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シナゴーグ襲撃事件の起こった街で考えたこと〜ピッツバーグ

2019-09-21 | アメリカ

ピッツバーグを走っていて、シナゴーグ(ユダヤ教会)の前を通り過ぎた時、
MKが、

「今の教会で銃撃事件あったんだよね」

と言い出したのでかなり驚きました。

「いつ?」

「去年の10月」

あまりにも頻繁に起こるので、またかと思ってニュースを
聞き流していたのですが、その銃撃事件はなんと、今回借りた
Airbnbのあるユダヤ人コミニュティのなかで起こっていたのです。

シナゴーグ銃乱射事件

 

家から息子がインターンシップをしている大学までの道沿いには、
いくつもシナゴーグがあって、土曜日になると、
朝から猛烈に暑い日でも
黒いスーツに白いシャツをネクタイなしで着て
頭に丸い帽子を乗っけた男性、
正装した女性、その子供たちが
家族で教会に向かう姿が見られました。

スクウェレル・ヒルの繁華街にあるスターバックスの窓には、ユダヤ人の象徴、
ダビデの星が大きくペイントされ、流石の異教徒であるわたしたちも
到着して二日目には、ここがユダヤ人街であったことに気がついた次第です。

「やっぱり同民族で集まって住むと何かと便利なのかな」

「人が先に住み着いたのか、教会があるから住み着くのか・・・」

そこでふと、わたしはふとこんなことを考えました。

「やっぱりあれかな。
ドイツ系の人なんか、こういうところには近づかなかったりするのかな」

アメリカ社会は、明文化されてはいませんが、どの地域も
かなりセグリゲート化していて、民族ごとのコロニーができているのが普通です。

サンフランシスコだと、サンセットには中国系、サードストリートには黒人、
ミッションにはゲイ(これは民族じゃないか)といったように。

しかし、今までわたしはユダヤ人街というのはニューヨークにしかないと思っていたので、
ピッツバーグでたまたま選んだ場所がそうであったことに驚きました。

この街に到着した直後から、わたしは家々の窓に掲げられている

「NO PLACE FOR HATE」

という文字が書かれたボードの存在に気が付いていました。

事件を知る前は、これもまたユダヤ教の教義に類するメッセージと思っていたわけですが、
実はこれ、デモに使われたプラカードで、昨年の銃撃事件を受けて行われた大々的なデモで、
参加者が持って歩いたものだったことがわかりました。

 

猫の後ろに写り込んでいるのがそのプラカードです。

ちなみにこの家は子供二人のいる若い夫婦が住んでいて、
父親は仕事を終えて家に帰ってくると、毎日裏庭で子供の遊具を
手作りするため大工仕事を熱心にするような良きパパでした。


このシナゴーグでの銃撃事件では11名もの人命が失われ、
戦後最大のユダヤ人憎悪事件となったわけですが、連鎖するように
つい最近の4月26日にも、
シナゴーグでユダヤ人を狙った銃撃事件が起きています。


そして、たまたまこの身近で起こっていた事件について調べていたところ、
わたしは例によって、アメリカのメディア、それを受けた日本のメディアが、

これらのユダヤ人に対する憎悪犯罪が起こったことを、なぜか
トランプ政権のせいにしている、ということに気がついたのです。


日本では朝日新聞を筆頭としたメディアがスクラムを組んで森友加計問題で大騒ぎし、
むしろ国会議員を焚きつけるようにして倒閣運動をしていましたが、

アメリカのメディアも、トランプを弾劾するためにロシアンゲート事件を焚きつけ、
結局「なんの証拠も出てこなかった」というところまで同じということがありました。


アメリカ在住の友人によると、こちらも今やトランプを表立って支持すると
袋叩きにあいかねない雰囲気がメディアによって醸成されているのだそうで、
そのメディアはとにかくファクトなど御構い無しに、

「トランプ批判に繋げられれば嘘でもなんでもいい」

とばかりになりふり構わない印象操作とレッテル貼りの報道を行います。

この事件についても、事実報道に続いて行われたのがこの手の印象操作でした。
例えばある西海岸の地方紙がこの事件についてこんな記事を書いています。

事件が起きた時、真っ先に思い浮かんだのが、
移民らを非難し憎悪を煽るようなトランプ氏の発言だ。

デモに参加したユダヤ人にインタビューして書かれた記事の冒頭です。
一人の白人が「ユダヤ人は死ね」と言いながら銃を乱射したという事件なのに、
いきなり移民排除発言のトランプを思い浮かべてしまうんですね。
日本の「アベガー」な人たちを彷彿とさせます。

どれだけトランプ好きなんだよっていう(笑)


祖父母が欧州で経験したホロコースト (ユダヤ人大量虐殺)
と同じことが、今、米国で起こりつつあると感じる。

うわ、出たよ。

日本でも先日、日韓友好を呼びかける集会で、在日三世の女性が、

「日本産まれ日本育ちで韓国語は喋れません。
なので韓国に帰れと言われても帰れません。(中略)
在日は資産を凍結されて収容所に送られる事も想像してるし、
ナチスみたいにガス室に送る事もきっとこの国はやると思ってます」

とスピーチしたということがありましたが、そっくり同じ匂いがしますね。

 

言論の自由が保障されているこの国で、在日三世が何を思いどう言おうと
それは人の自由ではありますが、それでもこの発言を聞いたとき、
むしろこれは日本に対するヘイトスピーチというものではないかと思いました。

一方、いくらホロコーストが歴史的事実だったからと言って、
今のアメリカで「ホロコーストが起こりつつある」とは、
こちらもまた、どこの並行世界にお住まいですかと聴きたくなります。

しかもトランプ氏の移民排除の政策のせいでホロコーストが起こるかもしれない、
と心配しているのは、ユダヤ人ではなく、全く第三者である新聞記者なのです。

 

さらに不可思議な記事の続きをどうぞ。

「トランプ氏は移民を侮辱し、銃保有の権利を擁護するが、
犯人は移民ではなく、誰も必要としないライフル銃を持っていた」

と憤る。

わかりにくい文章ですが、元々が稚拙なのですみません。
これはインタビューに答えた人が憤っていた、ということでしょうか。

もしこの記者が嘘をついていないのなら、インタビューされた男性は、
犯人が移民でなく、かつ銃を持っていただけで、
これがトランプのせいで起きた犯罪だ!と憤っていたことになります。


そもそも、今回の犯人の憎悪対象は「ユダヤ教徒」に絞られており、
トランプ大統領が排除しようとしている「不法移民」ではありません。

それをいうなら、移民大国であるここアメリカにおける全ての人種は
もともと何処かの国からの「移民」なんですけどね。

つまりこの筆者は、何が何でも

「この事件の犯人は、トランプの移民排除などの発言に触発されて
このような憎悪犯罪を起こした。つまりトランプが悪い」

という結論に持っていきたいあまり、間違いを故意犯的に放置しているのです。

メディアリテラシーのない層や、トランプ憎しの民主党支持者などが
やはりこの間違いを見てみないふりをして怒ってくれることを期待して。


銃撃犯のロバート・バワーズは、トランプの信奉者どころか、
SNSでトランプ発言についてあれこれと激しく非難していたということも、
メディアは「報道すれども言及なし」でスルー状態です。

都合の悪いことは報道しない自由を駆使するマスコミ、何やら日本と似ています。


報道はさらにこのように続きます。

ユダヤ系の人権団体によると、トランプ政権1年目の昨年、
ユダヤ人に対する嫌がらせなどは前年比で6割近くも増えた。

随分はっきりと言い切っていますが、これだけ断言するからには
その相関関係についてもう少しファクトに基づいた考察が欲しいところです。

それでは、ここピッツバーグでも、トランプ政権発足後、
ユダヤ人に対する嫌がらせとやらは増えたということなのでしょうか。

それが、次を読んでびっくりですよ。

だが、住民によると、多くのユダヤ人が暮らすピッツバーグでは
宗教が異なる人々が共存し、これまで目立ったヘイトクライムは
起きていなかったという。

前文と全く論旨が繋がっていません。

トランプの発言が民族ヘイトクライムを誘発したという事実はなく、
ただ一人の反ユダヤ主義の男が個人的な嫌悪犯罪を起こした、
というのがこの事件の実相だと報道自体が証明しているのです。

なのにどうして一人の反ユダヤ主義の男の犯罪責任を大統領に押し付けるのか。


そして案の定、このピッツバーグのユダヤ人社会にも反トランプ派がいて、
どうしてもトランプの一連の発言が
この事件を引き起こしたことにしたいらしく、
弔問に訪れたトランプに抗議するため、大挙して押し寄せました。

それを朝日新聞が嬉々としてこのように報じています。


事件を受け、トランプ大統領は30日、メラニア夫人や
ユダヤ教徒の長女イバンカ氏と夫のクシュナー氏を伴い、
現場の礼拝所を訪れ、犠牲者を追悼した。

一方で礼拝所の周辺では、数千人の住民らが訪問に抗議した。

集まった人たちは、口々にトランプ氏の排外主義的な言動が事件を誘発した、
などと批判。

「あなたには事件の責任がある」

「大統領、白人ナショナリズムを非難せよ」
「我々は壁ではなく、橋をつくる」

といったプラカードを掲げた。
11月6日の中間選挙に向けて「投票しよう」という声も上がった。

礼拝所近くに住むユダヤ教徒の元技術者ボブ・ウィーナーさん(78)は

「米国民を引き裂こうとする人たちに結束を見せるために来た」
という。
トランプ氏の訪問は

「政治的で、彼のうぬぼれを増幅させるものだ」

とし、

「中間選挙は自分たちを守るために極めて重要だ」

と語った。

 

トランプ大統領はこの事件を受けて、すぐに犯人に対する非難声明を出し、
さらには「死刑の法律を強化」すべきだと述べ、

「こういう連中は究極の代償を払うべきだ。
こういうのはもう終わりにしなくては」

と強調したというのですが、それでもこの人たちは大統領に対し、
弔問に訪れたことを含めて憤らずにはいられないようです。


ところで気がついておられましたか?

トランプ氏の娘婿って、ユダヤ教徒なんですよね。

トランプ氏を非難するユダヤ人たちは、そのこととユダヤ人排斥との間に
どういう整合性を見出すのでしょうか。

 


今回アメリカに住んでいる友人と話したところ、メディア、特にCBSなどは
それこそ反トランプの運動体のようになっているそうで、そのためには
日本とこれも同じく、トランプのすることなすこと否定し、
ストローマン理論や報道しない自由など、ありとあらゆる方法を駆使して
とにかくトランプを非難することしかしていないということでした。

「他の国の報道写真なんか見ると、トランプの写真がまともで驚く。
アメリカのメディアはわざとだろうってくらい写りの悪い写真しか使わないから」

「そこまでするんだ」

「いじりやすいというか、悪口が言いやすいからだと思う」

「是々非々ってのはないの」

「誰もやれなかった対中国に対する経済戦争については、
内心喝采しているアメリカ人も多いと思うけどね」

「あー、チャイナマネーが入っているメディアほどトランプを叩くんだ。
で、誰も表立ってトランプがいいと言わないけど、大統領になった・・。
多分次の大統領もトランプになるんじゃないの」

「そうなんじゃないかな。
表面上見ていると一体だれが支持しているのかわからないのにね」


奇しくも日米で全く同じような、国民が選んだ指導者に対するメディアの
「打倒運動」が起こり、反政府活動が
もはや現象のようになっているというわけです。

日本でも現政府への支持率は50パーセント位を維持しているようですが、
この現象とメディアの論調との乖離は一体何を意味するのでしょうか。

 

ところで冒頭画像は、モールの中の「As Seen On TV」という、
テレビの深夜番組で紹介していたおもしろ&便利グッズの店で撮ったものです。

テラコッタの像に水をかけていたら、髪の毛(何かの芽)が生えてくるのです。
サンダースはともかく、トランプこんな髪型してねーし、と思いながら
ここで紹介するためにこっそり写真を撮っていると、
お店の人が話しかけてきたので、何か言わなければいけない気がして、

「こういうの買う人ってどんな人なんでしょうね?
好きだから買うのかアンチだから買うのか」

というと、お店の人(多分中国系)は

「わたしは嫌いな人にお勧めしています。
生えてきたら思いっきりむしってやってくださいと言って」

あまり英語が上手でない彼はおそらく移民一世なのだと思いますが、
案の定、その最後に

「わたしは嫌いなんですけどね、トランプ」

と付け加えるのを忘れませんでした(笑)