知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

課題が残る従来技術を含む発明を請求項に記載した分割出願

2007-06-08 22:43:30 | 特許法44条(分割)
事件番号 平成18(ネ)10077
事件名 特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日 平成19年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明
重要度 ☆☆☆

『ウ 以上を総合すれば,本件原出願の当初明細書等(乙6)によれば,「インクタンクのインク取り出し口を封止する部材」を「先端が鋭くないインク供給針でも貫通できるフィルム」とするインクタンクにおいて,「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させる」との構成は,一連の課題解決のために必要不可欠な特徴的な構成であることを示している

 すなわち,本件原出願の当初明細書等は,「インクタンクのインク取り出し口を封止する部材」を「先端が鋭くないインク供給針でも貫通できるフィルム」とするインクタンクにおいて,「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させる」との構成を具備しない技術には課題が残されていることを明確に示して,これを除外していると解される。したがって,本件原出願の当初明細書等のいかなる部分を参酌しても,上記の構成を必須の構成要件とはしない技術思想(上位概念たる技術思想)は,一切開示されていないと解するのが相当である

 以上のとおりであって,「インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させる」との構成を必須の構成としない本件発明が,本件原出願の当初明細書等に記載されているとの控訴人の主張は,採用することができない。

3 小括
したがって,本件分割出願は,分割要件を欠く不適法なものであるから,その出願日は本件原出願の時まで遡及せず,現実の出願日である平成12年12月21日となる。』

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