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ブルックリンで黒人の暴動・・・韓国人の商店が襲われる

2013-03-21 09:47:00 | 時事/金融危機
 

■ 雇用統計が反映しないアメリカの雇用の実態 ■

希望の国アメリカは、同時に失意の国でもあります。
多くの成功者を排出する一方で、
多くの貧しい人達が、必死に生きている国でもあります。

現在、アメリカの労働参加率は6割程度。
就業可能な人達の内、4割の人達が失業しています。
過去の経済危機時に比べ、リーマンショックの余波の特徴的なのは
失業が長期化している事。

さらに、運良く職が見つかったとしても
マクドナルドやウォールマートの店員など
極めて賃金の低い職しか無い事を雇用統計は表す事が出来ません。

アメリカの労働市場の実体を正確に把握するならば
労働参加率と平均所得(但し、高額所得者を除く)を観測する必要があります。

特に、現在のアメリカでは失業が長期化して就業意欲を喪失した人達が
就職活動を止めた事により、失業率が低下する状況が発生しています。
最近ではロイターの報道ですら、
「失業率は下がったが、労働参加率も依然低迷している」と表現しています。

■ 失業率の上昇と失業の長期化は、社会を不安定にする ■

貧困化が極端に進行すると暴動が発生したりします。

日本に住んでいては、あまり想像し難いのですが、
アメリカでは過去に何度も大小の暴動が発生しています。

得に有名なのは1992年4月の「ロス暴動」です。

警官達が黒人の容疑者を袋叩きにした事件で、
裁判に掛けられた警官達が無罪になった事が直接的な原因ですが、
その下地には、黒人少女が韓国人商店で
強盗と間違えられて射殺された事件の鬱憤が有りました。

LAのサウスセントラル地区で発生した黒人達の暴動は次第に過激化し、
韓国人商店やスーパーマーケットを集団で略奪破壊する行為に発展します。

実はアメリカでは伝統的に黒人と韓国人の仲は険悪です。
黒人達が韓国人を見下している一方で、
韓国人も黒人を嫌悪しています。

某携帯電話会社のCFの黒人のお兄ちゃんは、
「犬の子の黒人」という意味において非常に侮蔑的なのです。
尤も、「犬の子で、黒人の妹」という意味で日本人にはもっと侮蔑的ですが・・・。

■ ブルックリンで黒人達が韓国人の商店を略奪した ■

私はアメリカに危機が訪れるならば、
それは政治的な危機や経済的な危機よりも
暴動などの社会的危機が発端になると予想しています。

マイノリティーや貧困層を中心とするアメリカの抑圧された人々は、
黒人大統領のオバマを支持している為に、じっと堪えています。
しかし、我慢はいつか限界に達するでしょう。

特に、財政削減問題でアメリカ議会が紛糾している影響が、
社会保障サービスの遅延や、減額に発展した場合、
人々の我慢は、どこかで爆発するはずです。

しかし、爆発の口火は警官の暴行事件など些細な場合が多いのです。

今回はブルックリンで韓国人の商店が黒人の集団に略奪される事件が発生しました。

ギャングの16歳の黒人少年が、逃亡途中に警官達に発砲し、
応戦した多数の警官の銃弾で死亡する事件は発生しました。
今月9日の事です。

付近の黒人達は、11日から少年の追悼集会を現場で開いています。
この集会の参加者達が、付近の韓国人商店のいくつかを襲撃して、
略奪を行い、商店主を突き飛ばして怪我を負わせました。

警官が集会の警備に当たっていましたが、
突然の出来事で、傍観するしか無かった様です。

集会は7日間予定されていますが、
警備が厳重になっている為、この騒ぎはこれ以上は大きくならないでしょう。

しかし、アメリカの下層社会では確実にストレスが溜まってきており、
こういった小競り合いが頻発する様になれば、
いつかは「ロス暴動」の様な、大規模な暴動に発展する可能性があります。

今回はニューヨークのブルックリンで発生した小さな暴動ですが、
アメリカの他の地域でも、黒人と韓国人の対立が問題になっています。

■ オバマは弱者の味方か? ■

民主党の大統領としてオバマ大統領は福祉政策に力を入れています。
国民全員が保険に加入できるシステムを導入するなど、
オバマは弱者の味方と思われています。

一方でオバマの後ろ盾はウォール街だとも言われています。
オバマが大統領に初当選した選挙で、
オバマはネットを通じて小口の寄付を集めて当選したと報道されました。
しかし、実際にオバマ陣営を支えた資金は
GSなどの銀行によるものであった事が明らかになっています。

オバマはウォール街をリーマンショックの危機から救う為に作られた大統領です。
リーマンショック直後、アメリカ国民は銀行を税金で救済する事に批判的でした。
「強欲な資本主義」の象徴とも言える銀行を、
貧しい人達の税金で救う事は、正義に反すると考えたのです。

しかし、リーマンを生贄とした事で、人々は大銀行の破綻の影響力を思い知ります。
そして、ブッシュ政権末期に、議会で銀行救済法案が可決します。

次期を同じくして、オバマが大統領戦に勝利しています。
アメリカ国民はこの若くてマイノリティー出身の大統領に期待して、
銀行の救済に同意したとも言えます。
この大統領ならば、銀行の横暴に鉄槌を下すに違い無いと思ったのです。

しかし、オバマの就任後の実績は人々の期待に沿うものではありませんでした。
保険制度改革も、共和党との調整によって骨抜きにされています。
結局は保険会社が契約企業から利益を得る様な仕組みが出来上がりました。

ウォール街改革も、ボルガールールを採用したものの、
施行までに時間が掛かり、その間に重要な項目は骨抜きにされています。

その間、FRBはジャブジャブとドルを発行し、
一時は破綻の危機に瀕していた金融機関は、
いつの間にか、市場最高益を計上するまでに回復しています。

積みがったのは、国債という国民の借金です。

■ そろそろオバマのメッキが剥がれる頃 ■

オバマ政権は2期目を向かえ、国民の視線も厳しくなります。

アメリカは株高や住宅価格の底打ちの兆しなど、
経済が復活するかの様に思われています。

一方で、労働参加率の低下が続くなど、
経済の回復と相反する現象も続いています。
(雇用の回復にはタイムラグがありますが)

今回のドル高や、株高は、ユーロ危機の裏返しとも言え、
ヨーロッパを回避した資金が米国を買上げているだけとも言えます。

アメリカは財政の崖や、債務の上限問題など、
マイナス要因も多く抱えていますが、
ユーロよりもマシという思いや、
議会はギリギリで現実的な妥協をするという期待が、
アメリカを現実よりもマトモに見せています。

実際にはアメリカの債務問題は、多少の増税や歳出削減では解決しません。
日本と同様に、現状の社会システムを解体するくらいの改革が必要です。

連邦公開市場委員会(FOMC)はFRBのQE3の継続を決定しましたが、
今回の「景気回復予測」が下振れした時、
アメリカ国民も、QE3の効果に疑問を持ち始めるでしょう。

そして、儲かっているのは銀行だけだという事に気付き初めます。
こうして、オバマのメッキは徐々に剥がれて来るのでしょう。

■ 最後は国民が決める ■

アメリカ国民は連邦政府からの独立性を確保する為に銃を保持しています。
これは、米国の憲法が国民に与えた権利とも言えます。

アメリカ国民は、国民が政府に従属しているとは考えていません。
そして、政府が国民を裏切る時は、
国民は実力を持ってこれを排除します。

従順な日本人と違い、アメリカ国民は自分達の将来を決める能力と手段を有しています。
それがたとえ暴動であったとしても、それは憲法に保障された権利なのです。