尾崎放哉

2008年09月02日 | 健康・病気
私が俳句というものに興味を持ったのは、山頭火の自由律俳句だった。
それ以前に、芭蕉や一茶の俳句は知っていたが、
自分には関係ないものと思っていた。
なぜか私は20代のはじめ、駒込のアパートで1人暮らしをしていたとき、
山頭火の俳句にのめり込んでいた。
かれのことを書いた本も何冊か読んだ。
そのときに、放哉の句を知った。
放哉とはどんな人だろう?と思いながら、この歳になってしまった。

1週間ほど前から「海も暮れきる」吉村昭著(講談社文庫)を読んだ。
このぐらいの本なら、いつもなら3日もあれば読んでしまうのだが、
小説を書いていたので時間がかかってしまった。
勤務がきつく電車の中でほとんど読む気がしなかったこともあります。

この小説に書いてある尾崎放哉という人を、
私はあまり好きになれない。
酒を飲むと、人に辛辣な言葉を投げかける人を私は好きじゃない。
ようするに酒癖が悪い。
私は酒を楽しく飲みたい。
最高学府を出て、一流会社の要職にもついたのに、
酒のために職を追われた。
小説の主人公が好きになれなかったということも、
本を読むのに時間がかかった理由です。

奥さんがかれから離れたのも理解できる。
私のつれあいは、私が深酒するたびに悪態をつく。
思えば、私の父は酒癖が悪かった。
酔って家に帰ってきて母をののしり、何度か殴ったことがあった。
私はそんなことはしない(できない)が、似たようなものです。
世の中に認められない自分、そんな持って行き場のない気持ち。
あ…、現在の私そのままです。
親父のつらさがたまらないほど伝わってきます。

放哉の心情は理解できる。
しかし、かれは人生に甘えてた。
この人は42歳で、小豆島の粗末な庵で孤独に死んでいった。
放哉のキーワードは、「酒」と「結核」かな?
この2つがなかったら、あのすばらしい句は生まれなかったでしょうね。
かれに俳句がなかったら、誰もかれの暮らしの援助はしなかったと思う。
いや、近所に住むシゲという老女がいた。
この人がすばらしい。


<代表句>
 咳をしても一人
 墓の裏に廻る
 足のうら洗えば白くなる
 肉がやせてくる太い骨である
 いれものがない両手でうける
 考えごとをしている田螺が歩いている
 こんな良い月ひとりで寝て見る
 春の山の後ろから煙が出だした

コメント
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