１０
手乗り文鳥のように、雀さんたちは、差し延べた手にも乗って来るらしい。
写真でそれを見た。
そこまで人間との距離が縮まるのだろう。でも、それはちょっと深入りし過ぎかなとも思う。
９
雀さんの観察は続けている。ときおり出て行って、玄米を餌場に追加している。雀はわたしの姿を見るとさっと去って行く。
部屋の中から観察をしているが、それでなんらかの研究をしているのでもない。単純に楽しむためにである。
８
世の中は新型コロナウイルスを拡大している。これ以上に拡大させないために、行政機関が外出を控えるようにと進言し続けている。
わたしはこれに十分に従っていることになる。畑と庭の外には出て行かないんだから。
わたしが行動するその行動半径なんてわずかなんだから。
７
ま、それでいいんだけど。
やれるだけでいいのだ。
誰かから命令が下っているわけではない。自由意思でいいのだ。
畑に出ていれば気が楽になる。ゆっくりした気分になれる。これだけで十分だろう。
６
やりたいことはいっぱいある。気は焦る。植え付ける夏野菜の準備を急がなければならない。
でも、いかんせん、わたしは老爺。よぼよぼの、よろよろの。
力がない。椅子を移動させながらほんの少しずつしか仕事が出来ない。
５
もうまもなく１０時半。
そろそろいいだろう。
野良仕事の服装に着替えた。
寒いといけないからジャンパーも重ねておく。
４
蝶々も舞っている。
あちらへこちらへ行きたいところがいっぱいあるような飛び方だ。
そうだろうねえ、そうだろうね。納得できる。
春の花は、飛んで行く方角方角であふれている。咲き乱れている。
３
西洋ラッパ水仙の群落も、背伸びして、そよ風に身を任せて、気持ちよさそう。
雨に濡れて重たそうに垂れていたラッパが、今日は思い切り空を向いている。
隊列の先頭がタクトを取って、にぎやかな行進曲でも鳴らし始めるのかも知れない。
２
雨の日には開かないでいたチューリップの花の群れも、今日は自衛を解いて、一斉に花傘を開いている。
球根を今年は沢山買って来て、家の周囲のあちこちに植え付けた。それが見事に成長して咲いている。
「わたしを見て」「わたしのこの美しさを見てよ」という要求の声が聞こえて来そうである。
１
お天気が良くなった。こころの中の天気もこれに従っている。
大きな息をする。もう一度、更にもう一度。胸の奥まで届く。おいしい。
