中国の老人ホーム４９

女性は親切なのですが、
男は無愛想で横柄です。

これはそういう気質というか、
習慣なだけで、嫌っているわけじゃないらしいのですが
感じは悪いです。

タクシーの運転手さんに聞いてもさっぱりです。

「判らないんじゃ仕方が無い。帰るか」

「帰りません」

途方にくれたお嫁さんに、ワタシが知恵を
授けます。

こんなこともあろうかと、老人ホームの
住所を書いた紙を準備していたのです。

それをお嫁さんに渡します。

お嫁さんは、そのメモをひったくるや
タクシーの運転手さんに見せます。

簡単に話がついて、乗り込み、たった五分で
ホームに到着しました。

運賃は１６元（３２０円）でした。

ワタシは盛んに売り込みます。

「な、俺がいて、よかっただろう？　
　役に立つだろう、な、な・・」

「フン・・・タクシーもったい無かったヨ」

ＣＥＯ（最高経営責任者）としてのプライドが
あるためか、ワタシの功績など
一切認めようとしません。







ＡＬＡ！中国

中国の老人ホーム４８

危ない、危ない、です。

歩道の真ん中に、うつぶせになって寝ています。

手は万歳の形です。

病気かな、と思ったのですが、頭のところに
大きな空き缶が置いてあり、そこに小銭が
放り込まれていました。

バケツみたいに大きな空き缶なのが
印象的です。

駅の反対側に出ますが、そこの歩道でも、
お婆さんが同じ姿勢で倒れて
おり、これも空き缶に小銭です。

二人とも、着衣は小綺麗でワタシなどよりは
よほどよいモノでした。

これで同情がもらえるのかしら・・。

さて、件の日本式老人ホームはどこかいな。

誰に聞いても判りません。

バスはあるらしいのですが、
どのバスに乗るのか、停留場に並んでいる人に
聞いても判りません。







ＡＬＡ！中国

中国の老人ホーム４７

ワタシは慌てて断りましたが、それでも
どうぞ、というので仕方なく好意に甘える
ことにしました。

しょっちゅうやっているのか、
譲り方がとても自然でした。

みると、あっちでもこっちでもやっています。

大人でも平然と割り込む。どこでも構わず
放尿する。

道徳的には大いに問題がある中国人ですが、
お年寄りや子連れ親に席を譲るのは、盛んです。

譲られる方は、当然、という顔でお礼も
しません。

日本での話しですが、お嫁さんも、席を譲るのは
反射的にやっていました。

ためらいが全くありませんでした。

「中国人、偉いね」

「これだけだヨ」

一時間ほど乗車して終点で降り、老人ホームを探します。

駅から出た途端、五体投地のお爺さんを踏みそうに
なりました。







ＡＬＡ！中国

中国の老人ホーム４６

ころころと、秒単位で気が変わるお嫁さんです。

「ここに決めたんじゃないのかよ」

「観るだけです」

「昼飯は？」

「アトアトアトアトアトアトアト」

そういうことで、来た道を引き返し
地下鉄に乗って逆戻りです。

地下鉄では、席をとろうと、皆争奪戦
をやっていました。

ワタシ達は、格好つけて参戦しません。

欧米人でしょうか、背の高い白人男性がしかめ面で
争奪戦を睨んでおりました。

そういえば、白人が争奪戦に参加する姿は
見たことがありません。

それなりのプライドがあるのかもしれません。

二人してつり革に掴まります。

そしたら、目の前の席に座っていた
女子大生風の娘さんがス～と
立ちあがり、席を譲ってくれました。







ALA!中国

中国の老人ホーム４５

慌てたワタシは狼狽しながらも懸命に反対します。

「街中で買い物には便利だけど、汚いよ。
　お母さんが可哀相です」

「ウルサイヨ」

「何より大切なことだけど、お年寄り達に
　笑顔が無かったぞ。止めよ」

「ここにします。飛行機から近くて便利だし、安いです」

どうも、ウチのお嫁さんは自分の立場だけから
物事を考える傾向があるようです。

「飛行機から近くて便利なんてのは、小江の都合でしょう。
　一番大切なのは、お母さんが快適に暮らせるかです」

「ウルサイヨ。あっちへ行きなさい」

仕方がありません。

何しろＣＥＯ（最高経営責任者）の決定です。

それに、お母さんも中国人です。

汚いのなど気にしないのかもしれません。

「しょうがないなあ。じゃあ、ホテルに帰るか？」

　時間をみると、まだ午前中です。

「日本式の老人ホームに行きますヨ」







ＡＬＡ！中国