知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

行政事件訴訟法10条2項が適用された事例

2010-12-19 22:39:35 | Weblog
事件番号 平成22(行ウ)276
事件名 決定取消請求事件
裁判年月日 平成22年12月14日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

(1) 原告が,本件出願について
 平成20年11月27日付けで本件拒絶査定を受けた後,本件補正書及び本件意見書を提出したこと,
 特許庁長官が原告に対し平成21年6月8日付けで本件補正書及び本件意見書に係る各手続を却下する旨の本件各却下処分をしたこと,
 原告が本件各却下処分について本件異議の申立てをしたこと,
 特許庁長官が原告に対し同年11月20日付けで本件異議の申立てを棄却する旨の本件決定をしたこと
は,前記第2の1のとおりである。

 そして,原告主張の本件決定の違法事由は,別紙「2 請求の原因について」記載のとおりであり,要するに,原告の本件出願に係る発明は,特許法29条1項各号,2項のいずれにも該当せず,特許要件を充足するのに,これを充足しないとした特許庁の判断に誤りがある,すなわち,本件出願を拒絶すべきものとした本件拒絶査定の判断に誤りがあるというにあると解される。

(2) ところで,行政事件訴訟法3条3項は,「この法律において「裁決の取消しの訴え」とは,審査請求,異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決,決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。」と規定し,同法10条2項は,「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができない。」と規定している。
 これらの規定によれば,処分の取消しの訴えとその処分についての不服申立てを棄却した「裁決」(異議申立てを棄却した決定を含む。)の取消しの訴えのいずれも提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいて主張し得る違法事由は,裁決固有の瑕疵に限られると解される

 前記(1)によれば,本件決定は,特許庁長官がした本件各却下処分に対する行政不服審査法による異議申立てを棄却する決定であるから,本件各却下処分を「処分」とする「裁決」に該当するものと解されるところ,特許法その他の法令において,本件各却下処分の取消しの訴えと本件決定の取消しの訴えのいずれか一方しか提起することができないとする定めはなく,上記訴えのいずれも提起することができる場合に該当するものと解される。
 そうすると,本件決定の取消しを求める本件訴訟において,本件決定の違法事由として原告が主張し得るのは,本件決定の固有の瑕疵に当たる違法事由に限られるというべきである。

 これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,原告が主張する本件決定の違法事由は,本件拒絶査定の判断の誤りであって,これが本件決定の固有の瑕疵に当たらないことは明らかであるから,原告の主張は,その主張自体理由がないといわざるを得ない。

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