さいしょに言っておきますよ、長いです(笑)
あまり興味のある方はいらっしゃらないと思いますが
完全ネタバレなので、ご興味のある方だけお付き合いいただけたら幸いです。
先月の日本公演では、空席もあったとのお話を聞いていたので
韓国公演もさぞや空席が目立ち、シーンとした雰囲気での鑑賞となるであろうと
覚悟をしていたのですが、思ったよりも空席は目立ちませんでした。
そして、韓国人は割りとショーの鑑賞は欧米人並みにノリノリなので
期待した以上に会場の雰囲気も良かったです♪
日本人はシャイだから、ロックのライブでもなければ
どういうノリで鑑賞したらよいのか分からないんでしょうね^^;
ハングルで書かれたアメリカン・イディオット!
さて、このAmerican Idiot Musicalはバークレーでのプレオープンから
ずっと応援してきた作品で、待ちに待った公演でした。
まさか、韓国で観ることになるとは思いもしなかったけれど…(笑)
さいしょに、主人公ジョニー役のショーン・マイケル・マーレイをみた瞬間
「小さい!」と思ってしまった…^^;
すごく小柄な俳優さんだったのですね。
ジョニー役はもはやジョン・ギャラガー・ジュニアのイメージが強すぎて
最初は違和感を覚えてしまったのは言うまでもありません。
でも、時間が経つにつれショーンのジョニーにもなれ始め
むしろ、若者らしいフレッシュさはショーンの方かな?とも思いました。
ジョンは、Spring Awakeningのモリッツ役が強烈ですね。
あの裏返る声、モリッツ役にぴったりでCDは今でもヘビロテして聞いております。
そんなジョンも、American Idiotはすっかりイメージを変えて演じていたので
ジョニー=ジョンという図式は思っている以上にしっかり頭の中にできていたのです。
そういう中で、わたしの勝手な図式をぬりかえたショーンもなかなか素晴らしかったです。
さて、私にとって世界でひとつの名盤がGreen Dayの「American Idiot」です。
このアルバムだけ、ロンドンに持っていったくらい大好きでしたからね^^;
しかし決してわたしはパンクロックファンではありません。。。
ロックのことなんて何一つ分かりませんが
純粋に心を打たれたのがこのアルバムでした。
すごい!と思ったものの、ものすごく難しくてサッパリ理解できませんでした。
何度繰り返し聞いても意味が分からないし
ビリー・ジョーの殴り書きの歌詞じゃ読めないし(笑)
キチンと英語という英語に向き合ったのは後にも先にもこのアルバムに対してだけです^^;
約9年にわたり、聞き込んできたこのアルバム。
私は、すごく深くて素晴らしい作品だと思いますが
やはりGreen Dayのファンじゃなければ、それほど心うつ作品でもなく
純粋なミュージカルファンから観れば「はぁ…?」で終わってしまう作品であるだろうな、と
感じた気持ちも否めません。
申し訳ないですが、事前知識なしに観るには
少々むずかしく、それでいて内容がうすいミュージカルです。
Green Dayのディスコグラフィー。感慨深いですね^^
ステージは、Spring Awakeningを髣髴とさせるようなチカチカとした
でもSpring Awakeningよりも無機質で殺伐とした冷たいものでした。
あちらこちらに見えるテレビ映像が良いですね。
世界中のニュースが1秒ごとにカシャカシャ変わり
混沌とした世の中の様が見て取れます。
舞台セットと騒々しいニュースの音の演出がすごくいい。
タイトルにもなっているAmerican Idiot (ビデオ)
アメリカの田舎町ジングルタウンに暮らすジョニー、タニー、ウィルの3人は
閉塞感にさいなまれ、行き場のない怒りにふるえます。
そして、メディアに、政治家にコントロールされた
「アメリカのバカにはなりたくない!」と叫ぶのです。
インターナショナルツアーが発表されるずっと前から
英語圏の方々や数名の日本人の方々のミュージカル「アメリカンイディオット」のレビュー、感想を読んでいたので、
そこからこの作品の印象はほとんど歌だけで終わる、というものでしたが
思ったよりもセリフもあったし、分かりやすくなっていたようにも思えます。
少なくともアルバムを聞いていれば…ですけれども。
そういえば、幕が開く前からキャストの「おっしゃー!」みたいな気合の声が聞こえていて
はじまるまではクスクス笑っていたのですが
幕が開いて、納得…キャストさんたち頭を振り回し全力で歌っていて
脳震盪を起こすんじゃないかと、ヒヤヒヤでした…^^;
ジョニーが叫びます
Is this my life!?
これが、オレの人生なのか!?
こんな、しょぼくれた人生なんて真っ平ごめんだ!とジョニーは歌い始めます。
Jesus of suburbia
アルバム「American Idiot」を1曲目から聞くと
この2曲目のJesus of suburbiaで度肝を抜かれるはずです。
5つの曲から編成された組曲がこのJesus of suburbia
ロックオペラと呼ばれた由縁ですね。
また、このJesus of suburbiaとおなじような組曲が後半にHomecomingとして登場します。
これについては、後ほど。
ジョニー達は自らを「郊外のジーザス」と名乗り
彼らの「心」を守るために、街を、他者を、国を…ありとあらゆるものを否定し始めます。
And there's nothing wrong with me (だけど、オレが悪いわけじゃない)
This is how I'm supposed to be(最初からこうなるものだった)
In a land of make believe(ここでは、そうなるって決まっていた)
That don't believe in me(オレを信じない「この地」では) ※街、そして国に対する批判。
「心」がこわれ始めて、不安定になっていくけれど
彼らの声は届かず、心は救われることなく
誰もが気に留めることなく、また一人、一人と壊れ始めていきます。
埋められない心の隙間を、どうにか埋めて欲しいと
叫ぶ彼らはやがて家出を決意します。
まるで、この街から逃げれば救われるとでもいうように…。
So I run (だから、オレは逃げる)
I run away(逃げ出すんだ)
すごーく長い曲ですが、歌詞を聴くと
彼らの心の痛みがビシビシ伝わってくるのです。
When there ain't nowhere you can go (行く場所がどこにもないとしても)
Running away from pain(この痛みから逃げるのだ)
When you've been victimised(犠牲になるものというならば)
Tales from another broken home(崩壊したとある家庭の「モノガタリ」)
この歌は、Green DayのMVが凄く良いです。
MV内でジーザスを演じた男の子の悲しい目が切なくなります。
しかし、都会へ出発する目前にウィルのガールフレンドの妊娠が発覚し
ウィルは田舎町に残ることになるのです。
田舎を飛び出し、うちなる怒りを吐き出しながら
ジョニーとタニーはジングルタウンを離れます。
Holidayを歌いながらバスで都会を目指しますが…(ビデオ)
実はこのHolidayという名曲。
いまだに私はちゃんと理解できておりません。
一番政治色の強いナンバーで、単語も難しかったし、何よりも知識がない…^^;
アメリカのyahoo知恵袋みたいなところからも片っ端から調べて
なぁんとなくは理解したし、アルバムがリリースされた当時
同じGreen Dayファンのアメリカ人の女の子にあれこれ聞いてみたので
大体はつかめているのですが、どこか曖昧です…。
ステージでは、Green DayのMVのように疾走感のある
演出だったので、口ずさんでしまいました♪
都会暮らしを始めたものの
相変わらずテレビを観てはダラダラ過ごすだけのジョニーとタニー。
遠く離れた故郷と決別し、都会での生活に希望を抱いていたはずが
すっかりホームシック気味…
Boulevard of broken dreams
血気盛んに故郷を飛び出し、「リッパなオトナ」を目指した彼らは
都会のど真ん中で孤独を感じはじめ
自分に付いてくるものは自分の影だけ…と歌います。
Sometimes I wish someone out there will find me(時々、誰かがオレを見つけ出してくれないかなって思うときもあるけど)
'Til then I walk alone(その時まで、ひとりで歩くんだ…)
どんどん、どんどん堕ちていく…
孤独にふるえ現実に幻滅し始めたタニーは、愛国主義に惑わされ
軍人になる事にした。
Favorite Son
レビューにより大体の扱いはわかっていたけれど
唯一と言ってもいい、笑いをふくむナンバーがこのFavorite Son
韓国語では「国民の息子」と訳されていました。
さっすがー!(笑)
韓国暮らしの人なら、なんとなく分かるこの「さすが」な翻訳^^;
わたしはボキャブラリーが恐ろしいほど少ないので
ブログ上に載せているものは
意訳にも程があるし、あくまで私が感じるAmerican Idiotの訳詞ではありますが
韓国語字幕の翻訳は、けっこう目からうろこというのも多々ありました。
このFavorite Sonを「国民の息子」と訳していたのは
意訳ともとれるけれど、これはこれでキチンと成立しているな、と思いました。
日本語字幕はどんな訳だったのでしょう?
ちなみにFavorite sonは地方の政治家や
支持者の多い大統領候補などを意味するとか。
言わずともわかりますが、前大統領ジョージ・ブッシュ全否定のナンバーです^^;
ブッシュ政権がアメリカの地方の人々に熱く指示された理由は
「軍人」という「就職先」を不景気の世の中に若者に与えてくれたからです。
Are we the waiting (ビデオ)
引き続きタニーとタニーを魅了(?)する軍人さんのナンバーです。
これ、意外だったんですよね。
タニーの歌というイメージが私にはなかったので…。
けっこうキレイな歌詞が並びます。
都会の摩天楼から眺める夜空…というイメージ。
写真入りのキャストボード!いいネ!これ。
郊外のジーザス(Jesus of suburbia)、ジョニーの元を去ったタニー。
ジョニーはますます「心」を失い、こわれ始めます。
ジョニーの心の崩壊のカウントが一人の男の出現により始まります。St.Jimmy。
ワン、トゥー…ワン、トゥー、スリー、フォー!!!!!
男はいう
My name is Jimmy and better not wear it out(俺の名前はジミー、よく覚えておけ)
怒りと憎しみと反抗の権化となってジョニーの前に現れたその男は
凄まじいカリスマ性と、おそろしいパワーを備えた極悪人。
ジョニーと同じような動きをして
街を疾走していきます。
金色の粉を撒き散らし、人々を破滅への道へと誘うのです。
このSt.Jimmyという役柄は、Green Dayのヴォーカル
ビリー・ジョーが数ヶ月間演じた役としても非常に有名です。
また、トム・ハンクスが当作品を映画化すると発表しております(一向に話は進んでいなさそうですが)
その映画版セイント・ジミー役には、ビリー・ジョー本人が「興味がある」という発言をしているので
大半のファンはビリーがセイント・ジミー役を演じてくれることを望んでいるのだけれども…。(ビデオ←画質は悪いですが、ビリー版)
実際にミュージカルを観てみると
果たしてこの役はビリーに合うのだろうか?
オリジナル・キャストのトニー・ヴィンセントの
見るからにアブナイ人…というあの風貌は
セイント・ジミーというキャラクターに絶対不可欠な負のカリスマ性を備えております。
(ビデオ ←これもまた、画像は悪いですがトニー版)
でも、You tubeにあがっているビリーの風貌、演技力では
圧倒させるような負のカリスマ性は残念ながら足りないように感じてしまいました。
めちゃくちゃ可愛くて憎めない男、って感じは出てはいるけれどもね^^;
ビリーは大好きだし、ブロードウェイでビリーのSt.Jimmyが観られなかったことが
わたしの人生の後悔のひとつであるけれども
今回、セイント・ジミーを演じたダニエル・C・ジャクソンを観ていて
彼でも100%の迷いのない「悪」は演じ切れていないと感じたので
これは、トニー・ヴィンセントに演じてもらいたいかも…なんて初めて感じてしまいました^^;
ビリーのセイント・ジミーが観たい気持ちと
あるべき姿のセイント・ジミーを観たい気持ちが半分こ、なんですよね。(ビデオ ←ツアー版)
Give me no vacaine
ドラッグにおぼれ、酒浸りの空虚な日々におぼれ、戦火の海におぼれ…
3人が3人とも、ズキズキといたむ心の傷をやわらげるために
局部麻酔(Novacaine)をくれ、とせがみます。
この曲でGreen Dayのオリジナルの歌詞の部分と変わっていたところは
Jimmy says it's better than here (ジミーがここより良くなるって言うんだ)
のJimmyの部分が、Johnnyに変わっていました。
ウィルの彼女ヘザーは臨月をむかえておりますが、ウィルは無関心。
なにも感じないよう、なにヒトツ感じないようNovacaineをくれといい続けます…。
Last Of The American Girls/She's a Rebel
ジョニーは、ひとりの女性と恋に落ちるが
心の隙間につけいるのは、迷いのない純粋な「悪」のセイント・ジミー。
彼女に対し、畏怖の念を抱くジョニーは
ジミーの「彼女は裏切り者だ!」という言葉に徐々に飲み込まれてしまう。
初めてここで「21st century breakdown」というもうひとつのアルバムから
Last Of The American Girlsというナンバーが登場します。
この21st Century Breakdownもまたコンセプトアルバムとして
それはそれは重い内容で(笑)ものがたりがあります。
このミュージカルとそのアルバムは別な話ですが
21st Century Breakdownには、クリスチャンとグロリアという男女が登場し
これはクリスチャンが彼女グロリアに対する
愛情と憎しみが合わさった畏怖の念を感じるナンバーです。
そのLast of the American GirlをShe's a rebel(彼女は裏切り者)という
ナンバーにあわせてキャストたちが歌います。
更に、クライマックスはパワフルな歌声で
セイント・ジミーがジョニーの目の前に立ちはだかり
「She's a rebel!(彼女は裏切り者だ!)」と繰り返し言い続け
しまいには、ステージ中央におどりでて再び「St.Jimmy」を歌い出し
ジョニーの心に闇を落とします。
ジョニーの心はジミーの毒でいっぱい。(ビデオ ←クライマックスだけ。でもビリー可愛い)
Last of the American Girlから、She's a Rebel
そしてSt.Jimmyという3曲が見事に融合し、ジョニーの心が様変わりしていく様子が
よーく、よーく分かるんですが…たぶん、事前知識なしだと分かりづらい演出…^^;
とても激しいナンバーから一転、とても穏やかなやさしいメロディが流れます。
Last Night On Earth
Green Dayのボーカルのビリー・ジョーが奥さんに当てたラブ・ソング第1弾(ミュージカルのね)
すっごーーーーーく重いアルバムの中で、やたらふわふわ優しい歌の登場に
最初は「ふざけているのか^^;」と思ったのですが
なんの事はない、21st Century Breakdownのクリスチャンが壊れていくグロリアに
深い深い愛情を、とても素直につづった歌なのです。
やさしい歌声は、ジョニーではなく
なんとセイント・ジミーが歌い上げているのです。
反抗と怒りの申し子であるセイント・ジミーがしっとりと歌うLast Night On Earthは
まるでジョニーの素直であたたかな心を
まだ失っていない心を映し出しているような、やさしい歌。
おだやかな歌は一変、舞台はジングルタウンで酒浸りになり自堕落な生活を送る
ウィルにスポットがあたります。
ウィルの彼女ヘザーは、落ちこぼれていくウィルを見放し
こどもを生み、家をでていってしまう。
Too much too soon
このナンバーは「American Idiot」がシングルカットされた際の
B-sideに収録されたナンバーです。
座席が遠かったので、いまいちよく見えなかったのだけれど
この曲を歌っていたのは、ウィルとヘザーの「分身」?
こころの叫びのような歌でした。
一方、戦地で負傷をしたタニーは夢か現か
ぼんやりした記憶の中でExtraordinary Girlに出会う。
Before the LobotomyとExtraordinary Girlがくっついた状態のシーンですが
このBefore the Lobotomyは21st Century Breakdownからで
Green Dayのアルバムではビリージョーのおだやかな高音は
女性の声(=グロリア)を代弁しているかのような悲しい歌です。(ビデオ)
ロボトミー手術で痛みさえ感じなくなった患者のごとく
無感覚で、生きる希望さえ失いかけているタニーの前に
エクストラオーディナリー・ガールが現れ、彼を心身ともに癒します。
ジョニーは寝ている「彼女」の傍らで、「彼女」のために作った歌をうたいます。
When it's time
こちらは、American Idiotがミュージカル化する際に
ジョニーの「彼女」に対する「想い」がもっと伝わるようGreen Dayに相談し
ライブではすでに披露されてはいたけれど
レコーディングはされていなかったこのWhen it's timeを追加したそうです。
そう、ビリーが奥さんにあてたラブ・ソング第2弾(笑)
すこし話はずれますが、ビリーは10代で奥さんに出会って
4年経った後に結婚をしています。
20代前半での結婚は、ずいぶん早いと思います。
しかし、ふたりは20年以上の付き合いになるけれど
相変わらず仲睦まじく
すごく素敵なカップルだと思うのです。 奥さんは「イロイロあったのよ!」とは言うけれど(笑)
ここ最近は、instagramで「嫁ラブ」アピールがすごくて
笑ってしまうことも多いですが
昨年のGreen Day最大の危機も、奥さんや息子さんたち家族の力で乗り越えてきたと思うと
ふたりの絆って凄いんだな、と素直に感動してしまいます。(ビデオ ←Green Dayライブ版)
話はミュージカルにもどって…
おだやかな空気は一変、どこからともなくセイント・ジミーが現れ
ジョニーに向かって叫びます。
Know your enemy (ビデオ ←お茶目にしか見えないジミー…。)
Do you know the enemy? (敵がなんなのか知っているか?)
Do you know your enemy? (お前の悪はなんなのか知っているのか?)
Well,gotta know the enemy.(そう、お前の敵を知るんだ)
ジョニーは純粋な悪のセイント・ジミーに怯え、縮こまってしまいます。
不安で、心許なくジョニーはドラッグにまた手を出します。
執拗にジョニーに向けて「敵がなにか見定めろ」といい続け
目覚めた「彼女」は、ジョニーがまたドラッグに頼ろうとしている姿をみとめて止めようとしますが
錯乱したジョニーは、セイント・ジミーからナイフを受け取ります。
そして、セイント・ジミーと声をあわせて
Do you know your enemy? (お前の敵はだれだ?)
Well, gotta know the enemy.(そうだ、悪を知るんだ)
と、彼女に向けて刃をつきつけ
そして失神してしまいます。
ボロボロになって倒れこんだジョニーを目の前に「彼女」は震える声でこう問いかけます。
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