反による価格支持の説明としか読めませんよ。U+A0
U+A0U+A0 U+A0消費者の税外負担のことには全く触れずに「(関税は)国の税収を増やすだけなので、納税者にとっては負担軽減になる」とうそぶいていることを、こちらは問題視しているのですよ。重要な側面を隠して都合のよい材料だけを示し、主張を展開しているから「ミスリード」だと正当な批判をしたまでです。
U+A0U+A0 U+A0当然ながら関税は「国の税収を増やすだけ」ではないし「納税者にとって負担軽減」にもならない。納税者は全員が消費者なのだから。
U+A0U+A0 U+A0この記事であなたは、関税撤廃によって1兆円近い(2010年度は約7000億円)関税収
入がなくなるという僅かなマイナス面だけが全てであるかのように説明している。そのことを問題だと指摘したのに、それについてはいまだにわけのわからない言い訳しかしていない。まず、この記事で偏向した説明に終始したことについて、そちらの非を認めるのが先だろうと言っているのですよ。
U+A0U+A0 U+A0言うまでもないですが、事実誤認でも誤読でもないので、謝罪しろと言われても、今のところこちらに謝罪する理由は見当たりません。
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fukutyonzokuさま ()
2011-11-30 23:25:22
 「偏向」だの「うそぶく」だの「わけのわからない」だの「潔く非を認め」ろだの、「恫喝」をしているのはあなたでしょう。

 農産物価格の不安定性とそれによる飢餓リスクなど、私が提起した本質的な問題には全く有効な反論ができていないのに、論点をずらして揚げ足を取って人を罵倒する。

 「汚い言葉使いはやめましょう」と私の方から提案したばかりなのに、あなたはまた汚らしい言葉を連発されました。残念で仕方ありません。 

>もしかして「国が介入して生産を調整し、価格を支持する必要がある」のこと? ここは、減反による価格支持の説明としか読めませんよ。

 国の介入による生産調整や価格支持といったら、減反も関税も全部含みますよ。
 私は、人間の生命の根幹にかかわる問題なのだから、生産者に不利益が生じないように価格を支持する必要があると断った上で、関税の話につなげています。そう解釈するのが当たり前でしょう。

>関税撤廃によって1兆円近い(2010年度は約7000億円)関税収入がなくなるという僅かなマイナス面だけが全てであるかのように説明している。

 関税収入を失った上に、新しくセーフティネットを整備するための財政負担がかぶさってくる。その事実が大問題なのでしょう。補助金支給のための納税者負担の増加が、国民の理解を得られそうもないから、今のまま関税でよいと書いたのです。

 関税はいま現在実行されているシステムですが、新しいセーフティネット整備は未知の領域であり成功の保障などどこにもないのです。いちばん深刻な財源問題を、あなたは全く問題ないかのように書いている。あなたのその態度こそ「ミスリード」と言うのではないのですか?
 
 関税撤廃で食料品が安くなるのだから、若干の増税は問題ないとあなたは言うでしょう。しかし関税を撤廃すれば、内需は縮小し、デフレが進行、賃金も下落していきます。一時の消費者利益などすぐに吹っ飛びます。吹っ飛んだ頃に、穀物価格の高騰がやってきて飢餓リスクに直結するのです。
 あなた方は「そんなことは起こらない」と言うでしょう。しかし実際に起こります。そして起こった後には「関税撤廃とは関係のない別の構造要因によって発生したのだ」などと言うでしょう。そうした態度が、「新自由主義」と呼ばれて人々に忌避されているのでしょう。
 
 文章を生業とするあなたが、これほど汚らしい言葉を使って平然としていられる。その事実に、私は絶望的な気持ちになります。
 こうした人間精神の荒廃が、まさに市場原理主義の帰結なのではないでしょうか。
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Unknown (夕日新聞)
2011-12-03 16:38:01
前回は突然のコメント失礼いたしました。

記者さんのコメント矛盾しているところありますね。
>日本の農家は兼業農家が中心で、本業は製造業だから、TPPが必要
>農業は大規模化し、競争力をつける必要がある

兼業農家は労働時間の一部しか農業に投入しない小規模農家。そのためにTPPが必要なら、「農業を大規模化し、競争力をつける」という方向と矛盾します。

それはさておき、1974年に大豆の値段が6倍近く跳ね上がり、コスト高を嫌ったアメリカの畜産産業の圧力に押されて、アメリカ政府は輸出禁止措置を取りました。そのためヨーロッパでは家畜を殺す農家もあらわれた。
 穀物は栽培に時間がかかり、1年に1回(多くても2回)しか収穫できない。しかし、食料としては毎日必要になる。そのために、利益を上げるのに最適な戦略的商品で、先物取引の対象にもなっています。よく投機マネーの流入が穀物価格を上げる、といわれますが、実際には大量の貯蔵庫をもっている巨大なアグリビジネスが、高く売れるように価格調整しているためです。だから、足りなくなったときにアメリカが安く売ってくれる、なんてことはありえない(それこそ「市場原理」に反します。足りないときには、価格が高騰する)。

記者さんの指摘、時点がずれていると思います。
関さんが、アメリカからの安い農産物のためにメキシコで農業失業者が増えたというのは、たぶん割と最近の話しだと思います(2005年から2010年ぐらいでしょうか)。一方、記者さんが反論として挙げているのは、引用されている論文(2003年)から見ると、2000年以前です。
 NAFTAではメキシコの農産物の関税撤廃は即撤廃ではなくて、15年(10年?)の間に撤廃していくというものです。そのために最初は影響が出にくい。年が経つにつれてアメリカからの安い農産物はどんどん増加し、失業者を増やしていったようです。

http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-9bd0.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-5258.html
↑このかたのブログ、他の記事も大変参考になります。
 それと、記者さん、産業構造に対する視点がまったくない。NAFTA締結後に製造業で輸出が伸びていても、メキシコ人を低賃金で雇っているアメリカ企業が多いため、利益はアメリカ企業が持っていきます。
 一方、農産物の輸出が伸びていても、NAFTA以前からアメリカのアグリビジネスはメキシコに入ってきていますから、農産物の輸出の利益もアメリカ企業が持っていきます。
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TPPで穀物メジャーがどう振る舞うか? (たんさいぼう影の会長)
2011-12-06 22:47:10
 夕日新聞さまの議論を受けて、TPPが実行されたら、米に関して穀物メジャーがどう振る舞い、どういう結果を生むかを考えてみました。
 TPP参加国の中でまとまった量の米を作っており、かつ米価が安いのはベトナムです。
 商売の基本は利潤の最大化なので、私が穀物メジャーの立場であれば、まずベトナムの農地を大規模に囲い込み、投資をして基盤整備を行い、小作農を雇ってなるべく安いコストで米を作ります。何せベトナムの生産者米価は日本の2割以下、ヤポニカ米も作っており、少し技術が進めば、日本人が食べてもよいと考える食味レベルのものになるでしょう。
 そして、つくったコメを最も高く売れるところに、その国の国産品より少しばかり安く売り込みます。そしてその国は、間違いなく日本です。日本が補助金によって米価を下げていけば、利潤が出る限りは値段を下げて売り込みを続けます。
 すると、十分な補助金を出すことができない限り(あるいは、食管法の逆ザヤを復活して拡大でもしない限り)、日本の稲作は赤字を拡大していき、やがて破たんします。(すでに米価値下がりにより原価割れが生じはじめています)
 一方、ベトナムでは、自給できていたはずのコメが輸出に回されてしまい、また米価の高騰を招いて(何せ、究極的には日本人と同じ金額でコメを買わなければならなくなる!)、飢餓の危険にさらされることになるのです。
 そうなればまさに、関さんがこれまでこのブログで指摘してきたことが現実のものになるのです。
 あるいはTPPを進める人たちは、コメに関するノウハウをもっている日本企業が、コメに関する穀物メジャーになることを目論んでいるのでしょうか。そうだとしても、儲かるのは「米メジャー」になり果せた企業とその関係者だけ。私にはそれが「国益」であるとは、到底思えません。
 私は経済は素人なので、間違いがあれば指摘していただければありがたいです。ただし具体的に。fukutyonzokuさんが関さんに対してしてきたような具体性のない批判であれば、議論の強化(あるいは変更)のために使えないので不要です。
 
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夕日新聞さま、たんさいぼう影の会長さま ()
2011-12-08 10:17:38
 夕日新聞さま、すばらしいサイトの紹介ありがとうございました。返信おくれて申し訳ございませんでした。
 NAFTAの影響に関しては、メキシコ農民の失業にしても、推定値しかないようです。
 投機マネーとアグリビジネスの件、全く同感です。ご指摘の通り、農産物貿易の自由化で、アグリビジネスによる価格支配が強まることが何よりも危惧されます。関税で高値になっても、それは政府収入となって公的目的のために使われればよいと思います。一方、アグリビジネスの独占価格になると価格高騰による消費者負担額はすべて彼ら富める者たちの懐に流れこんで私的利益になるだけですから、同じ取られるにしても後者は最悪です。

 影の会長さまのシナリオは、あり得るシナリオだと思います。
 ベトナム米は、フィリピン米やインドネシア米よりも安いので、フィリピン米はベトナム米との競争に負けて輸入依存度を増やしていきました。ところが2007~2008年にはベトナムが輸出規制したことにより、フィリピンで深刻な食料不足が発生し、フィリピン人はコメの自給率維持の大切さを身をもって体験することになりました。
 ベトナムが加入するTPPに、フィリピン政府やインドネシア政府が入りたがらないのは、2007~08年の苦い経験も影響しているのだと思います。
 
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