あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

正露丸,ロシアは征したが,商標権は征せず

2006年07月29日 11時32分20秒 | 裁判・犯罪
「ラッパのマークの正露丸」の大幸薬品が,ひょうたんマークの正露丸の和泉薬品を相手に正露丸の名称差し止めなどを求めた裁判で,大阪地裁は「商標権の侵害にあたらず,また紛らわしいものではない」として大幸薬品の請求を棄却しました。

ラッパ敗訴、「正露丸は一般名称」と認定 大阪地裁 (朝日新聞) - goo ニュース

正露丸って40以上もあるんだ

おそらく,「そもそも正露丸=ラッパのマークじゃないんだ」ということに初めて気が付いた方も多いのではないでしょうか。私自身,昔買った正露丸が「鼓のマーク」だったのにものすごく違和感を感じていたことがありました。その時に正露丸についてちょっとばかり調べていたので,今回の判決は何となく理解ができました。
この問題,簡単に整理すると次のようになります。

1 「正露丸」という名称は大幸薬品しか使用できないものか
2 ラッパのマークも自由に使えるのか
3 ラッパのマークとひょうたんマークで商品の混同が生じるか


まず,1については,大幸薬品が正露丸という名称を登録商標としましたが,既に多くの会社が正露丸という名称でこの薬を販売していたことから大幸薬品が差し止め訴訟をしたところ,1974年の裁判において「正露丸とはもはや一般的な名称であるため,商標登録はできない」として請求棄却としました。
つまり,「正露丸」とは,特定会社の薬ではなく,あの丸い薬一般の名前であるとしたわけです。
よって,「正露丸」という名称自体は誰でも使えると言うことになります。

次に,2については,ラッパのマーク自体は登録商標として認められています。したがって,他の会社がラッパのマークを使ったとしたら,それについては大幸薬品は差し止める権利があります。
仮に,「ラッパのマークの赤チン」というように正露丸以外で使用したとしても,同様に差し止めることは可能です。

3についてですが,今回の裁判の中心論点はここになります。
すなわち,あの「オレンジ色の箱」と「正露丸というフォントが類似」そして「上部にマークが付いている」上に「大きさも同じ」でさらに「中に入っているのが茶色の瓶」という状態が,簡単に言えば「大幸薬品をパクった」といえるか,が争点になりました。
これについて,裁判所は,「和泉薬品は昔からこのスタイルを維持している」こと,また「ラッパとひょうたんは素人がみたって区別付くだろう」ということ,さらに「正露丸という名称は前述のとおり一般名称となっている」ということを理由に,一般消費者が混同することはないと判断したわけです。
ここで注意したいのは,「誰でも大幸薬品の正露丸っぽい商品を作って良い」と言っているわけではないということです。
例えば,「トランペットのマークの正露丸」というものを似たようなパッケージで発売すれば,それは確実に混同するとして差し止め可能となるでしょう。また,新規業者が類似のパッケージで作り出したとしたら,昔からこのスタイルでやっているという訳ではないことから,パクったといわれて差し止めになる可能性が高いでしょう。
すなわち,今回の混同性の判断は,簡単にいってしまうと「昔からこのスタイルだったかどうか」というのが大きな要素になっていたといえます。

もちろん,大幸薬品側は控訴を検討しているため,今後どうなるか全く分かりません。
ただ,このニュースを見て,もう一度みなさんの薬箱を見てみましょう。正露丸が大幸薬品以外のものかも知れませんよ。また,正露丸以外にも,「似たような薬品」が結構ありますので,そんなのも探してみると良いのかもしれませんね。

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飲んだら乗るな,飲んだら乗らすな

2006年07月29日 10時58分04秒 | 裁判・犯罪
飲酒運転が原因による死亡ひき逃げ事件の被害者遺族が,運転手(懲役7年の有罪判決確定で服役中),一緒に飲んでいた同僚,車の所有者である勤務先の会社及び運転手の妻を相手にした総額8150万円の損害賠償裁判をおこし,東京地裁は,運転手の妻を除く3名に対し,総額5800万円の損害賠償を命じる判決を下しました。

飲酒ひき逃げ、同僚にも責任

一緒に飲んだだけで5800万円払うんですよ

飲酒運転に対する刑事制裁はかなり厳しくなってきました。それは飲酒運転における事故が多発していたためであり,当然の帰結だといえます。
一方で,死亡事故の場合,これまでは運転手自身に対する損害賠償請求のみであり,その他の場合は,せいぜい車の所有者(運行供用者)や同乗者(無理矢理乗せてといった場合程度)に限定されていました。
今回の判決は,「飲んだ後に車で帰ると分かっていながら一緒に飲んでいて,運転を制止しなかった」者に対し,「その後飲酒運転で大変なことになると予見できたのにあえて止めなかったのはけしからん。しかも運転手をおいたまま先に帰ってしまったのは飲酒運転を制止する義務を怠ったのでこれまたけしからん。」という理論構成により,一緒に飲んでいた人に対する民事上の損害賠償請求権を認めたものです。

この理論からすれば,飲み会を主催するときは,幹事はまず車で来ないことを明言し,それでも車できた場合には車をおいて帰るとこと強く促し,のみならずこの運転手が車を運転する以外の方法で帰宅することを見届ける義務が幹事及びこの運転手に酒をついだ出席者に課せられているということになります。
損害賠償はできる限り多くの人に認めるのが,被害者救済のためになります。今回の理論は,飲酒運転を予見できた上で,さらにそれを制止できる地位にありながらそれを放置した場合にも賠償責任が発生するわけですから,例えば会社の宴会の帰りに事故が発生した場合,仮に車の所有者がその会社のものではなく個人所有であったとしても,会社自体が損害賠償責任を負う可能性があることになります。

一方,今回,運転手の妻に対する請求は棄却されました。請求の理由は,「運転手が日常的に飲酒運転をしていることを知っていながらなんら方策を講じてこなかった」という点によるものでしたが,裁判所は「この死亡事故自体を防止する方法を妻は持っていなかった」として請求棄却にしたものです。
しかし,ここで注意する点は,妻や家族は無条件に損害賠償が認められない,という意味ではないことです。この判決を裏からいえば,「もしこの妻が飲酒運転を阻止する方策があったのにそれを怠った場合は,妻にも責任は出てきますよ。」ということになります。
例えば,飲酒した夫から「迎えに来て」と電話が来たのに「自分で運転して帰ってこい」なといったら,飲酒運転阻止義務違反として損害賠償の対象となります。また,「めんどうだからいやだ,勝手に帰ってこい」などと答えて場合も,この判決理論からすると,損害賠償責任が発生する可能性が高くなります(特に日常的に飲酒運転を行っている人の場合は,きっとこのケースでも損害賠償責任が発生する可能性が高いでしょう)。
このような責任を回避するためには,妻や家族や,今後このような理不尽な夫のために送迎することが余儀なくされるでしょうから,やはり飲み会があるというときは車を使わせないか,またはタクシーで帰ることを日頃から強く言っておく必要があるでしょう。

もちろん,この裁判,控訴される可能性が高いでしょうから,最後にはどのような判決になるのかまだ分かりません。
ただ,少なくとも確実にいえることは,「飲酒運転は死を伴う危険な行為。みんなでそれを阻止する道義的な責任はある。」ということです。
「飲んだら乗るな,乗るなら飲むな」はベタな交通標語ですが,これからは「飲んだら乗るな,飲んだら乗らすな」
が新たな交通標語になるのかもしれませんね。

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