アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

死んでくれて良かった

2018年01月17日 | Weblog
 平成30年度、今の暮らしを続けるか?はたまた大躍進するか?未だ決めかねて、思案の毎日。最大の問題は、「体調」。診察券の束を握りしめて、自嘲的に、「減るのは頭髪。増えるのは診察券」という、名言を発表してしまいましたよ。
 で、明日、例の小学校へ行きますが、「5時間、もつだろうか?」という心配が。つまり、5時間もたずに、病院送りもあるかなと。

 そこで、カミサンが名案を出した。
 「(片道1.5kmほどのところにある)JAストアへ徒歩で行って、寒玉キャベツ、トリの背肉、ロバパンを買ってきて!」というのである。歩行の練習なのだそうで。脊柱管狭窄症の私に、往復3km歩けという。もっとも、それくらい歩けなければ、小学校で5時間も生き生きと活動など出来ないわけで・・・。
 ハーバードのクープで買った自慢のリックサックを背負って雪中行軍開始。いざ、JAストアへ!
 一度も休まずに、JAストアに到着。「よし、よし」と、自分を褒めたそのとき、衝撃的なセリフが耳の奥まで飛び込んできました!声の主は、寒玉キャベツ売り場の前で立ち話をしていた70歳代の女性たちの一人。

 「死んでくれて良かった」
 このセリフ、社会経験が少ない人にとっては、強烈なものであることは間違いありません。しかし、私には、手に取るように、よく理解出来ました。薄情者のセリフだろうって?いえいえ、本当に、心底、「死んでくれて良かった」のです。死者への思いがあるから、このセリフを堂々と、人前で発せられるのです。薄情な輩には、このセリフは重すぎます。
 寒玉キャベツを選ぶ振りをして、なぜ「死んでくれてよかった」のかを突き止めるという手もありましたが、私にはどんな内容かは分かっているので盗み聞きという高度なテクニックを駆使する必要はありませんでした。

 早く、コトのあらましを書けって?はいはい。
 老夫婦で暮らしていた。妻は年齢相応に老いてはいるが、大きな病気もしなかった。ところが夫が、抗原病を発病。そのあと立て続けに、非結核性抗酸菌症、心房細動、滲出性内耳炎、水虫、脊柱管狭窄症と発病(あれあれ、アンティークマンと同じ病気じゃないか!こういう偶然もあるのですねえ)。自暴自棄となった夫は、痛みを和らげるために、過度な飲酒。歩くのもおぼつかないのに、酒屋へ走るその姿は、草原を走る水前寺清子(早い話が、チータ)そのもの。一年経ち、2年経ち、泥酔した夫は、妻を「折檻」するようになった。妻は、「病気だから…」と、耐えた。そのころ、夫は認知症を発症。要介護の認定を受けた。わずかばかりの蓄えも底が見えるようになり、「葬式代だけは…」と、妻は現金を隠した。それが悪いと、夫は暴力をふるう。
 4年経ち、夫は、「よそ様からお金を借りて酒を買う」ようになった。誰から、いくら借りたかは、すぐに忘れる。妻への暴力はエスカレートする一方。妻は、家へ入ると折檻されるので、外の物置で夜を過ごすことも。いっそ、自分が消えてしまいたいと、何度も思った。
 そして、5年。夫は認知症が進み、酒を買いに出たまま家へ戻ってこれないことが週に2~3度の割合となった。警察に送ってもらって帰宅した夫を何度迎えたであろうか。警察が帰るやいなや夫からの折檻が始まる。妻はそれでもなんとか持ちこたえた。
 ある朝、夫は固くなっていた。妻は、地獄から抜け出すことが出来たわけである。

 と、まあ、このような状況であったと考えられます。49日も終わり、JAストアのチラシを見た妻は、寒玉キャベツが1玉198円であることを知り、買いに来た。そこで顔見知りと会い、「死んでくれて良かった」発言が飛び出した。折良くか、折悪しくかはシランが、丁度そこにアンティークマンがやってきたというわけ。
 だけどさあ、身につまされましたよ。「死んでくれて良かった」とは言われたくない。今は、そう思っていても、植物人間状態になったら…。

 ロバパンは買えたかって?ハイハイ、買ったのですが、成分に、「ロバの肉」と、書いていないのです。なぬ?当たり前だって?「ヤマザキパン」に「ヤマザキ」は混入されていないだろうって?た、確かに、「ヤマザキ君」が入っていたら大変ですからね。
 年末に、日本郵政株は売ってしまいました。結局170万円の損。年金では暮らせない私にとって、170万円は大きい。寒玉キャベツでも囓って暮らすしかないね。