代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

グローバル化の終わりの始まり ―イギリスのEU離脱に思う

2016年06月27日 | 自由貿易批判

 イギリスのEU離脱。保守党右派のジョンソンを支持する排外主義的な下層右派も、レイシズムとはおよそ無縁な労働党左派のコービンを支持するようなリベラル層も一致して離脱を支持する人々が多かったようだ。

 今後、行き過ぎたグルーバル化の流れに歯止めがかかり、各国は国家主権を取り戻す方向に反転していくであろう。グローバル化の終わりが始まったのだ。
 グローバル化というのは、つまるところ1%の強欲大企業の経営者層が、さらに儲けるためには、関税も法人税もなるべく払いたくない、なるべく労働者への賃金も抑制したいというワガママを突き詰めていった結果、進んできたものだった。

 少しでもグローバルな富の再分配の方向に舵を切れば、グローバル化も延命したかもしれないが、全くそれを実行する気配がないから、瓦解するのはやむを得ないだろう。 
 しかしEUに関しては、NAFTAやTPPのような「大企業による大企業のための強欲協定」とは異なり、タックスヘイブンを規制しようとしたり、関税に代わる国際連帯税の徴収を模索していたという点で、大企業の横暴に規制をかけ、グローバルな富の再分配システムを目指していることも事実だ。
 今朝、サンデーモーニングを観ていたら、寺島実郎氏が興味深い分析をしていた。EU離脱に動いたのは、労働者階級のみならず、シティに集まるイギリスの金融業界の思惑もあったのだと。すなわち、タックスヘイブンを規制しようなどというEUの発想そのものが、タックスヘイブンの恩恵をいちばん受けてきたシティの金融業界にしてみたら許し難かったのである、と。今回のイギリスのEU離脱が労働者階級の勝利ではなくシティの勝利だったとしたらあまりにも悲しいことである。

 シティにせよウォール街にせよ、「グローバルな再分配政策なきグローバル化」は大歓迎だが、「再分配政策を含むグローバル化には大反対」ということである。なんと勝手な連中だろう。そのエゴのあまりの身勝手さに戦慄を覚える。結局のところ、グローバル資本主義を滅ぼすのは、ひたすら税金を払いたくないということのみを追求してグローバル化を推進してきた彼らの強欲さそのものなのだ。

 EUのこの結果を見てもなお「一刻も早くTPPの締結を」などと叫んでいる日本の財界とマスコミの時代錯誤さ加減に頭がクラクラする。彼らが現実を全く直視せず、厚顔無恥な強欲協定を追求し続ける限り、グローバル資本主義の瓦解は避けられない。

 アメリカも、この調子でいけばトランプが勝つのではないだろうか。トランプの主張の本質は以下の二点であると言ってよい。一つは移民を制限することであり、もう一つは輸入品にしっかりと関税をかけることである。適度な関税をかけ、それを財源とすることは、再分配のためには必要となっていくことである。自由貿易が国家から財源を奪ってきたのだから。

 自由貿易批判をすると、すぐに「鎖国しろというのか」という愚かな攻撃をしてくる人々がいる。私は、ふつうに適度な額の関税をかけた上で貿易をしようと主張しているだけである。

 そもそも、トランプ躍進の原動力となっているメキシコからの不法移民などNAFTAの破滅的な結果の一つである。アメリカがメキシコにトウモロコシの輸入自由化を強要したために、メキシコで200万人ともいわれるトウモロコシ農家が破滅して、アメリカに不法入国せざるを得なくなっているのだ。この破滅的な事態を予想しようともせず無邪気にFTAを推進してきたマスコミや学者たちには一言、「恥を知れ」と言いたい。それほどトランプがイヤなのであったら、まずはNAFTAがもたらした破局的な現実を謙虚に直視すべきであろう。
 メキシコからの不法移民対策は、国境に万里の長城をつくることではなく、NAFTAを終わらせ、関税を復活させ、国家主権としての農業保護も認めることなのだ。

 アメリカの民主党陣営では、サンダース支持者の4分の1以上は、本選でヒラリーではなくトランプに投票すると言っているという。ヒラリーならNAFTAはそのままだし、TPPも締結に動くだろうが、トランプならそれらを確実に潰してくれるのであれば、リベラルな反自由貿易論者のサンダース支持層は、トランプの排外主義はイヤでも反TPPの一点でもトランプに投票しようとするだろう。 

 サンダースには民主党大会で最後のがんばりを見せてほしい。サンダースがヒラリーを支持する条件として、ヒラリーにTPPに反対することを明確にするように確約させることだ。それができなければサンダース票の一部はトランプに確実に流れ、トランプが勝つだろう。



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4 コメント

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Unknown (12434)
2016-06-27 19:12:06
英EU離脱 米欧版TPP影響大きく
交渉中止の要求 2国協定に懸念
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-06-27/2016062701_03_1.html
しんぶん赤旗

環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉が潰れて、TPPを破綻させることに繋がってくれたら、ある意味大変ありがたいですけどね。
返信する
英国のEU離脱による世界の変容の可能性から、卑猥卑俗な「アベ・シン・ファシズム・と魔性のナチズムの異同について思いますに。取り急ぎ。 (薩長公英陰謀論者)
2016-07-10 22:02:07

 「多極化陰謀論者」の田中宇氏が、この7月8日付けの無料公開記事で、それはそれはエラいことになると思われる英国EU離脱からの展開可能性についてあからさまに書いておられます(感服しました)。

http://tanakanews.com/160708china.htm

 例のGHQ/G2ウィロビー・スクールの末裔なれの果てである「改憲勢力」によるファシズムが、衆参両院で改憲議席を取って待望の戦争マシーン国家を復活させるとして、田中宇氏の示唆からの帰結である英中独仏&露の対米枢軸が形成されて、トランプ新大統領が米軍を日韓から撤退させたらどうするかということを考えているのでしょうか。単独で中露と戦う?

 エリザベス・ウォーレンを副大統領になどにはしないだろうクリントンとネオコンのことしかアタマにないのでしょう?

 それはそれとして、手法がそっくりさんだと言われる「アベ・シン・ファシズム」とナチズム、はたしてその異同は、とずっと考えています。このように:

 おなじポピュリズムでも「ナチズム」は、世界恐慌が底入れしたタイミングに乗って実体経済を改善させ、大衆の熱狂的支持を燃えあがらせるなかで「独裁」権力を樹立した。

 「アベ・シン・ファシズム」のポピュリズムは電通による情報操作、メディア・スクラム、また世耕機関のネトウヨ工作によって、上からつくりあげられたものであり、実体経済の支援を受けていない。
 無関心層、膨大なメンタルをつくりあげた上での「情報支配と窮乏化による恐怖専制」であり、大衆の受益感による支持を得ての「独裁」ではない。

 ヒトラーは、恵まれない生い立ちの人物であるにかかわらず身辺は清潔であり、自分の本分は芸術家であると信じていた。
 母親をガンで失ったことから国民の健康に関心を持ち、反喫煙を訴えた。演説が聴衆の心を動かす力は素晴らしく言葉を大切にした。努力の人であった。
 また電撃作戦を発案した軍事的天才であり、優れた軍人たちを、その知識と洞察力で感服させた。

 かようなヒトラーに対して、アベ・シンをいちいち比べることはヒトラーを侮辱することになるでしょう。取り巻きの人物連を含めて。

 ただし、国際的金融を含む好戦的な経済勢力がバックにいるということはびったりおなじなのではないかと思いますけれど。

 アベ・シン勢力のあまりに陋劣な操作主義にアタマがくらくらしますけれど、公正な選挙を含む議会制民主主義をみずから破壊すれば、なにがはね返ってくるのか、想像することができないのであろうと思われます。
 
 これから、ですね。
返信する
Unknown (12434)
2016-07-25 19:45:52
WTO脱退も辞さず=米TVインタビューに−トランプ氏
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016072500011&g=int
時事通信ドットコム
返信する
99%にとって選挙の意味が変わってゆく。 (薩長公英陰謀論者)
2016-07-30 12:44:33

 米国内雇用のためにWTO脱退を辞せず、・・・そのトランプに、ネオコン・エージェントの副大統領がついたとしても、
 外交軍事(いわば帝国主義)よりも国内の国民の生活を優先する、という彼のポジション、オバマが妥協に妥協をかさねてとうとうまったくできなかったことをやろうとする意思は変わらないだろうと思います。
 なにを言われようと、まことに立派な人物であると思います。

 ネオコンがこれからも世界を好きに引き回せるのか・・・英国のEU離脱国民投票を引き金にして、イタリア発の金融危機がドイツ、そして米国を巻き込む世界金融危機の再発につながる予兆となっており、
 米系ネオコンはともかく、EU・米国の金融筋は不安と動揺にさいなまれて、戦争による混乱は避けようとするのではないかと期待します。

 明日の東京都知事選挙は、東京オリンピック利権と原発再稼働を死守しなければならない側、すなわちマス・メディアと選挙システムを握っている側の手に落ちるわけですが(99%側が沖縄のようによほど圧倒的・一方的な投票状況を実現しないかぎり)、
 このうんざりするような固定化された事態は、すでに選挙制度(普通選挙による公職公選制)がこの国において否定されていることを意味しています。

 現憲法による立憲主義はすでに葬られているわけで(戦争法によってはむろん、米軍基地の存在に関するもののみならず、司法による憲法判断自体を全般的に否定した砂川判決によって決定的に)、
 東京裁判を批判し日本国憲法をGHQ民政局による押しつけだと否定して戦前の軍事警察国家の復活を一貫して仕組んだ、GHQ参謀二部(G2)トップで「アメリカの小ヒトラー」と呼ばれたという話があるウィロビー、その流れを汲む「横田」在日米軍司令部による、
 世界的に異例異常な先進国における駐留外国軍の国家の公権力に対する専制支配が、彼らの政治的拠点である首都において99%を代弁しようとする知事の出現を絶対に阻むのは当然です。

 孫崎享氏ツィッターにおける極秘情報で、「6月17日の段階ですでに、米国情報関係者周辺では『次はユリコね』という会話がされていました」とのこと。

 おそらく「幕末」に決定的な思想的影響力を持っていたと思われる「公議政体」思想が長州によって無惨無体に葬られて以来、ようやく先次の敗戦を奇貨として息を吹き返したと思われたところ、いまやふたたび公然と葬られつつあるわけです。

 しかし、そうではあっても、改憲「緊急事態条項=戒厳令」によって選挙自体がなくなるまでは、99%にとって選挙の意義はきわめて大きいと思います。
 先日の参院選挙においてそうであったように、選挙はその過程において民意を表明し糾合し、民意に対する1%側の支配の手口を白日のもとにさらすことができます。

 すなわち、いまや選挙は、かって日本共産党がそうであったように、大衆運動を忘れた議席至上主義という錯覚、それを捨てて99%の大衆運動のひとつのフォーマットであることを自覚した動きになってゆくであろうと思います。

 今回の都知事選における『次はユリコね』に唯々諾々と屈従しない人びとの奮闘に心から敬意を払います。その努力は、日本を支配する勢力がこれからの世界の変化によって急速に孤立してゆく中で、とおからず必ずやむくわれるでしょう。
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