知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

専門家が取引者,需要者である場合の意匠の類否判断

2007-06-08 22:52:33 | Weblog
事件番号 平成18(行ケ)10462
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 篠原勝美

意匠の類否判断は,全体的観察を中心に,これに部分的観察を加えて,総合的な観察に基づいてされるところ,意匠全体の支配的な部分を占める構成態様,全体として一つの意匠的なまとまりを形成し,看者に視覚を通じて一つの美感を与える構成態様を軽視し,細部の形状・模様及び色彩などの具体的構成態様のみを重視することはできない

 専門家である看者においては,一般消費者であれば見逃すような細部の差異についてもより正確かつ子細に観察するというところに違いがあるにすぎないのであり,専門家が取引者,需要者であるからといって,直ちに,意匠全体の支配的な部分を占める構成態様,全体として一つの意匠的なまとまりを形成し,取引者,需要者に視覚を通じて一つの美感を与える構成態様を注視せずに,細部の形状・模様及び色彩などの具体的構成態様のみを注視するものではない。』

『2 取消事由2(類否判断の誤り)について
(1) 共通点の評価について
ア 審決は,本願意匠と引用意匠の共通点について,「・・・」(審決謄本2頁第6段落ないし第7段落)と判断したのに対し,原告は,これを争い,両意匠に,機能上要請される形態において共通点があったとしても,それはありふれた形態又は必然的形態であって,専門家である取引者,需要者の注意をひくことはなく,これらの形態部分は意匠の要部とはなり得ないから,これらの形態を類否判断の前提として認定すべきではないのに,審決は,要部となる部分と要部とならない部分を区別せず,単に,両意匠の共通点と差異点を抽出し,共通点と差異点の視覚的効果のみにより類否判断を行ったものであるから,意匠の本質から外れているものであって,誤りである旨主張する。

イ 前記のとおり,意匠の形態の類否については,全体的観察を中心に,これに部分的観察を加えて,総合的な観察に基づき,両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって類否を決するのが相当であるところ,この場合において,まずは,当該意匠の全体と公知意匠の全体とを対比して共通点及び差異点を抽出し,この共通点及び差異点を全体的及び部分的に観察し,これらを総合的に観察して,それらが両意匠の類否の判断に与える影響を評価することにより行うのが通常であり,かつ,合理性があるところである
 そうであるならば,当該意匠の全体と公知意匠の全体とを対比して共通点及び差異点を抽出する段階では,要部となる部分と要部とならない部分を区別しないのは当然であって,抽出した共通点及び差異点の観察の段階において,初めて要部観察等の評価の問題となるのである。
 そうすると,審決が要部となる部分と要部とならない部分を区別せずに両意匠の共通点と差異点を抽出していることを論難する原告の上記主張は,失当というほかない。』

<関連事件>
事件番号 平成18(行ケ)10461
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟

事件番号 平成18(行ケ)10460
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟

事件番号 平成18(行ケ)10463
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟

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