代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

百田尚樹氏が意外にもアンチ長州史観なのに驚いた

2020年11月26日 | 長州史観から日本を取り戻す
百田尚樹氏をベタ誉めした上で、やはり問題は残るのだ。それは日米修好通商条約の評価である。徳川政権の近代化努力を高く評価する百田氏でも、この条約に対する評価の低さだけは、従来の右派左派に共通する「不平等条約史観」を踏襲してしまっているのだ。 それにしても百田氏が、ここまでのアンチ長州的な認識を示しているということは、この間の、薩長史観見直しの大きなうねりが、日本人の歴史認識を大きく変えてきているということだろう。あとは「日米修好通商条約=不平等条約」という史観の誤りを正すことができれば、明治維新史は完全に書き変わる。 . . . 本文を読む

丸山眞男と司馬遼太郎に共通する誤り

2020年09月24日 | 長州史観から日本を取り戻す
ファナティックな国学思想から、極端な神州不滅思想に行き着いた水戸は、無謀なテロと内戦で自滅していきました。本来は長州のテロリズムも、水戸と同じ路線をたどって、滅びて終わりだったはずなのです。そうなれば、国学(というか国家神道)の勝利による明治維新などなかかった。長州が生き残ったのは、正しかったからではなく、世界最強の覇権国である大英帝国が、武器援助して助けたからに他ならないのです。滅亡の淵にあった長州を英国が助けたのは、アーネスト・サトウやトーマス・グラバーの暗躍によって生じた偶然の作用でしかない。 . . . 本文を読む

司馬遼太郎と丸山眞男から尾佐竹猛と大久保利謙へ

2020年09月19日 | 長州史観から日本を取り戻す
長州の武力討幕路線こそが日本近代化の駆動力となったのであり正しかったのだと考える点で、司馬遼太郎と日本会議と講座派マルクス主義の三者は、いずれも「長州史観」であり、基本的に同じ考えといってよいでしょう。  それとは違った考え方をしていたのが、尾佐竹猛や、その弟子筋の大久保利謙です。尾佐竹は、近代日本を準備したのは長州や薩摩ではなく、徳川や諸藩が幕末から醸成した議会政治論であると大正時代から明言していました。大久保利通の孫の大久保利謙は、尾佐竹の歴史認識を肯定し、自ら佐幕派を名乗って『佐幕派論議』(吉川弘文館、1986)という本まで書いています。 . . . 本文を読む

「長州左派」論に対する共産党支持者からの批判に答える

2019年09月29日 | 長州史観から日本を取り戻す
「吉田松陰的エートス」とは、いざとなればテロや超法規的措置も辞さずに、少数の革命的結社が「正義(と信じたこと)」を断行してしまうことです。  共産党が護憲政党であるためには、まずはマルクスのプロレタリア独裁論を放棄する必要があると思います。プロレタリア独裁論と前衛党理論は、三権分立を否定する理論です。権力を徹底的に分散し、一極に権力が集中しないようにすることこそ、民主主義の土台です。権力を集中させようとするマルクスのプロレタリア独裁論はその真逆の発想なのです。 . . . 本文を読む

近刊書紹介『不平等でなかった幕末の安政条約 関税障壁20%を認めたハリスの善意』

2019年06月22日 | 長州史観から日本を取り戻す
 共著で以下のような本を書きました。  『不平等でなかった幕末の安政条約 関税障壁20%を認めたハリスの善意』(勉誠出版)  7月1日から書店に並ぶ予定です。新書で800円+税とお求めやすい価格になっています。出版社のサイトは以下です。  http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101025  数 . . . 本文を読む

不敬・大逆の長州神社

2018年10月03日 | 長州史観から日本を取り戻す
 長州神社(a.k.a 靖国神社)のトップである小堀邦夫宮司が「陛下は靖国を潰そうとしてる」と発言したそうだ。この発言をスクープした週刊ポストに敬意を表します。  問題の発言は以下のようである。 https://www.news-postseven.com/archives/20180930_771685.html 「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう . . . 本文を読む

これが靖国=長州神社問題の核心だ

2018年08月17日 | 長州史観から日本を取り戻す
 8月14日に故郷に里帰りしていた安倍晋三首相が、山口県宇部市の琴崎八幡宮を参拝。にわかに琴崎八幡宮が注目を集めている。  巷の憶測の一つは、安倍首相は、靖国神社に参拝できない代わりに、靖国のルーツである琴崎八幡宮を参拝したというものだった。日刊ゲンダイが、本日「靖国の“源流”…安倍首相が参拝した琴崎八幡宮の意外な歴史」という記事を書いて、この問題を報じていた。(以下参照) https://ww . . . 本文を読む

物語なき歴史研究は最悪な物語の台頭を許す

2018年05月20日 | 長州史観から日本を取り戻す
 前の記事で紹介した『現代思想』6月臨時増刊号「明治維新の光と影」所収の論文、奈良勝司氏「明治維新論の再構築に向けて」も紹介したい。じつに興味深い内容であった。  奈良氏の主張の骨子は以下のようなものだ。  戦後歴史学を担った講座派マルクス主義による明治維新物語にせよ、高度経済成長を背景に影響力を持った近代化論にせよ、冷戦の終結とバブル崩壊後、共に時を同じくして無力化してしまった。その後は、時 . . . 本文を読む

革命の敗者に共感し、新しい物語を創出すること

2018年05月19日 | 長州史観から日本を取り戻す
  『現代思想』2018年6月臨時増刊号は「明治維新の光と影」。いろいろ考えさせられた。  巻頭論文は、大澤真幸氏の「日本人はあの『革命』の敗者に共感している」。同氏の主張の骨子は以下のようなものであった。  日本人は、戦後民主主義体制は、所詮アメリカに与えられたものであり、日本人自らの力で何かを成し遂げたとは思っていない。それゆえ、日本人は、明治維新の記憶に立ち返ろうとする。しかし、実際の . . . 本文を読む

ニッポンって長州のことだったの会議

2018年05月06日 | 長州史観から日本を取り戻す
 睡り葦さまから、以下のような論考をいただきました。  日本会議(→長州会議)のメンタリティとして、明治維新によって、日本人の「人工的な民族特性」として刷り込まれた、強者に自己愛を投射する「加虐者への自己同一化」と分析されています。長州藩閥権力が生み出した人工的民族特性・・・・。いやはや恐るべきことです。長州権力によって喪失させられた、本来の日本を取り戻さねばなりません。   ****以下、睡り . . . 本文を読む

櫻井よしこさんも長州レジームの犠牲者

2018年05月05日 | 長州史観から日本を取り戻す
日本会議は、尊攘志士よろしく、斬り合うことも辞さず、改憲への執念を示している。しかし、それって護憲派をテロで葬ることなのか? ってことは幕末のように天皇も・・・・? いやはや恐ろしい。私が不思議に思うのは、「明治維新に学べ。血を流せ」という櫻井よしこさんが長岡高校出身という点である。櫻井さんは、生まれこそベトナムだが、子供のころから高校卒業まで長岡なので、人格形成は長岡で行っている。周知のとおり、長岡は戊辰戦争の折、会津と薩長の戦闘を回避させようと、中立の立場を貫こうとした結果、いきなり賊軍のレッテルを貼られ山縣有朋率いる西軍に攻めこまれ、国土を蹂躙された。7万4000石の小藩にして、西軍を何度も敗走させ、互角以上に戦ったものの、最後は兵力差を如何ともし難かった。こうした長岡の先人たちの無念さに想いを馳せれば、安易に明治維新礼賛発言などできないはずであろう。  櫻井さんと対象的な長岡人が歴史作家の半藤一利さんである。半藤さんは薩長の非道さを告発し、反薩長史観の代表的論客として活躍している。明治維新150周年も「何がめでたいもんか」と喝破している。 . . . 本文を読む

明治維新150年 ―「維新」の虚構を明らかにする年に

2018年01月03日 | 長州史観から日本を取り戻す
安倍晋三首相も年頭所感で、まず明治維新賛美から始まり、明治の精神に学ぼうと呼び掛けた。安倍首相は、あたかも、明治になって女性の権利が拡充したかのように述べている。まず、ここからしてウソである。江戸時代の方がまだしも「性別に関係なく個人の能力が生かされる」可能性があったが、明治になると政治権力などの公的領域の中から女子は徹底的に排除され、女性はひたすら家の中にあって「良妻賢母」として男性に奉仕する存在としてジェンダー的に再定義された。明治の「女子教育」とはそのためのものだった。 . . . 本文を読む

初詣で日本会議に協力しないために

2017年12月29日 | 長州史観から日本を取り戻す
 富岡八幡宮の宮司殺人事件で、初詣客の減少が心配されている。どのくらい減るか分からないが、神社の経営が成り立たないほどに収益が減り、「神社再建のため」と称して神社本庁から天下り宮司が送られてくるようなことになると元の木阿弥である。神社本庁から離脱して頑張ろうとしていた、亡くなられた富岡長子宮司の生前の意志にも背く結果となろう。  富岡八幡宮には、「神社本庁の軍門に降らないで、がんばって」という応援 . . . 本文を読む

磯田道史氏の司馬遼太郎批判の批判

2017年08月23日 | 長州史観から日本を取り戻す
 磯田道史氏の『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』(NHK出版新書)を読んだ。私は、いわゆる「司馬史観」の最大の問題点は、明治維新から日露戦争までの40年間を、坂の上の雲を目指して駆け上がっていくような、日本史上でも栄光に満ちた時代であったと解釈していることだと思う。司馬の解釈では、日露戦争の戦勝に酔い、明治維新がつくった近代的合理主義は駆逐され、精神主義や形式主義に毒されていって、ついに昭和の「鬼胎の . . . 本文を読む

地域の神社は神社本庁からの離脱を

2017年08月21日 | 長州史観から日本を取り戻す
 この間ブログを放置しておりました。  更新できなかった理由は、精神的にも時間的にも余裕がなくなったためです。  いちばん頭が痛かったのは、町内会の会長にさせられてしまったこと。最近はどこもそうなってきていると思いますが、なり手が他にいなくて、引き受けざるを得なくなり・・・・・。  全国の多くの地域でも同様な問題に直面して困っている方々が多いのではないかと考え、問題を共有するためにも、書くことにし . . . 本文を読む