http://toyokeizai.net/articles/-/11992?page=2 より
■ アメリカの10倍の価格で天然ガスを輸入する日本 ■
エネルギーは世界の要です。
そして、エネルギーを制した者が、世界の覇権を握ります。
上のグラフはアメリカ、欧州、日本の天然ガス価格の比較です。
日本はアメリカの10倍、欧州の2倍の価格で天然ガスを輸入しています。
■ 油化連動という特殊な価格決定システム ■
天然ガスの価格は「油化連動」という特殊な価格決定方式が採用されています。
これは、原油の輸入価格に天然ガスの輸入価格がリンクするというものです。
日本の原油の6割が中東から輸入されています。
一方、天然ガスはインドネシア、マレーシア、オーストラリアから輸入されています。
原油と天然ガスは輸出国が異なっているのに、価格はリンクしているのです。
日本はオイルショックの教訓から、中東諸国と原油を長期に購入する契約を結んでいます。
この価格が高い為に、連動して天然ガスの輸入価格が高くなっています。
■ 原発停止による天然ガス輸入で膨らむ貿易赤字 ■
福島原発事故に伴い、日本では全ての原発が停止しています。
そして、再稼動の目処が立っていません。
一方で、火力発電用の天然ガスの輸入が増大し、
貿易赤字の原因の一つとなっています。
ガスの輸入増大分はスポット市場で調達され、
高い値段で売りつけらたと一部報道されていますが、
日本が輸入する天然ガス価格は、
元々アメリカや欧米よりも高い値付けがされていたのです。
■ シェールガス輸入で15%のコスト削減? ■
先日、シェールガスの輸入でガスの輸入コストが15%削減されると報道されました。
輸入代金が巨額なので、15%と言えども少なくない金額です。
アメリカの天然ガス価格は日本の1/10なのに、
何故それを輸入すると、現在の輸入価格とあまり変わらないのか不思議です。
それはシェールガスの価格が、
現在のアメリカの天然ガス価格よりも3倍程度高いからです。
シェールガスは採掘コストが在来ガスよりも割高です。
現在のアメリカの天然ガスは、カナダからパイプラインで輸入されています。
そこの、シェールガスブームで採掘されたガスが加わりました。
シェールガスの採掘業者は、貯蔵設備を備えていないので、
シェールガスの増産は、アメリカの天然ガス価格を下落させました。
シェルガスの採算ラインは6ドル/百万BUT程度だと思われますが、
それを2~3ドル/白万BUTで売ったら当然赤字です。
在来ガスが輸入出来る状況でシェールガスをいくら開発しても
永遠に採算ベースには乗らないのです。
そこで、アメリカは日本や韓国に目を付けます。
現状、高値で天然ガスを輸入せざるを得ない2国に
シェールガスを安く輸出してやるぞと持ちかけたのです。
但し、天然ガスを輸出する為には液化する必要があり、
そのプラントの建設費や運用日を考えると、
日本が購入するシェールガスの価格は13ドル/百万BUTになり、
現在よりも15%だけ安い価格になるのです。
■ 「シェールガス革命」の本当に姿は「シェールガス投資バブル」 ■
シェールガス革命で天然ガス価格が下がり経済が復活などと大騒ぎしていますが、
ガス価格は供給過剰で暴落しただけです。
シェールガスビジネス事態は採算性が絶望的なのに、
シェールガス投資ばかりが先行しています。
これは一種のバブルで、儲からないと分かれば投資は直ぐに下火になります。
■ シェールガスの輸出は米国とTPPに参加する必要がある ■
アメリカ議会はシェールガスの輸出を原則禁止しています。
しかし、アメリカとFTA(自由貿易協定)を締結した国への輸出は認めています。
韓国は米韓FTAを結んでいるので、シェールガスを輸入出来ます。
しかし、日本はシェールガス輸入の前提条件がFTAの締結となります。
アメリカとのFTAは現状はTPPとなっています。
シェールガスを輸入する為にはTPPに参加する必要があるのです。
■ エネルギーの価格決定権を持たない国家の悲哀 ■
日本の韓国や中国が何故、割高な原油や天然ガスを買わされるのか?
それは、これらの国が実質的にエネルギーの価格決定権を持たないからだと思われます。
産油国との間で一応交渉は持たれますが、
結局、輸入する為いは高値で妥結せざるを得ません。
(スポット市場は別)
これがイヤなら中国の様に独自に資源を開発するしかありません。
中国はアフリカの独裁国家や紛争国に出資して油田やガス田を開発しています。
当然危険な地帯なので、人民解放軍を軍事顧問という名目で送り込んでいます。
先日、アルジェリアで日本人技術者が殺されましたが、
中国の軍事顧問や技術者達は100人単位で殺されています。
この様なリスクを犯さなければ、独自のエネルギーは確保出来ません。
日本はイランとの間で、独自の油田開発を進めていましたが、
アメリカとイランの関係が悪化する中で、
このプロジェクトは中止に追い込まれています。
結局、国家が真の独立を勝ち取るには
エネルギー的に自立する必要があります。
エネルギーの安全保障や価格決定権を他国に握られた国は
独立国家としての体を為していないとも言えます。
■ シェールガス開発の環境コストを支払うハメに ■
シェールガス開発は、環境破壊を引き起こします。
現在は環境対策は一切行なわれていませんが、
将来的に環境破壊が原因でシェールガスの新規開発は縮小するでしょう。
そして、既には開発されたガス田には、環境復元が求められるかも知れません。
そのコストが将来的にシェールガス価格に上乗せされるならば、
シェールガスの値段は、現在の天然ガスの輸入価格を超える可能性もあります。
もし、長期契約でガスの購入を行なえば、
環境回復コストも価格上昇という形尾で、日本が支払う必要が生じるます。
新聞やニュースなどは「シェールガス革命」をアメリカ復活の切り札と持ち上げますが、
実は、日本や韓国は、アメリカのカモでしか無いのです。