代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

間違いだらけのリカード理論

2013年01月20日 | 自由貿易批判
 水鏡仁(酔狂人)さんが、リカードの比較生産費説を批判する以下のエントリーを紹介してくださいました。属人的に得手不得手があり、国の単位で特定産業に特化したところで、その産業部門に適性のない人々までムリにその部門に移動させても生産性は向上しないという論点です。この点、私もまったく同意いたします。水鏡仁さん、ありがとうございました。

http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20130109/p1

 この論点以外にもリカード理論の誤りは山のようにあり、どこから批判したらよいのか分からないくらいです。とりあえず、私が近著『自由貿易神話解体新書 ―「関税」こそが雇用と食と環境を守る』(花伝社)の中で検討したリカード・モデルの誤謬は以下の三点でした。簡潔に紹介します。

誤謬1
 リカード・モデルには、供給したものは全て売れるという暗黙の前提がある。現実には、供給したものは売れ残る。自由貿易は確かに生産を効率化するが、総需要不足の不況時にそれを強引に推し進めると、世界規模で失業者を増加させ、総需要をさらに収縮させていく負のスパイラル効果を持つ。リカード・モデルは完全雇用(つまり失業者がゼロであること)が前提となっているが、供給したものが売れ残ればもちろん完全雇用の前提も崩壊する。

誤謬2
 リカード・モデルには、労働や資本という生産要素は国の中に固定されており、生産された財のみが国境を超えるという暗黙の仮定がある。現実世界では、とくに資本という生産要素は容易に国境を超えるようになっている。このため、生産要素を固定した上で構築されている貿易モデルから得られる結論は、現実には全く当てはまらない。

誤謬3
 リカード・モデルは、生産費用が動学的に変化しないという仮定の上で構築されている。実際には工業は動学的に生産費用が低下していく収穫逓増の傾向を持つのに対し、農業部門はその逆の収穫逓減と、両部門が生産する財の性質は供給面で大きく異なる。この仮定を組み込むだけで、貿易する双方の国が利益を受けるという命題は誤りであることが分かる。収穫逓増産業に特化すれば得であり、逓減産業に特化すれば損なのである。

 もちろん、水鏡仁さんの指摘した論点も含め、リカード・モデルの誤りは他にもたくさんあります。
 高校の政治経済でもリカード・モデルを一生懸命に教育しています。このような誤った学説を高校生に刷り込んでいくのは問題があると私は考えます。もちろん歴史的な学説として教科書に載せるのはよいとは思いますが、まったく非現実的な仮定を前提としていることもしっかり教えねばなりません。本来ならば、リカード理論に対する反論も教科書の中で十分に紹介しなければならないと思います。
 
ジャンル:
経済
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1 コメント

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リカード論理ではクジラが空を飛ぶ (水鏡仁(酔狂人あらため))
2013-02-10 00:21:08
以前ご紹介したものより効果的と思われるリカード批判を書きましたので紹介します。
http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20130209/p1

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