アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

絆の連呼で絆から魂が抜けて…2011年が行く

2011年12月31日 | Weblog
テレビの水戸黄門が終わります。放送時間内に、悪代官などをひれ伏させる…素晴らしい人でした。その黄門様の道具が、「葵の御紋」の印籠。無敵ですよ。黄門様の印籠にも匹敵する無敵の漢字が、「絆」。3.11以降、絆が日本中を席巻しました。そのことについて、なんの文句もありません。

 ただ、絆の連呼はありましたが、それによる復興の効果ってあったのかな?絆ではなく、「大和魂」でも「復活」でも「結束」でも「底力」でも「連帯」でもよかった!?

 漢字について頼りになるのが、広辞苑やら常用字解やら。広辞苑で、絆の意味を調べてみると…
 1 馬・犬・鷹など、動物をつなぎとめる綱
 2 断つにしのびない恩愛。離れがたい情実。ほだし。係累。繋縛。
 絆の第一の意味は、「動物をつなぎとめる綱」。それが転じて、第二の意味ができた。本家筋の中国語では、絆は、「邪魔をする」「束縛」という意味。絆と染め抜かれたTシャツを着ていると、中国人からは、「アイツは、意地悪なやつなんだなあ」と、思われるわけです。良くない意味です。
 日本語の意味でも、「ほだし」は、「人の身体の自由を束縛するもの」ですから、良い意味とは言えません。

 だから何なんだ!絆を批判するのか?って?…冒頭に「文句はありません」と、ことわっております。
 家族や友人を失い、家を失い、古里の風景を失って、それでもなお去りがたい思いによって人を故郷につなぎとめるもの。その感情を「絆」と呼ぶのなら、これほど今年の状況にふさわしい言葉はありません。

 絆の連呼で、いつの間にか絆から魂が抜けてしまって、11画の漢字だけが黄門様の印籠よろしくあたりを睥睨してきていやしないか?
 そう思うと、少しホッとしますが…。なぜかというと、絆は、利害や対立を越えて、人々をひとつにする。こうなると、「しがら」ができる。しがらみは、そのとおり個人を束縛し支配する。ひきこもりや家庭内暴力は、しがらみとしての絆から起こるもの。魂が抜けた絆なら、しがらみは、ユニクロのダウンジャケットのように軽い。…軽くなってしまった「絆」にいつまでもしがみついていなくてもいいでしょう。

 では、新年は絆に代えてどんなことばがいいと考えているか?「働」です。どうでしょう?(出ました!今年最後のオジンギャング。ギャングじゃなくてギャグだろうって?そ、それがギャグなのっ!)災害からの復興、不景気からの復興、心が荒んだ社会の復興…額に汗して「働き」ましょう。

 「絆」を手書きするとき、旁をどう書きますか?「半」ではないような…?
「判、伴、畔…」これらの旁は、「半」です。しかし、「絆、袢、(あまり目にしないけど、胖、拌)…」の旁は、半の上部左右の点が、カタカナの「ハ」のようになっています。判も伴も畔も、元々の旁は、「カタカナのハ」。これが、常用漢字ができて、常用漢字に入れられたものは、旁が「半」となった。表外漢字(早い話が、常用漢字以外)の旁は、昔のまま(半の上部左右の点が、カタカナの「ハ」)。

 なぜ常用漢字表に入れるときに、「ハ」だった部分を「ソ」にしたか?それについては、正反対の諸説があり…解説不能です。個人的には、「ハ」は末広がりで、縁起がいいと思いますが。
 手書きの時にどうするか?「絆」と書いてもいいし、旁を「半」にしてもいいです。好きなように書いてください。入試で×にならないかって?「キズナという漢字を書け」という問題は、入試には出ません。

 と、いうわけで絆を深めた一年でした。来年は、「働」で、どうでしょう。また書いちゃった。よいお年をお迎え下さい。