「ワーキング・プア」「ネットカフェ難民」など貧困に関するキーワードをよく耳にする昨今だが。
湯浅氏らが年末年始に主催した日比谷公園の
年越し派遣村は、マスコミや野党各党をうまく巻き込んで政府にかなりインパクトを与えたんじゃないでしょうか。なにしろ民主・共産・社民・国民新党・新党大地の各代表(民主党は菅直人代行)がここぞとばかりに集まってきたほどだから。国会請願デモでは与党公明党の議員も請願を受け付けたとのことで、派遣法の抜本的な見直しが期待できそうな様子だ。
ところでこの本だが、今の貧困状況についてどうしてこうなってしまったのかがわかりやすく書かれてある。とても岩波新書とは思えません(笑)
この手の草の根運動的なものは宗教じみてうさんくさかったり、やたらとラディカルだったりするものだが、湯浅氏の姿勢はあくまで「ハートは熱く、頭はクールに」で、考え方がどれも建設的、生産的だ。自分たちの行動の結果がどうなるかはわからないと言いつつも、グチやボヤキなど一切出てこない。常に前を見ている。自分も一肌脱がないとまずいな、と感じさせられるものがある。
この本を読んでいろいろと啓蒙されたが、今の状況は非正規労働者(派遣やバイトやパートや契約社員などの期間限定型の労働者)が全労働者の3分の1までを占めるようになっていて、生活保護レベルの対象者が推定600万人から850万人もいるとのこと。うち実際に生活保護を受けているのは約150万人しかいないのだから、自分としては思ってもみない状況にあることにただただびっくり。ちょっと前まで1億総中流とか言ってなかったか?無知とはおそろしい、反省です。規制緩和によりさまざまな業種で派遣が認められて、より安く労働力(労務費ではなく材料費として)を買うことが可能になって企業はコストカットがしやすくなった。その結果、非正規労働者は収入が減り、正社員の負担は重くなり、会社役員と株主だけが儲かるといういかにもアメリカ式の教科書どおりの社会が実現できたわけだが、当然ながらこれでいいわけがない。
タイトルにある「すべり台社会」とは、一旦落ちるとすべり台のように引っかかりなく落ちるところまで落ちてしまう、という意味で、詳しくは著書を読んでいただきたいが、著者が実地で貧困者をサポートしているだけにリアリティがある。
さて、どうしましょうか?手ぶらじゃ帰れそうにないなぁ。