◎道元のお気に入り
道元が五台山から天童山に帰る途中に寧波の大梅山護聖寺に泊まったが、夢に大梅法常禅師が現れた。大梅法常禅師は開花した梅の花一本を道元に与えた。この花の縦横は一尺あまりだった。この梅の花は優曇華であった。
なお、優曇華を受けた者は悟っているということ(拈華微笑の故事)。道元は、この夢について、夢の中も覚めている時も同じく真実であると述べている。
(参照:正法眼蔵の嗣書篇)
道元は、大梅法常のことを気に入っていたようだ。道元はこういうところが人間くさい。
さて、大梅法常は、馬祖に参禅し、「仏とは何か?」と問うた。
馬祖、「即心是仏」。
大梅法常は、これを聞きたちまち大悟した。
以後約40年間、大梅法常は大梅山にこもって独り草庵を結んで聖胎長養を行った。この間松の実を食べ蓮の葉を着物として暮らし、世間のことは見聞せず、ただ四方の山が春には青く秋には黄色くなることだけを見て暮らした。
そんな中、馬祖の弟子筋の塩官が、山から出てきて説法するように依頼したが、ついに大梅法常は山を下りることはなかった。
(参照:正法眼蔵の行持 上篇)
また、正法眼蔵の行持上篇には、以下の話もあるが、私は嘘だと思う。
『大梅法常は頭頂に八寸の鉄塔一基を置いて落とさないことを、眠気覚ましとして坐った。この鉄塔は今も大梅山にある由。』
禅では、錐を腿に刺しては眠気を払った慈明の逸話もある。眠気の問題も大切だが、もっと重要なポイントがあるのではないか。