goo blog サービス終了のお知らせ 

ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

指揮官降下〜平成30年度 陸自第一空挺団 降下始め

2018-01-17 | 自衛隊

平成30年度降下始め、試験降下は無事に終了しました。
その間に、最初に降下を行う日米両軍の指揮官が乗機したヘリは
離陸し降下に向けて再び演習場上空に差し掛かります。

第一空挺団長を乗せたチヌークが飛来しました。

団長降下降下降下〜!

 

この時に高らかに(招待席付近中心に)鳴り響いていたのが、
他でもない第一空挺団の実質的なテーマソングである、

「空の神兵」(梅木三郎作詞 高木東六作曲

であることを、わたしは大変嬉しく思っておりました。
2年前にはなぜか一度もこの曲が鳴らなかったので、
もしや”要らん配慮や忖度”か?と内心不満だったのですが、
今年は空挺が中心というところで堂々と流すことにしたのでしょう。

余談ですが、空挺隊員は酔っ払うと上半身裸になって「空の神兵」を歌うとか。

なぜ脱ぐか?というと、日頃上半身裸で駆け足を行なっているので、
脱ぐことになんの抵抗もないからだそうです。

指揮官降下、というのはまさに「空の神兵」からの伝統です。

海軍でも指揮官先頭というモットーがありますが、陸軍挺進部隊においても
指揮官は自ら率先陣頭に立ち、部隊を指揮するため、
先頭降下員として降下することが伝統になっているのです。

第一空挺団長は兒玉恭幸陸将補。
2年前の降下始めにも指揮官降下を行なっており、このブログでも
その時の様子をお伝えしたのですが、3度目となる指揮官降下で兒玉陸将補、
今回は(前回は知りませんが)なんと!

フリーフォール後自分で開傘するFF降下

を行なったのです。

この白いカマボコ型のパラシュートを用いるFF降下は、なんでも
FF徽章をもらえる特別な有資格者しか行うことができないはず。

兒玉陸将補はもともとFF持ちだったのが、2年前は久しぶりだったので
自動開傘するタイプの12傘での降下を行なったものの、空挺団長三年目になり
心構えも訓練もバッチリ、ってことで、昔取った杵柄FF降下を披露しているのかも。

やはり精鋭無比の空挺団のトップに立とうと思えば、
52歳の御大も指揮官先頭を実践する世界なのです。

FF、高高度降下の最大の利点は、傘を開くタイミングを自分で決められることです。
どういうことかというと、自由落下の時間が長ければ長いほど、
つまり傘を開くタイミングが地面に近ければ近いほど、
傘の視認性が低くなり、
敵に見つかりにくくなるのです。

もちろん降下始めではそこまで命の危険を侵す必要はないので、
フリーフォールしている時間はわずかなものだと思われます。

それでも飛び降りれば自動的に開傘するのとFFでは降下者のメンタルは違うでしょう。
兒玉陸将補は今回降下を行った最高齢隊員(52歳)だったそうですが、
その年齢にして
あえてこちらを選んだことには敬意を払わずにはいられません。

鷲は舞い降りた。

空挺団長、目標(多分白いタイヤ)に向けて着地です。

おっと、膝をついてしまわれましたか。

FF降下する隊員は大抵二本足で軽々と着地を決めるのですが、
それは決して簡単なことではありません。
簡単に見せているだけで、その影では日頃の厳しい錬成によって
技量を維持する努力が常に行われているということを、いわば
改めてうかがわせてくれた指揮官降下だったかもしれません。

 

別サイトの報告によると、空挺団では最低月一度の降下は必須であり、
一回降下するたびに「降下手当」が貰えるのだそうです。

一等陸尉で5200円ということなので、陸将補だと・・・うーん、いくらだろう。

全くの個人的意見ですが、指揮官降下の見どころの一つは、「副官」です。

ボスの降下をハラハラしながら見守り、着地地点が定まるとそこに向かって
カバンを持ったまま全力疾走していく姿には感動せずにいられません(適当)

そして、指揮官のパラシュートを現地の係と二人掛かりで外して差し上げます。

陸将補閣下、左腕を見せております。
なんか計器みたいなのを付けて飛んだのかな?

副官はカバンを置いて、陸将補どのの帽子を持ち、待機中。

この陸将補の写真を拡大しその首筋の盛り上がりを確認したわたしが、思わず

「空挺団の偉い人って皆こういうタイプですね。
いかにも陸自オブ・ザ・陸自ズというか」

というと、

「陸自のあるべき姿というか理想像を実在化するとああなるのかと」

なるほど、こんな人になら付いていける!
極論を言うと
この人の下でなら死ねる!と思うような指揮官でないと説得力なし。

兵たちの願望を形にすればそれがこういうタイプになるのか。

ではこういうタイプだから偉くなるのか、偉くなる段階でこうなっていくのか・・・。

指揮官降下は団長以下各群長、大隊長、支援隊指揮官ら20人くらいが行います。
陸将補以下一佐。二佐もいたかな?

どうも白いタイヤが着地の目印になっているようですね。

空挺団長、着地は見届けずに通過しました。

実は空挺団長のパラシュートは地面に放置してあり、
「片付け係」の隊員が撤収を行っています。

「おっとっとっと」

陸将補と全く同じところに勢いづいて走ってきた二番手の指揮官。
この人もFF降下です。

指揮官降下、次はチヌークからです。
FF降下は団長以下2名だけで、後の指揮官は普通降下でした。

位の上から順番に飛び降りているとすると、この降下者は三番手です。
階級は一佐でしょうか。

そう思った理由は・・・着地点に走ってくるのが一人だからです。
副官は将補以上の部隊長に従属することになっています。

「一佐どのお〜〜〜ッ!大丈夫でありますか!」

「うむ・・・足を挫いてしまったわい」

なんちゃって。

一佐どの、着地したら「5点着地」といってですね、

足の裏→膝→臀部→背中→肩

の順番で地面に付けていくわけですよ。
ちょっと具体的にどうするのかわかんないですけど。

何しろ12傘での着地は二階から直接飛び降りるのと同じくらいの
衝撃があるので、片足で着地すると骨折等怪我をする恐れがありますし、
着地の瞬間膝(前)から臀部(後ろ)に動き衝撃を逃すわけです。

上空からはチヌークから残りの指揮官が降下中。

一機から5名の降下です。
招待者席のあたりでは、アナウンスで一人一人の名前と階級が紹介されていましたが、
残念ながらわたしの座っているところからはよく聞こえませんでした。

そしてこれから空挺降下を行う隊員が前を通り過ぎていきます。

この日降下した空挺隊員は日米合わせて200名だということです。
最年長は陸将補の52歳、そして最年少は18歳の陸士。

続いてやってきたチヌークからも降下が始まりました。
あっ、遠目にもすごく見覚えのあるこのシルエットは?!

在日米軍第1特殊部隊群第1大隊の指揮官降下です。
特殊部隊の通称はご存知グリーンベレー。

同じチヌークからもう一人。
アメリカ空挺隊にも指揮官先頭という概念はあるようですね。

それとも降下始めに参加するためには指揮官降下必須と言われたので
去年から頑張って飛んでる?

飛び去るチヌークからは彼ら二人の残したロープがなびいています。

今まで一度も見たことのない傘の形です。
風抜きが大きく開いていて、全体的に箱のような傘の形。
傘が大きいのでその分索が短く、日本の傘より寸詰まりな印象ですが、
安定性はありますし、何と言っても他のパラシュートと接触しても
糸が絡まることはなさそうです(ここ伏線)

降下する人の上にあるひまわりのような形が遊び心を感じさせませんか?
ちなみにこの下、ハーネスと吊索をつなぐ部分を英語で

「ライザー(Risers)」

と言います。
次回の伏線ですので少し記憶に留めておいてください。

米軍のパラシュートは背負っているコンテナから直接出てくるタイプのようです。
わたしたちの前で説明してくれたところによると、自衛隊の傘は
背負っているコンテナごと背中から外れて吊索が伸長する方式でしたが。

最初に降下したアメリカ軍指揮官、着地態勢に入ります。

足、膝、ときて臀部を接地なう。

背中接地完了。

動かぬ指揮官の上に傘がゆっくりと覆いかぶさっていきます。

うーん・・・いつまで仰向けで寝ているつもりなのか・・・。

駆け寄っている米軍司令官の副官、このシルエット女性に見えません?

副官が助けに来るまでこのまま寝てるもんね。

指揮官を乗せて降下させたチヌークが戻ってきました。

コクピットガラスに三つ桜が見えます。
海上自衛隊の感覚だと桜三つはイコール海将ですが、陸自だと
中央即応集団司令官、方面総監、師団長(いずれも陸将)を意味します。

今回陸将は飛んでないはずですが、先ほど乗り込んでいた迷彩服視察団の中に
将官がいたということでしょうか。


さて、指揮官が降下し終わり、いよいよ全部隊による降下始め、
いや「降下まつり」が本格的に始まりました。

 

続く。

 

 



最新の画像もっと見る

11 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
やはり一度行かねば(笑) (鉄火お嬢)
2018-01-17 12:14:06
陸さんの観閲式どうしても今年やりたい理由
、何のジュビリーだという話→
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180116-00000002-withnews-soci
当の第1空挺団が今年は60周年だと記事にありました。中尉の記事にさすがに入らない野宴や降下ヘリの様子を補完してるような記事です。あの寒空で焼肉して上半身裸で肩組んで「空の神兵」歌うんだそうですね(T-T)アメリカさんも付き合ったのかな?
ところで新年早々からちうごく潜水艦が尖閣あたりで国旗掲げて浮上したようですが、実はこれ2004年の漢級事件の二の舞で、2日もストーカーされて晒し者にされたらしいですなあ。世界最高の哨戒部隊の庭で見つからないとでも思っていたのでしょうか(笑)呉の潜水艦の方が「あいつら、敵ですから」と憎々しげに言ってるのは、身内の哨戒ヘリとP3-Cの事でしたがww
返信する
空の神兵 (Unknown)
2018-01-17 15:11:12
とてもいい歌だと思います。大好きです。

今はどうだかわかりませんが、昔、某大では隊歌演習と言って海軍兵学校と同じように軍歌(今は自衛隊なので隊歌と言ってます)を歌う訓練?がありました。大声を出せるので、ストレス解消にもなり、私は大好きでした。

陸海空統合なので「艦隊勤務」とか海軍のものもありましたが、やはり陸軍のものの方が多い中「空の神兵」は明るい曲調で好きでした。

世紀の花よ 落下傘 落下傘
その純白に赤き血を
捧げて悔いぬ奇襲隊

この青空も敵の空
この山川も敵の陣
この山川も敵の陣

もう随分昔のことですが、今でも歌えるし、酔っぱらったら歌いたくなります。

ごちゃごちゃ言わずに敵陣にサクッと殴り込み。指揮官先頭でないと誰も付いて来ませんよね。
返信する
みなさま (エリス中尉)
2018-01-19 18:47:40
鉄火お嬢さん
初心者?には身体的にかなり大変なイベントですが、行く価値はあると思います。

今年は小野寺大臣の外遊と重なったせいか、平日に行われることになりましたが、
それでも最終的に後ろを見ると人がいっぱい立っていて驚きました。
戦車が好きな方々には物足りなかったとは思いますが・・・・。

中国の潜水艦は追いかけ回されてピンガー状態になり、情報も取られたみたいですね。
しかし一応軍事大国であるはずの人民海軍が、どうしてこんなヘマを・・・。
習近平氏の暗殺事件と内政的に何か関係があるという説もあります。
何れにしても何か「焦っている」と言った感を受けますね。

unknownさん
発表当時から軍歌らしくないモダーンな曲調と歌詞の素晴らしさで
大変評価の高かった「空の神兵」です。
一度当ブログでもその音楽的センスの良さについて熱く語ってみたことがあります(笑)

公然と第一空挺団の団歌になっているのが嬉しいですね。
それはそうと、海自の人も歌うんだ・・・?
返信する
「商」Shang型原子力潜水艦 (お節介船屋)
2018-01-20 16:24:46
防衛大臣が発表したこの潜水艦は「商」Shang型原子力潜水艦との事です。
「世界の艦船」No848によれば要目は次のとおり。
水中排水量6,096トン、全長106m、水中速力30kt、兵装533ミリ魚雷発射管6門
なお2006~07年に2隻が完成し、中国呼称は093/093A型でさらに4隻が建造中との事です。
防衛省の発表された写真ではセイル付近の上部構造物が一部盛り上がって凸状になっており、尖端科技提供の「世界の艦船」掲載の写真とは違う形状であり、建造中と報じられた後期の4隻の内の1隻か、本級の後の新型095型SSNの1隻かとも思われますが防衛省発表が「商」型との事ですのでこの型でしょうが初期の2隻ではないと思います。
昨夜放送のBSテレビで伊藤元呉総監の言では測深航法で宮古島近傍と尖閣諸島近傍を訓練で航行して、その後は大陸棚で浅いため浮上航行したとの判断でした。
あくまでも訓練での航行であり、通常ほぼ日本近海での行動は掴んでおり、発表もその都度実施していますが、マスコミが報道しないだけであり、今回は原潜、接続水域、尖閣諸島等でマスコミが急に騒いだだけとの事でした。
東シナ海は海自が、南シナ海は米海軍が中国潜水艦等の行動を把握しているとの言もありました。
この放送では伊藤元呉総監が潜水艦長時代の写真、リムパックでの米空母等を訓練で12隻撃沈成果をセイルに表示しての写真、海自の潜水艦内の動画も放映されました。
潜水艦の行動は家族にも言えないが1ヶ月を越える場合もあり、乗員の苦労を偲ばせる言もありました。
正月初めに東山紀之の「けんりゅう」訪問取材が地上波のテレビでも放映されましたが、操舵をジョイスティックでする模様もありました。ここまで海自もよくオープンするとも思いました。
返信する
指揮官先頭 (ベアベア)
2018-01-25 11:50:32
私の知る限り、「最高指揮官が最初に硬化する」のは各国の空挺部隊に共通しているみたいです。

空挺部隊の降下って、言わばナポレオン早々の頃の騎兵の総突撃みたいなものですよね。

英語で「突撃!」は「Follow me!」ですあに、最高指揮官が最初に突っ込む=常に全力を投入するものである、ということから来るのではないでしょうか。
返信する
再び「商」原潜 (お節介船屋)
2018-01-25 19:53:38
「世界の艦船」最新号No875によれば
中国海軍2タイプ目の攻撃原潜で、ロシアの技術的援助を得て設計建造されたと言われていますが1番艦建造に12年かかって2006年就役、2番艦は翌2007年就役しました。これが093型。
要目 
水中排水量6,096トン、全長106m、幅11.5m、喫水7.5m、原子炉2基、蒸気タービン2基、推進器1軸、30kt、533mm魚雷発射管6門、乗員100名
ロシアヴィクターⅢ型原潜をベースとしたと言われますが騒音レベルは同級より大きく、ソーナー性能も低いため対潜能力は低いと考えられるそうです。
10年経過して性能向上型の093A型が全長を5m延長して111mで2016年2隻就役、対艦ミサイルの垂直発射筒を備えていると言われています。
その改良型093B型が2隻建造中とのことでこの潜水艦は2016年就役の093A型ではと思われます。

弾道ミサイルの戦略原潜4隻、攻撃原潜7隻、通常動力潜水艦53隻の勢力ですが古い「明」型を「商」型原潜と「元」型通常潜水艦で置き換えています。
最新の通常動力の「元」型は静粛性は向上しましたが総合性能がロシアで建造した「キロ」型を上回っていないようで技術向上と静粛性の維持はなかなか難しいようです。なお「元」型はスターリングエンジンのAIPを搭載していると言われています。
返信する
皆さま (エリス中尉)
2018-01-26 11:52:03
お節介船屋さん
中国の潜水艦はとにかく騒音レベルが大きく、
「銅鑼を鳴らしながら潜行しているようなもの」
であるとは聞いたことがあります。
彼らもその弱点は重々承知していると思うのですが、技術的に如何ともできないのでしょうね。
おそらく日本の潜水艦の情報は喉から手が出るほど欲しがっていると思いますので、
防衛省は不要なメディアへの公開を控えてほしいと切に思います。
たとえ公開せずとも、メディア関係者が情報をその筋に漏洩しないとも限りません。
その点今のマスコミは人種構成からしても全く信用ならないとわたしは思っています。

ベアベアさん
初めまして!ベアベアさんはもしかしたら女性の方ですか?

陣地に大将が控え、攻め入った兵がその首を狙う、という合戦はありますが、
基本部隊を率いて突撃する指揮官は先頭に立つのが軍隊の常識となっています。

ただ、特に陸軍ではしばしば「決して先頭に立たない上官」というのがいたそうです。
理由は「後ろ(味方)から撃たれるから」。
何をして部下からこれほど恨まれてるんだよっていう(笑)
返信する
中国潜水艦 (お節介船屋)
2018-01-27 16:40:50
「世界の艦船」No875に小原凡司元駐中国防衛駐在官及び香田洋二元自衛艦隊司令官が投稿されていますが、近年は対潜戦に目が向いているようです。
潜水艦と対潜戦の能力は表裏一体であり、対潜戦のため最新ミサイル・フリゲイト「江凱Ⅱ」型にはハルソナーとTASSを標準で装備し、一部の艦はVDSも装備していると言われ、30隻を揃えると思われています。
「元」型潜水艦もアレイソナーを装備している事が確認されており、中国海軍が水上艦攻撃主流から対潜戦にも力を注ぎ始めた兆候があるそうです。
ただロシア建造の「キロ」型潜水艦(12隻保持)の性能を「商」型原潜、「元」型AIP搭載通常動力潜水艦も越えていませんがその財力と工業力を向けてくれば向上する事は確かでしょう。技術を盗む事に長けており、またフランスがソーナーやZ-9C対潜ヘリコプターを売っており、西側技術も加味する事が出来る現状です。駆逐艦もフリゲイトも潜水艦も毎年改良していますので昔言われたような事は無くなり、静粛性も向上するでしょう。ただ放射雑音は必ず計測し、ピーク音の除去等不断の努力が必要であり、修理維持費用も掛かる事となります。

香田元自衛艦隊司令官は海自の対潜戦維持からも30DDが安価と数揃えのため能力ダウンとテロ対策のための対潜戦軽視を危惧されています。
ただ米海軍には追い付けないとも予想されていますが、同盟国として海自の能力維持は必要であり、護衛艦の能力アップが要望されるでしょう。
返信する
中国に取っての対潜戦の難しさ (Unknown)
2018-01-28 05:25:18
対潜戦には、ソーナー等から音を発振してその反響音により相手(潜水艦)の位置を把握するアクティブ戦と相手の発する音を聞いて位置を探知するパッシブ戦がありますが、中国は今のところアクティブ戦への対応のみでパッシブ戦への対応はまだまだのようです。

パッシブ戦は相手の音を聞くだけですが、アクティブ戦は自ら発した音の反響を聞いて勝負するので、音が往復するアクティブ戦の方が探知距離は小さくなり、パッシブ戦の方がより遠くで潜水艦を探知出来ます。

現在、世界で有効なパッシブ戦が出来るのは、アメリカと我が国くらいです。これには日米両国の技術が優秀だというだけではなく、地政学的な側面もあります。

水中での音の伝わり方は大陸棚(水深200メートルより浅い海域)とそれより深い海域では違います。浅い海域では音は直接伝わるだけでなく、海底でも反射し複雑になり、パッシブ戦には不向きでアクティブ戦主体になります。

我が国やアメリカの場合、沿岸をちょっと出れば大陸棚を離れますが、それ以外の主要な先進国のほとんどは沿岸や周辺海域がほとんど大陸棚で、中国の場合、東・南シナ海のほとんどが大陸棚になります。そのため、パッシブ戦が出来る環境そのものがなく、どうしてもアクティブ戦主体になります。

冷戦時代の対象国であったソ連は北極海に面したムルマンスクと日本海に面したウラジオストックが年中不凍で使える潜水艦の拠点だったので、ここから出て来る船を抑えれば、事実上、封じ込めることが可能でした。

中国もソ連と似たような位置にあります。日本列島から南西諸島、台湾、フィリピンの列島線(中国の言う第一列島線)を抑えれば、中国の潜水艦を封じ込めることが出来ます。

中国でも対潜戦の技術は徐々に向上すると思いますが、自由に艦船を航行させられる海域のほとんどがパッシブ戦に不向きな大陸棚なので、パッシブ戦の能力を向上させるのは難しく、アクティブ戦に終始せざるを得ないと思います。
返信する
Unknownへ (お節介船屋)
2018-01-28 10:09:39
同じく「世界の艦船」No875へ矢野一樹元潜水艦隊司令官が「中国海軍の対潜能力を分析する」との題で投稿されています。
中国新型潜水艦のソーナーシステムは不明な点が多く一概に断定できないがロシア製MGK-400系ソーナーとフランス製TSK系列のソーナーが装備されていると推定されています。
旧式ではあるけれどもこのところ顕著な変化が曳航ソーナー(TASS)が「元」型に装備されている事が確認されたそうです。
TASSは海中を長距離伝搬する低周波音の探知に有効であり、これをSSに装備しはじめた事は中国海軍が潜水艦による対潜能力の改善に本格的に取り組み始めたと警鐘されています。
騒音レベルも改善しつつあり、また水上艦、航空機の対潜能力も大きく向上しつつあるとも述べられています。
一概に浅海域ではパッシブ戦に不向きと決めつけないで海洋観測で音伝搬がどうなるかは反射音特性を考慮すればTASS等の能力である程度わかるのではないでしょうか?
矢野元潜水艦隊司令官が雑誌に古い資料と断っておられますが各国潜水艦放射雑音比較図も示され、我々素人にも分かり易く警鐘されている事は自衛官も含め、中国海軍のこのところの変化は決して侮れないとの危惧からではないでしょうか?
香田元自衛艦隊司令官の海自の対潜能力維持、アップを盛んに発信されている事も同様ではないでしょうか?
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。