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TPPという第二の開国・・・近代国民国家の終焉

2013-03-17 07:11:00 | 時事/金融危機
 



■ 「生麦事件」をご存知ですか? ■

TPPへの参加は、日本にとって「第二の開国」とも言えます。
浦賀に黒船が現れて、アメリカが日本に開国を迫った時、
多くの武士達は、「攘夷」と称して海外の影響を排斥しようとしました。

「鎖国」というぬるま湯に浸かり、世界を全く知らない武士達は
世界と日本の実力さを理解する事すら出来なかったのです。

そんな中、薩摩藩が生麦事件を起します。
騎馬で薩摩藩の大名行列を通り抜けようとした
観光目的のイギリス人4人(女性を含む)に
薩摩藩士達は、抜刀して切る付けました。

イギリス人の内、1人が死亡、2人が重傷を負ったこの事件の結果
イギリスと幕府、そして薩摩藩との間に交渉の場が持たれます。
幕府はイギリスに賠償金を支払いますが、
薩摩藩は、生麦事件犯人の逮捕と処罰、
および遺族への賠償金2万5000ポンドを要求を容易には認めませんでした。

鹿児島湾内には7隻のイギリス艦船が投錨していましたが、
彼らが薩摩藩の蒸気船3隻を拿捕した事で、薩摩藩が砲撃を開始します。
生麦事件から1年の間に、薩摩藩は湾内に80問の砲台を準備しており、
一斉にイギリス艦隊を砲撃します。

折からの荒天で、波が荒い為に、イギリス艦隊の砲撃は精度が低く、
なかなか砲台を潰せなかった事で、イギリス艦隊は大破1、中破2
死者13人、負傷者50人という大きな被害を受けます。

一方、イギリス艦隊の砲撃は、砲台のみならず鹿児島城下にも及び、
折からの強風で、鹿児島の街は焼失します。

■ 薩摩と英国の蜜月 ■

その後の終戦交渉で、薩摩藩は幕府に借金をして賠償金を支払います。
そして、何故か、薩摩藩とイギリスの間には強い絆が生まれ、
薩摩藩は長州藩を手を結んで、倒幕の狼煙を上げる事になります。

イギリスと薩摩藩の間に生まれた絆が何かと言えば、
「利害の一致」意外の何物でも無いでしょう。

イギリスはアジアの市場として日本の中枢に影響力を及ぼしたい。
薩摩藩は幕府を倒して新たな時代の担い手となりたい。
この両者の思惑が一致して、倒幕の動きは大きく前進します。

■ ロスチャイルドの傀儡としてのイギリス政府 ■

この場合注意が必要なのは、イギリス政府は
ロスチャイルド系商社の後ろ盾に過ぎないという事です。

当時、植民地貿易の急先鋒を担った東インド会社は解散しています。
植民地内の独立運動など、植民地経営の治安維持コストが増加した為、
東インド会社は、植民地の経営権をイギリス政府に移譲して解散しています。

しかし、ジャーディン・マセソン商会やサスーン商会といった
ロスチャイルドと姻戚関係にある商社がアジア貿易を独占していました。

結局、ロスチャイルドは植民地の徴税権を政府に譲る代わりに、
植民地の治安維持のコストを政府に丸投げしたのです。
その一方で、手駒の商社を使って植民地からの利益を独占します。


■ アルカイーダと同じ役割を担う「維新の志士」 ■

明治維新の成立に大きく貢献したのは「維新の志士」達です。

徳川幕府末期、幕府は外圧に対抗する為に戦艦などを海外から輸入します。
その対価は金で支払われます。
その為に国内の金が不足し、貨幣の金の含有量が減ります。

その結果、貨幣の価値が下落して、インフレが発生します。
庶民の間では、打ち壊しなどの暴動が発生しますが、
下級武士達は、インフレによって生計が成り立たなくなります。

薩摩藩は食い詰めた武士達を巧みに組織化してゆきます。

彼らは「維新の志士」などと呼ばれる様になりますが、
その実体は、テロリストの集団でした。
京都などでテロを働き、社会的な不安を煽っていったのです。

■ 坂本龍馬とグラバーというロスチャイルドのエージェント ■

一方で、薩長とイギリスのパイプ役として坂本龍馬らが暗躍します。
トマス・グラバーはロスチャイルドと姻戚関係にある
ジャーディン・マセソン商会の使い走りでした。

グラバーの日本国内の実働隊が坂本龍馬だったのでしょう。

坂本龍馬は亀山社中というダミー会社を設立し、
徴収藩の薩摩藩からの武器調達を仲介します。

しかし、薩摩藩に実際に武器を手配したのはジャーディン・マセソン商会です。
グラバー商会はダミー会社として、その仲介を果たし、
さらにダミー会社として亀山社中を仲介させています。

何故、こんなに複雑な販売経路が必要であったかと言えば、
当時の幕府の法律で、海外の商社は幕府以外に武器を売却出来なかったのです。

■ TPPは明治維新に良く似ている ■

TPPの影響を考えた時、その実体が明治の開国に良く似ている事に気付きます。

1) 外圧による国内市場の開放
2) 不平等条約の締結
3) 国内の協力者の存在
4) 社会構造の大きな変革

現代の日本人で、日本の開国を否定的に捉える人は皆無でしょう。
しかし、明治時代の没落した氏族や華族階級にしてみれば、
開国によって彼らの生活が崩壊したと捉えていたはずです。

日本は開国によって、近代国民国家への変革を成し遂げますが、
徳川幕府と鎖国の状況にあっては、
日本が近代国家に成る為には、もっと長大な時間を擁したことでしょう。

■ 近代国民国家から、地域国家連合への変革期 ■

TPPがもたらす変革とはいったい何なのでしょう。

それは近代国民国家の終焉と、地域国家連合への変革でしょう。
ヨーロッパはEUという形で、一足先にこの変革を達成しています。

1) 通貨統合
2) 関税の撤廃
3) 人の移動の自由
4) 労働力の移動の自由

ユーロのゴタゴタでヨーロッパの地域統合は失敗だったとの考える方も多い様ですが、
EUとユーロはまだまだ変革の過渡期です。

通貨だけを統合して、財政を統合しなければ、
徴税による利益の循環が、国内だけに限定されます。
これでは、共通通貨によって消費国の富は、
生産国であるドイツに流出する一方です。

共通通貨ユーロが機能する為には、共通の財源を持って、
生産国の富が、消費国にも還元されるシステムが必要です。
国民国家では当然の事と受け入れられている徴税による富の再配分が、
地域国家統合体であるEUでは、未だ人々に受け入れられていません。

ドイツ人は、自分達が稼いだお金が、
ギリシャやスペインに配分される事を決して許さないのです。

地域統合が進んだEUの域内ですら、
近代国民国家の枠組みは、強固に残っています。

ユーロ圏がこの壁を打ち破るには、相当のショックが必要です。
それは、多分、ユーロ崩壊と南欧諸国のデフォルト危機として露になります。

北部ヨーロッパの国々は、ユーロからの離脱か、
それともユーロの存続かを真剣に問われる事でしょう。
追い詰められているのは、南欧諸国では無く、
ユーロの優等生達なのです。

■ TPPを中心にした環太平洋の国家連合 ■

アメリカはTPPを軸に、環太平洋のEU型の国家連合を目指しているはずです。
しかし、海を挟んで広い地域に国々が分散し、
文化や経済発展のレベルが大きく異なる環太平洋地域では、
EUの様な強固の連合体は成立し難く、
経済的な結び付きを軸にした、連合体となる事が予想されます。

■ 機軸通貨ドルと、アメリカの通過の切り離し ■

ユーロの反省から、一気に共通通貨を全ての国が使う事は不可能ですが、
経済に結び付きが不可分になっているアメリカ・カナダ・メキシコあたりから
共通通貨にシフトして行き、それに経済力の在る日本などが合流して行く事でしょう。

アメロという北米共通通貨の存在は10年以上も既製事実とされていますが、
多くの人達はアメロの実施に懐疑的です。

それは機軸通貨ドルが大きく変質する事など有り得ないと思っているからです。

しかし世界の不幸と不安定性の多くが、ドル機軸体制に由来している事からも、
機軸通貨とアメリカの国家や財政を切り離す試みが絶対に起こるはずです。

アメリカの覇権の衰退と共に、機軸通貨発行国というチートな利権は剥奪されるでしょう。

ドル便利な通貨ですから、機軸通貨として残されますが、
それは多分、IMFが発行し、各国通貨のバスケット制によって価値が裏打ちされるはずです。
現状のIMFのSDRが、ドルという名前になると考えれば自然です。

現在の世界の決済は、ドルの口座で行なわれますので、
企業やシステムに大きな負担を掛けずに通貨システムを変革する為には
ドルという名前を残した方が簡単です。

一方でアメリカの国内で流通する通貨を、
アメロという名前にすれば、混乱は避けられます。

■ 州単位で地域連合に統合されて行くのでは無いか? ■

アメリカ、カナダ、メキシコは経済的結びつきが強いので、
次第にEU型の地域統合が進んで行く事でしょう。

もしかすると、地域統合に参加するのは国単位では無く、
州単位になるかも知れません。
そうすれば、国家間の力の差が緩和されます。

日本において自民党政権の頃から道州制が検討されているのは、
日本も将来、州単位で、この地域統合に合流するのかも知れません。

事ここに至って、近代国民国家は完全に終焉を向かえます。

ナショナリズムは次第に後退し、
単純に利害の判断から地域連合への統合が住民によって決断されてゆくでしょう。

国家という強い抵抗組織も無いので、
法律の統合などもスムーズに進むはずです。

■ 富の集中が生み出す、富の分散 ■

市民革命や産業革命以降、人類は急速な勢いで技術と経済を発展させて来ました。
それは、市民階級の台頭無くしては、達成し得ないものでした。

富が一部の王族や貴族に集中していた時代は、
彼らがどんなに贅沢をしようと、
彼らの消費には限界がありました。

ところが、市民階層が台頭して、本格的に消費に貢献し始めると、
経済は爆発的に発達し、拡大します。
これは、資本家達の「利益の拡大」という理念と合一です。

現在のグローバリゼーションは、一部の人達だけが儲かるシステムです。
しかし、その結果は日本の長期低迷を例に取るまでも無く、
経済の縮小を招くはずです。
結局、「豊な中間層」無くしては、経済は発展しません。

一方、少し見方を変えると、アメリカのグローバル企業は、
途上国に投資する事で、そこに新たな「中間層」を生み出しつつあります。

結局、先進国で富裕層に集まった富は、
効率的に途上国で中間層を生み出しているとも言えます。

アジア諸国の力強い発展を目の当たりにすると、
彼らが搾取されるだけの存在とは、決して思えないのです。

結局、国家というシステムでは、途上国への投資には限界があります。
そこで、グローバル企業や国際金融資本家達は、
先進国の富を巧みに吸い上げて、途上国で豊な中間層を生み出しているのです。

この経済のダイナミズムの前に、既に近代国民国家は過去の遺物とも言えます。

■ TPPという第二の開国に生き残る為に ■

明治維新の改革がそうであった様に、
TPPの参加は日本の既得権者にとっては損失以外の何物でもありません。

日本全体が先進国という利権の恩恵に預かっている現状を考えると、
現在の日本人が、TPPによって得をする事は殆ど無いはずです。

しかし、既得権を持たない若者達は、
TPPを上手く利用すればチャンスが増えるはずです。
新しい時代のビジネスは、国境を軽々と超えて展開します。

現在の日本は少子高齢化によって衰退を余儀なくされています。
TPPという第二の開国によって、労働市場が自由化されれば
日本の労働力と消費の不足は解消して行くでしょう。

一方で、一国一民族という日本の国家としての根幹は大きく揺らぎ、
治安や風俗、社会通念という観点から、
日本の国家は今とは大きく変質するはずです。

現状、多くの日本人は、この様な大きな変革を望みません。

一方、国境を越えて中国やアジアで活躍し始めている一部の日本人にとては、
既に、それは現在の彼らの日常とも言えます。

■ TPPの国内論議など、会社の方針に口出しする課長のカミサン程度のもの ■

TPPを会社の合併と捉えるならば、
合併には弊害はつきものです。

当然、吸収合併される企業の社員は面白くありません。

ところが、合併交渉のテーブルに付く経営者達にしてみれば、
そんな社員の不満などは、一々取り上げるまでもありません。

合併の主導権を握るA社の経営者にしてみれば、
社内事情を持ち出してゴニョゴニョと歯切れに悪いB社の社長にこう言うはずです。

「そんなお宅の社内事情なんて、どうでも良いんだよ。」
「要は、お宅は合併する意思があるのかね、無いのかね?」

A社の社長にしてみれば、日本の農協や農家の声などは、
B社の課長の奥さんがこう言っている位にしか聞こえないないでしょう。

「あなた、合併で給料下がったらどうするのよ!」


私はTPPが日本の利益になるとは考えていませんが、
避けて通れないものならば、前向きに捉える必要もあると思いますし、
特に若人達には、これをチャンスと捕らえて欲しいと思います。

日本は今のままでは老人に食いつぶされる運命です。
その老人とは10年後、20年後の私達自身です。

はたして、私は娘や息子どんな未来を残せるのでしょうか・・?
上野の山に立てこもるばかりでは、未来は開けないのかも知れません。