The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『特捜部Q 檻の中の女』ユッシ・エーズラ・オールスン著

2019-09-29 | ブックレヴュー&情報
『特捜部Q-檻の中の女』:ハヤカワ・ポケット ミステリ2011/6/10

ユッシ・エーズラ・オールスン(著)、吉田奈保子(翻訳)

北欧ミステリは好みなので 割に色々読んだつもりでしたが、何故かこの作品は漏れて居りました。
先日『パリ警視庁迷宮捜査班』を読んだ際(感想はこちらに書きました)、何人の方かが『特捜部
Q』に設定が似ていると書き込みをされていたのをみて、成程、それならば読んでみましょうか・・・
となった次第です。

デンマークの作家 ユッシ・エーズラ・オールスンによる『特捜部Q』シリーズの第一作目である
『檻の中の女』は2007年原作初刊。
既にシリーズ7作目迄刊行、翻訳出版されています。
因みに、
1 『檻の中の女』
2 『キジ殺し』
3 『Pからのメッセージ』
4 『カルテ番号64』
5 『知り過ぎたマルコ』
6 『吊るされた少女』
7 『自撮りする女たち』
となっています。

そして、今回私が読んだのは少し古いのですが ポケット・ミステリ版(2011刊)でしたが、その後文
庫化されて[ハヤカワ・ミステリ]文庫から2012年に新装丁で再販されていました←気付かなかったッ!


内容(「BOOK」データベースより)
捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マークは新設部署の統率
を命じられた。とはいってもオフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変人アサドの一人だけだった
が。未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」は、こうして誕生した。まずは自殺と片付けられていた
女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!デンマーク発の警察小説シリー
ズ第一弾。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


主人公の警部補カール・マークはある事件の捜査中相棒1人が死亡、1人が再起不能の重傷を負い、自らも
重症を負って以来 仲間達を救えなかった後悔とトラウマにさいなまれながら仕事に対する情熱も失って
いた。 そして周囲からも疎まれていた折、厄介払いと予算獲得の思惑による上層部の計らいで迷宮入り
の事件を再捜査する新部署である「特捜部Q」への移動を命じられる。
カールは妻とは離婚はしていないものの別居中。義理の息子とオタクの料理担当同居人との3人暮らし。

何処からか現れたシリア系のハーフェル・エル・アサドが助手となり、地下室に追いやられた新部署で
最初に取り組んだ事件が5年前に起きたミレーデ・ルンゴーの失踪事件。

才色兼備の民主党副党首であったミレーデが障害を持った弟のウフェと共にドイツに航行するフェリーか
ら姿を消して以来その消息が知れないし遺体も見つかっていない。

物語はカールとアサドが調査を始める2007年と2002年以降のミレーデの物語が平行して、交互に描かれ
ています。

少々ネタバレになりますが、日本語タイトルの”檻の中の女”で示されている様に、ミレーデが2002年
に軟禁された檻の中の状況が胸苦しくなります。
ひたすら弟の事を思う事で毎日厳しい監禁状況を生かされて5年を過ごすミレーデの精神力と生命力に
は驚嘆するのみですが、何故彼女がこの様な目に合わされるのかは子供の頃に自動車事故で両親が死亡、
弟が障害を持つようになった時に遡るのですが、誰が、何の為に?でミレーデと共に惑わされていきます。

シリア系のアサドのキャラクターが際立って魅力的。
とてつもなく鋭い思考をひらめかせたり、電気の配線など手際よく片付けたり色々な知識を持っている
一方、コピーの取り方が分からなかったり、法律書などデンマーク語で読めるくせに簡単なジョークが
分からなかったり・・・。そのギャップが面白い。 そして、マイペースでアラブ式を貫きメッカに向
かっての礼拝は欠かさず、その上部屋でアラブ料理まで始める。
カールを目の敵にしている苦手な元同僚達にもあっという間に懐に飛び込み良好な関係を築いていく
”人たらし”アサド。 そんなアサドの正体にカールは疑いを持ちつつ、それでも次第に信頼関係を築
いて行きます。

果たしてミレーデを救う事ができるのか・・・。 タイムリミットがある中ハラハラ、ドキドキしなが
ら怒涛のラストを迎えます。
ラストシーンは感動的な結末で締めくくられています。
読ませてくれます。

ただ、他の北欧ミステリ作品の様な冷たい空気感はあまり感じられなかった様な気がします。

アサドの謎めいた過去、カールとの関係等興味は尽きませんので、遅ればせながらこれから順次作品を
読み始めようと思っているところ。

ところで、この作品は映画化されている様なのですが、観た事がありませんでした。
機会があれば・・・と思うところですが、何処かで配信しているかしら?







6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>一作目 (Yam Yam)
2019-10-08 19:12:03
Abiさん、お~随分早かったですね。 本当に監禁描写の部分が多過ぎる様な気がして辛いですよね。
キャラクターに関してもワタクシはカールという人には共感出来ず、優柔不断というかイラつかされる様に
も感じましたが、何と言ってもアサドが魅力的で興味あるキャラクターで気に入っています。背景も気にな
るところなんです。
確かに好みは分かれるかも知れませんね。 でも、私は2作目が終わり、今日3作目を借りてきました。
割にユーモラスな会話や描写があり、そんな所はは好きですよ。
これから「バラの名前」再読開始します。ドラマの放送迄に間に合うかしら?と思いつつ。
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一作目 (Abi)
2019-10-08 15:21:33
読んで見ました、と言うかちょっと飛ばしたり、、、ミステリーで飛ばすなんてあり得ないでしょうけれど、やはり監禁のところは見たくないというか、息が詰まりそうで、、、重い!おっしゃった通りでした。2作目予約入れるかどうしようか迷うところです。何か主人公に共鳴出来ないのです。
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>Unknown (Yam Yam)
2019-10-06 18:59:30
Mistyさん、わ~お久しぶりです。
すっかりご無沙汰していて申し訳ありません。 お変わりなかったですか?
このシリーズは北欧ミステリ好きの私にはかなり好みですが、そうなんですよ、軟禁状態の描写はかなり
厳しいです。
でも、その他は会話がコミカルだったり、文章も思わずニヤっとさせられる部分もありで、なかなか読ませ
てくれます。 登場人物が多いのと 馴染みのない名前だったりで取っつきにくいかも知れませんが・・・・。
でも、もしお時間があればお読みになってみて下さい。 ワタクシは2作目の「キジ殺し」も読了しました。
キャラクターが興味深いです。
Mistyさんもお仕事お忙しいんですね? 暑さがぶり返したり、台風続きだったり 何時になったら爽やか
な秋晴れが望めるんでしょうね。
兎に角お身体ご自愛になって下さいね。
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Unknown (Misty)
2019-10-06 16:41:48
こんにちは。色々面白そうな本を紹介してくださるので、読んでみたいな~と思いながら、まだ何も手付かずのままです。この作品は、面白そうだけど、軟禁の箇所はしんどいでしょうか…
自分ではなかなか選べないので、こういう風にレビューしてくださるとありがたいです。
今年は残暑が酷しくて、秋は一体いつ来るの…?という感じでしたが、さすがにそろそろでしょうか。Yam Yamさんも、体に気をつけてお過ごしくださいね。
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>有難う (Yam Yam)
2019-09-30 15:35:02
Abiさん、こんにちは。
話題になっていると何でも取りあえず読んでみよう・・・なので、先ず一作目を読んでみました。
好みは分かれるかも知れません。 ”ニュー・トリックス”、や先日の”パリ警視庁迷宮捜査班”と設定は似
ているものの、そこは北欧ミステリですから結構重いです。
特に軟禁されている状況はヘビーですよ。 でも、アサドのさり気ない言動で和みます。 
又感想を聞かせて下さいね。

ところで、この作品の映画版数日前に見つけました。ダメ元とHuluを探していたら3作品配信になってい
たので同作品を観終わりました。 長い原作を一本の映画に収めるのはなかなか難しいな・・・と感じまし
たが、原作を読んでいたので何とか理解できましたよ。
後の2作品も配信期間終了が迫っているのですが 原作を読んでから観たいので迷っています。
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有難う (Abi)
2019-09-30 12:18:49
読みたい本ってどう探せば良いのか、本屋さんでじっくり探すのも面倒になって、他力本願もいいとこ、早速予約入れました!
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