赤松小三郎研究会主催で、2024年11月4日、江戸文化研究者の田中優子先生(前法政大学総長)をお招きして講演会を行います。「赤松小三郎と江戸の民主主義」という驚くべき演題です。
続くパネルディスカッションでは若手洋学史研究者の橋本真吾氏と私も登壇して、田中優子先生と共に「赤松小三郎と江戸の民主主義」を語ります。橋本氏は、江戸時代に訳された「共和」という概念がもともと民主主義の意味で使われていた . . . 本文を読む
今回の本で論じたことの目玉はだいたい以下のようになります。(他にも多くのことを論じています)
(1)江戸末の慶応年間に現れた憲法構想を紹介することを通して、天皇を神格化する王政復古体制とは別の、天皇の象徴的地位を維持するより穏健な近代化の途があったこと、江戸の憲法構想は決して単純な西洋思想の模倣ではなかったことを論証する。
(2)戦前の皇国史観、戦後の講座派マルクス主義史観、司馬史観などが、本質的に連続しているものであることを論証し、それらすべてを批判する。マルクス本人も批判する。
(3)折しもNHKで「映像の20世紀 バタフライエフェクト」を放送しているが、「バタフライ史観」を全面に出した、歴史叙述を行う。バタフライ史観の源流として、エピクロスとルクレティウスの哲学を評価する。
(4)丸山眞男は、江戸を支配した朱子学が解体され、国学的思惟が日本を近代化したと論じたが、むしろ江戸の朱子学は近代的立憲政体や天賦人権論や普遍的な国家平等意識と親和的であったのであり、神話史観を強制した国学は、日本を近代から遠ざけたことを論証する。
(5)右派は西洋的な人権概念を、個人主義的な価値観を押し付けて、日本の「国体」を否定したと論じるが、明治時代に「創造」された「国体」こそが、日本の伝統から乖離している。江戸の儒教的伝統に基づく内発的な人権概念は、より人間の個性を尊重し、社会福祉を重視するものであったことを論証する。 . . . 本文を読む
このたび、歴史学者の安藤優一郎氏の著書『幕末の先覚者赤松小三郎』(平凡社新書、980円)が発売されました。いま本屋の平凡社新書の棚にいけばあるはずです。昨年、私もメンバーである赤松小三郎研究会の講演会で安藤先生をお呼びして講演会を企画し、それがきっかけで本書が誕生しました。コンパクトにお手頃な価格で、赤松小三郎の生涯をたどることができます。小三郎の生涯を知らない方が読めば、幕末史の見方が変わる一 . . . 本文を読む
新年あけましておめでとうございます。
昨年は多忙から全くブログを更新できなくなってしまいました。今年もほとんど更新できないかと思われます。すいません。
本日(2022年1月3日)の『毎日新聞』の社説は「資本主義の見直し 人と暮らし支える経済に」というタイトルです。資本主義の見直しが、マスコミレベルで公に語られるようになってきました。社会的共通資本の概念が紹介され、私のコメントも一言ですが . . . 本文を読む
品川が西郷のところを訪れたのは、挙兵計画の打ち合わせのためである。その夜、「原市之進に天刀が加えられた」と、薩摩藩士の内田仲之助が品川弥二郎に告げているのである。
「天刀」という表現の用い方は、まるで薩摩が原市之進に天誅を加えてやったと、長州藩の品川に自慢でもするかのような言い方である。もともと水戸藩周辺のテロリストは薩摩藩と深くつながっている。もともと井伊直弼の暗殺も水戸と薩摩の尊攘派の共同謀議である。5月に小三郎が議会政治の建白書を公儀に提出した折、原市之進はそれに理解を示していた一人だったと思われる。原も大政奉還を実施し、薩長との内戦を回避するというシナリオを描いていた。小三郎とは、その方向性において志を同じくしていたはずである。御所を襲撃し、天皇を拉致し、「幕府」と会津の屯所を襲撃するという壮大なテロ計画を固めた薩長にとって、原市之進も赤松小三郎も、事前に取り除かねばならない障害だった。二つの暗殺事件は連動しているのであろう。 . . . 本文を読む
徳川慶喜は、議会政治の導入を前提として大政奉還に同意したのであった。その上で渋沢は、慶喜がこのように決断するに至った背景として、当時、徳川政権の側も含めて議会政治を開始する機運が高まっていたことを論証する。嘉永年間より議会政治を求める気運が次第に高まって、大政奉還に至ったのであった。渋沢は、土佐藩の大政奉還建白書の提出に先立つ公議政体論の系譜を、ペリー来航時の老中阿部正弘にまで始原を遡って紹介している。とりわけ、その系譜についての全体の記述の半分近くを赤松小三郎の議会政治論の紹介に充て、それを評価するのである。 . . . 本文を読む
みなとかおるさん脚本の新作の音声歴史ドラマ「忠優伝~合情記」が完成し、公開されました。小三郎伝、忠固伝に続く第三弾のドラマです。前回の忠固伝では日米修好通商条約をめぐる井伊直弼と松平忠固の攻防が描かれましたが、今回は日米和親条約交渉の前後における徳川斉昭と松平忠優の攻防が描かれています。忠固と忠優は同一人物の信州上田藩主です。これまで知られてこなかった老中ですが、徳川斉昭や井伊直弼と闘いながら、 . . . 本文を読む
「現代ビジネス」で井手英策先生(慶應義塾大学教授)、ジャーナリストの佐々木実さんと共に、ベーッシク・インカムはダメで、ベーッシック・サービスの考え方で行くべきこと、またその理由は何かという対談をしました。経済学者の宇沢弘文先生が、どうしてベーッシク・インカムに反対していたのかということも論じています。
ただベーッシック・サービスの財源問題で、井手先生と私のあいだで意見の相違があり、そこで議論に . . . 本文を読む
みなとかおるさん脚本の歴史ドラマ「忠固伝~合情記」がyoutubeで公開されました。前回の小三郎伝に続く第二弾です。共有させていただきます。ドラマは30分ほどです。アメリカ領事のハリスと老中の松平忠固の二人に焦点を当ててドラマは展開されます。日米交渉が終わるとその疲れからか、ハリスが病に倒れて危篤状態に陥るのですが、そのハリスの命を何としても救おうと忠固が懸命に手を尽くしたという史実を中心にドラ . . . 本文を読む
従来の定説では、井伊を大老にする工作を影で行っていたのは松平忠固であると言われています。「忠固陰謀論」です(苦笑)。これは当時の一橋派がそう考えて、広めた噂話であり、証拠は全くありません。今も昔も、陰謀論が広がるのは、集団的な被害妄想からかも知れません。私の近著『日本を開国させた男、松平忠固』(作品社)では、井伊を大老にしたのが忠固であるという「定説」が、全くの根拠のない虚構であることを明らかにしています。 . . . 本文を読む
ドラマの中の藤田東湖は、過激な主君の斉昭を諫める常識的なストッパーという役柄でした。ドラマの中の東湖は「異国人といえど国には親やと友がありましょう」と言って斉昭を諫めました。結論から言えば、藤田東湖が、ロシア人の家族や友人を心配するような人道的な主張をすることはあり得ません。その前年のペリー来航の際には、薩摩藩士の有村俊斎に向かって、「私が当局者であったら、交渉と見せかけてペリーに接近し、隙をついてペリーの首を刎ね、私も当日のうちに死ぬ。しかし私の正気は残り、後に続く者が国を守るだろう」というように語っています。斉昭も斉昭なら東湖も東湖という、じつに似た者同士の主従です。超過激攘夷論者の東湖の口から、ドラマの中でのような発言が出るということはあり得ません。 . . . 本文を読む
本日(2021年3月7日)の大河ドラマ「青天を衝け」、あっというまに日米和親条約が結ばれてしまいました。本日も私の研究してる松平忠固との関係で、本当のところを補足しています。本日は松平忠固が登場するかなと思っていたのですが、登場せずでした。残念。
本日のストーリーでは、何か日米和親条約で開国になったかのようなニュアンスでした。和親条約は従来の長崎に加えて新たに下田、箱館を開いて外国船の寄港を . . . 本文を読む
大河ドラマ「青天を衝け」、藍や養蚕を手掛ける江戸時代の百姓(≠農家)の生活がよく描かれていて非常に見ごたえがあります。水戸学礼賛ドラマになったら・・・と危惧していましたが、そういう描かれ方もされていないので、その点も一安心です。幕末舞台の大河ドラマで、百姓が主人公となると、百姓出身の近藤勇や土方歳三を描いた「新選組!」以来でしょうか? しかし「新選組!」以上に、百姓の暮らしが詳細に描かれています . . . 本文を読む
みなとかおるさん原作の音声ドラマ「小三郎伝」の動画付きのバージョンがYouTubeに公開されました。ぜひご視聴ください。
「小三郎伝」合情記 •みなとかおる作:声の出演: アライジン•森山高至•大矢敏幸•氏家信樹•三輪和音 (音声ドラマとして制作)
【ネタバレ注意】
このドラマはフィクションであり、赤松小三郎暗殺事件の背後に大英帝国の影ありという筋書きです。ドラマの終盤で、イギリス . . . 本文を読む
MMTで金をバラまいて、ベーシックインカムや輸入資源多投型の土建ケインジアン路線を繰り広げれば、ただちにインフレに帰結するだろう。財の供給量が増えないのに、マネーだけ増えればインフレスパイラルに陥るのは当たり前だ。
そうならないための方策はただ一つである。化石燃料の使用量をゼロにすることを目指し、再生可能エネルギー100%を実現することである。
レアメタルや鉄やアルミなどの金属資源に関しては、完全にリサイクルし、新規採掘を限りなくゼロに近づける定常社会を目指すことである。それらを実現するため、政府投資を集中させるのがグリーンニューディールだ。それが資源量の制約から発生するインフレを回避する唯一の方法だろう。 . . . 本文を読む