あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

憲法記念日なので戦争のスタイルについて整理してみよう

2015年05月03日 23時46分56秒 | 法律問題
今日は憲法記念日です。多くの方が憲法についていろいろ説明しておりますが、その多くが「憲法9条」に関するものです。
しかし、9条の議論を見聞きしていると、どうも前提条件の土俵が違うかも、って思うところがあります。それは「戦争のスタイル」です。この前提条件を合わせなければ、いくら押し付け憲法とか世界遺産的憲法だなどという議論をしても、かみ合うはずがありません。
そこで、ものすごくざっくり戦争のスタイルを整理したいと思います。もちろん、古代史などは省略し、あくまでも第二次大戦以降についてに限定します。

まず、第二次大戦は、帝国主義の終焉戦争です。簡単にいうと「経済権益を求めて国の領土を拡大させる国取り合戦」です。つまり、名目は何であれ「国対国の戦争」になります。
このスタイルは、戦力総動員し、国民全員も戦争していることを認識し、権利制限を余儀なくされ、さらには徴兵や民間人攻撃もありうるというものになります。
便宜上「20世紀型戦争」と呼びますが、憲法9条が二度とやらないと誓ったのは、まさにこの「20世紀型戦争」です。おそらく、どんな憲法論者でも、これができるように憲法を改正しようっていう人はいないと思います。

第二次大戦終了により、基本的には帝国主義は終わりました。もちろん、その後もいろんな小競り合いはありましたが、国対国の戦争は減っていきます。
ときは21世紀になり、ここで戦争の主体が変わりました。それは「テロル」です。簡単にいうと「個人」が戦争を起こすようになったのです。
特徴は、宣戦布告をしない、領土拡大は二の次、ピンポイントで無差別攻撃する、目的があいまい、国民は戦争に駆り出されたと感じていない、複数の国家がターゲットになるなどが挙げられます。
もちろん、中には国=テロルっていうところもありますが、基本的にはテロルは「最後は個の力」になるのです。そして、これに対抗するためには、被害に遭う複数の国が連携して退治する必要があるのです。
このようなテロ攻撃こそ、「21世紀型戦争」であり、複数の国がテロル退治をすることが「集団的自衛権」などと呼ばれる国際主義なのです。

今どき、20世紀型戦争を仕掛けてくる国は皆無です。あれ、尖閣諸島を狙ってるあの国は?って思う人もいるでしょうが、あの国もバカじゃないので、宣戦布告して真っ向から攻めてくるはずがありません。それは国連も国際世論も許さないからです。
じゃあ、どうやってくるかというと、テロル同様の「見た目個人」の義勇軍的な連中がやってくる可能性が高いです。これも、見た目は21世紀型戦争です。

さて、この21世紀型戦争について、憲法9条は想定していたか否か、憲法9条で対応できるのか、そもそも日本は21世紀型戦争に巻き込まれる可能性があるのか、あるとしたとき、9条の何が問題になるのかなどという土俵で護憲派改憲派は議論をした方がいいでしょう。
前述のとおり、太平洋戦争のように多くの国民を戦争の惨禍にもう一度巻き込もうと考えているバカはいないはずですし、テロの攻撃で国民が巻き添えになっても仕方がないと考えているバカもいないはずですから、あくまでも21世紀型戦争を踏まえて憲法議論を深めていくことが、よりまともな議論ができると思います。

以上、かなり雑ですが、ざっくりとした戦争スタイルの変遷でした。

なお、私見ですが、軍事力増強と戦争をやることは別次元の話だと思います。なので、予算面は別の話として、軍事力を増強するが戦争放棄というのは、十分両立するものだと思います。

殺人罪の時効廃止へ,されど問題もありそうだなあ

2010年04月27日 23時12分28秒 | 法律問題
殺人罪など人を死に至らしめた事件について,時効を廃止する刑事訴訟法等の改正案が国会を通過し,即日施行されました。また,これにより,今日現在時効を迎えていない事件すべてについて適用されることになり,世田谷一家殺人事件や八王子スーパー事件などの未解決事件について,時効が無くなりました。

時効廃止を即日施行=殺人など、改正法成立(時事通信) - goo ニュース

被害者保護は大切,一方で冤罪防止も重要

感情論的には,被害者の気持ちに時効などないわけですから,時効を廃止することは非常に良いことだと言えます。もちろん,大切なことは,時効の廃止ではなく,「早期解決」であることは言うまでもありません。しかし,なかなかきれい事のように捜査は進まない以上,時効を廃止することで「絶対検挙するんだ」という強い意思表明と,「世の中逃げ得は許されない」という警鐘を鳴らすことができ,極めて有益的であると言えるでしょう。

しかし,ここで少し気をつける点があります。それは,「被害者以外の視点」です。具体的には,「被告人の立場」と「捜査機関の立場」です。

まず,被告人の立場として考えなければならない点は,「冤罪防止策」です。足利事件でも強く言われたように,被告人=犯人ではありません。被告人はあくまでも「無罪推定」が働きます。したがって,時効が廃止された場合,それこそ数十年前のアリバイや,中途半端に残った証拠などで裁判が進められます。証拠の評価如何では,古い証拠で罪体立証されるため,それに対する反論がしっかりできるような手法を考えておかなければならないでしょう。
もちろん,刑事訴訟法の目的は「実体的真実発見の要請」にありますから,古い証拠=使えないということも,古い証拠=無条件に使用できるということも言えませんが,もう一つの目的である「人権保障」という観点から,古い証拠への対応は真剣に考えなければなりません。
しつこいですが,「被告人=犯人」ではありません。「これで被告人はいつでも有罪にできる」と諸手をあげて喜んだ方は,今一度足利事件を思い出してください。
被害者だって,「適当な犯人を処罰」することを望んでいるわけではありません。「真犯人の処罰」を望んでいるのです。

次に考えるべきは,「警察の視点」です。
当然の前提として,時効廃止になったことで,捜査をゆっくりやればいいなんて考えている警察官は1人もいないでしょう。「早期解決」,この理念にブレはありません。
しかし,実務的には,時効が廃止になると,それまで捜査本部を縮小し,解散するなどということで事実上人材を効率的に活用してきた訳ですが,時効廃止となると,少なくとも捜査員を確保しなければなりません。しかも,ドラマ「時効警察」のようなのほほーんとした捜査態勢にはできないでしょう。
そうすると,警察としては,「新たな人材の確保」が必要であるところ,予算が限られている現状を踏まえると,「他の捜査本部や部署の人員削減」で対応せざるを得ません。そうなると,他の事件の捜査への影響が懸念されます。
また,証拠の保存も重要となります。今の技術であれば,かなり精度の高い保存ができるでしょうが,極端50年以上証拠物を保存保管しなければなりません。そうすると,「場所の確保」と「精度が落ちないようにする保存」を考えなければなりません。ここにも多額に費用がかかるでしょう。でも,証拠物の扱いをいい加減にすると,「本当に有罪だった人を有罪にできない」ということにもなりかねません。

時効廃止も,こうした細かい問題があります。この点については,きちんと運用するなどして対処するしかありません。
しかし,時効廃止により,「真実発見」を追求しやすくなることは事実でしょう。そして,今逃げている容疑者については,もはや逃げられなくなりました。なので,真犯人である場合はもちろんのこと,事実無根で無罪であると主張する場合であっても,早期に出頭し,裁判で白黒つけるしかありません。逃げて良いことは全くなくなりました。

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これからは天下りも安泰ではなくなるぞ

2009年06月10日 01時40分37秒 | 法律問題
農水省,総務省及び経済産業省の3省が出資して設立された「日本農村情報システム協会」が,元役員の不正流用と思われる不明瞭支出などの債務超過額が約6億円を超え,もはや事業継続は困難ということで,理事会において自己破産を申請することを決定しました。実質国の支配下にある社団法人が自己破産を申請することは異例とのことですが,今後裁判所において管財人が選任され,不正流用の実態把握や返還訴訟,さらには刑事告訴などあり得ると見ています。また,出資者たる3省の責任問題も出てくるものと思われます。

農水所管法人が自己破産 不正流用で債務超過(共同通信) - goo ニュース

天下り役員だとしたら,退職金がパーのみならず,それまでの貯金もパーかも

この法人のホームページを見ると,いわゆる天下りと思われる役員は2名しかいませんでした。しかし,会員には情報システム関連の企業もかなりあり,おそらくは>こうした民間会社での勤務をかましてからの天下り役員が多かったのではないかと推測されます。

それはさておき,国が関わっているといっても,経営が杜撰であれば当然倒産します。第三セクター企業がここ数年相次いで倒れていますが,これも杜撰な経営のケースが結構見受けられます。まあ,ある意味「当然の結果」だと思います。

今回の場合,その原因が不正支出と思われていますが,ここではありませんが,過去に県出資の法人の経理担当者がチリ人女性に10億円近く貢いだという事件(そうです,あれです,あれーだ!)もあり,そこで管理体制のあり方が問題となりました。今回,まだ全貌は分かりませんが,仮に今回も6億円が不正支出であったとしたら,完全に管理体制に問題があったと言えるでしょう。そして,出資者たる3省への報告や,3省の監査体制の不備にも問題があると言えます。そうなると,場合によっては,「他の法人も乱脈経営」の可能性が否定できません。

ただ,破産をしたことでのメリットもあります。それは,「不要な法人のリストラ」と「無駄な退職金支給の抑制」,さらには「天下りはアメだけではなく鞭もある」というリスクが明確になったという点です。
「不要な法人のリストラ」は,まさに外郭団体の見直しが全く進んでいない現状において,経営が成り立たない法人を法的につぶしていくことができ,結果,リストラが可能となります。行革担当大臣も,内心ほっとする場面かもしれません。
「無駄な退職金支給の抑制」は,破産決定することで,お金の管理は管財人に移ります。そして,従業員の給与は優先弁済権がありますが,役員報酬や退職金はむしろ劣後債権に移ります。したがって,事実上「退職金0」となります。普通の会社が倒産した場合,当然役員がそれなりの責任を負うのと同じ理屈です。
「アメとムチ」ですが,役員として一定の法的責任を追及されることもあり得ると言うことです。今回,仮に不正流出が原因だとしたら,役員としてそれをチェックしなかったかチェックが甘かったこと,経営判断が甘いと言うことなどから「経営責任としての損害賠償」を管財人から求められるっこともあり得ます。そうなると,退職金がもらえないだけではなく,逆に役員が1億円近い損害賠償金を支払わなければならない場合もあり得ます。そうなると,天下り役員だとしたら,過去にもらった退職金などもすべて弁済に回さなければならなくなり,ほぼ一文無しになります。当然,「天下り役員なので,そんな責任まで考えていませんでした。てへ。」ということは,裁判所では一切通用しません。
つまり,「天下り=おいしい」という方程式が崩れる場合もあるのです。いや,むしろ当然の話で,天下りに限りませんが,会社や法人の役員になるというのは,報酬が美味しい裏返しとしてこれだけ厳しい責任も潜んでいるです。
これで,安易な天下りも減少するかもしれません。

さて,役員はどのようにケツをふくでしょうか。また,3大臣はそれぞれどのように対応し,どのような責任の取り方を提言するでしょうか。さらに,次の破綻法人が出てくるでしょうか。さらにさらに,延長国会でどの程度の爆弾になるでしょうか。
今後の後処理に注目です。

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頭の体操,この逮捕,どうでしょうか?

2009年04月25日 22時22分56秒 | 法律問題
つよぽんの逮捕騒動は,その後多方面に及んでいますが,今回逮捕した赤坂署には「逮捕はやりすぎだ」などという苦情の電話が殺到したそうです。

全裸で警官に抵抗、改める意思見せず…草なぎさん逮捕は不可避(読売新聞) - goo ニュース

深夜の全裸男は100%放置プレイでいいのかなあ?

前にも書きましたが,このケース,逮捕は普通です。むしろ,逮捕しなければ警察官に手を出すなどして,公務執行妨害などもっと重い罪になりかねなかったから(ごろうちゃんと同じですよね。),見方によっては今回ここで逮捕したのは,現場の警察官の粋な計らいだったともいえます。
もっというと,犯行時に,その人が本当に有名芸能人本人であるか分からない場合が多いです。結構,何かやらかす輩ほど,有名人の偽名を語る場合が多いです。だとすると,この現場の警察官は,「こいつ,本当にSMAPか?」と疑った可能性もあります。

ところで,今回の逮捕劇については,多くの方は「やりすぎ」との反応ですし,また「もう許してあげたら」という雰囲気です。
そうであるとしたら,ちょっとだけ頭の体操をしてみましょう。
次の各事例において,すべて逮捕してはいけないといえるでしょうか。また,すべてすぐに許してあげていいという事例といえるでしょうか。良い場合と悪い場合が両方ある場合,その違いはどこにあるでしょうか。ちょっと考えてみましょう。

前提:都心の深夜の公園で,泥酔の上全裸で大声を発していて,近所の人から警察に通報された(それ以外の違法行為はなく,住所も身元もちゃんとしていることとする。)。
1 それが今大人気のイケメン有名俳優だった場合
2 若手お笑い芸人だった場合
3 比較的評判の悪い評論家だった場合
4 30代後半の普通のサラリーマンだった場合
5 20代前半のヤンキー風の男だった場合
6 国会議員だった場合
7 その公園が自分の家の隣だった場合


頭の体操です。すべて「逮捕はやりすぎ」で,「すぐにでも許してあげた方がいい」と思ったでしょうか?それとも,ブレが出たでしょうか?

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ぼちぼち墓地の法整備も必要ですね

2009年02月23日 00時15分03秒 | 法律問題
大阪府内の霊園があいつで競売になり,結果,永代使用料を支払ったはずの墓地利用者に対し,落札者が使用料を再度請求するという事案が続出しているようです。

永代料払ろうたのに何でや!墓地競売、落札企業が再請求(読売新聞) - goo ニュース

これ,全国的な問題になるのは時間の問題かも

この問題,簡単そうで面倒な問題が結構あります。まず,どういうことなのか簡単にまとめてみます。

1 墓地の土地を所有して,墓地経営している宗教法人(お寺だと思ってください)は,墓地利用者(檀家さんだと思ってください)に対し,「うちにお墓作って良いよ。その代わり,使用料払ってね」というオファーを出します(もっとストレートに言うと,「お寺の和尚に対して,私が「お金払うからお墓作らせて」という,ってことです。)。
2 宗教法人は,使用料をもらう代わりに,墓地1区画の使用を認めます。この際,墓地はそうそう引っ越すものではないので,「ずーっとつかっていいよ」ということから永代使用料として墓地利用者は宗教法人に支払います(つまり,宗教法人と墓地利用者との間で契約が成立した,ってことになります。)。
3 これで普通にお墓が使用です。

この流れが普通のパターンでした。
ところが,宗教法人も不況の波には勝てず,経営が悪化するところが出てきました。そこで,銀行から借金をすることもやむなしという状況になるのですが,銀行は当然「担保」を求めてきます。ここからが悲劇の始まりです。
4 宗教法人は,担保として「墓地の土地」に抵当権を設定します。
5 しかし,どうにも資金繰りのめどが立たなくなり,ついに銀行にお金を返済できなくなりました。
6 すると,銀行は担保として押さえていた「墓地の土地」を裁判所に競売の申立をします。
7 裁判所は「墓地の土地」を売り,誰かが買います。
8 墓地の土地を買った人は,基本的には墓地の土地を自由に使うことができます。当然,「お墓を撤去する」こともできます
(もちろん,墓地の土地をマンションにするなどは制約があるので難しいですが。)。
9 さて,ここからですが,墓地の土地を買った人は,もともと墓地を利用していた人に「そのまま墓地使うなら,今度は私と使用についての契約を結びましょう。だからお金頂戴ね。いやなら,撤去するよ。」となるのです。これが今問題となっている部分なのです。

さて,ここに素朴な疑問が出てきた人がいるかもしれません。「あれ,私は賃貸マンションに住んでいて,なんか大家が競売で変わったっていう通知がきたけど,出ていけとか家賃増やすなんて言われなかったよ。」とか,「住んでる人は強いって弁護士から聞いたことがあるよ」などという話を耳にしたことがあるかもしれません。
そのとおり。実は,「住居用の土地や建物」については,「借地借家法」や「法定地上権」などの規定から,「地主や家主が変わっても,以前から住んでいる人にその影響を与えない」という手厚い保護規定があります。だから,競売になっても基本的には問題がないのです。
なぜ,手厚い保護規定があるのかというと,「住んでいる人に関係ない事情でホームレスになることはよろしくない」っていう理由によります。まあ,常識的に考えても分かるとは思います。
ところが,地は「住居」ではありません。したがって,借地借家法や法定地上権などの規定は一切適用されません。すると,原則に戻り,「土地の利用権原は所有者にある」っていうことになるのです。当然,前の所有者との契約は,あくまでも「前の所有者」に対してのみの効力しかありませんから,「こういう契約があるんだ」と新たな所有者に主張しても,「そんなの関係ねぇ,ハイ,オッパッピー,ピアー」と言われてしまうのです。
つまり,お寺と檀家との間の関係は,それ以外の人たちには一切影響しないので,永代使用料を払ったということを一生懸命説明しても,「だからそれが何?」ということになるのです。
こうなった場合,現状の法律では,理論上,お寺に対して「使用継続ができなくなったことを原因とする債務不履行による損害賠償」が請求できます。しかし,担保実行したということは,お寺にはお金がない訳ですから,実際はお金を取ることはできないでしょう。

このように,実は墓地についての法整備」がほとんどされていないのです。もっと言うと,「永代使用料」の法的性格も結構疑義があるほか,そもそも「墓地を利用している法的根拠」が過去の慣習に委ねられていることから結構不明確な場合も多いのです。ストレートに言うと,「賃貸借」なのか「使用貸借」なのか,はたまた無名契約であるのか分からないケースが多いのです。

「仏のことなのであいまいに」という気持ちは分かりますし,すべてのことに法的理屈をつけることはナンセンスだとは思います。しかし,宗教法人が破綻するという時代になった今,少なくとも「お寺がつぶれたらどうなるのだろう」っていう点については法整備を進める必要があるのではないでしょうか。さもないと,「自分に関係ない理由で先祖代々の墓がある日突然消えてなくなる」っていう事態に見舞われかねません。
そもそも「お寺がつぶれる」っていうこと自体,過去の慣習でも想定されていないでしょうし,廃寺の場合も,今までは「新たなお寺」への引継がちゃんとしていたので問題はなかったはずです。しかし,「リーマンの影響がお寺まで」となった以上,安心してお墓参りができるような法整備はもはや必須といえるでしょう。
お寺側から見ても,その方が経営しやすいのではないでしょうか。

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酒気帯び運転厳罰化へ,ならばひき逃げも厳罰化してほしい

2009年01月30日 01時15分08秒 | 法律問題
政府は,酒気帯び運転の撲滅を図るため,より厳しい罰則規定を盛り込んだ道交法施行令の改正を閣議決定し,6月1日から施行することとなりました。具体的には,呼気1リットルあたり0.25以上の酒気を帯びていた場合は,1発で免許取消となることや,取消後再取得までの欠格期間も最長で10年にするなど,「飲んだら乗るな」を寄り徹底する内容となっています。

「酒気帯び」でも一発取り消し…道交法改正案を閣議決定(読売新聞) - goo ニュース

あとは逃げ得を許さない対策ですね

酒気帯び運転の厳罰化は賛成です。こうでもしないと酒気帯び運転は減りません。もっとも,今回の件は行政罰の話ですから,裁判云々とは事情が違うと思われます。
また,これまで社会も酒気帯び運転に寛容だったところがありましたが,最近では「やはり酒気帯び運転はどんな事情でもよくない」という認識を持つ人が増えてきたようです。
例えば,盆や正月に車で来た人にお酒を勧めることを悪いと感じていなかったり,冠婚葬祭や祭りの時も同様に車で来た人にお酒を勧めることはむしろ当然だと感じていたなどのケースについて,いずれもよろしくないという認識が広まり始めています。実際,お祭りなどでお酒を振る舞う場合も自動車で来ているか否か確認するようにしたり,または代行車を確実に手配するなどしている例もあるようです。

酒気帯び運転の厳罰化が進み,ようやく社会の認識も「危ないこと」となってきたのかなと思います。社会の認識がバックに付けば,恐いものはありません。酒気帯び運転を0にし,さらには悲惨な事故を0にするためにも,「飲んだら乗るな」だけではなく「飲んだら乗せない」を徹底するということはどんどん進めていくべきでしょう。

ただし,この方針で一つだけ気になることがあります。それは,「ひき逃げの増加」です。厳罰化が進むことで,酒気帯び運転自体減ると思いますが,一方で,「酒気帯び運転がばれないように逃げる」という輩が増加するのではないかと懸念されます。現行法では,逃げてしまった場合,酒気帯びに関する証拠を押さえることが難しいため,「ひき逃げ」のみで処罰するしかありません。ひき逃げも罪が重くなっているものの,危険運転致死傷罪とのバランスを考えるとまだまだ刑が低いと思います。
そこで,「逃げたらもっと恐いことになる」と思わせる必要があるのではないでしょうか。とすると,ひき逃げの罪についても厳罰化の検討を行うべきだと思います。少なくとも,上限は危険運転致死罪と同じにするべきでしょう。

酒気帯びもさることながら,ひき逃げも卑劣この上ない犯罪です。酒気帯びの有無に関係なく,ひき逃げは限りなく殺人に近いと言えますから,この点について法改正を検討してほしいと思います。

「車は安全だし,運転手はしっかしている」と対外的に認識されるようなるためにも,まずは私たち1人1人が改めて「酒気帯びは絶対やらない」と考えるべきでしょう。

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http://realnews.justblog.jp/blog/2009/02/post-1982.html

学校に携帯持ち込み禁止することは,法的センスを養う機会になる

2008年12月08日 01時30分58秒 | 法律問題
大阪府の橋下知事が,学校への携帯電話持ち込みを禁止する方針を打ち出しました。これをうけて,文部科学省などからもこの方針について歓迎する以降であるとのことです。一方で,生徒や父兄などからは,携帯電話が使用できなくなることによる弊害もあるなどとして,この方針に反対する動きも出ているようです。

携帯禁止「歓迎したい」=大阪府教委の方針受け-塩谷文科相(時事通信) - goo ニュース

なぜ法律ができるか考える良い機会になるのでは

携帯電話持ち込み禁止の是非については,既に多くの方が議論をしていますので,ここでは特に触れません。
例によって,この問題を全く違う視点から見ていきたいと思います。
携帯電話の学校への持ち込みが禁止されたというと,どうしても携帯電話のことだけに視点がいきがち,実は,ここに面白い問題が含まれているのです。それは,「なぜ世の中に法律ができ,刑罰ができるか」を考えることができるということです。つまり,「実社会におけるリーガルマインド」を小中学生からこの問題を通じて教え,考えさせることができるのです。

具体的にはこうです。
そもそも,なぜ知事は学校に携帯を持ち込むことを禁止しようとしたのでしょうか。その理由を考えてみましょう,っていうことになります。
「わからん」「考えたって嫌なものは嫌」というのが子供の発想になると思いますが(まあ,中にはこういう発想の大人もいますが),そこで理由なしに禁止することはない。理由なしに禁止したとすれば,説得力のない禁止規定だよ。」ということになります。
そして,禁止した理由を考えると,大きくいうと「授業中にケータイが鳴ったり,メール操作するなどマナーができていない」「怪しいサイトの情報に騙されて犯罪に巻き込まれる可能性がある」「適当な情報を書き込んでいじめの原因になる」などいくつかでてくるでしょう。
すると,次に考えるのが,「こういう目的を達成するために,持ち込みを禁止をするということが妥当なのか」ということです。それを考えさせますと,「なるほど」という子もいれば「ならばマナーや使い方のルールを守るようにみんなで注意すればよい。」などという意見も出てくると思います。
そこで,後者の意見が出たら,「じゃあ,いままでしっかりマナーやルールを守っていたか?」という点を考えます。
全員がマナーやルールを守っていれば,そもそも問題にならないわけですから,「たしかに」となります。もちろん,「私は守っていた」というこれまた子供の反論が予想されますが,これは想定内。
ここで,「物事はいきなり何か規制するわけではない。最初はみんなに迷惑をかけないようにするためのマナーやルールができてくる。ところが,誰かがのマナーやルールを守らないと,他の人に迷惑をかけてします。こういう人がどんどん増えてくると,もはやマナーやルールといったみんなの気持ちだけでは解決ができない問題になってしまう。そうなると,もっと厳しい決まりを作らなければならない。もちろん,そうなるとまじめにやっていた人も同じ厳しい決まりの枠に入ることになるが,他の人に迷惑をかけないというためには仕方がないこと。そして,それでもその決まりを守らない人がいたら,罰を与えてでも止めさせなければならない。そうしなければ,みんなが迷惑しっぱなしになるから。」と説明します。
そして,「実は,日本にはたくさんの法律がある。この多くは,そうしたマナーやルールを守らない人がいたことから,みんなの生活を守るためにできたものなんだ。そして,それでも守らないで迷惑をかける人がいるので,刑罰を与えることができる法律までできているんだよ。」と,法律がなぜ,どのような理由でできるのかを説明するのです。そして,これが「今の社会の仕組みなんだ」とはっきりいうのです。
最後に,「今回のケータイ禁止ということも,全く同じこと。みんながルールやマナーを守れば,こういう問題にまでならなかった。ところが,こういうことを守れなかった人が結構いたので,禁止することになった。法律が作られる仕組みと実は全く同じなんだよ。」ということで一応着地となります。
補足的に「もちろん,ケータイに限った話ではなく,すべてのことで同じ問題が起こるよ。それが学校内なら校則になり,国全体なら法律になる。」と説明します。

もちろん,ここからはいろんな反論が出てくるはずです。それで良いのです。日本の法律も,一度作ったらそのまんまではありません。いろんな反論や社会の変化があるので改正します。だから,ケータイ問題についても「みんなの反論がなるほど,ということがあれば,この規則も変わるかもしれないね。ただ,そのためには何をすればよいか考えよう。ただ反対,って叫ぶだけで本当に良いのかなあ?」などとふれば,「権利と義務」の関係も何となく分かってくるのではないでしょうか。

とまあ,長くなりましたが,ケータイ問題は,単純な「ケータイの是非」ではなく,「法律がどう作られ,権利義務がどういう関係にあるのか」をちゃんと教えるよい機会になるのではないでしょうか。裁判員制度が始まる今,このようなリーガルマインドを理解してもらうことも大切だと思います。
もっとも,橋下知事がそこまで考えて発言したとは思えませんが・・。

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こんなことまで図書館に責任を負わせるのか?

2008年11月10日 00時17分43秒 | 法律問題
全国の公立図書館で,2007年度に不明となった蔵書が28万冊,被害総額で4億円を超えていることが判明した。一方で,防犯装置の設置については,予算の関係で未設置のところが多く,各自治体とも対応策に悩まされているとのことです。

28万冊いずこに…全国公立図書館で不明、被害4億円超す(読売新聞) - goo ニュース

本の無断持ち出しは窃盗罪です

記事によると,ある図書館では,雑誌を持ち出そうとした中年女性を呼び止めたところ,「雑誌がカバンに落ちただけ。盗んだ証拠があるのか」などと逆ギレされ,職員が謝罪したら雑誌を返した等という事例も報告されているようです。こんなバカがいるとは思いませんでしたが,28万冊なくなるということは,こういうバカが延べ28万人いるということになります。
ただ,こういう場合,容赦なく「刑事告発」するに限るのではないでしょうか。前述の中年女性の事例については,すぐに警察に通報し,捜査してもらうくらい強気にいってもよかったと思います。警察では,こんな屁理屈,通用しません。
万引きに対する犯罪認識が弱いように,日本では「役所のものは自分のもの」という変な認識を持っている人が多く,結果,図書館の本を盗むことに罪悪感を感じない人がまだまだ多いのかもしれません。
こういう人に対する対応は,「啓発活動」と「強気の姿勢」しかないでしょう。コンビニが,ガム1個の万引きであっても警察に通報するという姿勢になっているように,たとえ100円の本1冊であったとしても,「容赦なく通報」という姿勢をはっきりと示すべきでしょう。そして,館内出入り口には,「本の無断持ち出しは10年以下の懲役の窃盗罪だよ」と書いておくことも大切です。

一方で,一部批判として,「図書館の警備体制の甘さ」の指摘があります。図書館側も「自分のもの」という認識が甘いので,持ち出しを防ぎきれないのではないか,というものです。
確かに,それは総論的には正しいかもしれません。ただ,図書館でそこまでやる意味があるでしょうか?
先日,とある図書館長のお話しを伺う機会がありましたが,その方曰く,「図書館とは,単に本を貸すだけの施設ではない。さまざまな文化,情報の発信基地である。そして,その情報の裏付けとなる書籍を提供できるようにする点に本当に意義があるのだ。」ということでした。
まさに正論です。図書館とは,その町の文化の象徴です。住民が,何かを調べたいときに「知の提供」を行う場所であり,逆に,積極的に「知を提供する」場所であるともいえるのです。
そう考えた場合,図書館に防犯ゲートを設けるということは,「その町の住民はすべて盗人であり,とても知の提供ができない」と言っているようなものになります。平たく言えば,「知的レベルが低い住民」と言われているに等しいのです。
「それは性善説で考えすぎ,今の時代は性悪説で考えるべきだ」という反論もありますが,知的文化については,やはり「最後の砦」として性善説で考え,モラルの再考と発見した場合の厳罰化で対応するのが良いのではないでしょうか。

ただ,もっというと,「今の図書館のあり方」自体を見直す時期に来ているのかもしれません。
前述のとおり,書館とは「知的文化の情報発信基地」なのです。したがって,当初は「高額な本」や「なかなか手に入りにくい本」,さらには「みんなに読んでもらいたい価値のある本」を図書館蔵書としていました。ところが,80年代頃から,「みんなが読みたい本」のリクエストが増えてきて,結果,「ベストセラー本」「一般雑誌」「漫画」「映画」などが図書館に置かれるようになってきました。逆に,これがないと「だめ図書館」と住民から言われてしまいます。
しかし,本当にこういうスタイルでよいのでしょうか。図書館は本屋ではありませんから,当初の目的を踏まえて,もう一度「必要な本か否か」を取捨選択する必要があるかもしれません。
もちろん,ベストセラー本などを一切置いてはいけないとはいいません。ただ,「単なる本屋」ではなく,「知的情報発信基地」としてその本がどういう役割を持つのか,という点も考えて整備するといいでしょう。

最後に,話を戻しますが,「図書館の本を勝手に持ち出したら,窃盗罪で懲役10年以下の刑になる」っていうこと,これは是非とも自覚を持ってほしいと思います。もちろん,本のページを勝手に破ったり,勝手に書き込んだら「器物損壊罪」で3年以下の懲役になります。
こういう人が図書館に出没すると,「その町の住民の知的レベル」を疑われる結果になります。こういうことは,なんとしてでも止めてもらいたいものです。

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学校倒産時代,学校選びまで自己責任か?

2008年11月03日 19時34分13秒 | 法律問題
東京都日野市にある八王子自動車教習所が10月31日破産申立を東京地裁にし,事実上倒産しました。前日には従業員,教官らも解雇通告されたほか,11月3日には受講生約1700人に対し,債権者説明会を開催し,受講料返金についての説明をしました。しかし,全額返金は事実上難しい見込みです。

八王子自動車教習所が倒産 東京(産経新聞) - goo ニュース

学校の債権者と一般企業の債権者は同列かなあ??

先日,海外留学をあっせんしている企業も倒産し,債権者集会では予想どおり怒号が飛び交ってしました。また,今日の教習所の債権者集会においてもかなり激しい罵声を浴びせられていました。さらには,大手英会話学校も破産し,生徒が路頭に迷うなどということがあったことも記憶に新しいと思います。
そりゃあそうだと思います。学生側にしてみたら,学校選びの際に学校の資金力,経営能力まで調べ上げて入学する人は少なく,通常は「カリキュラム」「教育方針」「教員の質」「学費」など,教育効果を踏まえて選ぶからです。また,教習所に至っては,八王子周辺はまだしも,少し田舎に行けば「周辺に1件」しかないわけで,選択の自由すらないという現状もあります。
一方で,学生は学費を払えば,その対価として授業を受けるので,学校から見たら立派な「債権者」となります。
そして,現行破産法では,債権には「優先」「一般」「劣後」とありますが,優先債権は被担保債権や従業員の生活維持のために認められた給与債権などであり,学生の授業を受ける債権は一般債権にすぎません。当然,他の学校に自動的に振り返るという規定は破産法にはなく,あとは同業者間での紳士協定になっている場合が多いです。

確かに,一般論として,破産した以上,債権者に優劣をつけるのは相当ではありません。また,従業員もある面では立派な被害者でもあるわけですから,「従業員に1円たりとも払うな」というのも乱暴な議論です(逆の立場になって考えてみれば理解しやすいでしょう。)。
ただ,ジャンルは問わずおよそ学校における学生については,前述のとおり,通常の取引業者とは異なった発想で学校選び,つまり取引先選びを行っているため,単純に自己責任論でしかたないと切り捨てるのはいかがなものかと思います。まして,通常の取引業者であれば,相手の経営が怪しいと思えば,取引を辞めたりとか,担保を取ってみたりとか,取引単価を上げてみたり等という防衛策を講じることもできます。しかし,学生にはそのような手だては全くありません。そうすると,なおのこと,一般債権者同様の責任を取らせるのはどうなのでしょうか。

といいながら,一方で受講料返還というのは,現実的に不可能です。それだけのキャッシュフローがあれば,倒産はしないからです。
学生側からすれば,「とにかく授業が受けられればよい」というところがすべてでしょう。そうであれば,振替授業が受けられるようなシステムを構築する必要があります。これは,破産法で規定しても難しいので,業界ルールをはっきりと明文化することで対処するしかありません。当然,受講期限などは若干猶予をすることや,教材費程度の追加徴収はあり,ということももめないように明確にするべきです。
もちろん,その学校が当初予定していたカリキュラムや教育方針を維持できない可能性がありますが,最低限,受けるべき内容を受けられれば御の字のはずです。この程度のリスクは甘受してもよいでしょう。授業もなし,返金もなしよりはましのはずです。
学校の延命も選択肢として考えられますが,給料もでないで学生が卒業までの数ヶ月間教えてくれるような教官はいないでしょう。彼らだって,自分の生活のために新たな仕事を探さなければならないわけですから。

いずれにせよ,これから学校倒産時代は本格的にやってきます。いずれは,私立高校や大学などだって倒産する可能性があります(短大が倒産した,っていうこともありましたね。)。英会話学校や教習所であればまだどうにかなるかもしれませんが,高校や大学では学生の一生に関わる話になります。こうした点も踏まえ,学校破産時対応を考える必要があります。

そこで問題です。これを考えるのはどこの省庁でしょうか?
1 破産法などを主管する法務省
2 学校関係を主管する文部科学省
3 各種学校を主管する経済産業省
4 保育園を主管する厚生労働省
5 消費者保護を主管する消費者庁
6 とりあえず総務省

正解は・・・分かりません!!
当然,国会も全部が別委員会ですから,国会議員も場合によっては他人事になります。
したがって,ちゃんとした旗振り役がいなければ,この話,永久に先に進みません。同じような「可哀想な学生」が町中にあふれかえるだけです。選挙公約には弱いですが,旗振り役を買って出る議員が出てくるでしょうか?

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差押えを悲観して一家心中,その責任は市にあるのかな?

2008年05月29日 02時28分21秒 | 法律問題
固定資産税等市税を約100万円ほど滞納したことからたこ焼き販売車を市が差押えを実施したことから将来を悲観して家族6人が無理心中をしたのではないかと思われる事故が発生したようです。

たこ焼き販売車を差し押さえられ悲観か 熊本の6人死亡(朝日新聞) - goo ニュース

これって市の責任?

まずは,この6名のご冥福をお祈りしたいと思います。しかし,一方で昨日もいいましたが,「>安易な自殺だけは絶対に止めてほしい」と思います。まず,そこが本当に残念でなりません。
さて,この朝日新聞のニュース,個人的な感触としては,「ちょっと悪意に満ちた記事」という印象を持ちました。すなわち,「故意か勉強不足かはともかく,市が悪いというトーン」を全面的に出しています。したがって,このニュースを見た人たちの反応も,多くは,「市は冷たすぎる」「機械的な処理だ」など,市の対応に批判的です。
でも,本当に市が悪いでしょうか。
この差押え問題,整理すると,次のような批判があります。
1 いきなり差し押さえるのはひどい
2 家計が苦しい人に差押えを実行するのは機械的すぎる
3 なぜ不動産を押さえない
4 商売道具の車を押さえるのはおかしい
5 もっと温情ある対応は取れないのか


しかし,これらの批判はいずれも制度的誤解があると思われます。
まず1についてです。
税金の差押えは国税徴収法に基づいて実施します。そして,それによると,税金を滞納したらすぐに差押え,ってことはできません。必ず,督促(払ってね,っていう催促)を送り,それでも払わない場合,初めて差押えができるとあります。その督促の中で,「払わないと差し押さえるよ」という予告をしています。
一方で,差押えを逃れるために財産を隠すという輩がいるため,それを阻止するため,差押え手続はこっそり実施されます。すなわち,「督促期間が過ぎたら,いつ差押えされても文句言えない」という状態なのです。
でも,前述のとおり,ステップを踏んでいますので,「いきなり」という訳ではありません。

次に2についてです。
例えば,現在支払いが厳しい場合は「納税猶予制度」もあります。ただし,これは猶予であって免除ではありません。したがって,いつかは払うものです。
また,そもそも税金は「あるべきところから払う」という想定になっています。今回の場合,固定資産税なので,不動産を持っていたと言えます。
固定資産税の場合,「不動産はあるがキャッシュはない」という人が多いので,滞納率も高いですが,逆にいうと,不動産という財産があるため,事案によっては納税猶予の相談にも応じます。
では,本当にお金がない人はどうするのでしょうか?
結論から言うと,「不動産を売ってでも税金を払え」ということになります。
「それは冷たすぎるし,路頭に迷わせる」という批判があるでしょうが,方で「まじめに税金を払っている」人もいるわけですから,特別視することはできないでしょう。この辺は,給食費滞納問題と似た構造です。
ちなみに,不動産を持っていると,生活保護の認定も難しいです。ならば,逆に不動産を売ってそれを生活費と滞納税金にあて,それでも生活ができないとなれば,生活保護を受けやすくなります。
そういう意味では,むしろ売った方が路頭に迷いません。
したがって,ある程度機械的な処理もやむを得ないのです。ただ,前述のとおり,差押え前に相談する余地は十分あるのです。

3についてです。
税金の滞納については,原則として関連する財産を差し押さえる規定となっています。したがって,固定資産税の場合,不動産を押さえるのが原則です。
では,なぜ今回不動産を差し押さえなかったのでしょうか。
ここは推測の域を超えませんが,おそらく,不動産には既に銀行の抵当権が複数設定されており,もはや財産的価値がなかったものと思われます。場合によっては,既に不動産は抵当権実行されていたのかもしれません。
いずれにせよ,不動産が無価値となると,無価値のものを差押えすることはできないのです(無剰余売却の禁止)。
すると,今度は,他の財産を差し押さえて良いという規定になっているのです。
おそらく,不動産以外に財産もなかったため,唯一の財産たる車4台中2台を差し押さえたのでしょう。
ちなみに,もしも他に財産があり,それなりの価値であると認められれば,「差押換」を請求することができます。すなわち,「車は使いたいから,このロレックスの腕時計を代わりに差し押さえて」といえるのです。しかし,今回は,そのような代替財産がなかったものと推測されます。

4についてです。
実は,何でもかんでも差し押さえることができる,なんて乱暴な制度ではありません。
生活必需品や,仕事に欠かせない物については,「差押え禁止物件」として差押えができません。
そして,もしこれに違反する差押えを行った場合,滞納処分庁に対する不服審査を申し立ててて,差押えの取消を求めることができます。
今回の問題,一番も肝はここだと思います。市の認定は,「他の車で仕事ができる」としたが,亡くなられた方としては「それがないと商売にならない」と考えていたものと思われます。
仕事に欠かせない物だったどうかは総合的に判断しますので何とも言えませんが,少なくとも「仕事にならない」と判断したら,即座に「不服申立て」をすれば足りるのです。
ちなみに,差押え通知には,不服についての教示文言が記載されてますから,知らなかったという反論は難しいでしょう。

5についてです。
税金の滞納理由は様々ですが,前述のとおり税制度は「本来あるはずの財産から払う」ものであり,昔の年貢のように財産を過大評価して財産以上のものを払え,というものではありません。本来,払えるべきものなのです。したがって,基本的には「給食費未納問題」と同じだといえます。
また,仮に支払が困難になった場合でも,差押え前に相談し,猶予を受けるなどというすべもあります。
さらに,税務関係者から聞いた話ですが,差押えするというと,「死んでやる」とか「殺してやる」などという輩がかなりいるらしく,それを真に受けて差押え解除したら,「税金はごねたら払わなくていい」と思われてしまい,ますます払わなくなるということのようです。
だから,ある程度は冷酷にならざるを得ないでしょう。

以上を踏まえると,今回の市の対応は,「やむを得なかった」といえるでしょう。
もちろん,もしも「意図的にねらい打ち的な差押えをした」などという不公平な取り扱いをしたのであれば,責められる余地もありますが,いまはそこまでの嫌がらせはなかなかしないものです。

税金は,こうして強制的に取り立てることができるものです。からこそ,「1円足りも無駄にしない」という意識も大切なのでしょう。そうすれば,差押えに対してももっと理解は高まるでしょう。
一方,どうしても税金が払えない人は,一度税務当局と相談することをお薦めします。もちろん,どうにもならない場合もありますが,延納を認めてくれる場合もあり得ますよ。

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