新しいお家で その４

　お部屋の配分について、ワタシは執念深く頼みます。
　ワタシの部屋は、満杯なのに、彼女の部屋は、
とても空いているからです。
　置いてあるのは、ミシンだけなのです。

「ね～、小江の部屋は何も使っていないんだから、
ようちゃんの倉庫にしてもイイでしょう？」
「ダメ！絶対ダメ！本は捨てなさい！」
「もったいないですよ」
「あんな、ブンブン小説、意味ないでしょ」

　ブンブン小説とは、よく解らないのですが、武侠小説、
という意味らしいのです。
　カンフー映画も、彼女は「ブンブン映画」とバカにします。
　ワタシは剣豪小説とか、ドンパチ映画が大好きなのです。

新しいお家で その３

　日本は布団に畳みですが、中国ではベッドに椅子です。
　
　これは、日本のオウチが、木製で、床も木であることが
多いのに対し、中国では、石が基本だからだそうです。
　石に布団を敷いたのでは、布団も痛むだろうし、冷たいでしょう。

　又、床が木なので、脱靴するようにもなった、という話です。

　彼女は、上海に帰るや、家族に対して、脱靴するように
勧めたのですが、てんで相手にしてくれなかったそうです。

「オウチに靴のまま入るなんて、汚いヨ～」

　ちなみに、日本は脱靴するので、ドアを内向きに開くのが
難しくなったとか。
　なにげない習慣にも、それなりの理由があるんですね。

　新しいオウチは、ドアは、勿論外開きですし、床は木です。

番外編 お嫁さんが逃げるヨ その９

　帰国中は、新しく開発された浦東なんかには出かけず
、お母さんとおしゃべりして、近所のスーパーで買い物しただけだそうです。
リニアモーターカーや地下鉄にも乗らなかったそうです。
　日本人と比較して、中国人は好奇心が乏しい、と聞いていましたが
ホントみたいです。

「小江ばかり、海外旅行へ行けていいね！」
「じゃあ、今度、北京へ行くか。小江は、行ったことがないんだヨ」

　全体主義国家では、政府は国民の自由な移動を嫌いますので
彼女は、中国人なのに、上海しか知らないのです。
　あと、行ったことがあるのは、下放政策で、黒竜江省へ行ったぐらいですか。

「よし、行くか」
「よ～ちゃんが、お金を出すんだヨ」
　小江ばかり、海外旅行に行って、それで不公平だから、
というのが発端だったはずなのですが・・・。

「まあ、しょうがないな」
「それから、会社を休むから、その分の補填として￥２万円　小江に下さいな」
「？？？？？　ま、まあ、しょうがないか。じゃあ、行くぞ」

「行かない」

番外編 お嫁さんが逃げるヨ その８

　そうこうする間に、お嫁さんが帰国してきました。
　今回は、一週間だけでした。
　驚いたことに、帰るやいなや、即、掃除と洗濯を始めたのです。

　嬉しいことに、ワタシへのお土産がありました。

　まずは、酒。中国酒です。
「これは親戚にもらったんだヨ。高いんだヨ」
　なるほど、立派なケースに入って、みるからに高級そうに見えます。
　後は、乾し肉、飴、薬。
「ほ～、段ボール製にしては、よく出来ているな。
　お酒は、段ボールを発酵させたのかいな？
　乾し肉は、段ボールを刻んで・・・」
「ヨ～チャン、アンタ、ケンカ欲しいのか・・・」

番外編 お嫁さんが逃げるヨ その７

　サイボーグ、人造中国人、段ボール製日本人、ウソの中国人・・・

　長年中華ばかり食してきたので、体質が変わったのでしょうか。
　とすれば、これはやはり改造されたのだ、ということになるかしら。
　それとも、安い刺身や寿司だったので、美味しく無かっただけなのでしょうか。

　わずか千円程度の買い物にも躊躇する精神構造といい、
　改造はかなり進んでいるのでしょうか・・。

エライことになった・・・・。

ま、イイヤ。

　さて、お風呂です。

　いつもはシャワーだけですので、日本風に、
浴槽にお湯を張るという、贅沢を試みることにしました。
　しかし、なにしろ真夏ですので
　長湯が出来ず、シャワーと大差無かったみたいです。
　
　まさか、こんなことまで計算して、里帰りした訳じゃないよな。
　いくら中国４千年でも・・・。

　しかし、お嫁さんがいないと、一日がナガ～イですね。