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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ブラックスワン・・・市場はピリピリしている

2013-03-19 10:19:00 | 時事/金融危機
 



■ 黒い白鳥? ■

白鳥は白い色をしているから「白鳥」と呼ばれています。
ところが、かつてオーストラリアで「黒い白鳥」が見つかりました。
当時のヨーロッパの人達は、大変ビックリしたそうな・・・。

経済でも極たまにブラックスワンが現れます。
常識的には危機など起こりそうもない所から、
突然危機が発生する事を、ウォール街の有名なトレーダーの
ナシム・ニコラス・タレブが「ブラックスワン」と呼称したのが始まりです。

■ 経済が人心に左右される以上、ブラックスワンは何度でも現れる ■

リーマンショックで債券金融市場は崩壊しましたが、
「大数の原理」という統計理論上は、破綻は決して起こり得ないものでした。

債券の中には破綻するものも当然あります。
しかし、全体の中に破綻の占める割合は決して高くはありません。
そこで、色々な債権を細切れにして、混ぜ合わせれば、
一つの債券を所有するよりも損失のリスクは小さくなります。

債券金融システムの根本的な発想は、
リスクを極限まで分散する「大数の原理」という統計的原理に支えられていました。
この理論に則れば、合成債券の内の7%が破綻しなければ、
システムは維持出来るはずでした。

ところがサブプライムショックによって
アメリカの比較的貧しい人達のローンが破綻した時、
リスクの細分化がリスクを拡大するという皮肉な結果を生みます。

自分の所有する合成債権であるMBSや、
それらを組み込んだ金融商品が、どれだけの損失を抱えたのか
誰も分からなくなっていたのです。

実際には、数パーセントに満たない損失であろうと思うのですが、
「キズモノ」になった金融商品は一気に暴落します。

理性的に考えれば、慌てる事など無く、
粛々と損失を確定するだけで良いハズなのに、
金融商品は「生もの」ですから、バイキンが混入すれば一気に値下がりします。

そこの「リーマンショック」が追い討ちを掛けます。
アメリカの大銀行であるリーマン・ブラザーズが経営危機に陥りますが、
金融界の大勢は、リーマンは救済されるであろうと思い込んでいました。

ところが、米国政府はリーマンブラザーズを救済しませんでした。
これによって、一気に金融危機が加速化します。

誰もが大銀行は潰れないとタカを括っていた所、
大銀行だって破綻する事を改めて見せ付けられたのです。
銀行株は暴落し、金融商品の多くは、投売り状態で一時的に価値を失います。

常識的に考えれば、経済の根幹を成す銀行が全て潰される事など有り得ないのに、
人々は、次は何処が潰れるのかと疑心暗鬼に陥りました。

金融の世界では、1日などの極々短期で資金をやり取りする
コール市場という市場が存在します。
ところが、貸した先に銀行が明日破綻するかも知れない状況で、
コール市場に資金を貸し出す銀行は、激減します。

あらゆる金融機関が危機に備えて、
手元の資金を手放さなくなったのです。

こうして、何という事の無い「貧乏人の破産」が
世界の金融市場を崩壊の一歩手前までに追い詰めます。

これこそが、常識的には存在しない危機である「ブラックスワン」です。

ブラックスワンは人々の恐怖によって出現します。

■ キプロスのデフォルト ■

ギリシャの南に浮ぶ島、キプロスの知名度は決して高くありません。

ネットの情報では、2年程前から、
ギリシャよより先にキプロスが破綻する事は常識でしたが、
キプロスの経済規模があまりにも小さいために
マスコミはこの問題に注目する事はありませんでした。

キプロスは北半分をトルコが支配し、
南半分はギリシャ系住民による独立国家「キプロス共和国」が支配しています。

元々は英国領だったので、英連邦の加盟国でもあります。

こんな小国ながられっきとしたEU加盟国で
さらにはユーロを通貨として採用しています。

尤も、農業くらいしか産業の無いキプロスは、
「世界で尤も金融規制の緩い国」として成り立っている国でした。

世界に幾つか存在するマネーロンダリングの聖地だったのです。
ロシア人の富裕層がキプロスの金融機関に預金しています。
さらに、日本のFX業者に幾つかも、キプロスに口座を構えています。

キプロスはリベリアやギリシャと同様に「便宜置籍船」でも有名ですが、
同様に銀行預金へんの課税率の低さで、ロシア人の資金を誘導していたのです。

そんな国が財政破綻の危機に瀕します。
そこで、EUは銀行の高額預金に10%の課税を掛けるならま
キプロスを救済してやると持ちかけます。
(預金残高の低い口座は6%代の金利)

損をするのはロシア人の成金なので、
キプロス政府はアサリとこの条件を受け入れます。

■ 法整備の前に封鎖される預金 ■

いくら小国とは言え、キプロスも法治国家です。
ある日いきなり預金に課税すると言っても、国会承認が必要です。

ところが、この法案が国会に提出される前に、
先週の土曜日以来、キプロスの銀行は窓口を閉め、
ATMも稼動していません。

当たり前の事ではありますが、
10%課税されることが事前に知れ渡れば、
多くの国民が預金を引き出します。

そこで、法案成立より先に銀行が預金封鎖を実施して、
金融機関からの資金流出を防いだのです。

こうして、キプロス国民の預金はあっけなく封鎖されてしまいました。

■ 何の前触れも無く封鎖される預金 ■

当たり前と言えば、当たり前の事ですが、
預金封鎖の実施に何の前触れもありません。

突然実施するから預金封鎖なのであって、
事前にアナウンスをすれば、預金引き出しの列が出来て、
銀行は取り付け騒ぎになり、当然破綻します。

■ 預金封鎖の解除が難しい ■

問題は預金封鎖の解除です。
銀行の信用を失われていますから、
人々は我先に預金を引き出そうとします。

しかし、銀行は預金のの90%を運用に回していますから、
預金引き出しが発生すれば、一瞬で破綻します。

ですから、今回注目すべきは、
預金封鎖解除後の預金者達の行動です。

はたして取り付け騒ぎに発展するのか、
人々は冷静に対処するのか、注目されます。

多分、引き出し金額の規制を掛けるなどの方法で、
預金の流出を食い止める一方で、
EUの支援を確実とする事で、
国民の不安を沈静化して行くのでしょう。

■ 実験には最適な小国 ■

キプロスは小さな国なので、債務の総額が少なく、
救済が比較的容易な国です。

言うなれば、預金封鎖の実験には最適な国とも言えます。

1) ロシア人の怪しいカネを少し頂く
2) 預金封鎖の影響を調べる
3) ユーロ安への誘導

ギリシャやスペインの国民がキプロスの状況をどう見ているかは分かりませんが、
単に、不安を煽るだけの様な気もします。

■ 気づいたら、黒い白鳥で池が埋まっていた ■

キプロスの預金封鎖が、ブラックスワンの出現に繋がる訳ではありませんが、
金融界では、最近、ブラックスワンの話がチラホラと出ています。

アメリカや日本の株高と相反して、
市場にはピリピリした空気が漂い始めました。

しかし、面白い事に、人々はこんな危機感にも直ぐに慣れてしまします。

池の水面を、黒い白鳥が埋め尽くしても、
それが普通の光景として認識されるなら、
金色の白鳥でも現れない限り、
金融界は危機の上で平穏を装い続けるのかも知れません。

グリーンバブルの終焉・・・中国「サンテック」のデフォルト

2013-03-19 04:50:00 | エコロジー
 



■ 世界中で太陽電池パネルのメーカーが潰れ始める ■

反原発派は「再生可能エネルギーへの変換」だとか、
「これからは太陽電池の時代」などと言っています。

一方で世界を見渡せば、太陽光発電ブームは完全に終焉に向っています。

旗振り役だったドイツは財政削減によって補助金が大幅に削られ、
アメリカでもオバマ大統領は、「エコビジネスで雇用創造」などと言わなくなりました。
日本においても、太陽光発電の買取価格の値下げが発表されています。

そんな折、世界最大の太陽電池パネルメーカーである
中国の「サンテック」の転換社債がアメリカでデフォルトした様です。

■ 価格破壊の張本人が破綻 ■

サンテックは安さを武器に世界の太陽光パネルメーカーを淘汰して来ました。
アメリカの「ソリランド」、ドイツの「Qセルズ」などという企業は
政府の太陽光発電の優遇政策にも関わらず
価格の安い、中国製のパネルに市場を奪われ、倒産しました。

■ 太陽光発電バブルは、各国の補助金削減で崩壊 ■

一方、太陽光発電を巡る環境は大きく変化しています。

太陽光発電などのエコ発電は、元々採算性に乏しい発電方式です。
政府の設置補助金や、電力会社の高値買取が無ければ
全く採算の取れない発電方式です。

この様に補助金に依存している産業は、
補助金の終了や減額によって一気に崩壊します。

現在ヨーロッパ各国は財政削減に取り組んでおり、
太陽光発電の買取補助金なども削減されています。
さらには、ユーロ危機による景気悪化が、
太陽光発電への投資を抑制しています。

大規模な太陽光発電施設は、日照的に有利な南欧で開発が活発でした。

スペインでは太陽光発電の電力を25年間、高値で買い取るとして来ました。
当然、太陽光発電ブームが過熱し、多くの太陽光発電所が建設されました。
予想を超える発電量にとうとう政府は絶えられなくなります。
そして、買取量の上限を決めると同時に、
発電による売却益に6%の税金を課すことを決定しました。
これで、あえなくスペインの太陽光発電バブルは終焉します。

■ 日本でも買取価格が引き下げられる ■

311による原発停止以降、日本でも太陽光発電バブルが発生します。
仕掛け役はソフトバンクでした。

ソフトバンクは民主党が太陽光発電の買取価格を引き揚げることに呼応して、
「メガソーラ」ビジネスに参入する事を発表します。
しかし、多くの企業が参入した為に、電力会社の買取コストが増大します。

政府は太陽光パネルの価格低下を理由に
1013年の買い取り価格を40円から36円に引き下げます。(一般向け)

この決定には政権交替の影響も大きいのでしょうが、
いずれにしても、ソフトバンクを初めとする太陽光発電ビジネスは、
買取価格の引き下げによって、採算性が低下する事になり、
新規施設の建設には、大きなブレーキが掛かる事となります。

ちなみに、家庭用の太陽光発電の買取価格も4円引き下げられています。

■ シェールガスブームに沸くアメリカ ■

アメリカは現在シェールガス・バブルの真最中です。

リーマンショック直後、オバマ大統領はグリーン・ニューディール政策を打ち出し、
再生可能エネンルギーの分野の投資を促進し、
新たな雇用を作り出すとぶち上げます。

ところが、その後、アメリカではシェールガスブームが沸き起こります。
するとどうでしょう?
アメリカの天然ガスが価格は過剰供給によって暴落したのです。

新規のシェールガス田の多くは貯蔵施設を持たないので、
産出されたガスは、過剰を承知でも市場に出荷せざるを得ないのです。
当然、採算なんて合いません。

当然、ガスによる発電コストが大幅に下がる事になりました。

アメリカでは、先日、新規の原発の建設認可が却下されました。
福島原発事故の影響で、安全性に問題があると見られがちですが、
本当の理由は、過剰生産される天然ガスの消費を増やしたいのでしょう。

つい2、3年前は「再生可能エネルギー」だとか
「グリーン・ニューディール」だとか大騒ぎしていたアメリカは、
その舌の根も乾かぬうちから、CO2の大放出に大転換です。

そもそも、「二酸化炭素由来の地球温暖化仮説」事態が、
排出量取引や、エコビジネス創出の為の壮大なペテンなのですから、
儲かるとなれば、CO2の放出に躊躇する事はありません。

■ グリーンバブルの終焉 ■

「サンテック」の破綻は、グリーンバブルの終焉を象徴する出来事です。

結局、補助金に守られた産業は衰退する運命にあるのです。
それが、世の常であり、資本主義経済のお約束でもあります。

それと同時に、過剰な投資と安売りでで市場を荒らした者は、
いつかはその代償を我が身に受ける事が、今回も証明されたとも言えます。

そういえば、最近電気自動車って聞かないですね・・・。
こちらも、補助金無くしては、成り立たない・・・・。